転生者で世界を救ったけどヒロインとか要りませんから 作:メンヘラのかけソバ
何時もながら駄文でございますよ。
私にしては長い方かな。
「はぁ、…はぁ…」
一体どれだけの時間が経ったのだろうか。一心不乱に拳を振るい続け、眼前の神であったものは既に物言わぬ肉塊と化していた。
飛び散った血肉は白亜の一面に紅蓮の花を咲かせている。拳からは血が流れ、雫を滴らせているが、どうやら俺の血も混じっているらしい。拳が砕けたのだろうか?先ほどから握ることはおろか、指を動かす事もままならない。
しかし、自然と口元が醜く歪んだ、醜悪な笑み。もしくは狂気か。己の不幸の全ての元凶を淘汰した。その事実が、俺を身体の芯からどうしようもない程の歓喜を湧き上がらせている。
「くひッ」
「くははは!ぁッはははははァ!!」
何処までも続く虚無に哄笑が響いた。
「何をそんなに嗤っているんだい?」
しかし、背後より諌める様な口調で尋ねる者がいる。
「ッーーーー!?」
……バカ…な…、なぜこの声が聞こえる⁉︎
即座に振り向く。
「ふむ、中々に狂的な姿だったね。そんなにも僕が憎かったかい?」
何故だ!なんでまだ存在している!?お前は今滅んだだろう?!いちゃいけないんだよ!!
「なんで生きてやがるッ!クソ神!!?」
「愚問だね、いくら神域に至ったと言っても神を殺せるワケじゃない。それに僕は『死』の概念に関わる神だ。死ぬワケないだろう?」
背後には未だヤツであった肉塊が存在している。ならコイツはなんだ?亡霊か、それともコイツの言う様に死なないというのか?
「本来ならそこにある僕の身体で復活するんだけど、君が念入りにミンチにしてくれたおかげで新しい身体を造った方が早かったんだよ」
全部コイツの手の上で踊ってたって事か。
気に入らないが、仕方がない。今、殺せないならば次で殺せば良い。復活なんて出来ないように存在そのものを砕く程の力を手にすればいい。時間はまだある。言わばこれはテストだったのだ。自分の力が神に通ずる事が分かったのだから良しとしよう。
「しかし、僕が君に謝罪しなければいけないのは確かな事だ。悪かった、謝るよ。まさか君が同性愛者だったとは知らなかったんだ。てっきりノンケだと思ってたから可愛い女の娘が多い世界の方が喜ぶと思ったんだ」
なるほどな。つまり嫌がらせではなく、単なるミスというワケか。だからと言って赦すつもりなど毛頭ないがな。俺の要求に素直に従わず、余計な気を使ったのが悪いんだ。
「謝罪は受けてやるが、赦さねぇからな」
「それで構わないよ。それにお詫びとして君を再び転生、いやトリップと言った方が正しいか。とにかく別世界に送ってあげよう。今度は君の望む男の多い世界だ。もちろん、君が望むなら追加の特典もあげるし、身体はそのままの強度で送るよ」
今度はしっかり男の園に送ろうってか。構わねぇが、それで俺の怒りが収まると思ってるなら勘違いだな。
それにゲイムギョウ界でやり残した事もある。話を受けてやっても良いが、そっちを終えてからだ。
「まだ俺にはやらなきゃなんねぇ事がある。だからその話は保留だ」
「やらなきゃいけない事?君に好意を寄せる女神達をあしらう事かい?」
全部見てたワケか。一層ムカつくな。もう一度ミンチにしてやりてぇが生憎と腕が上がらない。今度あった時は覚えておけよ。
少なくともネプテューヌとノワールだけはどうにかしなければいけないんだ。突然に俺が消えてみろ、ネプテューヌは知らんがノワールはバーサークするぞ……多分。それにブランやベールにだって挨拶くらいはしたい。アイエフやコンパにMAGES.達だってそうだ。
「君が望むなら構わないのだけれど……まぁ、
……なんと言った?仕組まれた?一体何をどう仕組んだって?
「あぁ、説明しなければならないね。今言った通り僕は君がノンケだと思ってたからね、彼女達と出会うように運命を操作したんだ」
は?
「それと
あ、え?は?
仕組まれた必然?
全て、全てコイツの作り出した必然?
俺がアイツらと出逢ったのも?世界を救うハメになったのも?正直、鬱陶しかったが俺に好意を寄せてくれた事も?
じゃあ、…
……じゃあ、アイツらは何なんだ?
全てが作り物。その心も何もかも全て神によって植え付けられた偽り。
「ははは、なんだよ……それ…?」
勝手に大切な仲間だと思って、護ってきて、…………
……全部、無意味じゃねぇか。
俺が何しようが関係ない。初めからアイツらは俺に好意的に接するようにされていた。
「……なんだよ、それ」
バカみたいじゃねぇか。出来るなら笑っていて欲しいと思って身を削ってきた。それで笑顔を見せてくれるのなら、と思って俺は何でもしてきたつもりだ。
そうして見てきた笑顔さえも偽りだった。
「顔色が悪いようだが、大丈夫かい?言っておくがあくまで好意的に接する程度で君が愚行を行えば嫌われたし、魅力がなければ愛される事もなかったというのを覚えておくといい」
つまり、あれか?最初から好感度メーター高めで始まったSLGみたいなもんかよ?けどよ、それはフォローになってないだろうが。
「どうやら、時間のようだ。この空間の維持も楽ではないのでね。ここらでお開きにしよう。トリップする決意が出来たのならば、僕の名前を呼ぶといい。僕の名前は『タナトス』だ」
Thanatos、タナトスね。ギリシアの死の神か。何が『死』の概念に関わる神だ。『死』の概念そのものじゃないか。
「さらばだ、阿部鏡夜。今度は前と違って本当に空から落ちるから覚悟しておくと良いよ」
そうして、ゆっくりと俺の意識は薄れていった。
だが、そこに恐怖感などはなく、むしろこのまま消えてしまいたいと思えた。
意識が戻る。
どうやら本当に落ちているらしい。高さは300メートル程度だろうか。大きな平地をめがけて落ちているようだ。地上が白く染まっている事から恐らくルウィーの何処かだ。
だんだんと地上が近づいてくる。いや、近づいているのは俺か。
恐怖感はやはりない。この程度の高さから落下したところで云々ではない。俺はネプテューヌと違ってフリフォールの趣味はない。この高さから落ちて身体が無事かなんて検討もつかない。ならば何故か、このまま死んでも良いんじゃないかと思っているからだろう。
やがて地へと衝突した。
目の前がチカチカする。どうやら生きているらしい。身体が頑丈なのか、雪がクッションになったおかげか、それとも両方か。どちらも今だけは恨めしかった。
自然と天を仰ぎ見る様になったが、生憎と空は晴天どころか今にも降り出しそうな鉛色だった。
陽の差す場所はない。
全てが分厚い雲に覆われ、暗闇がすぐそこまで来ている。
冷たい。
雪にまみれた身体の所為か、もっと違うものの所為か。もはや判別などつかないほどに俺の脳は考える事を放棄していた。端的に言うならば自棄を起こしている。当然だろう、今まで信じていた全てが偽りだと知ったのだ。
「一体、なんだったんだろうな」
答えはない。
辺りの雪原はただ静謐をたたえているだけだ。
あの空間から抜けたおかげか、腕の傷は既に見る影もない。
辺りの雪を乱暴に掴み取り、眺めた。
白い。シミなど一つもない純白。それはやがて透明な雫へと姿を変える。
頬に雫が伝う。
ついぞ、鈍色の雲が泣き出した。
ルート分岐地点。
次話はノーマルエンド。その前に番外編を挟むんですがね。