転生者で世界を救ったけどヒロインとか要りませんから   作:メンヘラのかけソバ

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あと1話でノーマルエンドだね!




疲れたよ、パトラッシュ

 

 

一体どれくらいの時間が経ったのだろうか。絶え間なく降り注いだ雨はやがて霙へと変わり、今では雪として宙を舞っていた。

 

未だ動く気になれない俺は変わらず、降り積もった雪に埋もれながら、地に寝そべっていた。

身体の末端の感覚はとうにどこかに消え、芯の熱も徐々にだが失われていく。きっと今の俺の顔は蒼白だろう。医者でなくても命に関わる状態だという事を判別出来るくらいに生気がないのは予想がつく。

 

 

 

このまま死ぬのかもしれない。

 

 

だが、それも構わないと思える。投げやりになっているのだろうか、もう全てがどうでもいい。世界が色を失い、灰色に見えるんだ。

 

まさか自分の心がこんなにも脆いなんて思ってなかった。もう少しくらいは強くあると思っていたのだが、どうやら違ったらしい。たったの一言。一つの事実に砕かれてしまうほどに弱かった。その事実が俺にとって重要で、大切だったのも理由かもしれないがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうなって初めて分かった。

俺は好きだったんだ。この世界とそこに暮らすあいつらが。

 

俺はどうにも好きになり過ぎる傾向が前世からある。好きで好きで堪らなくて、精一杯出来る事をしてきた。けれど最後には裏切られてばかりで、いつしか信じられなくなった。人間の醜くさばかりに目が行くようになった結果が、時々出るあの世界への侮蔑なんかに表れているのかもしれないな。

 

とにかくだ、何度も繰り返したこの展開。そろそろ疲れてきた。

信じる事をやめれば良いのかもしれないが、そう単純な話ではないのだろう。人は独りで生きていくにはあまりにも弱い。ゆえに他者の力を必要とする。そこに大小あれど信用は不可欠だ。

 

もはや、どっかの異世界に転生するのも嫌に思える。ここで終わりたい。タナトスは死の神だ。人ひとりを殺すくらい訳ないだろう。

 

 

 

「タナトス」

 

虚空に向かって呼びかける。

 

転生なんかしなくて良い、俺を楽にしてくれ。

 

 

口を動かすのも辛いな。この一言が限界か。凍ってる。

 

 

 

もう疲れたんだよ。

 

 

 

 

 

………………ん?あれ?

 

 

何も起こらないな。奴の名を呼べばコンタクトを取れるハズなんだが……

 

 

 

 

「突然何言ってるの?タナトス?ちゅーにびょーってやつかな?」

 

「そーかもな、男はほぼ患うみてーだし」

 

 

 

 

…………ゑ?

 

「おーい、生きてる?それとももう死んだ?」

 

「なんだよ、せっかくおもしれー奴を見つけたと思ったのによー」

 

喧しい。

人が辞世の句でも詠んでやろうかと思ってるのに邪魔をするなよ。

 

「うわッ!?冷たッ!!クロちゃんも触ってみ、まるでひんやりアイスだよ!」

 

「おー、カチカチだな!」

 

おい、ペチペチするな。感覚は殆どないが何となく触れられてるのは分かるんだぞ?

 

「これどうすれば良いのかな?」

 

「さぁーな?お湯でもかければ溶けるんじゃねーの?」

 

おい、やめろ。そのやかんはどっから出てきた。え、ちょっ!マジ?注ぎ口こっちに向けんなっての!?

 

「クロちゃん……どこにかけたら良いか分かんないよ」

 

「満遍なく全体にって……それじゃあ、溶けきんねーかもしれねぇな。重要そうだから頭とか顔で良いと思うぜ」

 

はい、アウトー!!

顔はダメだから!某青いツナギの人もイイ男だからホイホイついて来てくれるんだよ?タナトスの野郎が気を利かせたのか知らねぇが、そこそこにイイ顔してるから火傷になるのはNGよ!?

 

「それだと手足が……。あっ、そうだ。いっその事、お湯を飲ませてみる?」

 

「内側から溶かす算段か…。悪くねーかもしんねーな」

 

悪いに決まってるだろ。

 

「あー、もう!まどろっこしいから熱湯風呂で良いよね!」

 

こいつら、良い加減シバいてやろうか?

 

「でも風呂なんてどうするんだよ?」

 

「ふふふ、こんな事もあろうかと……。じゃじゃ〜ん!既に用意してあるんだよ!!」

 

なんで。

事前に。

この事態を。

予期してるんだよ!?

 

「おい、ネプテューヌ……。これやり過ぎじゃねーか?ボコボコなってるぞ?」

 

待てや。見えねぇから分からんけど、煮え滾ってるの!?

ねぇ、おかしいよね?俺が未だかつて泡が浮かぶほどに熱い熱湯風呂なんて見たことないよ?あの上○竜兵だってやってなかったよ?!

 

「甘いなぁ、クロちゃんは。これは水じゃないんだよ」

 

「じゃあ、なんだよ?」

 

「油」

 

釜茹でか!!!

もうバラエティじゃねぇ!!それは処刑だ!人道的にアウトってなった前時代的な殺人方法だっつーの!!!俺は石川五右衛門か!?

 

「き、鬼畜だな、お前」

 

「ふふ、私って彼氏の浮気とか許せないタイプかも」

 

え?なにそんな可愛く言ってるの?今君は人殺しを断行しようとしてるんだよ?そもそも彼氏でもなんでもないから、やらないで欲しいんだけど。

 

「よいしょっと……。……うぅ、重いぃ…」

 

担ぐな!

やめろ!やめてください!!下ろしてェェェェェエエ!

 

というか何気に体重70kgぐらいある俺を担ぐとか凄いな。まぁ、前に共闘した時に大剣を両手に持って振るってたから怪力なのは知ってた。

 

「クロちゃん、やっぱアレかな?『押すなよ!押すなよ!本当に押すなよ!』みたいな展開必要かな?」

 

「どっちでも良いけどなー。本人が動かないし、言わせられねぇだろ」

 

なぁ、そんな事言ってないでやめさせろよ!俺死ぬ!いくら俺でも釜茹では苦痛の果てに死ぬ!

 

「じゃあ、いっか」

 

冗談だよね。この煮え滾る油も、俺を投げ入れようとする大きなネプテューヌも、なにもせずニヤニヤしてるクロワールも全部嘘だよね?新手のドッキリ企画でしょ?

ほら、そろそろドッキリ成功の札を出して良い頃よ?

 

「せーーのッ!!」

 

 

 

あ、死んだわこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーすまない。昼寝してて気づかなかったよ。

 

 

 

熱湯風呂を超越した沸騰した油風呂にダイブする直前、ようやく声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な、なんとかなった……。

阿部 鏡夜の素揚げは回避されたぞ(歓喜。

 

言わずもがな、例の真っ白空間に俺はいた。タナトスめ、あと1秒遅れてたら俺はカリカリのフライになってたぞ。

 

「さてと、あのクソ神は……」

 

 

 

「うわぁ!!クロちゃん、クロちゃん!見てみて!真っ白だよ!」

 

「な、なんだよ、この不思議空間!オレたちいつの間に移動したんだ!!?」

 

 

 

 

 

 

……………。

疲れてるんだ。

そう、俺はとっても疲れてるんだ。

 

俺の後方で騒ぐバカどもは俺の疲労が見せている幻覚なんだ。

 

「おや?どうやら彼の転移に巻き込まれてしまったようだね」

 

「うぉぉおお!!?な・ん・か出た!!」

 

「お前、どっから湧いてきた?!」

 

 

 

嘘だッ!!!

 

「…………………………ッぁあ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ジーザスッ!!」

 

 

神は死んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シリアス「嘘だろ?殆ど出番のない俺の唯一の見せ場なんだぞ?!それが……、それがこんなところでェェェェエエ!」

ギャグ「悪いな、シリアス。だがこれが現実だ。求められているのは俺みたいなどうしようもないアホなんだよ」

シリアル「シリアス先輩!あとはまかせて欲しいッス!自分が精一杯頑張るッス!」

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