転生者で世界を救ったけどヒロインとか要りませんから 作:メンヘラのかけソバ
またまた、挟む番外編。
何度目だよ、いい加減にしろ!
という読者の皆様の声が聞こえる気がします。
あらすじが雑なのは勘弁して下さい。
ちょっと昔の事。
ホモは世界を救った。マジェコンヌと戦ったりして。
しかしホモがいた所為か、正史と異なり犯罪神みたいな感じに覚醒したマジェコンヌ。
疲弊しきった女神達は天界を下り、ホモが1人戦う。
それでもって、なんやかんやありました。
簡単に説明するとですね、
戦闘開始→ホモ劣勢→マジェコンヌがホモの力を奪う→容量オーバーでマジェコンヌも力を失くす→人間レベルでの争い(今ここ
「うぉぉおおおお!!」
拳を振るう。しかし平常と比べるのも烏滸がましい、威力、スピードに欠けたものだ。まるで世界の時間がゆっくり流れているのではないかと錯覚するほどに俺の身体は動かない。
頭では完璧に普段通りなんだ。だが何時もと同じ要領で動かせば身体はついてこない。
そんな差異のおかげか、先ほどから相手に拳が当たってもまるで効いていない。当然だ、体重も碌に載せる事が出来ていないのだから。
唯一の救いは相手も同じように今は単なる人間と大差ない事だろうか。
「人間如きが、図に乗るナァァァアア」
ほんの十数分前までは超常と言えるほどの速度で振るわれていた槍は、今では常人でも視認出来る程度にまでその速度を落としている。比例して威力も現実的なレベルに下がってはいるが、何の変哲もなくなった俺の身体にとって、まともに受ければ致命傷は避けられない。
しかも俺は避けるという動作が苦手なんだ。今までは自他共に認める鋼の肉体という俺の最強の武器にして盾があった。多少の攻撃なんて避ける必要もなく、その攻撃ごと真正面から叩き潰すという脳筋としか言えない戦闘スタイルを取っていたのが理由だ。
槍が振り下ろされ、空気を斬る独特な音が後から追ってくる。脆弱な身体では簡単に肉が引き千切られるだろう。
程の良い躱し方なんて考えてる暇はない。非常にオーバーな動作で転がるように横へ。しかし、あまりにも無駄の多い回避行動は大きな隙となる。俺も例外ではなく、マジェコンヌに追撃をさせるには十分な隙だった。
幾ら弱体化しようと使い慣れた槍だからなのだろう。流れるような動作で突きが放たれた。
刹那に悟る。
これは躱せない。
かなりの無茶な態勢で跳んだのもあり、受け身が取ることが出来なかった。完全に五体を地に投げ出した様なものだ。立て直しても間に合わない。
どうにかして防がねば。
腕を交差させて盾代わりにするか?いや、それでは今後の攻撃手段のそれなりが失われる。それに腕を貫通する可能性もあるのだ。
加速する思考はあらゆる想定を行う。たとえ身体が力を失おうと養われた判断力までもは消えない。クリアな思考で合理的に判断しなければならない。
気づけば、直ぐそこに穂先は迫っていた。
だが、問題はない。こちらもようやくやる事は決まった所だ。丁度良いタイミングとも言える。
失敗すれば酷い事になるのは火を見るよりも明らかだが、最小の被害で抑えるにはこれしかない。
突き刺さろうとする刹那に動く。
敢えて受け止めはしない。
槍が胸を穿つ前に手を添える。後は明後日の方向へと逸せば良い。
信じろ、失敗はしない。落ち着きさえ保てば可能だ。
来る。
イメージ通りに槍を受け止めず、側面を叩く。
しかし、現実はそう上手くはいかない。僅かに穂先が腕を掠め、鮮血が迸った。鋭い痛みに力が緩みそうになるが堪える。
「ーーッ‼︎オラァァァァァアアアッ!!」
そう簡単に逸らせるものではないのは分かっていたが、予想以上だ。……かなり重い。だがその甲斐もあり、胸を狙う軌道からは逸らすことが出来た。
次の瞬間、文字通り突き刺す様な痛みが左肩を襲った。
「ァ、アがぐェ゛」
あまりの衝撃に神経が焼き切れるのではないかと疑うほどの激痛。
完全に逸らす事が出来なかった槍が鋭く穴を穿ったのだ。まるで噴水の様に血が噴き出し、宙を舞う。
「ーーーーッッ!!!!」
そうして、脇腹を裂くように二撃、袈裟斬りに三撃目が続いた。
声にならない絶叫。白黒に明滅する視界。
俺の限界を一瞬で突破した。
何だこれは?知らない。こんな痛みは、苦しみは知らない。前世で喧嘩紛いの行いを数多く行おうとこんな事はなかった。無論、転生した後も経験した事はない。
今の俺はあまりにも弱々しい人間なのだ。
止めどなく溢れ出す血。
あらゆる不安が鎌首をもたげ、俺を睨みつけていた。
楽観視していたのは認める。転生特典の身体がなくても自分は戦えると何処か驕りのようなものがあった。今までの経験が生きるはずだと。だが、いざ蓋を開けてみればこの様だ。何の事はない、俺は無力な人でしかなかった。
「……うェ…ァグ……」
「苦しそうだな、阿部 鏡夜。所詮は力を失えば単なる人間か。一体、女神達の誰がお前が無様に地を這う姿を想像しただろうな?」
返答なんて出来るはずもない。
舌は回る。喉だって潰れてなんかいない。まして肺に損傷があるわけではない。けれど言葉にはならない。
「安心しろ。私に弱者を痛ぶる趣味はない。さっさと楽にしてやろう」
この苦しみから解放される。
それはきっと至上の選択なのかもしれない。
そうだ。
後の事なんてネプテューヌ達に押し付ければ良いじゃないか。元々俺はこんな化け物と戦う理由なんかなかった。なのに奴らに巻き込まれてこんな事に。
ここで死ぬのなんて嫌だが、痛くて苦しいのはもっと嫌だ。
「遺言くらいは聞いてやろう。言ってみろ。もっとも喋るよりも泣き噦るのに忙しいようだがな」
泣いて何が悪い。
痛くて、辛くて、苦しくて、情けなくて、怖くて、恐くて、寂しくて、悲しくて泣くのが悪いか。
もう全身が動かないくらいに痛いし、辛いし、苦しい。転生特典がなきゃ無能な自分が情けない。死ぬのが怖いし、目の前のマジェコンヌが恐い。たった1人で戦うのは寂しくて、死に際の今を誰にも知られていないのが悲しい。
「……ぉれは、……」
「俺は嫌、だったんだ。あのアホ共の所為で死にそうだ」
「ふむ、それだけか?」
「自分勝手に人を巻き込みやがって、俺は世界がどうなろうと知った事じゃねぇんだよ。無気力に、無意味に、少しくらいだけ楽しく生きようとしたんだよ」
俺の人生、めちゃくちゃだ。連中が全て悪い。女神どころか奴らは悪魔だ。
俺が死ぬのは全部あいつらの所為だ。恨んでやる。呪ってやる。
「そうか、聞き届けたぞ。無駄に苦しむ必要もない、今すぐ楽にしてやる」
槍が再びを俺を向く。またしても必殺の為か、胸に穂先が当てられた。
マジェコンヌが腕を引く。狙い澄ました刺突が幕引きとなるのだろう。
「さらばだ、名の知られぬ英雄よ」
皮を破り、筋肉を引き裂き、心の臓を貫く一撃が放たれた。
戦いの初めに「神よ、照覧あれ」などよく言うが、実際に神が見ている事もあるのかもしれない。
ーーまだ、君には死なれては困るなーー
白亜の彼方よりその声は響く。
ーー神とて、過ちは償いたいものなのだーー
ーーここで死なれては償う機会がなくなるじゃないかーー
ーー故に………ーー
光が滲むように溢れ出す。
ーー君の相手は曲がりなりにも神格だーー
ーー僕からのお詫びの思いも兼ねて、少しだけ強化した力をもう一度君にあげようーー
ーー神殺しーー
ーー為せるか、どうかは君次第だーー
さらに勢いを増し、極光が溢れる。
ーー戦う意思があるのなら、だけれどねーー
おかしい。
なんの痛みもない。
アレか?痛みすら与えず云々ってやつ?それにしては死んだ感ないんだけど。こちとら一回死んでるからね。お兄さん、そういうの分かるんだから。
取り敢えず、痛そうなので反射的に瞑った目を開く。
すると案の定胸の辺りに槍が見える。
しかし刺さってはいなかった。
「なんだこれ?」
「それは私のセリフだ」
本だ。
B5サイズくらいの薄っぺらい本が俺の胸と穂先の間に存在していた。どう考えても刺突を防げるような厚さじゃない。+αこの本どっから来た?ドラマあるある、御守りが胸ポケットに(ryかな?
「おい、貴様。一体どこからそんなもの出した?」
「いや、俺に聞かれても」
分からんよ。気づいたらそこにあったのさ。
手に取ってみる。
すると表紙には、
『神様転生特典取り扱い説明書』
ゑ?
「このふざけた題はなんなんだ?」
「だから、俺に聞かれても」
え?これ、ヤバくない?俺が転生者だってバレるんじゃなかろうか。転生者ってバレた奴は大概、踏み台かアンチ逝きだぞ。
鏡ちゃん知ってるよ。俺の嫁だなんだって叫ぶチート転生者に挽肉にされるってこと(震え声。
待て待て、stayだ。一旦冷静になろう。
……………。
オワタ \(^o^)/
冷静に考えても変わらんわ(涙。
「開いてみたらどうだ?」
あ、中身知りたいんすね。
ペラリ…
えぇとなになに、
『ハロー、無惨におっ死んじまった愚か者さん!この本は慈悲深い神様が低脳なお前らにも分かるように懇切丁寧に特典の説明をしてくれるものですよ!』
パタン
「まだ私が読んでないのに閉じるな」
文句を垂れるマジェコンヌの顔を無感動に見据えてみる。
なんでだろうね。もう一気になんかさ、アレだよ、アレ。
あのクソ神マジで殺すぞ!?
もう一度開いてみる。
だってマジェさんが開けって。
『しかし、自分で要求した特典なんだから、説明とか必要ないと私は思うんですけどねー。まぁ、アフターサービスがしっかりしてないと良い顔されない世の中ですし、仕方ないですね。』
お前らの業界のことなんか知らんがな。
『貴方に与えられた特典は鍛えればその分強くなる身体ですから、説明とかマジで入りませんね。このマニュアル作った私の労力を返せよ。』
なんでお前さっきからちょくちょく上からなの?イラつくんだけど。
『はい、その次。一応、100年間の無料保障付きなんでよろしくです。』
なにそれ?身体に保障とかついてんの?買った時のレシートとかないんだけど(白目。
『あ、でも、取り敢えず壊れたら送ってこないで下さい。その前にP.11の【故障かな?と思ったら】を読んで自分で対処しろ』
俺の身体は電化製品と変わらなかった件について。
ペラペラとページを進めて、例の11ページを開く。
【故障かな?と思ったら】
『・諦めろ』
地面に叩きつけた。
は?え?この【故障かな?と思ったら】の意味!?諦めろ?これじゃあ、誰だってサポートセンターに送りつけるに決まってるだろ!!
『問題が解決しなかった場合は【よくあるご質問】をご確認の上、お問い合わせ下さい』
【よくあるご質問】
『Q.特典が敵に奪われました』
まさかのドンピシャ!!
『A.気合で取り返して下さい』
そしてまさかの根性論!!?
『あーあー、さっきから煩いですよ、貴方』
誰の所為だ!?
『そういえば貴方には特例で神様から新しい転生特典が届いてます。メッセージボックスからお受け取り下さい』
ソシャゲか何かかな!?
メッセージボックス何処だよ!
『こっちで勝手にインストールしますね』
今更だけど、どうして俺は紙と会話してんの?!
『そりゃあ、
突如、身体に電流が走った。
次いで芯から燃え上がる様に熱が生まれる。まるで身の内を焼かれているようだ。
次いで、身体と精神が乖離するような謎の違和感。
意識だけが別の空間に存在しているようだが、身体の感覚もある。
『よくお分かりで。ここは特異空間Bとでも仮称してください』
先ほどの怪我の痛みとはまたベクトルが違うものだ。痛くはないが、気持ちが悪い。全身の細胞が潰され、新しく作られているかの様な。
『あながち間違いじゃないですよ、貴方の身体は現在再構成中です』
打ち直される刀の気分だよ。
『この時間が無駄なんで新しい身体の説明をしときますね。前回のは上限がない身体でしたが、そもそも人の限界を遥かに超越した辺りで鍛える事が出来なくなったでしょう?』
ああ、大木担いでトレーニングでもしなきゃ、全く負荷にならなかった。
『今回はその辺りを調整しまして、
結構、シビアじゃないそれ?
お兄さんそんな危険な身体欲しくない(小並感。
『今だけ初回キャンペーンで全て捨てずに、5割で済みますよ。どうします?』
半分でいいのか。どれくらいの上昇値があるのかによらないか?
『捨てるものにもよりますが、簡単に説明すると、もやしが大根になるくらいの上昇値があります』
分かりづらッ!?
『なら、レベル1から10くらいに上がります』
これまた微妙な……。
『レベルの上限は100です。カンストしたら腕を薙ぐだけで次元を消すくらいは出来るんじゃないですかね?』
なにそれ、コワイ(震え声。
『で、どうします?参考までに言っておくと貴方が新たな特典のロードを完了すると同時にマザコングでしたか?彼女も力を取り戻すので、一方的にピチュンされます』
そんなに強いのか、あの人?
『本来なら今までの貴方でも対処出来た程度だそうですが、色々な事象が複雑に絡み合った結果です』
えー。
もう捨てるしかないじゃん。
『何を捨てます?視力?聴力?それとも嗅覚ですか?触覚や第六感みたいなのでも良いですよ』
第六感とか俺に備わってるのか。
『平たく言えば勘の事ですし』
『他にも心や、記憶でも構いません。勿論、命でもね』
おっかないわ。
死にたくないから戦うのに命を捧げるって、お前。
『男には命に代えても成さなきゃならねぇ事があるッ!!みたいなのはないんですか?』
ないね(キリ。
『早く決めろよ、玉無し野郎』
いきなり扱いが雑に!?
男らしくないからって玉無しはねぇよ!
『半額キャンペーンですが、レベルの上昇も半分なのでお気をつけ下さい』
それあんまし意味ないやん。
うーん。
なら防御力を半分にしてレベルを上げてくれよ。痛いのは嫌だが、攻撃を躱せるようになる為にそっちの方が良いだろう。それに五感とか失うなんて怖すぎる。攻撃力はちょっと無理。
『かしこまりー』
なにも変わった気がしないのは気の所為だよな。
『そもそも今の貴方の身体はあってないようなものですからね。再構成後に分かるようになります。ちなみに5レベくらい上がって現在10レベになりました』
それで何が出来る?
『世界を救う事ですかね』
英雄ってワケだ。
『それは貴方が決める事ではなく、救われた世界が決める事です。英雄なんて見方を変えれば魔王と変わりませんからね』
手厳しいな。
『とりわけ貴方は世界を救おうなんて思ってないでしょう?貴方は大切なお仲間を守る為なら世界を相手にするタイプですから、魔王の方がお似合いかもしれませんよ?今回は魔王の気まぐれだったってね』
お前何気にヒドイ事を言ってるからね。
『貴方の防御力というか、耐久値が半分になったのでこれからは対物ライフルで穴が空くのでご留意下さい。ご都合主義で飛来した弾を殴りつけた場合は弾けますよ』
わぁ、ご都合主義ばんざーい(白目。
『あと5秒ほどでインストールが完了するのでお待ちください』
ごー、よん、さん、にー。
『それでは頑張って目の前のラスボスを倒してきて下さい』
今度は逆。
離れていた精神と身体が一致するような不思議な感覚。
そうして理解した。
身体に力が戻っている。そして強くなっている。
防御面では弱くなったらしいが。
拳を握る。開く。
ゆっくりと立ち上がり、ストレッチとはいかないが筋肉を伸ばし、関節を曲げる。
「マジェコンヌ、今の俺は絶好調だ。お前は?」
「今の一瞬、貴様に違和感があった。何があったかは知らんが力を取り戻したな?」
マジかよ。気づいたんだ。紙様曰く、特異空間Bでの出来事らしいんだが?
「私の力も戻ってきたようだ」
「そりゃ良かった。サービスかは知らないが傷も消えちまった。こっからが本番だぜ?」
「ふん。それはこちらも同じだ。決着をつけよう」
言葉を紡いだ後に、槍を一振りし、マジェコンヌは構えた。
「勝つのは俺だ。あのアホどもに今までの恨み辛みを吐き出さなきゃならねぇんでな」
空手の型をアレンジしたようないつも通りの構え。不恰好な独流の戦闘スタイル。プロレスをやってたおかげで色々な格闘技には精通してた。そんでもって使いやすいものを集めた俺だけの戦い方。
「最期の言葉にしていたからな、さぞぶちまけたいのだろう?安心しろ、貴様がここで死んでも私が伝えてやろう」
「余計な御世話だな。ガキの頃から言いたい事があるなら自分で言えってママに言われてきたんだぜ?」
この言葉を最後にお互い口を噤む。
風が頬を撫でる。暖かな陽を浴び、肺いっぱいに空気を吸い込んだ。
敵を見据える。
俺の目的はマジェコンヌを倒すことじゃなくて救うこと。闇に飲まれてしまった彼女を助ける事がイストワールの望みで、ネプテューヌがしようとしたこと。
痛いのは嫌だけど泥試合になっても、引きずり出してやる。かつては暴虐の女神に向かった英雄の1人だろ?いつまでも闇になんか負けてんな。
なんの合図があったワケではない。
2人は同時に動き出した。
拳と槍が交錯する。
ゲイムギョウ界の命運はホモに託された。
しかし当のホモに世界なんて興味はない。救おうとも思ってはいない。救いたいのはかつての英雄。守りたいのは大切な仲間とその仲間達の願い。
こんな男に命運を託さねばならない世界は間違いなく不憫だ。
突然なんの事?って思ったあなたは正しい。
この話はエンディングに大して関係ないのだから!(オイ。