転生者で世界を救ったけどヒロインとか要りませんから 作:メンヘラのかけソバ
「なぁ、お前何者だ?」
ふむ、この目の前の浮遊生物を俺は知っているぞ。
黒アゲハみたいな羽根を持っていて、本の上に乗っている手のひらサイズの妖精ちっくな存在。
「おーい、聞いてんのかよー」
イストワールに良く似ているが、色々と黒い。髪も短いし、その瞳には強い好奇心が見て取れる。
分かるぞ。今まで数多の危機に遭遇し、乗り越えた俺だから理解した。コイツはやべぇ。関わったら碌な事にならないタイプの奴だ。だから悪いが俺は全力で逃げさせてもらおうか。
「無視すんなっての!返事しねーと黒の女神にルウィーに行ってることチクるぞ」
!!?
「ああ、悪いな。少し考え事をしていたんだ」
逃げるんじゃないのかって何言ってんだよ?俺が自分に声をかけてくる人がいるのに逃げるワケないだろ(白目
「納得いかねーけど、いいか」
許してもらえたようだ(安堵。俺の生命の安全は確保されたらしい。嫌な世の中だ。ラステイション以外の土を踏む事すら、こそこそ隠れてやらないといけないなんて…。きっとノワールは今頃血眼で俺を探してるんだ(戦慄。いないと分かったら次はプラネテューヌ、その次はリーンボックスに探しに行くだろう。ルウィーに辿り着くのは大分後になるハズだ。
「質問に答えるべきか?」
「とーぜんだろ」
困ったな、俺が何者かなんて分からない。
言っちゃアレだが俺は女神と知り合いなだけの逸般人Aだし。
「何者か……、端的に言えば通りすがりのホモですが?」
「じゃあさ、お前どこから来たんだ?」
「…って聞けやゴラァ!!」
人の話を聞けよ!え?聞いといてガン無視とかなんなん?!
巫山戯るのもいい加減にしないとお兄さん怒るぞ。
「うるせー野郎だな、細けー事ばっか気にしてると禿げるぞ」
禿げるとか言うんじゃないよ!俺の親父がハゲだから俺も将来そうなる気がして不安なんだから!
「禿げねぇし!禿げないから!俺の毛根は強いからぁ!」
「必死過ぎんだろ…。あ、お前って言うのもアレだからな、キョーヤで良いよな」
今更なんで俺の名前を知ってるかなんて聞かない。俺が思っている通り、こいつがイストワールの親戚なら歴史の記録をしているハズだ。歴史の一部に当たる俺の事を知らないハズがないからな。というかノワールの事を知ってたんだから、俺を知らないワケがない。
「そういうお前はクロワールで良いのか?」
そう言うと少しだけ驚いた様な顔でこちらを見る。そして、彼女は口元を歪めた。
「なんだ、オレの事を知ってるなら話が早いな」
ええ、聞きましたともあなたの飼い主にね。お前を探す為にこちとら嫌ってほど振り回されたんだ。だけど無視する。コイツを捕まえたとしても、もう一度大きなネプテューヌに会うリスクを考えれば、そんな愚行を犯す理由もない。
「キョーヤに聞きてー事は一つだけだ」
「俺に答えられる事ならなんでもどうぞ?あ、もしかしてホモに興味あるとか?」
そんなのあるワケないけどね。
「お前、この世界の人間じゃないだろ?」
「クロワール、言ってる意味が分からねぇよ」
「おいおい、そんなに睨むなよ。顔がすっげぇこえーぞ」
そんなにも俺の顔は怖いのだろうか。別段意識はしてないが、ある程度の威圧を放っているのは分かる。
「オレは次元を移動する能力があるんだけどよ、お前はどんな次元からも感じないモノを感じる。オレでも越えられねー世界線でも越えてきたのか?」
どこまで知っている?別次元の話はおそらく本当だろう。大きなネプテューヌがこの次元にいる事がなによりの証拠だ。俺が転生者だと言う事は知らないのだろうか?単に勘ならばすごいな。
「話が突飛過ぎるな、別次元?世界線?なんだそれ」
「キョーヤは嘘が下手だな。俺の知り合いに息を吐くようにペラペラと嘘ばっかり話すヤツがいてな。そのおかげで分かるんだよ」
可哀想に知り合いに恵まれなかったのか。
「まぁ、そいつは中々におもしれーヤツなんだ。けど性格というか中身がぶっ壊れでな、笑顔で人殺しをするんだぜ?」
なんだよ、その狂人。完全にイカれ野郎じゃねぇか。薬キメたってそこまでぶっ飛べるもんじゃないだろ。
「と、話がズレたな。どうやってこのゲイムギョウ界つーう世界まで来たんだ?オレはよ、行った事もない向こう側の世界に興味があんだ」
「なぁなぁ、どんな場所なんだ?どんな奴らがいる?どんな事が起きてんだ?」
興味深々か、あんなつまらない世界に。
宗教だの人種だので下らない争いを続ける愚か者ばかりの世界だよ。己の欲を満たす為に汚い事でも平然とやってのける人間ばかりだ。
肥える事だけを覚え、口から糞を吐き出す畜生以下の人間ばかりだ。
そんな世界にお前は一体何を求めているんだ?
「おいおい、なんか言えよ。つまんねーだろ?」
つまらない……ね。俺に言わせればあの世界こそがつまらない。
このゲイムギョウ界という世界に来てようやく人間の有り様を知った気がした。確かにこの世界の人間達も女神という絶対存在に傅き、加護を受けて生活している。彼、彼女らは己らで武器を取り、尊厳と自由を勝ち取る事を忘れたのかもしれない。法や秩序に守られていたあの世界と大した違いはない。
だが彼らは温かく、優しさに満ちている。ヒドイ奴らもいる。ラステイションのアヴニールだってそうだった。けれど皆が過ちを認め、償おうとしている。果たしてあの世界の人間達にそれだけの謙虚さなんかがあったのだろうか?いや、ないだろう。少なくとも俺はそう思っている。
「クロワール、悪い事は言わない。あの世界に興味なんて持つな。あんな場所は地獄の釜の底の底。欲望にまみれた下衆達が跋扈するゴミ溜めだ」
クロワールは少し訝しむような顔をした。
「なんだよ、それ?」
俺に答える気はない。
「ああ、それと別次元から来たっていうネプテューヌがお前を探してたぞ」
踵を返す。今更、あんな世界を思い出すのも嫌なんだ。
激ブラとか超次元大戦とかFFFADFとか楽しみだなぁ。