真剣で魔王に怯えなさい!! (5/26より、更新停止)   作:volcano

10 / 35
※修学旅行から2年経っています。


9

2005年 8月14日 岐阜県-岐阜市

 

 

Side------

 

 

「遠い所から御越しいただき、ありがとうごさいます。」

「いやいや、このような盛大なパーティーにお招きいただき、感謝の極みです。」

 

 

 

岐阜市にあるとある豪邸。今日、此処ではパーティーが開かれていた。

パーティーには大勢の客人が来ており、ダンスや会話で盛り上がっていた。

 

 

 

パーティー会場の一卓で数人の男性が会話をしていた。その中に大きく肥えた体に、大きな宝石の指輪を指にはめている男性がいる。

 

彼こそ、『このパーティー』を開いたら主催者であった。

 

 

 

「今日は『御息女』も御出席されているそうで。」

「えぇ、御呼びしましょう。『帰蝶』、来なさい。」

 

 

 

「はい、お父様。」

 

 

 

 

 

 

主催者の男が手招きすると、一人の少女が前に出た。

 

その少女の『美しさ』に客人達は思わず息を飲む。

 

 

 

 

 

「(いいな帰蝶、分かっているな。)」 ヒソヒソ

「(はい。)」 ヒソヒソ

 

 

 

誰にも聞こえない小さな声で、親子は会話をすませた。

 

 

 

 

「本日はようこそ御越しくださいました。只今ご紹介にあずかりました、『斎藤帰蝶』と申します。」

 

 

 

少女は綺麗な動作で御辞儀すると、『ニッコリ』と『微笑んだ』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:斎藤帰蝶

 

 

「ハァ……」

 

 

 

パーティーの挨拶も一通り終わり、少女・『帰蝶』は自室に戻っていた。ソファーに腰をかけると、帰蝶は深い溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

実はこのパーティー、

 

『彼女の結婚相手を決めるお見合いパーティー』であった。

 

参加した客人には、帰蝶と同い年ぐらいの子息がいて、帰蝶はその中の誰かと結婚しなくてはならないのだ。

 

 

 

 

 

「(結婚…かぁ…)」

 

 

帰蝶にとって今回のパーティーは不本意なものであった。しかし、父が決めたことに逆らえない彼女は嫌でも了承するしかなかった。

 

 

 

「私の『お願い』、結局聞いてくれなかったなぁ……」

 

 

 

帰蝶は父に『一つだけ』頼んでいたことがあった。

それは『結婚相手は自分に決めさせて欲しい』というものだった。

しかし、彼女の父はそれを無視した。現に彼女が自分の部屋に戻って来ているのが証拠だ。今頃彼女の父は結婚相手を勝手に決めているのだろう。

 

 

 

 

 

 

彼女の父が、それほどまでに帰蝶を結婚させたいのには理由があった。

 

彼女の父は一代で会社を立ち上げ、財産を築いた実業家である。

 

そんな彼女の父の望みは『金持ち』になることであった。

 

会社は決して無名ではないが、一流というわけでもない。彼女の父ではこれ以上会社を大きくする事は不可能であった。

 

しかし、既に充分な財産を貯えているのに、彼女の父は『もっと金持ちになりたい』と願い考えた。

 

 

そして、彼女の父は思い至った。

 

『娘を一流企業に嫁がせよう』と。

 

そうすれば、自分の会社は援助を受けさらに大きくなれる、自分は『もっと金持ちになれる』。

 

そんな身勝手な理由で、帰蝶は結婚させられるのであった。

 

 

 

 

 

「私…『幸せ』になれるのかな……」

 

 

せめて結婚相手は選びたかった。『自分が愛した人』と結婚したかった。

 

 

 

 

 

彼女はソファーの上に置かれている『一冊の本』を手に取る。

幼い頃から読んでいる愛読書であり、彼女の『憧れ』がつまった本。

 

 

タイトルは『グリム童話』。

 

彼女は童話が好きで、特に好きな童話が『白雪姫』である。

 

 

不幸なお姫様が、『白馬の王子様』に助けられ幸せになるお話。

 

 

 

彼女はこの『白馬の王子様』に憧れていた。

 

 

『いつか自分のもとにも王子様が現れ、自分を幸せにしてくれる。』

 

 

女の子であれば、誰もが一度はする夢想を彼女はいまでもしていた。むしろ年々その思いは強くなっていった。

 

 

 

 

「(本当に、『白馬の王子様』がいるのなら……)

 

私を『此処』から連れ出して……何て、ね。」

 

 

 

 

いるはずがない。そんなこと分かっている。

でも……もし、いるのなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と陰気な顔をしているな、余程『楽しくない』事でもあったのか?」

 

 

「!?」

 

 

 

 

突然後ろから声がした。男性の声だ。

 

 

帰蝶は動揺隠しながら後ろを振り向く。

 

 

 

 

 

そこにいたのは、『とても綺麗な男の子』であった。

 

 

年は自分と同じくらいだろう。着なれていないのか、スーツは随分と着崩れている。

しかし、それが実に『様になっている』。

パーティーに出席していた客人とは違った『優雅さ』があった。

 

 

 

 

 

その美しさに、私は見とれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『白馬の王子様』に憧れていた。

 

いつか私を『此処』から連れ出してくれる『王子様』が来てくれると望んでいた。

 

 

 

けど、現実は違った。

 

私の前に現れたのは……

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。