真剣で魔王に怯えなさい!! (5/26より、更新停止) 作:volcano
2005年 8月14日 岐阜県-岐阜市
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「遠い所から御越しいただき、ありがとうごさいます。」
「いやいや、このような盛大なパーティーにお招きいただき、感謝の極みです。」
岐阜市にあるとある豪邸。今日、此処ではパーティーが開かれていた。
パーティーには大勢の客人が来ており、ダンスや会話で盛り上がっていた。
パーティー会場の一卓で数人の男性が会話をしていた。その中に大きく肥えた体に、大きな宝石の指輪を指にはめている男性がいる。
彼こそ、『このパーティー』を開いたら主催者であった。
「今日は『御息女』も御出席されているそうで。」
「えぇ、御呼びしましょう。『帰蝶』、来なさい。」
「はい、お父様。」
主催者の男が手招きすると、一人の少女が前に出た。
その少女の『美しさ』に客人達は思わず息を飲む。
「(いいな帰蝶、分かっているな。)」 ヒソヒソ
「(はい。)」 ヒソヒソ
誰にも聞こえない小さな声で、親子は会話をすませた。
「本日はようこそ御越しくださいました。只今ご紹介にあずかりました、『斎藤帰蝶』と申します。」
少女は綺麗な動作で御辞儀すると、『ニッコリ』と『微笑んだ』。
Side:斎藤帰蝶
「ハァ……」
パーティーの挨拶も一通り終わり、少女・『帰蝶』は自室に戻っていた。ソファーに腰をかけると、帰蝶は深い溜め息を吐いた。
実はこのパーティー、
『彼女の結婚相手を決めるお見合いパーティー』であった。
参加した客人には、帰蝶と同い年ぐらいの子息がいて、帰蝶はその中の誰かと結婚しなくてはならないのだ。
「(結婚…かぁ…)」
帰蝶にとって今回のパーティーは不本意なものであった。しかし、父が決めたことに逆らえない彼女は嫌でも了承するしかなかった。
「私の『お願い』、結局聞いてくれなかったなぁ……」
帰蝶は父に『一つだけ』頼んでいたことがあった。
それは『結婚相手は自分に決めさせて欲しい』というものだった。
しかし、彼女の父はそれを無視した。現に彼女が自分の部屋に戻って来ているのが証拠だ。今頃彼女の父は結婚相手を勝手に決めているのだろう。
彼女の父が、それほどまでに帰蝶を結婚させたいのには理由があった。
彼女の父は一代で会社を立ち上げ、財産を築いた実業家である。
そんな彼女の父の望みは『金持ち』になることであった。
会社は決して無名ではないが、一流というわけでもない。彼女の父ではこれ以上会社を大きくする事は不可能であった。
しかし、既に充分な財産を貯えているのに、彼女の父は『もっと金持ちになりたい』と願い考えた。
そして、彼女の父は思い至った。
『娘を一流企業に嫁がせよう』と。
そうすれば、自分の会社は援助を受けさらに大きくなれる、自分は『もっと金持ちになれる』。
そんな身勝手な理由で、帰蝶は結婚させられるのであった。
「私…『幸せ』になれるのかな……」
せめて結婚相手は選びたかった。『自分が愛した人』と結婚したかった。
彼女はソファーの上に置かれている『一冊の本』を手に取る。
幼い頃から読んでいる愛読書であり、彼女の『憧れ』がつまった本。
タイトルは『グリム童話』。
彼女は童話が好きで、特に好きな童話が『白雪姫』である。
不幸なお姫様が、『白馬の王子様』に助けられ幸せになるお話。
彼女はこの『白馬の王子様』に憧れていた。
『いつか自分のもとにも王子様が現れ、自分を幸せにしてくれる。』
女の子であれば、誰もが一度はする夢想を彼女はいまでもしていた。むしろ年々その思いは強くなっていった。
「(本当に、『白馬の王子様』がいるのなら……)
私を『此処』から連れ出して……何て、ね。」
いるはずがない。そんなこと分かっている。
でも……もし、いるのなら……
「随分と陰気な顔をしているな、余程『楽しくない』事でもあったのか?」
「!?」
突然後ろから声がした。男性の声だ。
帰蝶は動揺隠しながら後ろを振り向く。
そこにいたのは、『とても綺麗な男の子』であった。
年は自分と同じくらいだろう。着なれていないのか、スーツは随分と着崩れている。
しかし、それが実に『様になっている』。
パーティーに出席していた客人とは違った『優雅さ』があった。
その美しさに、私は見とれてしまった。
『白馬の王子様』に憧れていた。
いつか私を『此処』から連れ出してくれる『王子様』が来てくれると望んでいた。
けど、現実は違った。
私の前に現れたのは……