真剣で魔王に怯えなさい!! (5/26より、更新停止) 作:volcano
息を潜めてジッと待つ。
獲物にスキができた瞬間、気づかれないよう静かに そして素早く『すくい上げる』。
ポチャンッ ピチピチッ
「! やった、『獲れた』!」
「おぉ~嬢ちゃん! やっと獲れたかい、頑張ったかいがあったなぁ。ほれ、『袋』に入れてやるぜ。」
手渡された袋の中には、元気に泳ぐ『金魚』が一匹いた。その金魚を『斎藤帰蝶』は嬉しそうに見ていた。
「やっと獲れたのか? 『これ』のコツは斜めに一気に突っ込むことだ。」
ヒョイッ ポチャ
ヒョイッ ポチャ
ヒョイッ ポチャ
ヒョイッ ポチャ
ヒョイッ ポチャ
ヒョイッ ポチャ……
「……ワリぃ兄ちゃん、そろそろ『やめてくんねぇ』か? 」
「何を言う? 『破けるまで何匹獲っても良い』と言ったのはそっちだろう?」
「いや、獲りすぎだろぉおおおお!? 兄ちゃんのおわん、スゲェことになってっからぁ!」
「すげぇ、あのおにいちゃんもう30ぴきめだ!」
「もう水槽にいるのデカイ出目金だけだぞ!?」
「あ、出目金も獲った!」
「これ全部獲るんじゃねぇか?」
ギャラリーが話している内にもどんどん金魚は減っていく。そして、
「コイツで最後だ。」
ポチャンッ
最後の一匹、合計48匹もの金魚がギッシリとのったおわんを『織田信長』は持っていた。
「お上手なんですね、金魚すくい。」
「まぁな。オイ、ガキ共。この金魚はいらんからやる、好きなだけ持っていけ。」
「ほうとう!?」
「やった!」
その言葉に子供達は喜び、貰った金魚の取り合いが始まった。
「さて、次の露天に行くか 帰蝶。」
「はい、『信長さん』。」
帰蝶は自分の獲った金魚を近くの子供にあげ、信長と一緒に次の店へと向かった。
「俺の店がぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
既に雑踏に入ってしまった信長と帰蝶は、その悲鳴を聞くことはなかった。
~射的~
パンッ! パンッ!
「すご~い! またあたった!」
「あのおにいちゃん、『てっぽう』もじょうずなんだぁ!」
「フム 帰蝶、何か欲しいものでもあるか?」
「そうですね……あの腕輪とか落とせますか?」
「愚問だな。」
パンッ! ポトッ
「ほら、獲ったぞ。」
「わぁ! ありがとうございます!」
信長に獲ってもらった腕輪を手にはめて喜ぶ帰蝶。その後も、信長は次々と景品を獲っていく。
その様を見て、店長の男は焦っていた。
「(何モンだ、あの坊主! 普通射的の銃で腕輪は獲れないだろ!?)」
「次はあれにするか。」
信長は屋台に並ぶ景品の中でも、特に目立つ『ゲーム機』に銃口を向けた。
「(! だ、大丈夫だ。あれには『重し』が仕込んである。撃ち落とせるはずがない!)」
「あんな大きな物でも落とせるんですか?」
「当たり前だ。余(オレ)は『銃(コイツ)』で外したことなど一度もない。」
パンッ!
発射されたコルクの弾が、対象に当たる。信長は弾をただ当てるのではなく、弾を回転させながら中心からやや左側を狙って撃った。
ポトッ
「うわぁ、すご~い!」
「ゲームがおちた!」
「凄いですね! 本当に外したことが無いんですね。」
「あぁ。さて弾も切れたことだし……ガキ共、これ全部やるぞ。好きなのを持っていけ。」
「やったぁ~!」
「おい、ゲームぼくのだぞ!」
「おれのほうがはやかった!」
その言葉を待っていたと言わんばかりに、子供達は一斉に信長が獲った景品を取り合った。
「あらあら。」
「最近のガキは欲張りだな。次の露天に行くか。」
獲った景品をまた子供達にあげ、信長と帰蝶は次の露天へ向かった。二人は後ろで絶望している店長の男には気づかなかった。
~型ぬき~
パキッ パキッ
「よし、出来た!」
「おぉ、出来たかい。ふ~ん、『ひよこ』か。なら200円だ。」
「え? お金が貰えるんですか?」
「そうだよ、何だと思ってたの姉ちゃん?」
こんな遊びで金が得られることに帰蝶は驚いた。貰った金をどうしようかと悩んでいたら、子供が型ぬきをやりたそうにしていたので、帰蝶は子供に型を買ってあげた。
「それにしても……」
帰蝶は横にいる信長を見る。
パキッ
パキッ
パキッ
パキッ
パキッ
パキッ
パキッ
パキッ
「何でも出来るんですね、貴方は。」
「そうか? あ 、今話しかけるな。」
パキッ
パキッ
「うぉおお! 兄貴、ありゃあ!」
「間違いねぇ! 伝説の型、『八岐大蛇(ヤマタノオロチ)』だ! それをあんなスピードで、何者なんだアイツは!?」
八つの首と尾が細かく描いてある型を、信長は器用にくりぬいていく。
「よし、出来た。」
信長は手に持っていたピンを置く。信長の手には見事な『八岐大蛇(ヤマタノオロチ)』が出来ていた。
「えええええ!? 兄ちゃん、それくりぬいたのかい!?」
「あぁ。ほれ、確かこの型は『2万』だったな。早く出せ。」
信じられないといった表情で店長の爺ちゃんは、信長に金を渡した。
「思わぬ収穫だったな。帰蝶、これで何か食べるとするか。」
「なら私、焼きそばが食べたいです。」
二人は露天を出て、食べ物屋台の方へ歩いていった。
その姿は、どこから見ても若い男女のカップルにしか見えなかった。
Side:斎藤帰蝶
楽しい。心の底からそう言える。
多分、いや確実に、今まで一番楽しい時間を過ごしている。
家からほんの5分程離れただけで、こんなに景色は変わるなんて。
彼への警戒心はもう無かった。
彼と一緒にいると、とても楽しい。彼と一緒にいると、私は『幸せ』でいられる。
私は、どんどん彼に惹かれていった。
ドンッ! ドドンッ!
祭りも終盤に近づいてきた。夏の夜空を色鮮やかな花火が彩った。
「綺麗……」
帰蝶は、花火の美しさに見とれていた。毎年見ていたものと同じなのに、今日の花火は見たことがないぐらい美しかった。同じ花火でも、近くで見るだけでこんなにも違うものなのか。
「あぁ、確かに……美しい。」
帰蝶の隣にいる信長も、花火を見ながら呟いた。
「綺麗ですよね、特に大きいものは。」
「そうだな、デカければデカい程……
『散り様』が美しい。」
信長の言葉に、帰蝶は首をかしげる。
「『散り様』?」
「あぁ、そうだ。
あの花火は、たった一回夜空を彩るために散っていく。それもほんの一瞬の間しか開花せんというのに。
ただその一瞬のためだけに己が身を燃やし尽くし、後は溶けるように消え失せてゆく………
その在り方が、『美しい』。」
芸術品を鑑賞するかのように、信長は花火を見ていた。
「……花火の『散り様』が好きだなんて、『変な方』ですね貴方は。」
「……フ、フフハハハハハハハハ! そうだな! お前の言うとおり、余(オレ)は『変』なのだろうな
フハハハハハハハハハハハ!!」
帰蝶の言葉に信長は『笑う』。『楽しそうに』、『おかしそうに』。
それを見た帰蝶も、つられて笑った。
「フフフフ……『笑える』ではないか。」
「え?」
「気づいてなかったのか? 露天にいる時も、飯を食べている時も、今花火を見ている時も……お前は『笑っていた』。
どうだ、『楽しい』だろう? 外は。」
帰蝶は信長に言われて、自分の顔を触る。いつもカチカチに固くなっていた表情筋が柔らかくなっていた。
「……はい、とても『楽しい』です。」
笑いながら、帰蝶は信長に返事をした。
次回、作者の友人が勝手に決めた
『真剣で魔王に怯えなさい!!』人気No.1キャラが登場します。
そして、ついに信長の『謎』が明らかに!