真剣で魔王に怯えなさい!! (5/26より、更新停止)   作:volcano

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2008年 3月16日 愛知県-名古屋市-私立高校

 

 

 

冬の寒さも終わりを迎えた早春の季節。名古屋市にある私立高校の屋上で、織田信長はカップ酒を飲みながら夕陽を見ていた。

 

 

 

「……暇だ、やはり『コイツら』では歯ごたえがない。」

 

 

そう愚痴る信長の後ろには、他校の制服を着た生徒が数人倒れていた。

 

 

 

「此処にいたんですか、信長さん。」

 

 

屋上の入口から自分を呼ぶ声が聞こえ、信長は振り返った。そこには、『織田帰蝶』が少し怒った顔をして立っていた。

 

 

「探しましたよ。放課後、教室に来てくださいって言ったじゃないですか。」

「そうだったか? 忘れていた。」

 

 

ハァっと溜め息を吐きながら、帰蝶は信長に近づいていく。途中、数人の生徒達が倒れているのを帰蝶は見た。

 

 

 

「……『また』喧嘩したのですか?」

「今回は余(オレ)からしかけとらんぞ、コイツらが勝手に来ただけだ。」

「でも、喧嘩したのでしょう?」

 

 

帰蝶は信長を目をつり上げて見る。彼女は信長の『嗜好』を知っているが、意味のない暴力をあまりしてほしくなかった。

 

 

 

「……それで、何故余(オレ)を探していたのだ?」

「また聞いてなかったのですか? これから教室に行くんですよ。」

 

「何故だ?」

「『皆』に頼まれたんです。貴方を連れてくるよう…」

 

 

「……まぁいい、暇を持て余していたところだ。」

 

「それは良かったです。でもその前に…」

 

 

 

バシッ

 

 

 

「お酒を飲んでいいのは二十歳からです。これは没収しますよ。」

「…『カタイ』な、お前は。」

 

 

文句を言いながらも、信長は帰蝶と共に屋上を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『斎藤帰蝶』が織田家に来て、『織田帰蝶』になってから三年が過ぎた。

 

信長と帰蝶は近所の私立高校に入学していた。そこは地元でも有名な『不良校』で、悪い噂が絶えなかった。

しかし、信長は「そっちの方が面白い」と言い、帰蝶と共に入学した。

 

入学当初、不良達は信長の高慢な態度が気にくわず、集団で信長に襲いかかった。

 

結果は信長の圧勝。その後も不良達は信長を襲ったが結果は同じ。いつしか信長は校内全ての不良を倒し、校内トップにたった。

 

その後も「暇潰し」にと他校の不良を制圧して、今では不良達の間で『織田信長』の名を知らない者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、急いでください。皆さん待っているんですよ?」

「『あの馬鹿共』…… いったい何だというのだ?」

 

 

帰蝶が向かった先は、信長と帰蝶の教室だった。中には誰かいるらしく、灯りがついている。

 

 

「さぁ、開けてください。」

 

扉を開けるよう催促する帰蝶。信長は教室の扉を開けた。すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「信長さん!! 今までお世話になりましたぁ!!」」」

 

 

 

「……ハ?」

 

 

 

そこには、信長のクラスメイトであり『舎弟』でもある不良達がいた。見ると全員涙を流していて、教室は折り紙や垂れ幕で彩られていた。

 

 

 

 

 

「信長さん! 『転校』するって本当ですかぁ!?」

「自分ッ! 寂しいっす!! クゥッ!」

「信長さん! 俺達、アナタに教わった事、忘れませんッ!!」

 

 

 

男達の涙と鼻水でグシャグシャになった顔を見て、信長はドン引きしていた。

 

 

 

「……帰蝶、何だこれは?」

 

 

「分かりませんか?

 

 

 

 

『お別れ会』ですよ、私達の。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信長と帰蝶の『転校』が決まったのは一ヶ月前だ。

 

信長の噂を聞いた『とある学園』の学長が、是非とも信長に来てほしいと頼んできたのだ。そこは全国でも珍しい『武術』を取り入れた学校で、信長も興味をもった。そして、信長が行くならと帰蝶も転校することになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「『姉さん』まで行っちまうんですね!? クゥッ、ウチの学校の『華』がなくなっちまうぜ!」

「しかたねぇよ、『姉さん』は信長さんの『嫁さん』なんだ。一緒に行くのは当然だ!」

「でも、でもよぉおおおおおおお!!」

 

「信長さん! 今日は楽しんでってください! 俺達、精一杯ガンバリます!!」

「一番、後藤! 『翼をください』を歌います!」

 

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」」」

 

 

 

「……『相変わらず』何なのだ、コイツらは?」

「皆さん寂しいんですよ、私達がいなくなるのが。」

 

 

ここだけの話、信長は彼等が苦手だった。

『魔王』と恐れられてきた信長は、怯えられたり怖がられたりするのは慣れているが、彼等のように『慕われる』のは経験したことがなかった。

そのため、信長は彼等のテンションについていけないのだ。

 

 

 

 

「暇だったのでしょう? なら、『こういうのも』たまには良いのでは?」

「……そうだな、『たまには』、な。」

 

 

 

そう言いながら、信長は用意されていたジュースを紙コップに注ぎ、口に運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「こぅのぉ、大ぉぉ空ああにぃぃい! つぅばぁっすぁあを、ひろぉおおげっ! とぅおんでぇ! ゆぅきぃたぁぁいいい、よぉおおおおおおおおお!!」

 

 

「喧しい。」

 

 

 

バキッ

 

 

「ブベはぁ! 」

 

 

 

 

その後も信長と帰蝶の『お別れ会』は夜まで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2008年 4月9日

 

 

 

 

プオオォォォォォン……

 

 

 

信長と帰蝶は新幹線に乗り、転校先に向かっていた。

 

 

「どんな所何でしようね。『武術』を取り入れた学校って。」

「さぁな、『武器』の所持も許可しているところを見ると、かなり『入れ込んでいる』のだろうな。」

 

 

 

信長は転校先のパンフレットを見ていた。

全国でも珍しい『武術』を取り入れた学校、当然そこに通うのは『武士』を名乗る者達ばかりだ。

さらに嬉しいことに、そこには『決闘』というシステムがあった。許可がおりれば合法的に闘うことが出来るシステムに信長は口角をつり上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『武士道』を志す者達が集まる学園に

 

『破壊』を嗜好とする『魔王』が現れた時

 

『彼等』の運命は大きく変わる。

 

 

そして、『魔王』自身の運命も…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何処まで余(オレ)の心を踊らせてくれるかな……『天神館』とやら。」

 

 

 




どうもvolcanoです。
ここまで『真剣で魔王に怯えなさい!!』をご覧下さってありがとうございます。

さて、いよいよ次回から原作キャラが登場します。信長と出会い、原作とは違った道を歩くことになるキャラ達にご期待ください。


※まだ次回のネームが出来上がっていないので、暫くは本編は投稿出来ません。その間読者の皆様を退屈させないよう『キャラクター設定』等を掲載したいと思います。

それでは、また。


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