真剣で魔王に怯えなさい!! (5/26より、更新停止)   作:volcano

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ゴメンナサイ…本編の最新話ではありません…

なんか……息抜きしたかったんです。


~番外編~ 第27回天神館大体育祭

10月10日

 

赤黄に葉っぱが染まった季節。秋真っ盛りのこの時季。日本にはいろんな『秋』がある。

 

食欲の秋、読書の秋、芸術の秋、そして……

 

 

スポーツの秋。

 

 

「……というわけで、これより第27回天神館大体育祭を開催する!」

 

 

天神館館長・鍋島正の開催宣言が雲一つ無い青空に木霊する。グラウンドに集まった総勢600名を超える生徒達は喝采と拍手で返事をする。

 

「生徒全員もう知っていると思うが、改めて大会の説明をする! 赤組、白組、青組、黄組の全学年混合の4チームに別れ各種目ごとに対戦してもらう! 最終的に最も成績の良かったチームを優勝とする! なお、優勝チームには褒美として『学食一ヶ月無料券』をチーム全員に与える!!」

 

「「「ウォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」

 

 

生徒達は有り余る士気を鼓舞させた。

 

Side:織田信長

 

「フフフ…なんとまぁ、暑苦しい連中だな。」

「嬉しそうですね、信長さん。」

 

「嬉しいさ。余(オレ)は今高揚している。久しく面白い余興が無かったからな…フフフ……」

「(うわぁ……全然ときめかない笑顔…)」

 

 

任侠映画に出てくるヤクザの様な笑みを浮かべている信長を見て、帰蝶は弱冠顔をしかめた。

 

 

「ヤッホー、帰蝶ちゃん! 一緒にガンバ…って……うわぁ…スッゴい悪そうな笑顔しているね、彼。」

「燕さん。えぇ、頑張りましょう。」

 

「うん……ねぇ、旦那さん大丈夫? もしかして体育祭メチャクチャにしようとか企んでいるんじゃ……」

「フフフ、大丈夫ですよ。あの人『お祭り』の時は大人しいですから。」

 

「そうなの?」

「えぇ。なんでも「祭りは祭りの規則にそってこそ楽しめる」との事で……ですから今日は大丈夫ですよ。」

 

 

 

Side:西方十勇士

 

 

「ムゥ…まさか十勇士が綺麗に別れるとは。」

「だが手加減は無用、お互い全力を尽くし競いあおう。」

 

「……なんでお前と一緒なんだよ…」

「それは私の台詞だ。私の足を引っ張るなよ。」

 

「まぁ、何処のチームにも十勇士がいるんや。食券ゲットは間違いなしや。」

「そうだな……ところで…」

 

 

「織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組織田信長は赤組……」

 

 

「……闘る気満々じゃねぇか…」

「うまい具合に別チームに別れたからな。昨日からこの調子だ。」

「石田さん! 共に頑張りましょう!」

 

「おう! 赤組には絶対負けん!」

 

 

 

<組分け>

・赤組……織田信長、織田帰蝶、松永燕、尼子晴、宇喜多秀美

・白組……石田三郎、島右近、大友焔

・青組……毛利元親、龍造寺隆正

・黄組……長曽我部宗男、大村ヨシツグ、鉢屋壱助

 

 

 

 

 

『さぁ! いよいよ始まります、第27回天神館大体育祭! 実況は天神館館長の鍋島正館長と私』

『鍋島だ。全員気合い入れて頑張れよ。』

 

『ハイ! どうやら私の名前は出す必要がないようなので省かせていただきます! さぁ! 早速第一種目にいきたいと思います! 最初の種目は『借り物競走』です! 』

 

 

実況の声とともに係員がグラウンドで準備を始めた。

 

 

『ルールの説明をします。参加する生徒は、二人一組で係員が設置した用紙に書かれた人物や物を誰よりも早くゴールまで持ってきてください。さらに、今回の借り物競走はただの借り物競走ではありません! 途中に様々な障害物が設置されてありますので、参加する生徒はそれらを乗り越えてゴールまで来てください!』

 

 

「まさかいきなり十勇士同士で対決とはな。」

「手加減しねぇぜ…毛利、龍造寺!」

 

「フン…結果は決まっている。この勝負は我々が勝ちを取らせてもらう。」

「俺達の理性的なコンビネーションを見せてやるよ。」

 

 

『借り物競走』の競技場で長曽我部宗男、大村ヨシツグ、毛利元親、龍造寺隆正は睨み合っていた。

 

 

「それでは、位置について! よーい……」 パンッ!

 

 

審判の合図とともに生徒達は一斉に駆け出した。そして…

 

 

 

ズドンッ!

 

穴に落ちた。

 

 

「な、何じゃこりゃあああああああああああああああ!?」

「落とし穴!? 何故こんな場所に!?」

 

 

長曽我部と大村ほか数名の参加生徒は、スタートライン直後の位置で落とし穴に落ちた。

 

青組のレーンにいた二人を除いて。

 

 

「フハハハハ! 動けまい! これぞ華麗なる私の完璧な作戦!」

「昨日の夜に掘っておいたんだよ! アバヨ、間抜け共!」

 

 

『これは意外な展開だぁああああ! 毛利・龍造寺ペア、他の参加生徒を落とし穴に引っかけ独走だぁあああ! しかし、この競技には様々な障害物が設置してあります! 二人は切り抜ける事が出来るのでしょうか!?』

 

 

毛利と龍造寺が走るレーンの先には竹槍や鉄球等の障害物が夥しく設置されていた。

 

 

「ハッ! 『この程度』の障害物、我々にはハードルを飛び越えることに等しい!」

「これでも西方十勇士の一員だ! 舐めるなよぉおお!」

 

 

二人は眼前に迫る障害物を次々とかわし、借り物リストがある場所までたどり着く。

 

 

「よし! これで勝ちだ!」

「何が来ようと、俺達に借りられ無い物はないぜ!」

 

 

二人はバラバラに置かれた借り物リストの一つを手に取り、何が書いてあるか確かめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『織田信長(手を繋いで)』

 

 

 

「…………」

「…………」

 

「………いけよ…」

「は?」

 

「お前行けよ……譲ってやるから……」

「いや私は……遠慮しておく……」

 

「遠慮すんなよ。お前、やりたがってたじゃん。行けよ。」

「いや私さっきの障害物の所で足首を挫いてな、お前が行け。」

 

「すまん、俺も障害物の所で鉄球に背骨強打されてな。お前行けよ。」

「いやいやすまん、実は私障害物の所で竹槍に刺されてな。お前が行け。」

 

「いや嘘つけ! 血ぃ出てねぇじゃん!? つぅかお前竹槍なんて触れてもねぇだろうが!」

「それならお前も鉄球かわしていただろう!? 」

 

「うるせぇ! 先に嘘ついたのお前だろ! お前が行け!」

「ふざけるな、お前が行け! 『あいつ』のところになんぞ行きたくない!」

 

「え? 何? お前ビビってんの? 恐いの? 漏れそうなの?」

「恐くなどない! ただ嫌だから行きたくないだけだ! お前が行け!」

 

「ビビってんじゃねぇか! 俺だって行きたくねぇよ! 連れて行く代償にまた頭丸刈りにされたらどうするんだよ!? お前が行け!」

「ふざけるな! 丸刈りにされたくないのは私も同じだ! やっと生え揃ったというのに! お前が行け!」

 

「お前が行け!」

「お前が行け!」

 

「「お前が……」」

 

 

 

 

 

「「ウオリャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」

 

「「ぶべぇラァ!?」」

 

 

バコォオオオオンッ!

 

ヒュルルルルルルルルル……ズドォシャァアアア!!

 

 

 

『おぉ~~~と! 落とし穴にはまっていた長曽我部・大村ペアが脱出して借り物である荷台を引いて毛利・龍造寺ペアを突飛ばし逆転ゴールだぁあああああああ!!』

『解説細けぇな。』

 

 

「ハァ、ハァ……やったぜ。逆転だ。」

「あぁ……ところで、さっき何かぶつからなかったか?」

「あぁ? いや分かんねぇ、ガムシャラに荷台引っ張ってたからさぁ。」

 

「…………」 ピクピクっ…

「…………」 ピクピクっ…

 

 

 

 

 

その後も競技は続き、第27回天神館大体育祭は凄まじいものとなった。天神館特有の独特な競技が生徒達に襲いかかり、勇猛な生徒達はそれに向かい一心不乱に突き進む。

 

その様子を織田信長は……

 

 

 

 

 

帰蝶が作った弁当を食べながら酒を飲み、観戦していた。

 

 

「ハハハ! 実に愉快。これ程の余興は久しぶりだ。」

 

「……ねぇ、帰蝶ちゃん。彼、競技出ないの?」

「さぁ……信長さん。競技には参加されないのですか?」

 

「何故余(オレ)が参加せねばならん。見世物とは見て楽しむもの…それに余(オレ)が参加する程の余興ではないしな。」

「そう、ですか…(一緒に二人三脚出たかったな…)」

 

 

体育祭は順調に進んでいき、4チーム接戦の状態で最終競技に入った。

 

 

『さぁ~~! 第27回天神館大体育祭! 残る競技も後一つとなりました! 最後の競技は『レース』です! 参加生徒は競技が開始する前にクジを引いてもらいます。そのクジに書かれた乗り物に乗って、天神館の外周を一周してもらいます。途中、コース上には様々な障害物が設置されてあり、クジで引いた乗り物でレースの進行が有利になったり不利になったりします。』

『この競技は高得点が得られる競技だ。このレースに勝ったチームが優勝だな。』

 

 

「「「ウォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」

 

 

優勝が決まる一戦に生徒達の士気は再び上昇した。

 

 

「……ほぅ、面白い。ゆくぞ帰蝶。」

「え? 行くって何処に?」

 

 

信長は帰蝶の手を引っ張り、競技が行われるコースまで行った。

 

 

「よし、赤組の優勝がかかっているんだ! 絶対勝つぞ!」

「おう! この日の為に、ずっと練習してきて……」

 

「貴様等……」

 

「ん? 誰……て、織田信長ぁああ!?」

「ななな何の用だ!? 」

 

 

 

「参加権利を余(オレ)に渡すか、今此処で地に還るか、選択肢は二つだ。」

 

 

 

 

 

『さぁさぁさぁさぁさぁ! お待たせいたしました! これより大体育祭最終種目『レース』を始めたいと思います! 参加する生徒をご紹介しましょう! まずは青組、毛利元親・龍造寺隆正ペア!』

 

「次こそは華麗に勝利してみせる! 」

「おい毛利、あんまりそういうの言わないほうが良い。フラグが立ちそうだ。」

 

『そして黄組、名も無きモブ!』

 

「いやちゃんと紹介しろぉおおお!」

「モブキャラだからって手抜きすぎだろぉおおお!?」

 

『さぁ続いては……』

 

「「無視すんなぁああああ!!」」

 

 

『続いて白組、石田三郎・大友焔ペア!』

 

「いくぞ大友! 必ずや白組に勝利をもたらす!」

「うむ! 共に頑張ろう!」

 

『そして赤組、モブキャラ2……おや、ちょっと待ってください? これは……!』

 

 

解説のアナウンサーの言葉が途切れたことに生徒達は不思議に思った。そして赤組のコースに本来出場する筈の無い二人がやって来た。

 

 

『……選手の交代です! 赤組の出場選手が「謎の腹痛」を起こした為、欠場しました! そして、変わりに出場することになったのは……天神館・大将『織田信長』だぁあああああああ!!』

 

 

全生徒が目を向ける。そこには腕を組み余裕の笑みを浮かべた織田信長と織田帰蝶がいた。

 

 

「さてと……遊戯の時間だ。」

「(また無茶な事して……でも、一緒に競技が出来て良かった…)」

 

「! 織田信長ぁああ! 大友! 赤組には絶対負けんぞ! いや、赤組は絶対打ち倒すぞ!」

「お、おう……(熱い、石田が燃えている…)」

 

「はぁああああ!? 出るの!? あいつ出るの!?」

「わ、私の完璧な作戦が……」

 

 

『何と何と何と何と何と! 今までどの競技にも参加しなかった天神館・大将がまさかの出場です! これは予想がつかなくなりましたね、館長!』

『まったくだ。あの野郎、大人しく傍観しているかと思っていたら……』

 

『それでは競技を始めたいと思います! 参加する生徒の皆さんは、クジを引いてください!』

 

 

係員が参加生徒達の前に行き、それぞれにクジを引かせた。

 

 

「よし、まずは俺達だ!」

「任せたぞ龍造寺! 何を引くかで私達の勝率は大きく変わる!」

「おう! ……これだっ!」

 

 

バッ!

 

 

『二人乗り自転車』

 

 

「……これって、当たりかな?」

「……何とも微妙なものを引いたな…」

 

 

 

「次はオレ達だ!」

「これだぁああああ!」

 

 

バッ!

 

 

『退場』

 

 

『おぉおおっと! 黄組、『退場』を引いてしまったぁああ! 黄組、敗退です!』

 

「いやちょ、待てぇえええええええ!?」

「終わり!? オレ達終わりぃいいいいい!?」

 

 

黄組ー退場

 

 

 

「……コォォォォォォォ……」

「石田、クジを引くだけなんだからもっとリラックスして…」

 

 

バッ!

 

 

『人力車』

 

 

「……どう思う?」

「どうって…大友は良いと思うぞ。」

 

 

 

「さて、次は余(オレ)か……」

「何が出るんでしょう。私、あまり運動は得意ではありませんから楽なものが良いです。」

 

 

バッ!

 

 

『何でもいいよん』

 

 

『おぉおおっと! 赤組、『何でもいいよん』を引きました! このカードは自分で好きな乗り物を選べるレアカードです! 赤組、いきなりリードだぁああ!』

 

「待てぇえええええええ! 何それ!? そんなの有り!?」

「納得いかんぞ! 何でそんなカードを入れた!?」

 

『いやいや私達企画側も驚いています。全部で50種類もある乗り物クジの中に一枚だけ入れたカードが引かれるなんて……もの凄い強運の持ち主だぁああああ!』

 

 

「(そういえばこの人、御神籤ではいつも大吉でしたね…)」

 

Prrrrr Prrrrr ガチャ「余(オレ)だ。一分以内に『アレ』を持ってこい。一秒でも遅れれば、今日が命日だと思え。」

 

 

 

 

 

『さぁ、全ての準備が整いました! 赤組は乗り物が来しだい参加するとのことで、先に始めたいと思います! それでは白組、青組、準備は良いですか?』

 

「全力で来るがいい…毛利、龍造寺。」

「そうさせてもらうぜ。チェーンの油はさし終えた!」

「なぁ、石田? 大友本当に乗っているだけで良いのか? 引っ張らなくて良いのか?」

「見せてやろう。この華麗なる私のチャリテクを!」

 

 

『それでは、位置について……よーい、ドンッ!』

 

 

解説のアナウンサーの掛け声で、競技が始まった。白組、青組は共にスタートし激しい競争が勃発した。

 

 

「うぉおおおおおおおおおおお!」 ガラガラガラガラガラ……!

「ちょ、石田っ、揺れる! メチャクチャ揺れている!」

 

 

石田・大友ペアは、石田が人力車を引き大友が人力車に乗るというスタイルで走っていた。石田は氣を高め、もの凄いスピードで人力車を引いていた。同時にその振動が大友にダイレクトに襲いかかった。

 

 

「龍造寺! もっとペダルをこげぇええ!」

「やってるよ! チクショウ、やっぱハズレかこれ!?」

 

 

毛利・龍造寺ペアは、二人乗り自転車の前に毛利後ろに龍造寺が乗るというスタイルで走っていた。不馴れな二人乗り自転車のせいか二人は石田・大友ペアに抜かれていた。

 

 

『おぉおおっと! まずは赤組、石田・大友ペアが前に出た! もの凄いスピードで青組とグイグイ差を広げる!』

『飛ばすのはいいけど、安全運転を心掛けろよ。』

 

『さぁ、第一コーナーを曲がれば障害物エリアに入ります! ここには様々な障害物の他に、先生方の妨害もあります! 一瞬の油断が敗北に繋がる危険なエリアです!』

 

 

障害物エリアに入り竹槍、鉄球、砲撃、教師達の遠距離妨害に両チームは苦戦を強いられた。

 

 

「うぉ!? くっ! 人力車が大きすぎて、細かい動作が出来ない!」

 

 

石田・大友ペアは人力車の大きさが災いし、細かい回避が出来ないでいた。一方毛利・龍造寺ペアは……

 

 

「毛利! 右だ! そこ左!」

「フン! フン! 龍造寺、どうやら私達はアタリを引いたようだ!」

 

「あぁ、二人乗り自転車(これ)なら狭い道も進める! 形勢逆転だぜ!」

 

 

毛利・龍造寺ペアは見事な操縦テクニックで障害を回避し、石田・大友ペアを抜いた。

 

 

「くそ! 大友、スピードを上げるぞ! 早々にこの場から離れる!」

「うむ! ……! 石田、前!」

「!」

 

 

ズドォシャァアアア!!

 

 

『何と! 石田・大友ペア、眼前の落とし穴に気付かず落ちてしまったぁああああ! 落とし穴は深さ6mほどあり、重量のある人力車を持ち上げるのは至難です! 石田・大友ペア…事実上脱落です!』

 

 

「ぐっ……くそ、大友、大丈夫か……?」

「何とか……でもこれじゃあ……」

「…くそ、くそぉおおおおおおおおおお!」

 

 

石田の咆哮が落とし穴から聞こえる。それを他所に毛利・龍造寺ペアはゴールに進む。

 

 

「やったぞ! 障害物エリアも抜けたし、俺達の勝ちは確定だ!」

「あぁ、やっとだ…やっと私達に勝利の女神が微笑んだか!」

 

 

自分達の勝利を確信し、優雅に自転車をこぐ二人。

 

しかし、彼等は忘れていた。

 

もう『1チーム』、残っている事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………ブロロロロロロロ……

 

 

「ん? 何だ? この『エンジン音』は?」

「後ろから…? いったい何だ?」

 

 

二人は同時に後ろを振り返った。そこには……

 

 

 

ブロロロロロロロ!

 

 

流麗ながら力強いデザイン、圧倒的存在感を放つ鉄の暴れ馬。

 

『マスタング シェルビー GT500』がそこにいた。

 

そしてその暴れ馬の手綱を握っているのは……

 

 

 

「待たせたな。」

 

 

赤組、織田信長と織田帰蝶が乗っていた。

 

 

 

『ななな、何だ『アレ』はぁああああ!? 私の目に狂いがなければ、『アレ』は「マスタングシェルビーGT500」! それも68年型だぁああああ! それに騎乗しているのは織田信長・織田帰蝶ペアだぁああああ!!』

『おいおい……何でもいいとは書いてあったが、高校生が堂々と車に乗ってんじゃねぇよ……』

 

 

「はぁあああああああ!? 何アレ!? そんなん有りぃいいいいい!?」

「ちょっ、龍造寺! もっとこげ! ぶつかって来るぞ!」

 

「いやいやいやいやいやいや、無理無理無理無理無理! 今MAXだってこれぇええ!」

 

 

「……何を頼んだのかと思ったら…日本の法律では18歳以下は車を運転してはいけないんですよ?」

「案ずるな。この車体はほんの少し『浮かせてある』。地面を触れていなければ法を破る事にはなるまい。」

「……それってジャンプして地球にいなかったって言うのと同じレベルじゃ……」

 

 

『ここに来て赤組が怒涛の追い上げを見せる! 近づく近づく近づく! 毛利・龍造寺ペアにドンドン迫っていきます!』

 

 

「そんな気してたよ! 何事も無く順調に進んでオカシイと思ったよ! やっぱりこんな結末かコンチクショオオオオオオ!!」

「私達がいったい何をしたぁああああああああああああああああ!!」

 

 

必死の形相で自転車をこぐも、自動車と自転車では天地の差。グングンと両チームの差は縮まっていき……

 

 

ズガッシャァアアアアアアアアアアンッ!!

 

 

「「グボロシャアアアアッ!」」

 

 

毛利と龍造寺はおもいっきり跳ねられた。

 

 

キラァーンッ!

 

 

『……館長、人っておもいっきり飛ばされたら本当に光ながら消えるんですね。』

『俺も初めて見たよ。人って不思議だな……』

 

「……あの二人、大丈夫でしょうか?」

「大丈夫であろう。奴等はこと『こういう事』に関しては不死身の防御能力を持っているからな。」

 

 

二人が飛んでいった方向を見ながら帰蝶は心配し、信長は笑っていた。

 

 

 

『いったい誰がこんな事態を予測出来たでしょうか!? 最終コーナーを過ぎて残っているチームは赤組、織田信長・織田帰蝶ペアだけです! これは事実上、優勝は赤組という事になります!』

 

 

アナウンサーの放送に赤組から喝采がとぶ。

 

 

「思っていたよりつまらんだな。やはりこの程度か……」

「車を使わなかったら、それなりに楽しめたの思いますけど……」

 

 

二人は驚喜する赤組とは対称にあまり盛り上がっていなかった。特に信長は退屈そうにぼんやりとしていた。

 

 

 

誰もがこれまでと思っていた。誰もが赤組の勝利だと思っていた。

 

 

…………ォォォォォォォォォォ……

 

 

誰もが予想していなかった。誰もが『彼等』は敗退したのだと思っていた。

 

 

…………ォォォォォオオオオオオ……

 

 

『? 何でしょう? この音は?』

 

 

ガラガラガラガラガラ……

 

 

『! この氣は!』

 

 

ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ

 

 

「ム? この声は……」

「な、何でしょう? 何か聞こえます!」

 

 

ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ

 

 

「……ゥォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

全生徒が顔を向けた先には……

 

 

「織田、信長ぉあああああああああああああ!!」

 

 

石田・大友ペアがいた。

 

 

「織田信長っ! 貴様を倒す為鍛えたこの体! 落とし穴(あれぐらい)で負けると思うなぁああああ!!」

「ウプッ、石田、もっと優しく、吐いちゃう、大友吐いちゃう!」

 

 

石田三郎は『光龍覚醒』を使い、信じられないスピードで信長達に迫る。

 

 

「フフハハハ! そうでなくては! そうであろうとも! さぁ最終局面、始めるとするか! 石田!」

 

 

石田三郎の復活に信長は喜んだ。再び顔に笑みを浮かばせ、車の速度を上げる。

 

 

『何と何と何と何と何とぉおおお! 脱落したかと思っていた石田・大友ペアがまさかの復活! 一気に赤組との差を縮め、横一線に並びました!』

『…こいつはぁ、どっちが勝つか分かんねぇぞ!』

 

 

生徒達のテンションは最高潮に達していた。優勝を決める最後の勝負、並び立つ両チームの目にゴールが見えてきた。

 

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「フフフフハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

「~~~~!!(声が出せないでいる)」

「ウプッ、ゥウウウぅううう!!(手を押さえて吐かないよう堪えている)」

 

 

ゴールまで50mを切り、今だ横一線の両チーム。白熱のレースの勝利は誰の手に落ちるのか。天神館(ここ)にいる全ての者がその瞬間を待ちわびた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……

 

 

ドグシャァッ!

 

 

「ゲボろシャアアアア!!」

「ガボォルぼろシャアアアア!!」

 

 

「……え?…」

「……ハ?…」

 

「「「……え?…」」」

 

 

ゴール目前の両チームの前に何かが落ちてきた。

 

それは『人』だった。二人いた。

 

二人の側にはグニャグニャに曲がれた『二人乗り自転車』があった。

 

 

 

 

 

『…………大・逆・転~~~~~!! 何と先程飛ばされた毛利・龍造寺ペアがゴールを突き破って着地してくるというまさかの展開!! ゴールテープは毛利・龍造寺ペアによって切られております!! よって、優勝は青組に決定で~~~~~す!!』

 

 

「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」

 

 

青組から大喝采がとびかう。まさかの展開に全生徒が驚愕する。織田信長と石田三郎は眼前の毛利・龍造寺ペアを見て開いた口が塞がらない。

 

 

「……お、い…何……か、勝った、みたい……だぞ?……俺、達……」

「……不思、議だ……まったく…嬉しく、な……い……ガクッ」

「………同、感……だ……ガクッ」

 

 

「……フフフ、どうやら余(オレ)達の決着は此処ではないようだな。」

「……あぁ、そうらしい。」

 

 

信長と石田は向かい合い、お互いを見つめる。

 

 

「……中々力をつけてきたではないか。だがまだだ。余(オレ)を倒すには、まだまだ足りんぞ?」

「そんな事は分かっている。だが覚悟しておけ……俺は貴様を倒す。貴様を超える。絶対にな…!」

 

「フフハハハ! そうでなくてはな。その時を楽しみにしておるぞ。」

「あぁ、楽しみにしておけ。」

 

 

二人はお互い笑いながらコースを後にした。

 

 

「やはり石田(やつ)は余(オレ)の期待した通りに成長している。フフフ…楽しみだ、そう思わんか? 帰蝶……ム?」

「キュウ~……」

「気絶しておる……まったく、『魔王の嫁』が情けない。」

 

 

 

「……まだ力不足か……修行を今よりもっとハードにせねば……あっ、忘れていた。すまなかったな大友、お前の事をすっかり忘れて……」

 

 

 

「…も、もう……ム、リ…………ドボォルぼろシャアアアア!!」

 

 

 

 

 

こうして、第27回天神館大体育祭は幕を閉じた。

 

 

<余談>

 

織田信長…石田三郎の成長に喜ぶ。体育祭を充分満喫した。

石田三郎…織田信長にまだ届かないと思い知らされ、以前よりハードな修行に専念する。

毛利元親…体育祭のMVPに選ばれるが、全然嬉しくなかったそうである。

龍造寺隆正…上と同じ。

大友焔…大勢の前で盛大にリバースした事を恥じ、翌日人生で初めて学校を休んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





本編を楽しみにしていた皆様、本当に申し訳ありません。

本編の執筆が全然はかどらなくて……構成は出来てるし、ストーリーも決まっているんですよ。

でも、それが何かこう、上手くまとまらなくて……

今回のこれは只のストレス発散回です。誠に申し訳ありません。

次はちゃんと本編を投稿します。


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