真剣で魔王に怯えなさい!! (5/26より、更新停止) 作:volcano
今回短いです。
~東西交流戦~
・川神学園、天神館の両生徒達の今後の成長のために行われる合同試合。
・参加生徒は各学年ごとに200名ずつ。
・試合方法は団体戦。試合場所は川神市内にある川神院が所有権を持つ荒野。
・チームから『大将』を一人選び、先に相手の『大将』を倒した方の勝ち。
・使用可能な武器は学校側が承認した武器、またはレプリカの武器のみ。
・『万が一』が起こりそうになったら、両学校の教師達は速やかに試合を中断させる。
・試合順番は一年生、二年生、三年生の順番。
・試合時間は無制限。
・先に二勝した学校が勝利となる。
2009年 5月30日 川神市内にある荒野
「……以上が東西交流戦の対戦ルールじゃ。」
川神学園・校長『川神鉄心』のルール説明が終え、それを皮切りに川神学園、天神館の両生徒達が喝采をあげる。
「ウムウム、元気が良いのぉ。では今から30分後に試合を始める、一年生は準備をしておくように。また二、三年生と出場しない生徒は『観覧席』に移動するように………では解散!」
ぞろぞろと移動する生徒達。これから始まる試合に興奮している者、緊張する者、特にこれから最初に戦う一年生達の顔は皆こわばっていた。
『東西交流戦-一年生の部』は両者一歩もゆずらぬ激しい勝負となった。
最初、優越だったのは川神学園だった。天神館の猛攻は『一人の女生徒』によってくい止められた。
彼女の名は『黛由紀江』。今年川神学園に入学した『剣聖・黛大成』の娘であった。彼女は『壁を超えた実力者』であり、次々と天神館側の生徒をなぎ倒した。開始してまだ10分ぐらいしか経っていないのに天神館の戦力は半分にまで落とされていた。勝敗が決するのは時間の問題だった。
しかし、勝負は予想外の展開で終えることになった。
優戦だった川神学園側の『大将』が何を血迷ったのか『たった一人』で特功をし、あっという間にやられ天神館が勝利した。
後に川神学園側の『大将』に何故あんな馬鹿な真似をしたのか問い詰めると、
「あの黛由紀江がこのプレミアムな私を差し置いてでしゃばるから、どっちが『大将』なのか分からせるためにしたのよ!」
と語った。彼女がどういう処罰をくらったかはご想像にお任せする。
Side:川神学園
「ご、ご免なさい…負けてしまいました…」
『落ち込むことぁねぇぜ、『まゆっち』。負けたのはまゆっちのせいじゃねぇんだから。』
「そうよ、まゆっち! まゆっちは頑張ったじゃない!」
「ウム、敵をバッサバッサとなぎ倒しているところは、まさに侍だったぞ!」
「で、でも……」
「大丈夫だって、心配いらねぇよ! 俺様達が負けるわけねぇだろ?」
「おう! 一年生のカタキは俺達がとってやるぜ!」
「み、皆さん! …うぅ~~!」
「ほら、まゆっち。ハンカチ貸してあげるから顔拭きなよ。」
試合に敗れ、意気消沈しながら戻ってきた黛由紀江を、彼女の仲間達『風間ファミリー』は励ました。仲間達の優しい言葉に黛由紀江はポロポロと泣き出した。
「ところで大和は?」
「向こうでS組の奴等と打ち合わせしてるぜ。」
島津岳人が指を差す方向で、直江大和は主力メンバーであるS組の生徒達と作戦内容を再確認していた。
「……以上だ。皆、何か異論はあるか?」
「ありません。実に計算された良い作戦です。称賛に値します、感謝しなさい。」
「僕もないよ~。」
「フハハハハハ! 実に見事な策略だ、直江大和! 」
「底辺のクズにも誉め言葉を差し上げるなんて、素敵です! 英雄様~♪ 」
「フン! 山猿にしては頑張ったものじゃ。」
「……もっと優しい言葉でほめてくれよ…」
S組の生徒達の言葉に、直江大和はため息をはく。川神学園は実力主義で、成績の優劣でクラスが決まる。最高クラスであるS組の生徒達は皆プライドが高く、他のクラスの生徒を軽視しているのだ。
「フフフ、ですがS組の生徒が誰かをほめる事なんて滅多にありません。流石ですね、大和君。」
「ありがとう、葵。でも、尻に手を伸ばすのは止めてくれ。」
尻をわしづかみにせんばかりに伸ばされた葵冬馬の手を直江大和は振りほどく。
「おや、勘違いですよ。ゴミが付いていたんで、取ってあげようと、しただけです。」
「気をつけろ、直江。その内後ろじゃなくて『前』を触ろうとしてくるぜ、若は。」
「……忠告ありがとう。」
「元気ないね~、大和ぉ。マシュマロ食べる~?」
「一つ、貰おうかな。」
マシュマロを口に入れ、甘味で気持ちを整える。これから始まる試合に向けて、リラックスしないと咄嗟に冷静な判断が出来ないからだ。
「お~い、話終わったぁ~?」
暫くしてから、風間ファミリーの面々と試合に出場するF組の生徒達がやってくる。
「これ、山猿達。くれぐれも此方達の邪魔だけはするでないぞ。」
「何だとぉ! ゴルァ!」
「こらそこ! 喧嘩しない! これから一緒に戦うチームなんだぞ。」
早速いがみ合うS組とF組の生徒達。直江大和は喧嘩を素早くしずめ、コホンッと咳をし、集まった試合に出る二年生に叫んだ。
「たく、チームメイトなんだから皆仲良くやってくれよ。俺達は勝たなくちゃいけないんだから。」
そう、一年生が負けたので次に川神学園が負けたら、勝負は終わってしまうのだ。
「俺達は今ちょっとしたピンチに立たされている。でも、俺は皆ならこのピンチを切り抜けられると信じている。……天神館に、川神学園(おれたち)の強さを思い知らせてやるぞっ!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオオオッ!!」」」
「さぁて、見せてやるぜ! 俺様の大活躍をな!」
「一年のカタキ討ちだ! いくぜ、オラー!」
「『マルさん』! 一緒に頑張ろう!」
「勿論です、『クリスお嬢様』。必ずや我等に勝利を。」
「一子殿! 我の雄姿! とくとご覧あれ!」
「う、うん! 頑張ろうね、『英雄』君!」
「冬馬ぁ、僕も頑張るよ~。」
「フフフ、偉いですね『雪』は。しかし、無理をしてはいけませんよ。」
「ニョホホ! 此方達にかかれば、天神館など烏合の衆も同然なのじゃ! 」
「ってオイオイ……いくら何でも舐めすぎだろ。痛い目見るぞ。」
川神学園、二年生達のボルテージはMAXになっていた。やる気満々の仲間達を見て、直江大和は喜笑する。
「よぅし、いくぞ!」
「「「オオオゥ!!」」」
Side:天神館
「フゥ……いよいよか…」
「緊張しているのか、石田?」
「あぁ、少しな……」
天神館の選手控え室では、石田三郎を中心に出場する二年生達が輪を作っていた。
「お、おい…大丈夫かな?」
「川神学園って、強い奴ばっかりなんだろ?」
「お、俺……戦えるかな…」
西方十勇士を除く生徒達は、先程の一年生の試合を思い返していた。川神学園(むこう)の『大将』が馬鹿だったから勝てたが、もし『大将』が『あの剣聖の娘』だったら……控え室に不穏な空気が流れる。
「…ちょっとヤバい空気だな。」
「おい、お前等! しっかりしろ!」
「「「…………」」」
「オイオイ、通夜みたいになってるぞ。」
「…やれやれ、どうしたものか…」
緊張が伝染していき、生徒達は次々と不安にかられ弱音をはきはじめた。十勇士達は暗く重たくなった空気を何とかしようとした時……
パンっ!
乾いた音が控え室に木霊する。生徒達が音の発する方へ顔を向けると、石田が手を叩いていた。
「……敵が強い事なんて分かっていた事だ。相手は『川神』、弱いわけがない…」
石田は立ち上がり、全員に顔を向け、真剣な面立ちで語った。
「……俺はお前達に「あきらめるな」とか「最後まで戦え」とかは言わない。言えるような人間でもないしな。…………ただ、『これだけ』は、お前達に言っておく。」
深呼吸をして、一間をあけてから石田はこの場にいる全員に言った。
「……『悔い』は残すな。結果がどうあれ、「あの時ああすれば良かった」とか「こうしていたら勝てた」とか、後々言い訳するような事だけはするな。」
「「「…………」」」
この場にいた全員が石田の言葉を真剣に聞いていた。
「勝っても負けても、今日のこの戦いを今までの人生で一番の戦いにするんだ。誰にも文句を言わせない、最高の戦いにしよう!」
「「「ウオォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」
生徒達から喝采がとび交う。もうクヨクヨしている者は誰もいない。いつの間にか、生徒達から不安は消えていた。全員の目が燃えていた。
「ハハハ! やるねぇ、石田! 流石は『大将(リーダー)』だ!」
「あぁ……これ程一つに団結するのは、初めてだ。」
「ウム! 大友も燃えてきたぞ!」
「それがしは忍ゆえ、あまり感情を表に出してはいけないのだが……気分が高揚してきた。」
「さぁて、今回は俺ものんびり休んでいられないな。」
「石田さん、時間です。参りましょう!」
「あぁ……行こう! 」
川神学園と天神館。東と西の若武者達が、今宵雌雄を決する。
前回長かっただけに今回の短さがスゴく目立つ。次回はいよいよ東西交流戦-二年生の部突入です。ネームは出来ているので、自動車学校の予定が終わり次第投稿します。