真剣で魔王に怯えなさい!! (5/26より、更新停止)   作:volcano

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Side:A

 

 

「あああぁぁぁああ やっちゃったぁぁあああああ!!」

 

 

全身から汗をふきだしながら、必要以上にハンドルを強く握る。

 

スピードの調節など出来る訳もなく、見事に突っ込んでしまった。

 

 

助手席に座ってる奴が泣き叫んでいる。ブレーキを担当している奴がガタガタ震えている。

 

 

 

その『結果』に満足なのか、後部座席に座っている『信長様』は、嬉しそうに『笑っている』。

 

 

 

「『追いついた』な。ほれ、何を呆けてる。もっと『ぶつかれ』。」

 

 

 

「「「クソッタレェェエエエエエエエエエエエエ!!」」」

 

 

どうしてだろう、涙で前が見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:B

 

 

パトカーがまたトンでもないスピードで突っ込んできた。

車の後ろのトランクはモノの見事に凹んでいた。

 

 

 

「オイ! どうなってんだぁ!? アレさっきのガキ共じゃねぇか!」

「知るかぁ! それよりハンドルしっかり握れ! またぶつかってくんぞ!」

 

 

 

ズドバァァアン!

 

うおぉおっ! グッ、調子にのりやがって!

 

 

 

ぶつかった衝撃で、車は更に凹み、『燃料』が漏れだしていた。

 

 

 

 

「クソッ、 撃てぇ! 撃ち殺せぇえ!!」

 

 

 

ガンッ!ガンッ!ガンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:A

 

 

「うわぁあ! 撃ってきた!」

 

 

眼前のフロントガラスから見える『銃』が自分に向けられているのに恐怖する。

慌てて座席の下に潜ろうとすると、

 

 

 

「慌てるな、心配ない。」

 

 

 

 

 

キンキンキンッ!

 

 

 

 

 

いったい何が起こったのか。

 

銀行強盗達が撃った弾は『フロントガラスがはじき返した』。

 

他の皆も驚いている。このパトカーって『防弾ガラス』を使っていたのか?

 

そうだとしても、それを何で信長様は『知っている』んだ?

 

 

 

 

 

「案ずるな。この車が鉛弾で『貫通することはない』。それよりもっと『突っ込め』。」

 

 

 

グイッ

 

 

 

「ちょっ!? それ、アクセェェェエエエエル!!」

 

 

 

 

ブロロロォォォォオンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:B

 

 

ズドバァァアン

 

またパトカーが突っ込んできた!

 

 

 

「オイ! どうなってんだぁ! 弾が効かねぇぞ!」

「『防弾ガラス』なんだろ!? 『フロント』じゃなくて『タイヤ』を狙え!」

 

 

 

クソッ! やっぱりコイツらを仲間にすんじゃあなかった!

もっと『頭のキレる奴』を仲間にするんだった!

 

 

 

「何とかしろよ テメェ!」

「ウルセェ! アホ共! 今考えてんだ黙ってろ!!」

 

 

 

クソ! 絶対あのガキ共、殺してやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:A

 

一見するとこっちが優勢に見える。けど、体当たりするたび、このパトカーもどんどん凹んでいる。

 

 

 

「どうするんですかぁあ! このままじゃ俺達も死んじゃいますよ!?」

 

 

涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら、後ろで『笑っている』信長様に助手席の奴が話しかける。

 

 

 

「喚くな。貴様等は黙って余(オレ)の指示に従っていればいい。……よし、『捕れた』。オイ、もっと『飛ばせ』。」

 

 

 

「「「ハ、ハイィィィイイイイイ!!」」」

 

 

ブロロォォォオンッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:B

 

 

「何だぁ? アイツら体当たりしてくると思ったら、先に行きやがったぞ?」

「へ! 恐くて逃げたんだろぉ!」

 

 

 

……本当にそうなのか?

もしかしたらアイツら、『何か』『企んで』んじゃ……

 

 

 

「ア、アレ? 『無い』、『無い』!」

「ん? どうした?」

 

 

 

「な、『無いんだ』よ。俺の『銃』が!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:A

 

「よし、そのまま揺らさず飛ばせ。」

「どうするんで……ってぇぇええええ!? その『銃』どうしたんですか!?」

「奴等から『頂戴』した。喋りかけるな、『気が散る』。」

 

 

 

 

 

既に強盗達の車がミニカーに見えるこの距離で、信長様は『強盗から捕った銃』を構えた。

 

 

 

「『この距離』から『撃つ』つもりですか!?」

 

「無理ですよ!」

 

 

 

 

他の皆も同じ意見だ。

 

 

 

「余(オレ)を誰だと思っている。余(オレ)は『今まで』、『銃(コレ)』を外したことなど一度もない。」

 

 

 

信長様は、俺達の言葉なんか聞きもせず銃を発射した。

 

 

 

ガンッ!ガンッ!ガンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:B

 

 

ガンッ!ガンッ!ガンッ!

 

 

 

「な、何だぁ!? 何か当たったぞ!」

「『前』からだ! アイツら、俺の『銃』を盗って『撃ってきた』んだ!」

 

 

 

馬鹿言うな! 銃を盗った!? どうやって!?

何が起こっているのかサッパリだ!

 

 

 

パンッ!

 

ガリッ!ガリリリリリッ!!!!

 

 

 

「な、何の音だ? 何か聞こえっぞ!」

「タ、『タイヤ』だ! 『タイヤ』がパンクしやがったぁ!!」

 

 

 

アイツら、本当に何なんだ! クソッ!何でこんなことに!

 

 

 

「『ブレーキ』だ! 『ブレーキ』を踏め!」

「お、おう!」

 

 

 

 

ハ?『ブレーキ』?

 

 

 

 

 

この時、『彼』は思い出した。

 

 

 

先程、車が衝突で凹んだ際、『燃料』が『漏れている』ことに。

 

 

 

車の『燃料』は知っての通り『ガソリン』である。

 

『ガソリン』の引火点はマイナス45℃。

 

これは、『気温マイナス45℃の中でも、火花さえあれば引火する』ということである。

 

 

 

むき出しのホイールと地面が摩れば『火花』が付く。

 

 

 

その『火花』が『ガソリン』に付けば………

 

 

 

 

 

「バカ! よせぇぇえええええええええええええええ!!」

 

 

 

 

 

バチッ

 

 

 

 

 

バグォオオオオオオオンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:A

 

強盗達の車が炎上している。あまりの出来事に思考が停止する。

 

 

 

 

 

「まぁ、『暇潰し』にはなったな。」

 

 

 

炎上している車を、まるで『遊び飽きた玩具』のように信長様は見ていた。

 

 

 

「ス、スゲェ…」

「何か…もう、いろいろ……」

「…これ、夢…じゃ、ないよな?…」

 

 

 

 

 

全員呆気にとられていた…………

 

 

 

「ところで貴様等、『いつまで飛ばす』つもりだ?」

 

 

 

「「「え?」」」

 

 

 

 

 

信長達を乗せたパトカーは、スピードを緩めることなく走っていた。

 

 

 

「あれ!? 止まらない!? 止まらないんだけど!?」

「ウソォオ!? ブレーキ! ブレーキ踏んで!」

 

 

 

しかし、パトカーは止まらない。

速度が落ちぬまま、パトカーは『坂道』を下り始めた。

 

 

 

 

 

その先には、『ガードレール』があり、さらにその先には『崖』があった。

 

 

 

 

 

「ブレーーーーーキッ! メッチャ踏んで! ブレーーーーーーーキッ!!」

「駄目だ! 全然止まんない!」

「何でぇええええ!?」

 

 

 

 

 

力いっぱいブレーキを踏んでいるのに、パトカーはいっこうに止まらない。

 

 

 

 

 

「ム? もしかして『コレ』か?」

 

 

 

まるで『落とし物でも拾った』かのようなトーンで、信長様は後部座席から『何か』を拾い上げた。

 

 

 

 

 

その手には、『車体から引きちぎられたレバー』があった。

 

『レバー』には『コード』がいくつも絡み付いていた。

 

 

 

 

 

「『狙撃』の邪魔だったのて、『引きちぎった』のだが…」

 

 

 

「「「NooooOOOOOOOOOOO!!」」」

 

 

 

スピードが落ちぬまま、パトカーはもの凄い速度で坂道を下り始めた。

 

坂を下るスピードも合わさり、パトカーはトンでもない速度で下ってゆく。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

ガッシャァアアアアンッ!

 

 

 

 

 

『ガードレール』を突き破った。

 

 

 

 

 

「「「OOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」」」

 

 

 

 

 

「……フハハハ! こたびの余興、実に面白い!」

 

 

 

 

 

一瞬の浮遊感の後、パトカーは重力に従って落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:------

 

「遅い、遅すぎる!」

 

 

 

『集合時間』をもう30分も過ぎている! 一体何をしているんだ!?

 

 

 

「ちょっと『門脇先生』。オタクの生徒達どうなっているんですか!」

「何がですか? 『佐藤先生』。」

 

「何がって、集合時間からもう30分経っているんですよ!」

「『まだ』30分でしょ? 安心してください、私『こうなること』を予想してましたから。生徒達にも伝えてあります。」

 

 

 

確かに文句を言っている生徒はいない。だからといって、許されることじゃない。

 

この学校に赴任してきて早4ヶ月。前々から思っていたが、この学校はおかしい。

 

『一人』の生徒が優遇されすぎだ!

 

 

 

『織田信長』

 

 

彼がどうな生徒かよく知らないが、戻ってきたら説教を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ウオリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」

 

 

 

ガラガラガラガラッ!

 

ギィイイイイイイ!

 

 

 

 

 

 

な、何? え、何!?

 

『人力車』がもの凄いスピードでこっちに来た。

 

 

 

よく見ると『うちの学校の生徒』が乗っている、というか引っ張っている。

 

 

 

 

 

 

「き、君達何をして……」

 

 

 

 

「はい、皆揃ったわね。それじゃあ帰るわよ。」

 

 

 

「……へ?」

 

 

 

「なぁ、お前らどこ行った?」

「お土産買いすぎたな~。」

「ねむ、帰り寝てよっと…」

 

 

 

「ちょ、ちょっと…」

 

 

 

「あなた達、その『人力車』返しときなさい。」

「ゼェ、ゼェ、こ、『これ』 貰ったんですけど…オエッ 」

「ど、ゲホッ どうすればいいですか…オゲッ 」

 

「といってもねぇ、今は無理だから後日『配送』してもらいなさい。」

「ハァ、ハァ、ゴメン オブって……」

「いや、無理……オロロッ 」

 

 

「なかなか面白い旅であったな。あ、母の言っていた『ご当地ストラップ』とやらを買っていなかった。」

 

 

 

 

 

「スイマセェェンッ! 無視しないでもらえます!? 『門脇先生』も何普通に対応しているんですか!? 」

 

「何叫んでいるんですか? 『こんなの』『普通』でしょ?」

 

 

 

「何処がぁああああああああああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今晩は、ニュースの時間です。

 

今日午後1時頃、市内の銀行に強盗が現れ、現金5000万円が盗まれました。

 

目撃者に事件の詳細を訪ねると、

 

『人力車がいきなり突っ込んできた。』、『小学生が強盗をボコボコにしていた。』

との証言がとれました。

 

また、この銀行強盗、車で逃走したのですが、銀行から3km離れた崖沿いの道で車が炎上しているのが発見されました。

 

さらに、強盗を逮捕しようと追いかけたパトカーが、崖に墜落するという事故が起こりました。

 

次のニュースです。本日、人力車が盗まれるという事件が二件発生しました。警察は事件の経緯を調べています。

 

つづいて………』

 

 

 

 

 

 




門脇先生は、六年間信長のクラスの担任です。
彼女は六年間信長と過ごしたおかげで、大抵の事に動揺しない『鋼の心』を手に入れました。

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