Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~ 作:紅 奈々
弥王最強説(^P^)←
標的1
翌日、弥王は早く起きて、京子を迎えに行った。
家のチャイムを鳴らせば、少しして京子が出てきて、京子は微笑んだ。
「おはよ、神南君。
待たせてごめんね」
「いや、行こうか」
京子が微笑んだのを見て、弥王もつられて微笑んだ。
つまらない授業はどうでも良いが、京子の顔を見る為だけに学校に通うのも悪くない、と弥王は思いながら、京子と弥王は学校への道を他愛のない話をしながら、歩いて行く。
昨日解ったことだが、京子の家は弥王の通学路上にある為、弥王から迎えに行こうと思ったのだ。
学校に着いて、弥王達は今、教室の前に居た。
弥王も京子も、それぞれ教室のドアを見上げている。
教室の扉の上を見上げると、バケツが吊り下がっていた。恐らく、中身は水だろう。
その上に黒板消しが引っかかっている。
そして、ドアの取っ手には、画鋲がぎっしり詰まっていて、知らずに取っ手に触っていたら、怪我をしていただろう。
取っ手で怪我をして、開けると水を被って、更に黒板消しで埃まみれになる、といった仕掛けだろうか。
弥王は、小学生の悪戯かよ、と呆れる他なかった。
「笹川さん、下がってろ」
「え・・・・・・でも・・・・・・」
先に行こうとする京子を制止して、弥王は京子の前に出た。
戸惑ったように見上げてくる京子に大丈夫だ、と微笑むと、弥王は画鋲を外して、その画鋲を弾いて黒板消しを落とした。
その後ろで京子は歓声を上げている。
余計なトラップを解除した後、弥王はドアを開けた。バケツのトラップは敢えて解除しなかったので、バケツと水が弥王の頭上に落ちてくる。
水は被ったが、バケツは頭に落ちてくる前に受け止めた。
「神南君!?」
「よっしゃ、成功!!」
一部始終を見ていた京子は驚いていたが、弥王に背を向けている男子は誰が引っかかったのか解らない為、歓喜に満ちた声を上げていた。
その後ろの生徒は、誰が引っかかったのか解っているので、顔が青ざめている。
「お・・・・・・おい・・・・・・」
「遠藤・・・・・・後ろ・・・・・・」
一部の男子が青ざめながら弥王に指指すと、その雰囲気で誰がトラップに引っ掛かったのか見当が付いたのか、遠藤と呼ばれた男子は恐る恐る振り返る。
青ざめたその目と目が合った時に、弥王は遠藤を睨んだ。
「冷てーなぁ・・・・・・」
少し弥王が睨んだだけで、生徒達は怯んだ。それもそうだろう。隻眼の三白眼で睨まれて怖くない人間の方があまり居ないのではないだろうか。
弥王が足下を見ると、入り口に縄が張り巡らされていて、その正面には墨汁まで置いてあった。
どうやら、縄で足を引っ掛けて更に墨汁が被る仕組みになっていたらしい。
弥王は縄と墨汁をバケツの中に入れて、それを遠藤の机の上に置いた。
「誰狙ってんだよ・・・・・・オレか?」
遠藤を睨んで低い声で問うと、彼は冷や汗を滝のように流して、「めめめめっ、滅相もございませんです、はい」と噛みながら情けない声を上げた。
別に弥王としてはそこまで威圧感を出していたわけじゃない。なのにそんなに怯えられるのは、どうも解せない。
弥王は溜息を吐いて、教室のドアに声を投げた。
「笹川さん、早く入ってこいよ。
授業、始まるぞ?」
さっきより穏やかな声で京子を呼ぶと、京子は恐る恐る教室に入ってきた。
それを見た生徒達が騒ぎ始める。
「ちょ・・・・・・っ、笹川!」
「あんた、神南君を囮にしたの!?」
「最っ低!」
「別に囮になったわけじゃねぇよ」
1人の女子が声を上げると、続いて女子が京子を罵倒し始めたから弥王は言った。
弥王が喋った事で、教室中が静まりかえる。
「オレが偶然、教室に入ったら引っ掛かった、ただそれだけだ。
それに、お前らがこんな下らない事をしなければオレは引っ掛からずに済んだんだ。
お前ら、オレがまだ来てないこと、確認したか?
オレじゃなくても例えば、沢田君や木吉さんが引っ掛かっていたかもしれねぇ。
もしかしたら、オレや笹川さんが欠席して引っ掛からなかったら、教師が引っ掛かってたかもな?
そんなリスクも考えなかったのか?」
弥王が睨みながらに説教じみた事を言うと、生徒達は黙り込んだ。どうやら、その辺のことも考えついていなかったらしい。
この辺りの年代の人間は大抵、後先考えないのは何処でも一緒だ。
「ねぇ」
生徒達が沈黙を守っている時、不意に男子生徒の声が聞こえた。
その声に弥王も含む生徒全員が後ろの扉を一斉に見る。
そこに居たのは、不機嫌な顔をした彼奴だった。
「恭弥!!」
弥王と木吉の声が被った。なんと、そこに居たのは、雲雀だった。
突然の来訪者に生徒達が青ざめていたから、弥王が名前を呼んだことに気付いていた生徒はごく少数だけだった。
雲雀は無言で京子に歩み寄ると、何処からか取り出したトンファーを振り仰いだ。
振り仰いだ腕を弥王は掴んで、雲雀の次の攻撃を止めた。
「やめろ、恭弥。
オレはこんな事させる為にそれを教えたわけじゃない」
弥王は雲雀のことを考えて、雲雀にだけ聞こえるような声で囁いた。
「邪魔しないでくれる」
雲雀は弥王の手を振り払うと、弥王に向き直ってトンファーを構えて薙いできた。
弥王はそれを素手で受け止める。
「ワォ!腕は衰えてはいないみたいだね」
嬉しそうに獰猛な笑みを浮かべて、雲雀は言った。
雲雀が嬉しそうな時は大抵、目を細めて狩りをする獣のような鋭い燐光を放った目で笑う。その癖も変わっていない。
ただ、無邪気に
あの頃はそう、こんな風に無差別に他人を攻撃したりはしなかった。
自分と守りたいモノを守る為にその武器・・・・・・トンファーを振るっていた。
感傷に浸っていると、雲雀のトンファーが顔面に向かって来た。
それを避けて、弥王は雲雀の両腕を掴む。
「本業柄、衰えはしない
・・・・・・
掴んだ腕を背負い投げの要領で前方へ投げると、雲雀が受け身を取る前に飛ばされ、背中をロッカーに思い切りぶつけた。
その衝撃でロッカーが少し壊れた。
「・・・・・・背骨にひび・・・・・・入った・・・・・・かも・・・・・・」
思わず力任せに雲雀を投げた後で、弥王はやっべぇーとでも言う様に頬に一つ、汗を垂らした。
投げ飛ばされて、ロッカーに直撃した当の雲雀本人は、頭も打って気絶しているのか、ピクリとも動かない。
焦った弥王の言葉で周りの空気が恐怖に変わった。
それから、校内では暫く、真の学校の支配者は雲雀か弥王かで意見が分かれ、投票などもしていたらしいが、それは弥王と雲雀は知らない事実であり、尚、並中の歴史には裏歴史として残ったそうな。
チートっぽいけど、気にしない。
それが俺のスタンス←