Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~ 作:紅 奈々
今回はあの子が登場してきます!!
標的1
翌日、弥王と京子は学校をサボって商店街をぶらついていた。
学校をサボった理由は特にない。ただ、何となくサボっただけだ。
弥王と居ると、京子も自然的にサボる現象が起こる。
それは、京子1人だけで学校に行くと、暴行を受けたりするので、弥王がサボると必然的に京子もサボるようになったのだ。
「―――でね、前に言ってた紅茶のお店が・・・・・・って、あ・・・・・・」
京子は弥王の隣で楽しそうに話していたが、話を中断させると暗い表情で弥王の服の袖を掴んで、弥王の後ろに隠れる。
弥王は初めは沢田とか木吉が目に入ったから隠れたのかと思ったが、京子の反応から、それは違うと判断した。
京子の視線を辿って行くと、その先には黒髪の緑中の制服を着た可愛らしい女の子が居た。
どうやら京子の知り合いらしく、彼女も京子に気が付くと、顔を上げた途端、気まずそうに俯いた。
「京子、知り合いか?」
京子は弥王の問い掛けに頷くと、無理に笑おうとしたのか悲しそうな笑みをして一言、「行こう?」と弥王の服の袖を引っ張った。
早くこの場から立ち去りたいのだろう、京子の袖を引っ張る力が割と強い事を弥王は感じた。
弥王は京子に引っ張られるまま、歩き出した。
「京子ちゃん、待って下さい!!」
弥王と京子が歩き始めた時、可愛らしい声が聞こえた。
京子と弥王はその言葉に足を止めると、振り返る。
そんな京子に彼女は歩み寄ると、「少し話しませんか?」と言って、京子を見据えていた。
弥王は思った。両手に花だ、と。
弥王と京子と緑中の少女は、ラ・ナミモリーヌに入って紅茶を注文すると、話をしていた。
弥王と少女は初対面なので、自己紹介を済ませる。
彼女は三浦ハル、というらしい。緑中の二年生だそうで、京子とは去年にここで知り合ったそうだ。
ハルが京子に視線を向けると、京子は視線を逸らすように視線を落として、表情に暗い色を落としていた。
「京子ちゃん・・・・・・ごめんなさい」
ハルは泣きそうな表情で京子に声を掛けると、耐えきれなくなった涙が頬を伝った。
絞り出すような声で謝罪されて、京子は驚いたようにハルを見る。
「ごめんなさい、京子ちゃん・・・・・・信じてあげられなくて・・・・・・」
ハルの目から、次々と涙が零れ落ちる。
京子も顔を歪めて、涙を落としながら、首を振った。
「ハルは最低です・・・・・・。
何も聞かないで、沢田さんの言葉を信じて、京子ちゃんを傷付けてしまいました・・・・・・」
泣いている2人に弥王はティッシュを差し出して、ハルに視線を向けた。
ハルもどうやら、何か関係があるらしい。
弥王はハルからも話を聞こうと思った。
「三浦さん、何があったのか話してもらっても良いか?」
弥王は努めて優しい口調でハルに問う。
ハルは涙で赤くなった目で弥王を見ると、頷いて話し始めた。
去年の今頃、京子とここで知り合って仲良くなった事。
その後に京子が木吉を虐めていると沢田から聞いて、それを鵜呑みにして信じた事。
それから、沢田経由で木吉と知り合って、仲良くなった事。
「ハルは、沢田さんが好きでした。
それをレーナちゃんに言ったら、沢田さん達のいない所で脅されて・・・・・・っ!!
京子ちゃんもきっと、嵌められたんだと思って・・・・・・。
ハルが間違ってました・・・・・・!!
ちゃんと真実を知って、京子ちゃんにちゃんと謝りたいです・・・・・・っ!!」
ここまで殆ど息継ぎなしで言うと、ハルは堰を切ったように泣いてしまった。
まさか、並中以外の生徒にさえも手を出していたとは思わず、弥王は驚愕した。
弥王は京子を見る。
京子の目は仲間を思いやるような、そんな目をしていた。
それを見て、弥王は京子はハルと初めからやり直すつもりで居る事を察して、安心して微笑む。
「三浦さん、大丈夫。
ちゃんと三浦さんが京子を信じれば、元の関係に戻れるから・・・・・・」
弥王は微笑んでハルにハンカチを差し出す。
ハルは差し出されたハンカチをマジマジと見た。
「・・・・・・な?
今は互いを信じる事。
空いた心と時間はもう戻らない。だが、これから埋める事はできる。
だから、これから2人でやり直して、埋めていけばいいさ」
ハルの頭を撫でながら、弥王は言った。
撫でられた恥ずかしさからか、ハルは顔を紅くして、「はい」と頷く。
「いずれ、悪事は暴かれる。
一つ綻びが生まれれば、そこから全てが壊れていくんだ。・・・・・・ドミノ倒しのようにね。
だから、三浦さんはもう、木吉の言いなりにならなくて良いし、木吉と関わらなくたって良い。
オレと京子は何があっても、三浦さんを信じるから」
弥王の言葉に京子は頷いて、ハルの手を取った。
ハルは顔を上げる。
「ハルちゃん、これからもよろしくね」
京子の淡い微笑みに何かが崩れたように、そして解放されたようにハルは泣いた。
京子はその肩をそっと撫でる。
その様子を弥王は、そっと見守るように見ていた。
それから、ハルが落ち着くと、ハルは弥王は電話番号とメールアドレスを交換して、京子とハルを送って屋敷に戻った。
まさか、屋敷に戻れば彼奴が居るなんて知らずに――――――――
三浦ハル視点 その後
神南さんと京子ちゃんに家に送ってもらった後、ハルはお父さんと他愛ない話しをしながらご飯を食べて、お風呂に入りました。
それにしても、不思議な人です…神南さんは…。
ノートにペンを走らせながら、ハルは今日初めて会った男の子の事を思い出しました。
夜空の様に神秘的な怖さと言うか…ちょっと怖い人かなと思えば、月の様に静かに笑って、ハル達を見守って導くかの様に話をしてくれたり…
神南さんは夜空でも月でも虹にも見えてしまいます。
神南さんは、話しているだけで人を惹き付ける…というか…
神南さんからは何か、暖かいモノを感じるんです…。
良いなぁ…京子ちゃん。
あんな人と一緒にずっと居られて、羨ましいです…。
また、会いたいです…。
「神南…さん…」
ハルは呟くと、ノートを閉じて、電気を消して、ベッドに入ると、眠った。