Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~   作:紅 奈々

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遂に笹川了平、動く――――!?


第11楽章 架け橋
標的1


翌日、いつまでも落ち込んでいたって仕方がない、と弥王は案外すんなりと立ち直っていた。

京子は自分の心配が杞憂に終わった事で、安堵する。

よく考えて見れば、弥王は何だかんだで立ち直るだろう、と京子は心配のしすぎで肩を落としていた。

逆に、弥王に寝不足を心配されると言う事まであり、今度から弥王に関しては適度に心配する事にした。

 

そんな事もあり、何だかんだで昼休みになると弥王は京子を保健室に預けて、屋上に行った、

屋上に行けば、弥王を呼び出した張本人―――笹川了平がフェンスに凭れて弥王を待っていた。

何故、弥王が屋上に行ったのかは、元より昼休みになると屋上に行く予定だったが、朝、教室に行くと黒板にデカデカと「神南弥王、屋上にて待つ!!笹川了平」と書いてあった為である。

あの呼び出しの仕方は何だ、恥ずかしい。

そのお陰で今日の今まで、ずっとクラスの人間にクスクス笑われていたのだ、勿論、好奇の目で。

 

 

「待たせたな」

 

 

先輩にも拘わらず、弥王はぶっきらぼうに言葉を投げた。

勿論、あの仕打ちに対する恨みも籠もっている。

笹川は弥王の姿を認めると、弥王を見据えた。

 

 

「いきなり呼び出して、すまぬな」

 

 

「それよりも、あの呼び出しは何だ?

こっちは(おも)っくそ注目の的だったぞ」

 

 

笹川の言葉に弥王は今朝の仕打ちの話をした。

笹川は「あぁ」と話し出す。

どうやら、母親に京子を連れ去った男の名前を訊いたのは良いが、誰がそいつか解らなかった為に、取り敢えず京子と同じクラスだろう、と言う事で黒板に書いたらしい。

笹川の話に弥王は項垂れる。その所為で、好奇の目で見られたオレの身になってくれ。冗談じゃない。

笹川は弥王の隣に京子の姿がない事に気付くと、「京子は?」と京子の所在を問うた。

 

 

「妹さんは保健室だ。

教室に置いておくと、また虐められるからな」

 

 

弥王の言葉に笹川は「そうか・・・・・・」と俯いてそれっきり、笹川は黙り込んだ。

沈黙がその場を埋めると、笹川は軈て、口を開いた。

 

 

「京子は・・・・・・何と言っている?」

 

 

笹川の問い掛けに若干、弥王は驚くも、初めからそんな気がしていた。

まさか、こんな所に呼び出してフルボッコはないだろう、と思っていたからだ。

弥王は溜息を吐いた。

 

 

「何故そんな事を訊く、今更?

先輩は妹さんを突き放したんだろ?

なら、どんな罵詈雑言を言われていようが先輩には関係無い事で、気にする事でもないじゃないか」

 

 

実際に罵詈雑言は言われていないが、敢えて言われてますよ、と言う様に弥王は笹川の問いかけを突き放した。

弥王の脳裏には、京子を迎えに行ったときのことが鮮明に蘇っていた。

あの日、笹川は京子を怒鳴り散らし、殴ろうとしていた。

笹川も木吉を信じていたんじゃなかったのか?

一体、どんな心境の変化だ、と弥王はあらゆる可能性を考察する。

考えられるとしたら、昨日の争奪戦か?

人は死ぬ目に遭った時、一番大切なモノが浮かんでくると言う。

では、笹川は深層心理の中で京子を大切だと思っていたのか?

可能性がないとは言い切れない。

実際にこうして、死に直面した後で京子の事を訊いてきたのだから。

弥王の言葉に笹川は「それもそうだが・・・・・・」と口籠もって、黙り込む。

午後の風が緩やかに吹いて、弥王の太腿までの長髪を撫でた。

 

 

「・・・・・・良い子だと思うぞ」

 

 

暫くの沈黙の後、弥王は静かに言った。

弥王の言葉に笹川は驚いたように弥王を見る。

そんな笹川に構わず、弥王はフェンスに腕をかけると、空を仰いだ。

午後の太陽が白く輝いて、弥王は目を細める。

 

 

「普通、あんなに酷い事をされたら、誰だって兄だろうが嫌いになるモンだ。

それこそ、「死んじまえ」って思う」

 

 

弥王は言いながら、昨日の京子を思い出した。

あの時の京子は兄を心配する妹の顔をしていた。

確かに気になる事を言っていた気はするが、それは年頃の女の子のちょっとしたお茶目だろう、と弥王は受け取っている。

京子はどんなに酷い事をされても、笹川を―――了平をたったひとりの兄として思っているんだ、今も・・・・・・。

 

 

「だが、(うち)に来てから京子はいつも、お前を心配していた。

怪我してないかだの、風邪引いてないかだの。

一番にお前を心配している」

 

 

弥王がそこまで言うと、了平は驚いたように弥王を見上げた。

弥王はそんな了平に構わず、続けた。

 

 

「校内でお前を見る度に京子は心配そうな・・・・・・それでもって、安心したような顔をする。

どんなに酷い事をされても、やはりお前は兄なんだよ」

 

 

弥王の話を聞くと、了平は俯いた。

どうしてそんなに京子は優しいのだろう、と了平は我が妹の優しさに心を打たれる。

こんなにも酷い事をしてきた俺に一体どうして、そんなに優しい思いを持てる?

そんな事を思っていた了平に目を向けると、弥王は了平の額を小突いた。

 

 

「お前がする事はひとつ。

京子と向かい合い、もう一度、京子を信じる事。

京子は誰でもない、お前を待っている・・・・・・」

 

 

弥王の言葉に了平は顔を上げた。

その顔は不安そうに弥王を見上げている。

弥王は微笑んで言った。

 

 

「なぁに、やれるさ。

心配しなくても、京子はお前を許す。

京子はそんな、復讐するとか惨い事を考えるような子じゃねぇよ。

京子の性格は、先輩が一番よく知っているだろう?」

 

 

何もかもを見透かしたような弥王の言葉に了平は大丈夫だ、とそんな気がしてきた。

不思議と、弥王に「心配するな」と言われると大丈夫だと思えてくる。

弥王はケータイを取り出すと、ブラインドタッチで高速で京子にメールを打つ。

それを送信すれば、直ぐに返信が来た。

内容を確認すると、弥王は了平を見た。

 

 

「さて、「善は急げ」だ。

今日はこのまま授業サボって、遊びに行くぜ」

 

 

ケータイを仕舞うと、弥王は了平に告げた。

弥王の言葉に了平は「とんでもない!」と言いたげな顔で弥王を見る。

 

 

「そんな事!

俺は今日、部活・・・・・・」

 

 

「あのさー」

 

 

了平の抗議を遮って、弥王は了平の肩を叩く。

丁度、低い位置にある了平の肩は叩きやすかった。

 

 

「先輩は肩に力入りすぎ。全体的に力みすぎ。頭固すぎ。

まるで、ドイツパンみたいだ。

京子と和解するのに部活なんて行ってみろ、いつまでも和解するチャンスなくなるぞ。

力抜く時は抜いて、リフレッシュしないと。

今、大切な時じゃん、部活とか気にしてる暇はないだろ」







次回、京子と和解できるのか・・・・・・!?
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