Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~ 作:紅 奈々
分離したモノの架け橋となり、繋ぎ止める和解の虹――――
「弥王君!
・・・・・・それに、お兄ちゃん!?」
屋上の扉が開いて、京子が出てきた。
京子は弥王の姿を認めると声を掛けて、駆け寄ってくる。
その隣に了平の姿を認めると、驚いたように目を見開いて、弥王と了平を交互に見る。
弥王は駆け寄ってきた京子の手を取ると、京子の手と了平の手を繋げた。
「えっ、弥王君?」
突然の弥王の行動に京子は目を点にさせて、弥王をきょとん、と見る。
それは了平も同じ事で、「神南?」と京子と顔を見合わせていた。
弥王は了平に微笑む。
「先輩。
ほら、京子に言って下さい、ありのままの言葉を」
弥王に言われて、その意図をやっと理解した了平は弥王から京子へと視線を向けた。
「京子・・・・・・俺は極限にどうかしていた。
見過ごしていたんだ・・・・・・」
弥王に促されるまま、了平は徐に口を開いて、言葉を紡ぐ。
京子は黙って、了平を見ていた。
「お前を誤解していたのだ・・・・・・。
お前は他人を傷付けるような人間ではない。
今日、神南に改めて言われ、自分の間違いに気付いた・・・・・・。
すまん、京子!!
俺は極限に兄失格だ!!」
慟哭のような声を上げて、了平は京子に謝罪する。
一瞬、京子は驚いたように目を見開いた後、直ぐに優しく微笑んで了平の手に手を重ねた。
「気付いてくれただけで十分だよ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんは私の唯ひとりのお兄ちゃんだよ?
失格も何もあるわけないじゃない」
京子は目尻に涙を浮かべて、言った。
了平は確かに弥王の言うとおり、何も心配しなくて良かったのだと、思った。
「弥王君、ありがとう・・・・・・本当に・・・・・・」
京子は嬉しさのあまり、了平が居る事も気にしないで弥王に抱き着いた。
了平は驚きのあまりに目を見開く。
それもそうだ。自分の妹が、恐らく衝動的ではあるだろうが他人の男に抱き着いたのは初めて見たのだから。
そこまで、京子の心を開かせた弥王を了平は凄い、と感心した。
そこまで妹が心開く人間だ。とても暖かい人間なのだろう。
弥王は抱き着いてきた京子を普通に受け止めた。
弥王の腕の中で一筋の涙を流している京子は幸せそうな顔をしている。
余程、安心できるのだろう、と了平は思った。
弥王はそんな京子の頭を撫でる。
「オレは何もしていない。
ただ、切っ掛けを作っただけだ。
兄妹が不仲なのは、見ていられないからな」
弥王は微笑んで言った。
そんな弥王の脳裏に今はイタリアで頑張っているであろう、姉と兄の顔が浮かんできた。
争奪戦が終わって、この問題が落ち着いてきたら、イタリアに一度、戻ろうかな。
姉の作るアップルパイが恋しくなってきた。
そんな事を思いながら、弥王は京子に言った。
「さーてと!
彼奴らも呼んで、今日はパーッと遊ぼうぜ!!」
弥王が明るい調子で言うと、京子は「うん!」と頷いた。
了平はそんな2人を見て、「おぉーっ!!」と雄叫びに似た声を上げる。
【分離したモノの架け橋となり、繋ぎ止める和解の虹】
――――後の人生で、弥王はそう評価される事になる―――――
それは、遠くて近い、10年後の事だった。
補足
その後、ちゃんと京子は了平に木吉レーナとの事を洗いざらい全て言って、弥王にその証拠映像を見せられ、京子は悪くない、と再認識した。