Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~ 作:紅 奈々
雲雀がまさかのデレぇぇぇぇぇええ!!
いやぁ、作者が自重できませんでした←
標的1
「アップルパイ、久しぶりに食べたいから、作ってよ」
「解った、大人しく待ってろよ?」
雲雀の言葉に弥王は微笑んで快諾した。
「うん、待ってるよ。
弥王には、聞かないといけない事と確かめないといけない事があるからね」
雲雀は目を細めて妖しく笑いながら、低く言う。
雲雀が何を考えているかなんて、この時の弥王は解らずにただ、京子の事だろうと思い、軽く流す体で雲雀の頭をポンポン、と撫でた。
「
話してやるから、大人しく待ってろ」
半ば投げやりに返答して部屋を出ると、弥王はキッチンに向かった。
キッチンに着くと髪を纏め上げて、アップルパイを作る準備を始める。
ふと、弥王はアップルパイを作るのはいつ振りだろう、と考えた。
まだ、雲雀を鍛えていた時、気紛れに作って出したアップルパイを雲雀が気に入って、いつもいつも飽きるくらいに作って食べていた事を思い出す。
雲雀は飽きないのか、ほぼ毎日、アップルパイをリクエストしてきていたな。「美味しい、美味しい」と言って、口の周りに生クリームを付けて食べる様子はとても可愛かった、と弥王はそんな事を思い出して、ふっと笑みを零した。
思い出に耽っている間にアップルパイが焼けて、弥王はアップルパイをオーブンから取り出すと、皿に移し替える。
コーヒーと紅茶を淹れて、それと小皿とフォークとナイフをトレーに乗せると、弥王はキッチンを出て、部屋に向かった。
「お待たせ」
弥王は器用に襖を開けると、部屋に入って卓袱台にトレーを乗せた。
コーヒーを雲雀が座っている目の前に置くと、紅茶をその向かいに置く。
アップルパイを切り分けて、弥王は小皿を雲雀の前に置いた。
「随分と久しく作ってなかったからな。味の保証はできねぇぞ」
自分の分も取り分けて雲雀の向かいに座りながら、弥王は言った。
弥王の言葉に雲雀はアップルパイを食べ始める。
一口、アップルパイを口に放り込めば、リンゴとシナモンの甘さが口の中に広がって、雲雀は至極幸せそうな顔で微笑んだ。
まぁ、雲雀の表情の変化が微妙なので、余程注意して見なければ解らないが。
弥王は「お前の表情筋は大丈夫か?」とふとそんな事を考えてしまった。
「昔と同じだ。
変わらずに美味しいよ」
微笑んで穏やかに言う、雲雀。
再会して初めて、雲雀の穏やかな表情を見た気がする。つられて、弥王の頬も緩んだ。
何だろう、この可愛い生き物は。ふと、弥王はそんな事を思った。
京子と言い、クロームと言い、三浦さんと言い、メリアと言い・・・・・・オレの周りにいる奴ら、可愛くないか?
京子は天使だし、まぁ、最近の京子はちょっと不安定で危ないが、それを差し引いても天使だ。
三浦さんは三浦さんで、中々に可愛い。たまにちょくちょく遊びに行ったり、買い物したりするくらいだけど。
メリアはもう、天使!!可愛すぎる、彼奴は。
一度でも、兄貴がゾッコンだった理由が分かる。
気配り上手だし、頭良いし、ちょっと抜けてる所もまた、萌える。
クロームは大人しくて、上目がちなのがグッと来るよな。クソ・・・・・・っ、骸め、あの野郎これは犯罪だ。
こんな純粋で生粋な
木吉はまぁ・・・・・・あれだ。化粧気がなくて、性格が良かったら、まだ良かったのかも知れない。
化粧はともかく、性格だな、うん。
どちらにせよ、彼奴は許せないが。
「懐かしいな。恭弥を鍛えてた時、お前にせがまれてよく、作ってたな」
思考が別次元に行きかけた弥王は、紅茶を口に含んで、唐突にそんな事を言った。
弥王の頭は放置しておくと、いつも何処かに旅をする。
そして、迷子になって帰ってこなくなる時があるから、気が付いたら、考える事をやめるようにはしているが、この癖のようなモノは仕方がない。
直せるモンなら、直したいモノだ。
「弥王が初めて作ってくれたお菓子だったからね。
それから、好きになったんだ」
「素直な所は変わらないんだな。
ただ、凶暴さに磨きが掛かってるけど」
雲雀の言葉に弥王は笑いながら返す。
どうやら、最後の一言が余計だったらしく、雲雀はふて腐れた様にそっぽを向いた。
その時に、髪のスリットから何かが光を反射して、キラリと輝いた。
弥王はそれがピアスである事が解って、少し雲雀の耳たぶに注目する。
見た事があるそれは、確かあの時に雲雀に上げたモノだった。
「あぁ、これ?」
雲雀は弥王が自分の左耳に注目している事に気が付くと、直ぐにその意図を理解した。
黒い髪を耳に掛ければ、雲雀の耳朶に4つの雫が十字に繋がっている―弥王の左目尻にあるタトゥーと同じ模様の―デザインのピアスが着いている事が解った。
弥王は思わず、微笑む。
まさか、まだそんな物を持っていたなんて、思わなかったのだ。
「まだ、持って居たんだな。
しかも、あれだけピアス嫌がっていたのに」
「当たり前でしょ。
弥王に最後に貰ったモノだから・・・・・・」
微笑む弥王に雲雀はピアスに触れながら言った。
雲雀の言葉にあの日の事が鮮明に思い出される。
弥王に懐いていた雲雀は、弥王がイタリアから帰る事を知ると、弥王をずっと離さなかった。
弥王がどれだけ言っても、雲雀は聞かなかったのだ。
だから、最後の思い出にと、雲雀を連れ回して、最後にピアスを上げて。その時、雲雀は「ずっと、並盛にいればいいのに」とふて腐れていた。
弥王にとっても、確かに良い街ではあったが、あまりにも不良とか柄の悪い人間が居すぎて、住みたいと思えなかったのだ。
それを言えば、「じゃあ、弥王が戻ってくるまでに僕がこの町の風紀を良くする」と言っていたような。
その通り、弥王が久方ぶりに並盛を訪れた時、不良も少なくて、喧嘩などそうそうなく、商店街とかでも活気溢れて良い街になっていた時には驚いた。
「ねぇ、弥王・・・・・・」
昔の感傷に耽っていると、雲雀から声を掛けられて、気が付くと雲雀は卓袱台から身を乗り出していたようで、雲雀の顔が目の前にあった。
弥王の
弥王と雲雀の距離が零になった時、口の端に柔らかい感触を感じた。次の瞬間、生暖かいモノが一瞬だけ触れると、雲雀の顔が離れた。
「恭・・・・・・弥・・・・・・?」
一瞬、雲雀に何されたか解らなかった弥王は呆然と雲雀を見る。
雲雀は何事も無いかのように不敵に笑い、自分の口の端を指しながら言う。
「ふっ、何、その顔。
口の端に生クリーム付けてたから、取っただけでしょ」
無邪気に笑う雲雀に弥王は冷ややかな視線を送った。
それもそうだろう。
いくら、口の端に生クリームを付けていたからって、いきなり今の行動はない。しかも、男同士で。
弥王に同性愛の気もなければ、何も無い。
弥王は冷ややかに納得したように言った。
「ふむ、成る程。
恭弥には同性愛の気があったのか。
さっきは「僕に同性愛の気はないんだけど」とか言ってた癖に」
からかったつもりの弥王の言葉に、不意に雲雀は真剣な顔つきになった。
弥王はその表情を見て、「こいつ、マジ?」と内心、苦笑する。
「そんな趣味はないよ」
雲雀の言葉の後に、弥王の視界は揺らいだ。
景色が反転したかと思うと、視界には雲雀の姿とその後ろに天井が見える。
背中が畳と密着していて、痛みを感じた。
「え・・・・・・?
恭・・・・・・弥・・・・・・?」
突然の出来事に、弥王は状況の整理ができず、ただただ、雲雀を呆然と見上げる事しかできなかった。
ちょ、ひば、ひば、雲雀さんが、雲雀さんがぁぁぁぁぁぁあああ!?
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