Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~   作:紅 奈々

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雲雀がまさかのデレぇぇぇぇぇええ!!
いやぁ、作者が自重できませんでした←


第15楽章 神南弥王
標的1


「アップルパイ、久しぶりに食べたいから、作ってよ」

 

 

「解った、大人しく待ってろよ?」

 

 

雲雀の言葉に弥王は微笑んで快諾した。

 

 

「うん、待ってるよ。

弥王には、聞かないといけない事と確かめないといけない事があるからね」

 

 

雲雀は目を細めて妖しく笑いながら、低く言う。

雲雀が何を考えているかなんて、この時の弥王は解らずにただ、京子の事だろうと思い、軽く流す体で雲雀の頭をポンポン、と撫でた。

 

 

()ーった、()ーった。

話してやるから、大人しく待ってろ」

 

 

半ば投げやりに返答して部屋を出ると、弥王はキッチンに向かった。

キッチンに着くと髪を纏め上げて、アップルパイを作る準備を始める。

ふと、弥王はアップルパイを作るのはいつ振りだろう、と考えた。

まだ、雲雀を鍛えていた時、気紛れに作って出したアップルパイを雲雀が気に入って、いつもいつも飽きるくらいに作って食べていた事を思い出す。

雲雀は飽きないのか、ほぼ毎日、アップルパイをリクエストしてきていたな。「美味しい、美味しい」と言って、口の周りに生クリームを付けて食べる様子はとても可愛かった、と弥王はそんな事を思い出して、ふっと笑みを零した。

思い出に耽っている間にアップルパイが焼けて、弥王はアップルパイをオーブンから取り出すと、皿に移し替える。

コーヒーと紅茶を淹れて、それと小皿とフォークとナイフをトレーに乗せると、弥王はキッチンを出て、部屋に向かった。

 

 

 

「お待たせ」

 

 

弥王は器用に襖を開けると、部屋に入って卓袱台にトレーを乗せた。

コーヒーを雲雀が座っている目の前に置くと、紅茶をその向かいに置く。

アップルパイを切り分けて、弥王は小皿を雲雀の前に置いた。

 

 

「随分と久しく作ってなかったからな。味の保証はできねぇぞ」

 

 

自分の分も取り分けて雲雀の向かいに座りながら、弥王は言った。

弥王の言葉に雲雀はアップルパイを食べ始める。

一口、アップルパイを口に放り込めば、リンゴとシナモンの甘さが口の中に広がって、雲雀は至極幸せそうな顔で微笑んだ。

まぁ、雲雀の表情の変化が微妙なので、余程注意して見なければ解らないが。

弥王は「お前の表情筋は大丈夫か?」とふとそんな事を考えてしまった。

 

 

「昔と同じだ。

変わらずに美味しいよ」

 

 

微笑んで穏やかに言う、雲雀。

再会して初めて、雲雀の穏やかな表情を見た気がする。つられて、弥王の頬も緩んだ。

何だろう、この可愛い生き物は。ふと、弥王はそんな事を思った。

 

京子と言い、クロームと言い、三浦さんと言い、メリアと言い・・・・・・オレの周りにいる奴ら、可愛くないか?

京子は天使だし、まぁ、最近の京子はちょっと不安定で危ないが、それを差し引いても天使だ。

三浦さんは三浦さんで、中々に可愛い。たまにちょくちょく遊びに行ったり、買い物したりするくらいだけど。

メリアはもう、天使!!可愛すぎる、彼奴は。

一度でも、兄貴がゾッコンだった理由が分かる。

気配り上手だし、頭良いし、ちょっと抜けてる所もまた、萌える。

クロームは大人しくて、上目がちなのがグッと来るよな。クソ・・・・・・っ、骸め、あの野郎これは犯罪だ。

こんな純粋で生粋な()、そうそう居ないぞ・・・・・・何処で捕まえたんだよ。

木吉はまぁ・・・・・・あれだ。化粧気がなくて、性格が良かったら、まだ良かったのかも知れない。

化粧はともかく、性格だな、うん。

どちらにせよ、彼奴は許せないが。

 

 

「懐かしいな。恭弥を鍛えてた時、お前にせがまれてよく、作ってたな」

 

 

思考が別次元に行きかけた弥王は、紅茶を口に含んで、唐突にそんな事を言った。

弥王の頭は放置しておくと、いつも何処かに旅をする。

そして、迷子になって帰ってこなくなる時があるから、気が付いたら、考える事をやめるようにはしているが、この癖のようなモノは仕方がない。

直せるモンなら、直したいモノだ。

 

 

「弥王が初めて作ってくれたお菓子だったからね。

それから、好きになったんだ」

 

 

「素直な所は変わらないんだな。

ただ、凶暴さに磨きが掛かってるけど」

 

 

雲雀の言葉に弥王は笑いながら返す。

どうやら、最後の一言が余計だったらしく、雲雀はふて腐れた様にそっぽを向いた。

その時に、髪のスリットから何かが光を反射して、キラリと輝いた。

弥王はそれがピアスである事が解って、少し雲雀の耳たぶに注目する。

見た事があるそれは、確かあの時に雲雀に上げたモノだった。

 

 

「あぁ、これ?」

 

 

雲雀は弥王が自分の左耳に注目している事に気が付くと、直ぐにその意図を理解した。

黒い髪を耳に掛ければ、雲雀の耳朶に4つの雫が十字に繋がっている―弥王の左目尻にあるタトゥーと同じ模様の―デザインのピアスが着いている事が解った。

弥王は思わず、微笑む。

まさか、まだそんな物を持っていたなんて、思わなかったのだ。

 

 

「まだ、持って居たんだな。

しかも、あれだけピアス嫌がっていたのに」

 

「当たり前でしょ。

弥王に最後に貰ったモノだから・・・・・・」

 

 

微笑む弥王に雲雀はピアスに触れながら言った。

雲雀の言葉にあの日の事が鮮明に思い出される。

弥王に懐いていた雲雀は、弥王がイタリアから帰る事を知ると、弥王をずっと離さなかった。

弥王がどれだけ言っても、雲雀は聞かなかったのだ。

だから、最後の思い出にと、雲雀を連れ回して、最後にピアスを上げて。その時、雲雀は「ずっと、並盛にいればいいのに」とふて腐れていた。

弥王にとっても、確かに良い街ではあったが、あまりにも不良とか柄の悪い人間が居すぎて、住みたいと思えなかったのだ。

それを言えば、「じゃあ、弥王が戻ってくるまでに僕がこの町の風紀を良くする」と言っていたような。

その通り、弥王が久方ぶりに並盛を訪れた時、不良も少なくて、喧嘩などそうそうなく、商店街とかでも活気溢れて良い街になっていた時には驚いた。

 

 

「ねぇ、弥王・・・・・・」

 

 

昔の感傷に耽っていると、雲雀から声を掛けられて、気が付くと雲雀は卓袱台から身を乗り出していたようで、雲雀の顔が目の前にあった。

弥王の(うなじ)に雲雀の右手が回され、引き寄せられると、更に雲雀の顔が近づいてくる。

弥王と雲雀の距離が零になった時、口の端に柔らかい感触を感じた。次の瞬間、生暖かいモノが一瞬だけ触れると、雲雀の顔が離れた。

 

 

「恭・・・・・・弥・・・・・・?」

 

 

一瞬、雲雀に何されたか解らなかった弥王は呆然と雲雀を見る。

雲雀は何事も無いかのように不敵に笑い、自分の口の端を指しながら言う。

 

 

「ふっ、何、その顔。

口の端に生クリーム付けてたから、取っただけでしょ」

 

 

無邪気に笑う雲雀に弥王は冷ややかな視線を送った。

それもそうだろう。

いくら、口の端に生クリームを付けていたからって、いきなり今の行動はない。しかも、男同士で。

弥王に同性愛の気もなければ、何も無い。

弥王は冷ややかに納得したように言った。

 

 

「ふむ、成る程。

恭弥には同性愛の気があったのか。

さっきは「僕に同性愛の気はないんだけど」とか言ってた癖に」

 

 

からかったつもりの弥王の言葉に、不意に雲雀は真剣な顔つきになった。

弥王はその表情を見て、「こいつ、マジ?」と内心、苦笑する。

 

 

「そんな趣味はないよ」

 

 

雲雀の言葉の後に、弥王の視界は揺らいだ。

景色が反転したかと思うと、視界には雲雀の姿とその後ろに天井が見える。

背中が畳と密着していて、痛みを感じた。

 

 

「え・・・・・・?

恭・・・・・・弥・・・・・・?」

 

 

突然の出来事に、弥王は状況の整理ができず、ただただ、雲雀を呆然と見上げる事しかできなかった。






ちょ、ひば、ひば、雲雀さんが、雲雀さんがぁぁぁぁぁぁあああ!?
となった方は次の話にGo toして下さい←
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