Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~   作:紅 奈々

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2016年4月12日
誤字を直しました。
少し文章を手直ししました。


第16楽章 次期ルーン家当主争奪戦
標的1


あの騒動から6時間後、弥王と京子は気まずいまま、お互いに何を話すでもなく一緒に登校する。

雲雀とのあの一件があったからなのかよく解らないが、弥王は何を話せば良いか解らず、京子も同じだった。

いつもは色んな話をして、気が付いたら学校に着いていた、なんて良くある事だが、今日は無言の所為か、いつも通っている筈の道のりが遠くに感じた。

 

 

学校に着いて、いつもの仕掛けを解除して教室に入れば、いつもと違う雰囲気だった。

女子が騒がしく、こちらに目を向ける人間が居ない。

いつもは大抵、白い目を向けられるのだが・・・・・・。

不審に思いつつ、弥王は自分の席に座った。

教室の雰囲気がいつもと違う理由は、この後に来た教師の口から語られた。

 

 

「皆、席に着けー。

今日は、留学生が来てるぞー」

 

 

やる気のない退屈そうな顔で、あの薄幸そうな担任が教室に入りながら、騒いでいる生徒に声を掛ける。

そうか、と弥王は教室の雰囲気が違っていた理由に気付く。

今日は、留学生が来るのか。

それにしても、そんな事で騒ぐなんて、余程暇なんだろうな。

留学生に興味もない弥王は、話半分に窓の外を眺める。

今日は一日中快晴で、風も穏やかな一日になるらしい。

今日の天気予報の可愛いお姉さんがそんな事を予報していた。

今日はとうとう、弥王の番らしい。寝る前に璃王から聞かされたのだ。

今日の天気は、夜空と風の守護者戦には・・・・・・否、ルーン家当主の座の争奪戦には打って付けだ、と弥王は思った。

弥王がそんな事を考えていたら、その思考を打ち切らんばかりの黄色い声が女子から上がった。

「イケメン」だの「格好いい」だの女子の絶賛の声が聞こえる。

あーあ、留学生、ご愁傷様。そんな事を思っていた弥王の耳に、教師の言葉が飛んできて、その言葉に弥王は絶句するのだった。

 

 

「イタリアから来た、留学生の神谷璃王君だ」

 

 

弥王は驚愕して目を見開いた。

教師の隣には何と、璃王が居たのだ。

 

 

「な・・・・・・っ、り、璃王!?」

 

 

弥王は驚きのあまり、勢いよく立ち上がって声を上げた。

当の璃王は弥王に視線を向けると、ふん、と笑って見せた。あの時のあの言葉の意味を、弥王は今になって理解する。

あれは、そういう意味だったのか・・・・・・!!

弥王がいきなり声を上げた事に驚いた教師と生徒は、一斉に弥王に視線を向けた。

その視線を浴びて弥王は我に返ると、すとん、と落ちるように席に座る。

教師が「神谷君と知り合いなのか?」ときょとんとした顔で訊いてきたのを弥王は普通にスルーした。

その様子に教師は苦笑を浮かべて、教室中を見回す。

 

 

「えーと・・・・・・神谷君の席だが・・・・・・」

 

 

「せんせぇ!

理絵奈の隣が開いてまぁす♪」

 

 

1人の女子が立ち上がって、挙手した。

確か、彼女は保坂理絵奈・・・・・・そこまで可愛いとは思えないが、何故か木吉に次いで人気のある生徒だ。

その事実を知った時は、このクラスの男子の目は大丈夫か?と思ったものだ、と弥王はその女子を横目で見て、そんな事を考えていた。

璃王はその女子の行動を無視して、弥王の隣の空いた席に移動する。

 

 

「神谷君、君の席は・・・・・・」

 

 

教師が呼び止めるのも聞かず、璃王は弥王の隣の席に座った。

それを見届けた教師は、「あ・・・・・・もう、そこで良いです、はい」と諦める。

教師、どれだけ立場弱いんだよ、と弥王は思った。

 

 

「璃王は初対面の人間・・・・・・特に、脳内快適系キャピキャピ女子が一番嫌いなんです。

隣にいると、じんま疹が出るらしくて。

それにまぁ、璃王も知っている人間が近くに居る方が安心するみたいですし、どうせ、席なんか何処だって差し支えはないですから、ここでも良いのでは?」

 

 

璃王の代わりに弥王がフォローする。

弥王のフォローに教師は「あ、そうですね」と納得したように頷いて、弥王が転入してきた時と同じように、自習と言う名の休み時間を言い渡して、さっさと教室から出て行った。

すると、今までひそひそと話していた女子達が璃王の周りに集まりだした。

璃王の顔がみるみるうちに嫌悪の表情になっていく。

それに気付かないのか、女子達は弥王にしたような質問を璃王にしていた。

人が集まってきただけでも嫌悪を示すのに、更にその上に質問攻めを食らっている璃王は不快の表情を露わに(だんま)りを決め込み、一言も発そうとしない。

そろそろ、助け船を出してやろうか、と弥王が思った時、京子の席から大きな音が響いてきた。

 

 

「また、性懲りもなく木吉の物盗んだんだってな!!」

 

 

それまで大人しかった男子が声を荒げた。

その声の方に目を向ければ、京子が男子に馬乗りにされて、押さえつけられていた。

 

 

「っ、彼奴らっ!!」

 

 

弥王が勢いよく立ち上がると、椅子が大きな音を立てて倒れた。

それに反応した璃王と女子達の視線が集中してくるが、弥王は構わずに京子に馬乗りになっている男子の胸倉を掴み、そのまま背負い投げた。

その状態から手を離さず、弥王はそのままの体勢で男子を押さえつける。

 

 

「京子に何をしようとした?」

 

 

怒気を含んだ目で男子を見下ろせば、男子は怯んだように縮こまる。

ガタガタと震えているのが解ると、弥王はその男子を放置して、京子を押さえつけている男子を引きはがした。

 

 

「女子1人を男子数人で押さえつけるとか、どんだけ卑怯で乱暴なんだよ。

幾ら何でも、非常識なんじゃないか」

 

 

現状を見かねた璃王が初めて声を出した。

幾ら他人に感心がない璃王といえど、女子に対する男子数人の暴行、とあれば黙っては居られなかった。

それは、少なくとも女性を重んじる家系の血筋が関係している。放置はしたいが、本能的に放置できないくらいの生理的嫌悪感を感じるのだ。

それに弥王は「おぉ、璃王が京子を珍しく庇ってる・・・・・・」と心の中で感心していた。

 

 

「大体、何で木吉の言葉しか聞かないんだよ。

お前ら、ちゃんと現実を見たのか?

京子が木吉を虐めて、何のメリットがある?」

 

 

璃王と弥王に言われて、教室中が静かになった。

弥王は尚、続ける。

 

 

「お前らが京子を虐めて、何のメリットがある?

お前らは木吉と一心同体なのか?木吉と同化してるわけ?

お前らが木吉を庇って、京子を虐めるメリットは?」

 

 

弥王の言葉に顔を見合わせて、何かしら言い合っている男子。

恐らくは、木吉を庇って京子を虐める理由でも探しているのだろう。

すると、一つの声が上がった。

 

 

「俺はただ・・・・・・レーナちゃんが好きだから・・・・・・」

 

 

その声に続いて、男子達は思い思いに言葉を紡ぐ。

あぁ、こいつらは木吉が好きなんだな、と弥王はただ、男子達が純粋に木吉の事が好きなのを理解した。

ただ、好きだから。とても単純な理由だ。

 

 

「お前ら、木吉が好きなのは良いが、何か大切な事を見落としてないか?」

 

 

丁度、弥王の目の前に居た3人の男子を見て、弥王は問う。

3人の男子は何とも言えない表情でお互いの顔を見合わせていた。

 

 

「明日、視聴覚室へ来い。そこの女子もな。

面白い物を見せてやる」

 

 

弥王は笑うと鞄を手に持って、何処かで頭を打ったのか気絶している京子を抱き上げて、教室を出ようとした。

そこに、ひとりの男子の声が飛んでくる。

弥王は教室を出ようとした足を止め、振り向いた。

 

 

「神南は何で・・・・・・笹川を・・・・・・?」

 

 

男子は躊躇うように質問してきた。

その質問に弥王は口元に笑みを浮かべて、答える。

 

 

「人を守るのに、理由はひとつだけだろ?

“守りたいから守る”それだけだ」

 

 

至極当然で、単純明快な回答だった。

誰も、守りたくない人間を守る為に動いたりはしない。守りたいからこそ、守るのだ。

それは、質問してきた男子もその周りにいた生徒達も同じ事で、木吉を守りたいから、京子を傷付けて守っていたのだ。

弥王の言葉に何も言えなくなる、男子。

その周りの生徒も、静かに現状を見守るだけだった。

 

 

「璃王、オレと京子は早退するけど、お前はどうする?」

 

 

弥王の問いに「ここに居てもお前らが居ないんじゃ仕方ないからな」と言うと、鞄を取って璃王は立ち上がった。

元々、弥王の護衛監視の為に転入してきたので、璃王は弥王が帰るなら、教室にいる意味もない。

弥王は頷くと、璃王と共に教室を後にした。




@下校時(会話文だけなので、飛ばしても良いです)

弥王「お前、何で学校に来てんだよ?
聞いてねぇぞ!?」

璃王「言ったろ?「ずっとオレが付いてる」って」

弥王「こう言う意味だったのかよ!?
つか、お前もう中学は卒業した筈だよな?
4年前に。」

璃王「いや、懐かしいな。
また、こんな形で中学に行く事になるなんてな」

弥王「いや、流石にお前が学生服着るのはアウトだからな?」

璃王「何だよ、オレだって、まだ学生だぞ?」

弥王「大学生、だろ!」

璃王「同じ様なモンだ」

弥王「ちっがーーーーう!!」


こうして、神谷璃王(19)は学校でも弥王と行動するのであった。
何で中学校に入れたかについては、ご想像にお任せします。
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