Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~ 作:紅 奈々
誤字を直しました。
少し文章を手直ししました。
標的1
あの騒動から6時間後、弥王と京子は気まずいまま、お互いに何を話すでもなく一緒に登校する。
雲雀とのあの一件があったからなのかよく解らないが、弥王は何を話せば良いか解らず、京子も同じだった。
いつもは色んな話をして、気が付いたら学校に着いていた、なんて良くある事だが、今日は無言の所為か、いつも通っている筈の道のりが遠くに感じた。
学校に着いて、いつもの仕掛けを解除して教室に入れば、いつもと違う雰囲気だった。
女子が騒がしく、こちらに目を向ける人間が居ない。
いつもは大抵、白い目を向けられるのだが・・・・・・。
不審に思いつつ、弥王は自分の席に座った。
教室の雰囲気がいつもと違う理由は、この後に来た教師の口から語られた。
「皆、席に着けー。
今日は、留学生が来てるぞー」
やる気のない退屈そうな顔で、あの薄幸そうな担任が教室に入りながら、騒いでいる生徒に声を掛ける。
そうか、と弥王は教室の雰囲気が違っていた理由に気付く。
今日は、留学生が来るのか。
それにしても、そんな事で騒ぐなんて、余程暇なんだろうな。
留学生に興味もない弥王は、話半分に窓の外を眺める。
今日は一日中快晴で、風も穏やかな一日になるらしい。
今日の天気予報の可愛いお姉さんがそんな事を予報していた。
今日はとうとう、弥王の番らしい。寝る前に璃王から聞かされたのだ。
今日の天気は、夜空と風の守護者戦には・・・・・・否、ルーン家当主の座の争奪戦には打って付けだ、と弥王は思った。
弥王がそんな事を考えていたら、その思考を打ち切らんばかりの黄色い声が女子から上がった。
「イケメン」だの「格好いい」だの女子の絶賛の声が聞こえる。
あーあ、留学生、ご愁傷様。そんな事を思っていた弥王の耳に、教師の言葉が飛んできて、その言葉に弥王は絶句するのだった。
「イタリアから来た、留学生の神谷璃王君だ」
弥王は驚愕して目を見開いた。
教師の隣には何と、璃王が居たのだ。
「な・・・・・・っ、り、璃王!?」
弥王は驚きのあまり、勢いよく立ち上がって声を上げた。
当の璃王は弥王に視線を向けると、ふん、と笑って見せた。あの時のあの言葉の意味を、弥王は今になって理解する。
あれは、そういう意味だったのか・・・・・・!!
弥王がいきなり声を上げた事に驚いた教師と生徒は、一斉に弥王に視線を向けた。
その視線を浴びて弥王は我に返ると、すとん、と落ちるように席に座る。
教師が「神谷君と知り合いなのか?」ときょとんとした顔で訊いてきたのを弥王は普通にスルーした。
その様子に教師は苦笑を浮かべて、教室中を見回す。
「えーと・・・・・・神谷君の席だが・・・・・・」
「せんせぇ!
理絵奈の隣が開いてまぁす♪」
1人の女子が立ち上がって、挙手した。
確か、彼女は保坂理絵奈・・・・・・そこまで可愛いとは思えないが、何故か木吉に次いで人気のある生徒だ。
その事実を知った時は、このクラスの男子の目は大丈夫か?と思ったものだ、と弥王はその女子を横目で見て、そんな事を考えていた。
璃王はその女子の行動を無視して、弥王の隣の空いた席に移動する。
「神谷君、君の席は・・・・・・」
教師が呼び止めるのも聞かず、璃王は弥王の隣の席に座った。
それを見届けた教師は、「あ・・・・・・もう、そこで良いです、はい」と諦める。
教師、どれだけ立場弱いんだよ、と弥王は思った。
「璃王は初対面の人間・・・・・・特に、脳内快適系キャピキャピ女子が一番嫌いなんです。
隣にいると、じんま疹が出るらしくて。
それにまぁ、璃王も知っている人間が近くに居る方が安心するみたいですし、どうせ、席なんか何処だって差し支えはないですから、ここでも良いのでは?」
璃王の代わりに弥王がフォローする。
弥王のフォローに教師は「あ、そうですね」と納得したように頷いて、弥王が転入してきた時と同じように、自習と言う名の休み時間を言い渡して、さっさと教室から出て行った。
すると、今までひそひそと話していた女子達が璃王の周りに集まりだした。
璃王の顔がみるみるうちに嫌悪の表情になっていく。
それに気付かないのか、女子達は弥王にしたような質問を璃王にしていた。
人が集まってきただけでも嫌悪を示すのに、更にその上に質問攻めを食らっている璃王は不快の表情を露わに
そろそろ、助け船を出してやろうか、と弥王が思った時、京子の席から大きな音が響いてきた。
「また、性懲りもなく木吉の物盗んだんだってな!!」
それまで大人しかった男子が声を荒げた。
その声の方に目を向ければ、京子が男子に馬乗りにされて、押さえつけられていた。
「っ、彼奴らっ!!」
弥王が勢いよく立ち上がると、椅子が大きな音を立てて倒れた。
それに反応した璃王と女子達の視線が集中してくるが、弥王は構わずに京子に馬乗りになっている男子の胸倉を掴み、そのまま背負い投げた。
その状態から手を離さず、弥王はそのままの体勢で男子を押さえつける。
「京子に何をしようとした?」
怒気を含んだ目で男子を見下ろせば、男子は怯んだように縮こまる。
ガタガタと震えているのが解ると、弥王はその男子を放置して、京子を押さえつけている男子を引きはがした。
「女子1人を男子数人で押さえつけるとか、どんだけ卑怯で乱暴なんだよ。
幾ら何でも、非常識なんじゃないか」
現状を見かねた璃王が初めて声を出した。
幾ら他人に感心がない璃王といえど、女子に対する男子数人の暴行、とあれば黙っては居られなかった。
それは、少なくとも女性を重んじる家系の血筋が関係している。放置はしたいが、本能的に放置できないくらいの生理的嫌悪感を感じるのだ。
それに弥王は「おぉ、璃王が京子を珍しく庇ってる・・・・・・」と心の中で感心していた。
「大体、何で木吉の言葉しか聞かないんだよ。
お前ら、ちゃんと現実を見たのか?
京子が木吉を虐めて、何のメリットがある?」
璃王と弥王に言われて、教室中が静かになった。
弥王は尚、続ける。
「お前らが京子を虐めて、何のメリットがある?
お前らは木吉と一心同体なのか?木吉と同化してるわけ?
お前らが木吉を庇って、京子を虐めるメリットは?」
弥王の言葉に顔を見合わせて、何かしら言い合っている男子。
恐らくは、木吉を庇って京子を虐める理由でも探しているのだろう。
すると、一つの声が上がった。
「俺はただ・・・・・・レーナちゃんが好きだから・・・・・・」
その声に続いて、男子達は思い思いに言葉を紡ぐ。
あぁ、こいつらは木吉が好きなんだな、と弥王はただ、男子達が純粋に木吉の事が好きなのを理解した。
ただ、好きだから。とても単純な理由だ。
「お前ら、木吉が好きなのは良いが、何か大切な事を見落としてないか?」
丁度、弥王の目の前に居た3人の男子を見て、弥王は問う。
3人の男子は何とも言えない表情でお互いの顔を見合わせていた。
「明日、視聴覚室へ来い。そこの女子もな。
面白い物を見せてやる」
弥王は笑うと鞄を手に持って、何処かで頭を打ったのか気絶している京子を抱き上げて、教室を出ようとした。
そこに、ひとりの男子の声が飛んでくる。
弥王は教室を出ようとした足を止め、振り向いた。
「神南は何で・・・・・・笹川を・・・・・・?」
男子は躊躇うように質問してきた。
その質問に弥王は口元に笑みを浮かべて、答える。
「人を守るのに、理由はひとつだけだろ?
“守りたいから守る”それだけだ」
至極当然で、単純明快な回答だった。
誰も、守りたくない人間を守る為に動いたりはしない。守りたいからこそ、守るのだ。
それは、質問してきた男子もその周りにいた生徒達も同じ事で、木吉を守りたいから、京子を傷付けて守っていたのだ。
弥王の言葉に何も言えなくなる、男子。
その周りの生徒も、静かに現状を見守るだけだった。
「璃王、オレと京子は早退するけど、お前はどうする?」
弥王の問いに「ここに居てもお前らが居ないんじゃ仕方ないからな」と言うと、鞄を取って璃王は立ち上がった。
元々、弥王の護衛監視の為に転入してきたので、璃王は弥王が帰るなら、教室にいる意味もない。
弥王は頷くと、璃王と共に教室を後にした。
@下校時(会話文だけなので、飛ばしても良いです)
弥王「お前、何で学校に来てんだよ?
聞いてねぇぞ!?」
璃王「言ったろ?「ずっとオレが付いてる」って」
弥王「こう言う意味だったのかよ!?
つか、お前もう中学は卒業した筈だよな?
4年前に。」
璃王「いや、懐かしいな。
また、こんな形で中学に行く事になるなんてな」
弥王「いや、流石にお前が学生服着るのはアウトだからな?」
璃王「何だよ、オレだって、まだ学生だぞ?」
弥王「大学生、だろ!」
璃王「同じ様なモンだ」
弥王「ちっがーーーーう!!」
こうして、神谷璃王(19)は学校でも弥王と行動するのであった。
何で中学校に入れたかについては、ご想像にお任せします。