Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~   作:紅 奈々

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木吉レーナの正体が今、明らかに―――




第17楽章 生と死の歌(カント・ディ・ヴィータエモルテ)
標的1


「嘘・・・・・・だろ・・・・・・」

 

 

「神南が・・・・・・」

 

 

「女ぁぁああ!?」

 

 

曝された弥王の姿に、獄寺、沢田、山本、了平が声を揃えて絶叫する。

了平に至っては、うむ、それでも京子が幸せならオレは何も言わん!!と間違った方向に話を捉えて、心の中で頷いていた。

途中で合流したクロームと京子はただ、呆然と目を見開く。

そんな、弥王が女だったなんて。

京子とクロームは、ショックを隠しきれない。2人の恋はあっけなく崩れ去ったのだ。

そして、京子は、昨日の出来事が誤解だったのだ、と悟った。

雲雀は弥王が女だと、知っていたんだ。そう思えば、昨日の状態も少しは理解できた気がして、昨日は弥王を助けるべきだった、と後悔し始める。

更にそれを思えば、メリアと犬、千種の弥王に対する呼び方に違和感があったのも、頷けた。

「ミオン」と「弥王」。

一文字違いだが、「ン」が在るのとないのとでは、聞こえ方が違う。

 

 

「さーって、本性曝した(トコ)で・・・・・・」

 

 

ギンッ、と効果音が付きそうな勢いで、弥王―――基、ミオンは木吉を睨む。

視線は、触れただけでも切れてしまいそうなくらいに鋭く、凍傷を起こしそうなくらいに冷たく鋭い。

まるで、刃のようだ、と表現するのが妥当かも知れない。

もっとも、月明かりだけの暗い室内で更に距離を置いている上に暗がりでは目が利かない木吉には、ミオンが睨んでいる事など、解りはしないのだが。

解るのは、気圧のように全身に掛かるような圧力と、肌に棘のように刺さる、痛いくらいの殺気、背筋が凍るくらいの恐怖感だけだ。

木吉は、得体の知れない恐怖に冷や汗を流す。

 

 

「レオナ・ルーンと言えば、ルーン家最下と言われる、ルーンの血筋が殆ど流れていない、忘れ去られたルーン氏族の中の一つの家系の一人娘・・・・・・もう、9年も前に滅びた筈だが?

まさか、偽物か?」

 

 

鋭い殺気を滲ませた低い声に、木吉は怯えたように怯む。

ミオンは更に続けた。

 

 

「オレの知るレオナ・ルーンは、薄紫のウェーブが掛かった髪に目は澄んだ蒼色だった筈。

所がお前は茶髪の巻き毛に黄色の大きな上目・・・・・・彼女とは、ほど遠い」

 

 

首を振って見せる弥王の脳裏には、最後に会った、神秘的な雰囲気の少女の姿が描かれていた。

朝露に光る紫陽花の様に綺麗な薄い紫のウェーブが掛かった髪に、蒼穹を思わせるかのような澄んだ蒼の瞳。

ルーン家の家系は、部分的に先祖と似てしまう為、紫系統の髪に緑か蒼い目を持った人間が多い。

一部だけ、稀に蒼い髪の人間が生まれて来る事もあるが、殆どが祖先に似てしまうのだ。

その中でも、ミオンは先祖返りだった。完璧に先祖と同じ姿を受け継いだのだ。

 

 

「私はレオナ・ルーンよ!!」

 

 

尚も、木吉は言い張る。

すると、木吉は頭に手を乗せて、その髪を引っ張った。

その髪は、ウィッグだったらしく、するり、と頭から落ちていく。

目に指を入れると、コンタクトのような物が目から出てきた。

今までの姿は変装だったらしく、その変装は解かれた。

その素顔に、今度はミオンが絶句する。

変装の下から現れたのは、薄紫のウェーブが掛かった髪に、蒼く目尻の垂れた目。

ミオンと似たような姿が曝された。

 

 

「・・・・・・っ!!・・・・・・レ・・・・・・ナ・・・・・・!?」

 

 

ミオンはただ、呆然と木吉―――基、レオナ・ルーンを見つめた。

目の前に居る彼女は紛れもなく、自分の親戚であり、自分と友好的な関係であった、レオナ・ルーンだ。

ミオンは、目の前に居る親戚の名前を呟く。

そんな、馬鹿な。目がそう言っていた。

まぁ、どちらにしろ、とミオンは頭を切り換える。

ここまで来たのだ。

引き下がれないし、そんな気は更々ない。

自分の前に刃向かうというのなら、徹底的に潰す。

 

 

漆黒のヴァイオリン(ネーロ・ヴィオリーノ)!」

 

 

ミオンは、何処からともなく真っ黒なヴァイオリンを取り出した。

そのヴァイオリンの本体のボディには、弥王の右目尻にある白い模様と同じ模様が左右対称に描かれている。

ヴァイオリンを構えた。

 

 

「さーて。

“真実のみを映し出し、虚実を払う超新星爆発”でも体現しようかな」

 

 

ヴァイオリンの弓を顎に宛がい、弥王は考える仕草をする。

その瞬間に、木吉が銃を放ってきた。

弥王はそれをひらり、と躱す。

 

 

「一応、基礎だけはできる程度・・・・・・お前、銃の扱いに慣れてないな?」

 

 

ミオンはニィ、と口角を上げると、後ろに跳躍し、着地する。

時々不安定なレオナのモーションを見て、レオナが銃の初心者である事を見抜いた。

ミオンが着地した時を見逃さず、レオナは引き金を引く。

 

 

「図星か。

まず、利き手のホールドが甘い。重心が疎らで――――――」

 

 

ミオンはレオナに銃の扱い方をレクチャーするかのような口ぶりで言葉を出す。

そんな余裕そうなミオンの言葉に苛々し出す、レオナ。

レオナの後ろにミオンは回り込んで、ミオンはレオナの右の軸足を蹴り払う。

 

 

「きゃ・・・・・・っ!!」

 

 

「無防備。お前には銃は向いていないようだな」

 

 

レオナが倒れたのを逃さず、ミオンはレオナの頭に銃を突き付けて、見下ろす。

その顔には微笑みが湛えられているが、その微笑みは冷笑に近かった。

いきなり、レオナの背筋に恐怖が伝う。

それはゆっくり、確実にレオナの体を蝕んだ。

 

 

「さて。

オレは今朝、思い出した事があるんだが・・・・・・“何故、京子を守る”か、だ。」

 

 

いきなり、何の脈絡もなく、ミオンはそんな事を言い出した。

その言葉にレオナと沢田達と京子が反応する。

 

 

「よく考えてみれば、転入した時にオレは周りの言葉を信じて、お前らの味方に付く事もできた筈だ。

それでもオレは、京子の話を聞いて、京子に付いた。

まぁ、それは星の使命が真実を映し出したからではあるのだが・・・・・・なぁ、京子。

この顔に見覚えはないか?」

 

 

「えっ!?」

 

 

後半の言葉は京子に向けられた言葉だ。

その言葉に対して、沢田達が反応する。

笹川がこの場にいる!?沢田達は信じられない様子で周りを見渡す。

すると、璃王が幻覚を解いて、霧の中から京子の姿が出てきた。

 

 

「さっ・・・・・・笹川・・・・・・!?」

 

 

「京子!?」

 

 

驚愕に声を上げる沢田と了平に構わず、京子はモニターを見上げた。

モニター越しのミオンは、柔らかく微笑んだ。

そのミオンの柔らかい微笑みに、京子の脳裏に一つの記憶が砕けた。

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