Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~ 作:紅 奈々
標的1
「さて、帰るか。
璃王の紅茶と何か甘い物が食べたい」
璃王を立たせると、ミオンは璃王の手を引いて、歩き出した。
普通に見ると、その姿は仲の良い兄妹か恋人のようにしか見えない。
ミオンはメテーオラにレオナを連れて帰るように指示を出した。
レオナには訊かないといけない事が山ほどある。目が覚めたら、質問攻めだ。
「ちょっと待って!!」
所が、ひとつの自分を呼び止める声にミオンは立ち止まる事を余儀なくされた。
ミオンは内心、舌打ちする。早く帰りたいのに呼び止めるんじゃねぇよ、とでも言いたげだ。
振り返れば案の定、沢田がそこに居た。
「あ・・・・・・あの、取り敢えず・・・・・・ありがとう・・・・・・で、良いのかな・・・・・・?
その、戦ってくれ・・・・・・」
沢田の言葉に虫酸が走り、ミオンはそれを遮るように盛大に溜息を吐いた。
どれだけ、自分に都合良く解釈しているんだ、このサイヤ人は。
「別に、お前の為じゃない。オレはオレの目的の為に参加したまでだ。
礼を言われる覚えもねぇし・・・・・・言っただろう、オレはこの争奪戦の後、ヴァリアーに行く、と。
お前らと仲間ごっこは死んでもごめんだ」
沢田の勘違いを訂正するように、ミオンは言った。
勘違いされては困る。オレが行きたいのは、最強のボンゴレだ。
沢田が思っているような生温いボンゴレじゃない。
ミオンは初めて、沢田に目を向けた。
「彼奴を生かしたのも、お前らや彼奴を許したわけじゃない。
どうしてもオレを仲間に引き入れたいなら、その罪に平伏せ。
そして、お前らの作るボンゴレが最強であると、オレに証明して、もう二度と、同じ事をしないと誓え。
それが、お前の責任だ、沢田綱吉。
話はそれからだ。
オレは別に、ルーン家の当主になれればそれで良い。
夜空と風の守護者など、唯のおまけに過ぎないんだよ」
「神南さん・・・・・・」
沢田は顔を上げて、ミオンを見つめた。
男の時とは明らかに違う容姿。
初めて見る右目は、吸いこまれそうな程に綺麗な色をしていた。
ただ、割と粗暴な口調は、神南弥王と変わらない。
言っている事は粗暴だが、ミオンは無意識のうちにボンゴレに入る事を承諾していた。
認めない、と言っているのは、口先だけなのだろうか、と沢田はふと思った。
沢田の実力次第では、ボンゴレに入っても良い、とミオンは言ったのだ。
近くにいたリボーンもその言葉を聞いて、少しは安堵していた。
「解ったら明日、視聴覚室に来い。
お前ら2人もだ。
全く、お前らはここ一週間、学校休んで修行も良いが、学生の本分は学業だろ。
お前らのノート書かされるオレの身にもなれ。
何が悲しくて、3人分のノートをとらにゃならんか。
本当に死んでくれ」
「じゃあな」とぶつくさ文句を言いながら、ミオンは璃王の手を引いて、沢田から離れた。
沢田は、ミオンがそれ程悪い人間じゃないのだと知らされたようで、今まで自分たちがしてきた事は何だったのだろうか、と考え始めた。
それから綱吉は、ミオンの姿が見えなくなるまで見送ると、自分も獄寺、山本と了平、リボーン、コロネロとバジルと共に、始終無言で帰路に就いた。
分かれ道で「また、明日」と挨拶を交わすと、リボーンと綱吉、バジルだけになった。
ずっと、誰も喋らずに無言が続く中、綱吉は思考に耽っていた。
勿論、明日の争奪戦の事も気になるが・・・・・・神南の言葉とこれから来るであろう、リボーンからの詰問を考える。
これは、自業自得なのかも知れない。何も知らなかった自分たちの所為でもあるのだ。
「ミオンはな・・・・・・昔、エストラーネオで人体実験を受けていたそうだ」
家に帰って、綱吉の部屋で二人きりになった時、ポツリ、と沈黙の中にリボーンが言葉を落とした。
突然にリボーンが話し出して、綱吉は呆気に捉える。
それに構わず、リボーンは続ける。
「もう、9年くらい前になるか。
ミオンは、エストラーネオに家を襲撃されて、その過程で誘拐された。
目的は、ミオンの誘拐だ。
璃王が言っていたが、ミオンには特別な声質が混ざっている。それを狙われたんだ。
ミオンの両親はヴァリアーの前ボスとボンゴレの夜空と風の守護者でな。
ミオンが攫われた以外は本家には被害がそう無かった」
前触れもなくいきなり、リボーンの口からミオンの過去について語られる。
綱吉はリボーンの話に耳を傾けた。
「ミオンが攫われた事で、ミオンの救出が騒がれたが、九代目は事もあろうかミオンの救出を渋ったんだ」
リボーンの言葉に綱吉は、「え・・・・・・?」とリボーンを見る。
リボーンの話が本当ならば、九代目はミオンを・・・・・・自分の部下の子供を見捨てた事になる。
そして、綱吉はミオンがボンゴレを毛嫌いしている理由が何となく読めた。
助けて貰えなかったから、ボンゴレを嫌っているのか・・・・・・?
リボーンは、綱吉の思考が解ったのか、首を振る。
「ミオンはそんなちゃちな理由でファミリーを嫌うような、そんな小せぇ人間じゃねぇ。
ただ、ミオンを救出しなかったのは、大事なマフィアとの取引があったり、それと穏健派を名乗っていたから、下手に敵対でないファミリーに手を出せなかったんだ。
かと言って、エストラーネオは味方でもねぇ。
事実上、自分の面子の為に九代目はミオンをエストラーネオに売った。
九代目と部下の間でミオンを助けるかという議論が出て、一年になる頃にその状況に見かねたヴァリアーがエストラーネオを壊滅させ、ミオンを助け出し、暫くミオンはヴァリアーに預けられていた」
綱吉は意外な事を聞いて、リボーンを注視した。
あの残虐非道な連中が何の見返りもなく、幾らボスとは言え、他人の子供を助けた上に保護をするだろうか。
リボーンが嘘を吐いている様でもない。
リボーンの次の言葉に綱吉は納得した。
「ミオンが生まれた時から、ヴァリアーはミオンと面識があってな。
ミオンは誘拐以前から、ヴァリアーとも交流があり、一番のヴァリアー贔屓だったんだ。
小せぇ頃からヴァリアーに入りたがってたらしいしな。
まぁ、そんな事もあって、ミオンはあまりボンゴレの事は良く思っていなかったし、その事件からミオンは尚、ボンゴレに反感や恨みを持った。
だから、ミオンはボンゴレに付きたがらなかったんだ。
今でも、ヴァリアーに付きたがっている。
ミオンの言っていた、「真実と虚実も見分けられないような」っつーのは、お前の事だな、ツナ。
これまでの話、全て嘘偽りなく話せ」
それから、綱吉はリボーンに全て話した。
木吉レーナが転入してきた時の事、その後で笹川京子が木吉レーナを傷付けたから、その日から木吉レーナの味方をして、笹川京子を虐めていた事、その時、笹川京子の話を聞いていなかった事。
それから今日までずっと、木吉を信じていた事、ミオンが来て、ミオンが笹川に付いたから、一緒に標的にした事。
ミオンに言われた言葉。そして、木吉がミオンに告白されて、振った事でミオンが逆上して木吉を襲いそうになった事があったこと、それを鵜呑みにした事。
綱吉は、今までの事を全て洗いざらい告白した。
それまで、リボーンは黙って綱吉の言葉を聞いていたが、徐に銃を取り出してその銃口を綱吉に向ける。
「今まで、何故黙っていた?
自分で判断つかねぇなら、相談すりゃ良かったモンを。
まぁ、気付いてたのに何も言わなかった俺も非はあるが・・・・・・お前、ミオンと京子に謝罪する気はあるのか?」
銃を向けたまま、視線を逸らす事もなくリボーンは綱吉に問うた。
まさか、ここまで大きな事件になるとは思わなかったのだ。早くに手を打っておくべきだった、とリボーンは今更ながらに後悔する。
銃口を向けられた綱吉は顔を蒼くして、頷いた。
「明日・・・・・・学校に行って全てが解るなら・・・・・・俺がしてきた事が間違いだって解ったら、ちゃんと謝罪して・・・・・・償うよ。
笹川・・・・・・京子ちゃんともまた、やり直せる物なら、やり直して、神南さんともやり直したい。
元の関係には無理かも知れないけど、少しずつ、どれだけの時間を掛けても、そうしていきたい」
ゆっくりと口を開いて、言葉を紡いでいく、綱吉。
その綱吉の回答にリボーンは口元に笑みを浮かべた。
この家に来て・・・・・・いや、去年から久しぶりのリボーンの笑顔に綱吉は目を見開く。
どうやら、リボーンは許してくれたらしい。
「そのつもりなら、もう俺は何も言わねぇ。
ミオンがそれでお前を許すなら、俺もこの件は目を瞑っといてやる。
ただ、ミオンも言っていたが、二度と同じ事はしてくれるなよ。
次に同じ事をすれば、お前のド
それだけを言うと、リボーンは綱吉の部屋を出て行った。
久しぶりにリボーンとまともに話し合う事が出来た綱吉は、明日学校に行く為に少しでも早く寝ようと、布団に潜って眠りに就いた。