Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~ 作:紅 奈々
何か、思っていたのと展開が違う様な・・・・・・;;
まぁ、いいや、気にしない方向で←
「ミオンちゃん」
時間はリング戦が終わり、ミオンが自室で璃王と共に先の約束通り、紅茶を入れてもらっていた時だった。
丁度、璃王がクッキーを焼いてテーブルに持ってきた時に、ノックの後に京子の声が聞こえた。
特に璃王が居る事も気にする事もなく、ミオンは「どうぞ」と扉の向こうに声を掛ける。
本当は気まずいのだが、問題を先延ばしにしても意味はない。遅かれ早かれ、この問題は訪れてくるモノなのだ。
返事を貰い、京子は扉を開けて部屋に入ってきた。
ミオンの隣に璃王の姿を認めると、京子は余計に気まずそうに「明日、また来るね」と部屋を出ようとした。
それをミオンは呼び止める。
「今の内に重要な事は話しておいた方が後腐れ無くて良いと、オレは思うんだけどな?
例えば、オレが何故、京子に本当の事を黙っていたのか、とか」
ミオンのその言葉に、京子は足を止めた。
振り返ると、ミオンはただ、無表情に京子を見ている。
無言の状態が続くと、璃王はミオンと向かいの椅子を引いて、簡易キッチンに引っ込んでいった。
「まぁ、座りなよ」とミオンは璃王が引いていった椅子を指す。
言われるままに京子はその椅子へ歩くと、浅く腰掛けた。
「すまない。騙すつもりは無かったが・・・・・・まぁ、黙っておいた方が良いと思っていた。
オレは、死んだ事になっているからな・・・・・・表向きは」
話を切り出すと、京子は驚いたようにミオンの顔を凝視した。
構わずにミオンはこれまでの経緯を説明する。
幼い頃に家を別のマフィアに急襲されて、自分が誘拐された事以外は特に被害もなかった事。
人体実験の内容は暈かして、その後に今回戦っているヴァリアーの人間に助けられてそこで暫く世話になっていた事。
ヴァリアーの離隊とフリーの殺し屋として過ごしていた時、リボーンと出会った時、その後でまたヴァリアーに復隊したが、また離隊させられた事。
その間に雲雀と出会った事、雲雀との生活、そして、イタリアに戻り、フリーの殺し屋として過ごしていた事。
そして、門外顧問から直々に沢田綱吉の守護者になってもらいたい、と懇願され、沢田の出方次第で考えよう、という交渉のもと、沢田の観察の為に並中に来た事。
洗いざらい、全てを京子に語った。
京子は何も言わずにミオンの話を聞いていたが、話を聞き終わった後で腑に落ちない所があったのか、納得していない様な顔をしていた。
そう。京子が一番聞きたいのは、今までの軌跡のじゃなくて、どうして、ずっと黙っていたのか、だ。
「黙っていた方が良い」なんて、ただのミオンのエゴでしか無く、京子には納得のいかない回答だ。
京子はポツリと言った。
「それでも、こっそり言ってくれれば良かった。
そしたら、私は誰にも言わなかったし、それに・・・・・・」
京子はその後の言葉を呑み込んだ。
「私だって、こんな思いはしなかった」。これは、ミオンに言うべきではない。勝手に自分が惹かれて、勝手に期待して、苦しくなって壊れた事だから、ミオンには何も言う必要は無い。
京子の言葉の後に重たい沈黙が流れる。
いつまで、そうしていただろう。
不意に簡易キッチンの方から、「チン!」とオーブン特有の軽快な音が鳴って、暫くして璃王がティーポットとお菓子とティーカップを持ってきて、テーブルに置いた。
「あまり、コイツを責めてやらないでくれ」
不意に、沈黙は璃王によって破られた。
京子はテーカップに紅茶を注ぐ璃王の横顔を見た。
それに構わず、璃王は紅茶を注ぎ終わると、ソーサーに乗せたそのティーカップを京子の前に置く。
彼は感情の読み取れない説明口調で淡々と言った。
「コイツは、あの事件があった後、軽い記憶障害があってな。記憶の改竄や欠落が度々見られていた。
特に、マフィアとして関わっていなかった者の記憶については喪失レベルになかった。
今は徐々に記憶を取り戻しつつはあるようだが・・・・・・それでも、未だに完全には記憶は戻っていないらしい」
「璃王・・・・・・!!」
余計な事は言うな、と言わんばかりにミオンは璃王に抗議するように声を上げた。
そのミオンを璃王は黙ってろ、と言いたい様に片腕を広げて制する。
そして、驚く京子を尻目に構わずに話した。
「ミオンは覚えていなかったんだよ。一般人の従兄妹であるお前らの事を」
璃王の言葉を聞いて、京子は固まった。
その顔は、ショックとも困惑とも取れる様な顔で、ミオンは京子の顔を直視できずに顔を背ける。
自分が記憶障害だなんて、京子が聞けばショックを受けるかも知れない。
小さい頃、仲が良かったのもあり、そう思ってミオンは記憶障害の事は隠しておく筈だった。
別に隠しておいた所で、何の支障もないだろう、とミオンは見ていたから。
璃王は肩越しにミオンに目を向けた。
「お前の事だから、隠し通しておこうとか甘い事を考えそうだったからな。
ちゃんと真実は知らせるべきだ。じゃないと、コイツの為にはならないぞ」
冷たく聞こえる璃王の言葉は、京子の為を思って言われた言葉に聞こえるが、ミオンの為を思って言った言葉でもあった。
幼い頃のミオンと京子がどれだけ仲が良かったのかは、璃王も知っている。何年も連絡が途絶えていた仲の良い親戚と再会すれば、思い出話なども普通に出てくるであろう。
それはミオンにとっては避けなければならない事であった。
もし、何らかの拍子に一気に記憶が戻って、ミオンがパニックに陥る事があれば、誰も対処も出来ない。
いきなり多くの記憶を戻す事は、ミオンにとって負担にしかならない筈だ、と璃王は考えていた。
だからこそ、下手に隠さずに京子には記憶障害である事を言っておく必要があると、璃王は判断したのだ。
ミオンは「解っている」以外、何も言えなかった。
「まぁ、思い出せなかったのは、お互いに仕方の無かった事として何も言及しない方が良いだろうな。
つっても、これ以上何を言及するのかっつー話だけど。
それと、オレの事は思い出せないか、京子?」
璃王に問われて、京子は璃王の顔をマジマジと凝視した。
たっぷり10秒は見つめるが、京子は力なく、首を振る。
京子の思い出せない、と言った表情に璃王はやはりな、と肩を竦めた。
「思い出せないのも無理はねぇな」と璃王は言うと、眼帯を外して前髪を掻き上げた。
京子は改めて璃王の顔を見ると、驚いた様に目を見張る。
曝された璃王の右目は燃える様な紅で、その目尻に桜の花びらを十字に並べたタトゥーがある。
京子は穴が開くほど、璃王の顔を凝視した。
「リ・・・・・・・・・・・・く、ん・・・・・・?」
京子は何かを呟いたが、その声は拾われなかった。
どうやら、何かを思いだしたらしい、と言う事だけは璃王にも解った。
「京子」
少しの沈黙の後、璃王は微笑んで京子の名前を呼んだ。
淡く凛々しいその微笑みに、京子は記憶が手繰り寄せられる。
そして、その口からは自然的に言葉が零れていた。
「リオン君・・・・・・!!」
京子の言葉に璃王――――基、リオン・ヴァルフォアは京子の頭を撫でた。
そう、リオンはミオン経由で何度かミオンの家に来ていた京子とも交流があったのだ。
ミオンほどに親しい仲ではなかったが、そこそこ遊んだりもしていた。
京子はミオンの記憶を封じると共に、リオンの事もだんだん忘れていってしまっていたのだ。
まるで不思議な巡り合わせに、京子は微笑んだ。
もう二度と、会えないだろうと思っていた。なのに今、こうして三人でまた会える日が来るなんて。
京子はその日から、今まで通りにミオンと接するようになり、リオンとは割と距離が縮まった様な気がした。
ミオン・ルーン(14)
ボンゴレの夜空と風の守護者。
緩くウェーブがかかった紫の太腿辺りまでの髪に青と緑のオッドアイが特徴。
学校には、「神南弥王」として今まで通り男装に右目を隠しているスタイルで登校。
京子のいとこである事が発覚している。