Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~ 作:紅 奈々
午後11時前。ミオンは既に並中に来ていた。
屋敷に戻るのが面倒くさかったミオンは、あれから、スクアーロと別れた後に並中の応接室に引き籠もっていた。
ミオンは時間を確認すると、ソファから立ち上がった。
「リング戦が始まるが・・・・・・恭弥はどうする?」
扉に向かいながら、ミオンは雲雀に声を掛けた。
昨日、雲雀が学校に居たと言う事は、雲雀も関わりを持っている、否、守護者なのだろう、とミオンは思った。
そうでなければ、夜中の並中にいる筈がない。幾ら、雲雀が学校が好きだとしても。
それを踏まえた上でミオンは雲雀に声を掛けたのだ。
雲雀は「屋上から見学しとくよ」とだけ言って、直ぐさま書類に目を向けた。
その雲雀に何も言わずにミオンは応接室を出て、外へ向かう。
ミオンが校舎から出て行った時には既に、沢田達とリオン、京子の姿もあった。
山本とスクアーロが何か話している様だが、その話は聞き取れない。
直ぐにミオンはそこに走り寄った。
「よぉ」
ミオンが一声掛けると、リオンが「遅ぇんだよ」と零した。
それに「悪い、悪い」と軽く謝る、ミオン。
不意に獄寺に視線を向けると、ミオンは目を見開いた。
「お前、何でミイラになってんだよ?」
驚いた声でミオンは獄寺に問うた。
それもそうだ。昨日のミオンの声質の治癒力により、ミオンの争奪戦に参加した人間は敵味方問わずに傷を治した筈だ。
不本意ではあったが。
獄寺もあの場に居たのだから、治っていないと可笑しい。
それを証明する様に、了平の傷は癒えている。
それなのに、獄寺だけが不自然に包帯がぐるぐる巻きになっている。
獄寺は「うっせぇ」と一蹴するだけだった。
「ミオンに心底、嫌われてるからコイツだけ治らなかったんだろう」
リボーンが解釈する。
それなら、レヴィが治っている事自体が可笑しいのだが・・・・・・とミオンは思ったが、その事に触れるのはやめた。
O.C.波には、まだ解明されていない謎が多く残っている。
今、推測を重ねた所で、何の意味もないとミオンは判断した。
「まぁ、良い。
取り敢えず、今日のフィールドは何処だ?」
ミオンは、辺りを見回す。
何処を見ても、今までの様なそれらしいフィールドは見当たらなかった。
もしかしたら、雨の守護者戦はフィールドの用意が間に合わなくて、延期若しくは別の守護者戦を組み込む・・・・・・なんて、計画性の無いようなことはしないだろうな?とミオンは思った。
まぁ、そんな事があれば、チェルベッロの計画性を疑うが。
ミオンの問いに答える声が聞こえた。
「今宵は校舎B棟にて対戦を行いますので、そちらへお越し下さい」
不意に聞こえた声に、ミオンは空を仰いだ。
それに倣う様に、沢田達も上を見上げる。
スクアーロの隣にいつの間に来ていたのか、チェルベッロの一人が立っていた。
チェルベッロの気配に気付かなかったミオンは、チェルベッロが相当な手練れである事を直感する。
もし、彼女と戦おうモノなら、ミオンも本気で掛からねばならないであろう。勿論、チェルベッロに敵うとも思えない。
チェルベッロの言葉にスクアーロは、「それは何処だぁ!」と訊ねる。
チェルベッロは「こちらです」と対応して、スクアーロを導こうと跳躍する。
「今日が貴様の命日だぁ。
精々、ミオンが恥じない様な戦いをしろよぉ?」
挑発する様に吐き捨てると、スクアーロはチェルベッロが消えていった方向へ消えていく。
スクアーロの言葉の意味が解らない山本は、首を傾げながらも校舎B棟へ歩く。
沢田達もそれに続いた。
例え敵だろうが、ミオンが恥をかく様な事は許さない、スクアーロはそう言っていた。
スクアーロの言葉からは、ミオンに対する何かしらの特別な感情が窺えた気がした。
「な・・・・・・っ、何これ~~~~~~!?」
「騒ぐな」
「へぶっ!!」
校舎B棟に着いて、最初に声を上げたのは沢田だった。
それに冷静なツッコミを入れたのは、ミオン。
沢田はミオンに叩かれた為、奇声を上げてその場に悶えてしまった。
廃屋の様な雰囲気の校舎は窓が塞がれて、入り口も頑丈な鉄の扉に改造されていた。
外見からしてただならぬ雰囲気を醸し出しているそれは、本来の形を留めていない。
それは、入り口から校舎内に入って初めて解った。
「こっ、これは!!」
「原型すらねぇじゃねぇか!!」
校舎の中は隕石でも落下したのかと思うくらい壊滅的に破壊され、最上階の屋根が見えている。
辛うじて足場として残っている床だったモノからは、上から流れ続けている水が伝ってミオン達の居る足場に水たまりを創っていた。
校舎の原型を壊してまで創られたフィールドには、既に到着していたスクアーロと他のヴァリアーの幹部が集まっている。
彼らは、沢田達を見下すかの様に視線を投げてきた。
チワワの集団にガンを付ける狼――――不意にミオンの中にそんな構図が浮かんできた。
「ミオンのお陰ですっかりキズも良くなっちゃった。
って、何か一人だけボロぞうきんみたいなのが居るんだけど。
どうしたの、それ?」
ベルフェゴールが挑発するかの様に獄寺を見ながら言った。
彼の言ったとおり、外見上では既に怪我が無い様な状態なのが窺える。
ベルフェゴールは、獄寺との戦いの際にそれこそボロぞうきんになっていた筈だった。
ベルフェゴールに噛み付く様に「彼奴~~~っ!」と獄寺が睨む。
睨まれた本人はそれを鼻で笑っている。
「静粛に。今宵の対戦フィールドの説明をします。
今宵の対戦フィールドは「アクアリオン」。
特徴は立体的な構造、そして密閉された空間に止め処なく流れ落ちる大量の海水です」
チェルベッロが出てきて、場を諫めるとフィールドの説明を始める。
「最上階のタンクより散布される水は一階より溜まり、勝負が続く限り水位は上がり続けます」
チェルベッロの説明に、了平が「まるで沈没船だな」と呟く。
戦闘が長引けば足場が無くなって行く。
どんな状況だろうが任務を完遂してきたスクアーロはともかく、戦いに不慣れな山本にはきつい戦いになるだろう、とミオンは想定した。
早期決戦―――山本が勝つには、それしかない様に思える。
戦闘が長引けば長引くほど、山本の勝率が下がると、ミオンとリオンは思った。
「尚、規定の水位に達した時点で、獰猛な海洋生物が放たれます。
言うまでもないですが、敗者やその時点で勝敗が付かなかった場合、二人の守護者の命は保証されません」
チェルベッロは大まかな説明を終えると、「それでは、守護者以外の方はフィールドから退散して下さい」と守護者以外の退場を促す。
その言葉の通りにスクアーロと山本以外は校舎から出て行った。
観覧席には大型のモニターを設置していて、そこから対戦の様子が見られる様になっている。
ミオンは最後にスクアーロを振り返ると、言いようのない不安を押し殺す様に扉を閉めた。
「それでは、雨の守護者、S・スクアーロVS山本武、
チェルベッロの逞しい声と共に、ミオンにとって長く、そして絶望的な夜が始まった――――――。
メテーオラ(18)
ミオンの執事。
エストラーネオファミリー出身で、人体実験の被験体だった青年。
黒縁眼鏡が本体、と言われているくらいにネタキャラ扱い。
唯一、扱いが杜撰な可哀相な執事。
密かにメリアに気がある様だが、全く相手にされていない。
彼が幸せになれる日は来るのだろうか・・・・・・(汗)