Preghiera di duo~月に祈りを星に願いを~   作:紅 奈々

79 / 84

10月3日(月)
手直し済み。



標的6

驚愕に、その場に水を打ったかの様な静寂が流れる。

ミオンは、信じられない、と言った様な、愕然とした顔でXANXUSを見た。

 

 

「何故だ!?」

 

 

「喉から手が出る程に、XANXUSはボスの座を欲していた筈・・・・・・!

なのにどうして・・・・・・?」

 

 

ディーノとバジルが、驚愕のあまりに声を上げた。

ボスの座を欲していたから、リングを奪いにきて、こうなったんじゃないのか?

XANXUSの意図が掴めない。

 

何故、ツナにボスの座を譲ろうとしているんだ・・・・・・?

コロネロとリボーンは、互いに困惑の顔を合わせている。

 

 

「XANXUWSは、ボスの座が欲しかったんじゃねぇのか、コラ!」

 

 

「俺にも理解できねぇ。

奴は何を考えてんだ・・・・・・?」

 

 

観覧席に混乱が広がる中、スクアーロとリオンだけが状況を解っていた。

そして、スクアーロが呟く。

 

 

「当然だぁ・・・・・・。

XANXUSは初めから、10代目になるつもりなんざ、毛頭無かったんだからなぁ・・・・・・」

 

 

スクアーロの言葉に、観覧席がまた、驚愕に染まる。

チェルベッロがスピーカーの電源を入れた。

スクアーロは、それを尻目に誰に言うでもなく、語り出した。

 

 

「XANXUSは10代目になれねぇんだぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

「この声・・・・・・スクアーロ!!」

 

 

グラウンドに到着していた山本が声を上げる。

スピーカーから聞こえてきた声は、死んだと思われていたスクアーロの声だった。

XANXUSは、「生きてやがったのか、カス鮫・・・・・・」と、弱々しく、だが、安堵している様に言った。

 

 

「そうだ、俺は・・・・・・どう足掻こうが、最初(はな)っから10代目にはなれねぇんだよ・・・・・・

9代目と俺は、血なんざ繋がってねぇんだからな・・・・・・」

 

 

XANXUSのカミングアウトに、ミオンと沢田側の守護者、リオンとスクアーロ以外の観覧者は驚愕した。

ミオンに至っては、愕然、といった感じだ。

驚愕の空気が流れる中、XANXUSは続ける。

 

 

「最初から9代目(ヤツ)は俺を10代目にさせる気は毛頭無かった。

俺も、そんなモノに興味はなかった。

別に、なれねぇならなれねぇで、それで良かったんだ。

引き取られた時はまだ、それなりに幸せだったからな・・・・・・」

 

 

XANXUSは、自分が9代目に引き取られた時のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

───全ての始まりは、16年前のことだった。

雪が降りしきる寒さの厳しいイタリアの下町の路地裏に、恰幅の良い女性が幼い少年を連れ、やってきた。

艶のある綺麗な黒い髪、紅く鋭い目は、初対面の初老の男性を射貫いている。

 

 

「貴方の息子だから、10代目のXを取って「XANXUS」と名付けました。

ほら、XANXUS、挨拶なさい」

 

 

女性がXANXUSの背中を押す。

その様子を見ながら、初老の男性は、そんな筈はない、と内心で首を振った。

男性と女性は、これまで一度も接点はなかったのだ。

それに、この子は母親にも、自分にも、どちらにも似ていない。

 

 

 

「初めまして、9代目」

 

 

9代目、と呼ばれた男性が思案していると、XANXUSは会釈をして、手を出した。

その手には、光球の死ぬ気の炎が灯っていた。

その炎は、歴代のボンゴレボス、ボンゴレ2世(セコンド)と全く同じ炎。

その炎を見た時に、9代目は思った。

この子を引き取ろう。そして───。

 

 

「あぁ、この炎は死ぬ気の炎だね。

間違いない、君は私の息子だよ」

 

 

9代目は、自分がしていたマフラーを外すと、XANXUSの目線まで屈んで、XANXUSにマフラーを巻き付けた。

XANXUSは、初めて向かい合って貰えた嬉しさから、笑みを零した。

 

───この出逢いが、彼の全てを破滅させる事になるとは知らずに────。

 

 

 

それから、1年後にXANXUSは、初めてヴァリアーのアジトに連れてこられた。

「会わせたい人が居る」と、9代目が言ったのだ。

 

 

「初めまして、君がXANXUSだね?」

 

 

屈んでXANXUSの目線に合わせると、黒髪の男性は、XANXUSに挨拶をした。

XANXUSは会釈をする。

ヴァリアーの人だろうか?

男性は、暗殺部隊とは思えない様な、繊細で優しいインディゴ色の目をしていた。

幼いXANXUSは、男性に惹かれる何かを感じた。

 

 

「リレン、また来ていたのか。

こんな所で油を売っていると、奥さんにしばかれはしないか?」

 

 

「こんにちは、ボンゴレⅨ世(ノーノ)。

今日は、そのうちのボス、雪華(せつか)にパシられたんですよ。

さぁ、ここのボスがお待ちです、案内しますよ」

 

 

男性と9代目の会話から、どうやら彼はヴァリアーの人間ではないらしい。

 

9代目に「リレン」と呼ばれた男性は、神谷璃蓮(こうや りれん)。

イタリア女王私騎士団団長にして、ボンゴレと同盟関係にあるマフィア、「ドーディチファミリー」のボス補佐であり、リオン・ヴァルフォアの父親だ。

 

ちなみに、璃蓮の口から出てきた「雪華(せつか)」とは、雪華・ヴァルフォア。

イタリア女王であり、ボンゴレの9代目夜空の守護者であり、ミオンの母親であるアルテミス・ルーンの召使で、ボンゴレと同盟関係に当たるマフィア「ドーディチファミリー」の8代目ボスであり、神谷璃蓮の妻、リオン・ヴァルフォアの母親である。

雪華の話は、また別の機会に。

 

璃蓮に連れられ、執務室へと案内される、XANXUSと9代目。

璃蓮の開けた執務室を見て、XANXUSは驚いた。

銃が沢山、壁一面に飾られていたからだ。

 

 

「あぁ、璃蓮、来てたのか」

 

 

デスクに座って書類を片付けていた男性が、執務室の扉が開く音に気付いたのか、こちらに目を向けて、璃蓮の姿が見えると、言った。

赤紫の髪に、鋭い青玉の目が印象的な男性だ。

 

歳は、20代後半くらいだろうか。

9代目よりずっと若く、璃蓮よりは少し老けている様に見える。

男性が9代目を見やると、「あぁ」と、零した。

その声は、何処か不機嫌そうだ。

 

 

「そう言えば、Ⅸ世(ノーノ)が来るとか言っていたな。で、そこの子供は?」

 

 

9代目からXANXUSに目を移す、男性。

切れそうな程に鋭い眼光がXANXUSを射抜くと、XANXUSは思わず息を飲む。

男性の様子を気にも留めずに、9代目は言った。

 

 

「彼は、XANXUS。私の息子だよ。

XANXUS、彼は、ヴァリアーの10代目ボスをしている、神南(こうなみ)弥月(みつき)だ。挨拶しなさい」

 

 

後半はXANXUSに向けられた言葉だ。

XANXUSは前に出ると、会釈した。

 

 

「XANXUSだ」

 

 

「そうか。神南弥月だ」

 

 

神南弥月、と名乗った男性は、初めて険しい顔を緩め、微かな笑みを浮かべた。

その笑みに安堵して、XANXUSも表情を崩す。

この日から、XANXUSはヴァリアーに入り浸る様になったのだ。

 

 

それから、1年後にミオンが生まれて、ミオンがヴァリアーに入り浸りになる頃には、スクアーロ、マーモン、ベル、レヴィと言った面子が揃っていた。

その4年後に、ルーン家がエストラーネオに襲撃され、ミオンは誘拐された。

 

 

 

 

 

 

「9代目の部下と弥月は、9代目にミオンの救出を唱えた。

だが、奴は中々、首を縦に振らない。

不審に思った弥月は、秘密裏に9代目の事を調べた。

おい、門外顧問。

弥月が不審死した、あの事件を覚えているか?」

 

 

そこまで語るとXANXUSは、家光に問うように言った。

モニターの向こうの家光は、表情に暗い影を落とす。

そして、次の言葉にヴァリアー以外の全員が、驚きの表情を見せるのだった。

 

 

「あの事件は結局、通り魔に遭ったって事で処理されたが・・・・・・弥月を殺ったのは、9代目だ」

 

 

XANXUSの言葉に、驚愕が流れる。

ミオンは、XANXUSの話が信じられない、と、戦慄した顔で首を振った。

 

 

「嘘・・・・・・だろ?

だって、お父様は・・・・・・。

皆、オレを騙してたのか?

お父様は長い間、大事な用事で居なくなるって・・・・・・お父様に差し支えが出ないように、連絡しないようにって、ずっと・・・・・・!

XANXUS!どういう事だよ!?」

 

 

ミオンはXANXUSの胸倉を掴むと、声を荒げてXANXUSに詰め寄った。

弥月が殺された翌年、ミオンを救出したヴァリアーは、皆の相談の元、ミオンには父親が殺されたことは当分、隠し通そう、と話し合っていたのだ。

それは誰より、ミオンを思っての事だった。

勿論それは、ミオンの姉や兄も了承済みだ。

 

XANXUSを責めても仕方がない、と判断したミオンは、側に置いておいた銃をその手に取る。

 

 

「ミオン・・・・・・?」

 

 

その様子を見ていた沢田は、ミオンに声を掛けた。

そして、顔を上げたミオンの目を見て、驚愕する。

綺麗な緑と青のオッドアイだった目が、赤黒い血の様な色になっていて、その目からは光が消失していたからだ。

「まずい!!」と、その様子をモニター越しに見ていたメテーオラが叫んだ。

 

 

「ご主人様が曾て無い程にキレています!!」

 

 

メテーオラの言葉に、メリアとリオン、そして、その場に居た面子が振り返る。

メテーオラは説明した。ミオンは怒りが限界を超えると、目が赤黒くなって、自分のキャパシティを越えた身体能力を発揮する、と。そして、今のミオンは何をするか解らない、とも言った。

 

それを聞いた一同、緊張の面持ちでモニターを見る。

依然、ミオンの目は赤黒く、その目からは涙を流していた。

 

 

「Ⅸ世(ノーノ)を殺して、ボンゴレをぶっ壊す!!

初めからなかったら良かったんだ、ボンゴレなんて!全て灰にしてやる!!」

 

 

涙を流し、慟哭すると、今までの怒りが全て爆発した、と言う様に、ミオンは立ち上がった。

そして、ミオンはフィールドの外へ出ようとする。

が、それを止める一つの声があった。

 

 

「ほう、やれるモノならやってみると良い」

 

 

その声に、ヴァリアーとミオン、リオンは声の方を向いた。




神南弥月(享年39)

前ヴァリアーのボスであり、ミオンの父親。
9代目の行動の理由を探る為に秘密裏に動いていた所を、9代目に殺されたらしい。
XANXUSの良き理解者で、戦闘の師匠だった。

いつぞやのミオンの偽名「神南弥王」は、父親の性と名前の一部、王は、漢字が気に入って付けたらしい。

神谷璃蓮(こうや りれん/42)

「紅蓮の獅子」の異名を持つ、イタリア女王私騎士団団長であり、ボンゴレと同盟関係にあるマフィア「ドーディチファミリー」のボス補佐。
リオンの父親。
XANXUSの良き理解者で、XANXUSは彼のことを兄の様に慕っている。

いつぞやのリオンの偽名「神谷璃王」は、父親の性を名乗っていた。


ちなみに、余談。
璃蓮と弥月は日本人。
璃蓮と弥月は幼馴染の腐れ縁。

雪華とミオンの母親は、日本人とイタリア人のハーフ。
それぞれ、夫婦で名前が違うのは、仕事の都合上、都合が良いから。
ちなみに言うと、璃蓮と弥月は婿養子。
ミオンとリオンは、それぞれの家の跡取りの為、普段は母親の性を名乗っている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。