東方生還録   作:エゾ末

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9話 脇役決定かな

 

「おーい」

 

「ん、なんだ?」

 

 午前の授業がいきなり基礎体力作りになり、長距離を走ることになった今日この頃。運動場を3周(約6㎞)の3セット(18㎞)を1時間で走らされたせいでおれの足はパンパンだ。明日はきっと筋肉痛になるに違いない。

 そして午後からは座学があるらしい。

 頭に入ってくる気がしないのはおれだけだろうか?

 そう絶望しながら食堂へ向かっているとAクラスの男子と思われる二人組に話しかけられた。

 

 

「お前、熊口生斗だろ?今日自己紹介で盛大にやらかしてた」

 

「ああ、そうだけど。あとそれに関しては触れないでくれ。おれも反省してるんだ」

 

「あ、ああ、わかった。」

 

「で、なんの用だ?えーっと……」

 

「あ、まだ名乗ってなかった。

 俺の名前は小野塚歩って言うんだ。よろしくな」

 

「ぼ、僕はトオルってい、言います。」

 

 

 ほうほうこのお二方もイケメンではありませんか。妬ま……羨まし……やっぱ妬ましい。

 まず小野塚の方はいかにも体育会系の体つきで伸長が高い。190㎝はあるんじゃないか?そして整ったゴツい顔つきで髪は短髪の黒色あと凛々しい黒色の目をしている、なんか雰囲気からして兄貴っぽい。

 トオルの方は焦げ茶(黒:茶の割合で言うと8:2)でこちらはちょっと幼い感じの童顔で、目はパッチリ二重、身長はおれよりも少し低いくらいか…………ショタ好きの女子とかにかなりモテそうだな……

 それに比べておれときたら……一重、グラサン、細眉。

 外見を口だけで説明したらただの不良じゃねーか。

 

 

「ん?どうした?後ろなんかに隠れて」

 

 

 2人について考察をしていると、トオルがさっと小野塚の後ろに隠れた。 

 なっ……まさか生理的に無理的な奴か!?

 

 

「ああ、すまんな。こいつ人見知りが激しいんだよ。まあ、馴れれば大丈夫だと思うから仲良くしてやってくれ」

 

 

 ほう、よかった。トオル、おれのことが本当に生理的に無理なやつだったら枕を濡らしてたな。もっとも、おれは寝るときに枕を使わんが。

 

 

「へえ、そういえば今名前しか言ってなかったけど、名字はなんていうんだ?」

 

「あ…………それは……」

 

 

 と、見るからに顔が青ざめるトオル。

 嫌なことでも思い出したのだろうか?

 

 うん、これは聞かない方がいいやつだな。おれは優しいからそんなに深追いはしないから安心しな。

 

 

「ま、まあ、取り敢えず仲良くしような。小野塚、トオル」

 

「ああ」

 

「よ、よろしく」

 

 

 

 

 

 

 そしておれと小野塚とトオルで食堂に行き、昼飯を食べてることにした。

 その昼飯中、なんでおれに話しかけてきたのか2人に聞いてみた所、衝撃の事実が発覚した。

 

 

「なんで生斗は持久走のとき霊力を使わなかったんだ?」

 

「え?皆つかってたのか?」

 

「ああ、お前以外全員霊力纏って身体強化させて走ってたぜ。まあでもずっと使ってられるほど操作はできないから、途中途中解いたりしてたけどな」

 

「生身でよく間に合ったね、ぼ、僕だったら途中でダウンするよ……」

 

「うおおぉ!!ミスったー!」

 

 

 最悪だ、あの時みんなやけに速いなぁと思ったんだよ!クラスでぶっちぎりの最下位だった理由がやっとわかった気がする……つーか先に教えてくれよ。

 

 

「……余計な体力を使ってしまった…………」

 

「ははは、どんまい」

 

「…………ぷっ……ふふ…」

 

「小野塚!トオル!お前ら笑いやがったなこの野郎!罰としてお前らのデザートよこせ!」

 

「うわ!やめろ!このプリンは俺が最後の楽しみにしていたやつなんだ!」

 

「や、やめて!」

 

 

 はっはっはっはっ!おれを笑ったのが運の尽きだな!

 後ろの方で女子共が「サイテー」とか言ってるような気がするが気にするものか!

 

 

「あ、でもトオルは可哀想だから小野塚のだけで我慢するか」

 

「な、なんでだよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 取り敢えず食事も済んだし、残りの休み時間をどう有意義に過ごせるかを考えよう。

 

 あ、そうだ。

 

「なあ、散歩しないか?」

 

「ああ、いいぞ。まだここの場所とか良くわかってないんだな。

 よし、散歩がてら案内でもしてやるか!」

 

 

 いや、ここら辺のことはこの前依姫と下見行ったときに覚えてるから良くわかってないことはないんだけどな。ただ、ゆっくり落ち着ける所が分かるならそこを案内してもらいたい。

 そう小野塚に聞いてみると____

 

 

「ん~……そうだなぁ。図書室とかはどうだ?」

 

「そこにはいい思い出がないので止めときます」

 

 

 ほんと……あの時はゴリラのせいで死ぬかと思った。飼育員の方もしっかりとゴリラを檻に閉じ込めておいてほしいもんだ。

 

 

 まあ、流石にここにはあのゴリラもいないだろうし大丈夫だろう。

 ここ、学校であるわけだし。

 

 ということで結局図書室にいくことになった。

 

 

 

 

 

「あれ?生斗君。ここで会うとは奇遇だね。そういえば前もこういう場所で会ったような……もしや本が好きなのか?」

 

 

 おい、居やがったよこのゴリラ。

 そういえばさっきおれが言ってたことって完全なフラグだったじゃないか。ビンビンに立ててしまってたよ!そして速やかに回収しました。

 

 綿月なる隊長さんはまた調べものをしにここへ来たらしい。前も図書館で調べものしに来たって言うけどいったい何を調べているのか聞いてみると___

 

 

「ちょっとした調べものさ」

 

 

 と、はぐらかされてしまった。

 そんなこといって、実はエロ本でも探してたんじゃないのか?ほら、学生の時、隠し持っていたエロ本を図書室の何処かに隠したとか。

 

 はたして、あのおじさんはどんなエロ本を隠していたのだろうか……ゴリラ大百科とか?

 

 

 まあ、別にいいか。

 ゴリラの好みなんて興味ないし。

 

 

 取り敢えず前のように突如訓練になることはなかったが今度会ったとき訓練してやると言われた。

 今後綿月隊長には会わないようにと祈るしかないな。

 まずは二度と図書館には近づかないようにしよう。

 

 

 

 

「生斗って綿月隊長と知り合いだったんだな……」

 

「僕なんてサインして貰ったよ」

 

「おれにとっては関わりたくない相手なんだけどな」

 

 

 まあ、もうこれから図書室、図書館は絶対行かなければいい、と思う。

 

 

  キーンコーン

 

 

 お、予備鈴がなったな。

 もうすぐ授業が始まる時間帯になったってことか。

 

 

「お、あと5分で授業が始まるな。少し刺激は強かったがいい暇潰しになっただろう」

 

「そうだな。んじゃ、教室行くか」

 

「だな」

 

 

 そういっておれと小野塚が教室に行こうとすると、急にトオルが____

 

 

「待って!あっちの方角のマーケットでハイジャックがあってる!!相手は4人、女の子を人質にとってる!」

 

「は?どうした急に」

 

「なに?!よし、わかった!今すぐ向かう!!」

 

 

 とトオルが叫び、小野塚がその声に反応して一瞬にして姿を消した。

 そしてその消えた場所にはナイフが落ちてきた……

 

 え?いま何が起こった?

 

 

 状況が理解できないおれは、ただただ口をポカンと開けることしかできなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後で聞いたことによると、どうやら士官学校より少し離れた場所のマーケットでハイジャックが行われたとのこと。そしてさっき捕まってた、小野塚の奇襲のお陰で。

 なんでそんなことができたかと言うと能力のお陰らしい。

 

 まあ、簡単に説明すると

 トオルの『危険を察知する程度』の能力でハイジャックがあったことを察知し、それを聞いた小野塚が『交換する程度』の能力で自分とハイジャック犯のナイフを入れ換えて奇襲したらしい。

 ナイスコンビプレイじゃないか。

 おれの予想では今回の行動はこれで初めてではないな。妙に手慣れていたし。

 

 ていうかなんだよ、二人とも主人公みたいじゃないですか。何だよおれ、ただの脇役かよ……

 

 

 

 そういえば能力っておれにもあるらしいんだよな。……ほんとどんな能力なんだろ。出来ればかっこいいのがいいな。

 

 

 まあ、授業には遅れ、先生に大目玉を食らった。

 小野塚とトオルは勝手に事件に飛び込んでいったことに関してはかなり激怒されていた。

 そりゃそうだわな、下手すりゃ死んでたかもしれないんだし。

 




やっと編入しましたね。次話までは話はあまり進まないと思います。

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