東方生還録   作:エゾ末

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永琳さんとお話し

 

 

 今日は週に一度の休日である。

 毎日毎日国の周りの巡回や書類とかの整理やらしたりして疲れた。精神的にも、身体的にも。

 何故かたまに訓練やらなきゃいけないし

 ……もう働きたくない。1日中ぐーたらしたい。

 

 でもなにか癒しが、癒しがほしい…………

 

 

 

 ……あ、永琳さんの家行こう。

 

 

 

 

「ということで癒されに来ました~」

 

「貴方……毎週来てない?」

 

「やだな、月に2回ですよ、もう2日の休みはツクヨミ様の家にいます」

 

「ほんと、貴方、神をなんだと思ってるの?」

 

「人に希望を与えてくれる存在です!」

 

「う、完全に的外れではないから反論しにくいわ」

 

 

 まあ、なんだかんだ言って永琳さんはおれをもてなしてくれる。

 ほんとええ母さんや…………

 と思った瞬間永琳さんに睨まれた。

 おっと、そういえば永琳さん、お母さん扱いされるの嫌だったな。

 声に出してないのになんで察知出来るんだ……

 取り敢えずしらばっくれよう。

 

 

「お、お母さんなんて思ってませんよ」

 

「……思ってるじゃない」

 

 

 はあ、と永琳さんが溜め息をした後、何事もなかったように客間まで案内してくれた。

 あれ?いつもなら注射器とかだして脅してくるのに……なんか悪いものでも食べたんじゃないのか?

 よし、後で聞いてみよう。

 

 

「とりあえず座って…………それじゃあ何話しましょうか?」

 

「そうですね……あ、この前依姫が能力の練習付き合ってる途中に、死にかけた話でもしましょうか?」

 

「死にかけったて……あの娘もお茶目なのねぇ」

 

「そのお茶目で死にかけましたよ、おれが」

 

「あら、貴方なの?」

 

 

 それからに2時間ぐらい雑談した。

 おれは訓練生のやつらのことを、永琳さんは薬の研究のことやこの国での出来事とかを話してくれた。

 いや、国で起きたこととか確かにわかるけど薬についての議論をおれにしても何もわからないんだけどな。

 

 

「そういえば永琳さん、今日、なんだか元気がありませんよ。何かあったんですか?」

 

「ああ、貴方にもわかるのね。

 これは重症かもしれないわ」

 

「いや、おれがわかったのは早期発見かもしれませんよ?軽症の可能性だってあります」

 

 

 そうに違いない! おれが永琳さんの微妙な変化に気づけないわけがない!

 

 

「はあ、まあいいわ。別に隠すことではないし、教えても」

 

「え、もう元気がない理由について検討がついてるんですか?」

 

「ええ。()()以外にここまで落ち込むことはそうはないわ」

 

 

 この国の賢人とまで呼ばれる程の人が頭を抱えるほどの悩み……一体どんなのだろうか。

 はは、もしかしたらこの国全体に関わる重大な事だったりしてな。

 

 

「はい、じゃあカモン!愚痴なら聞くだけなら聞いてあげますよ!」

 

「そういうところに関してだけは貴方を拾って良かったと思うわ……」

 

「だけ、は余計でしょうよ」

 

「余計じゃ無いわよ」

 

「余計です」

 

「……はあ、はいはい余計よ、余計。愚痴を聞いてくれる相手以外にもちゃんと役に立っている事はあるものね。自分のだした塵をちゃんと持って帰るとか」

 

「例えがちっちゃすぎる!? 他にも沢山あるでしょ!」

 

「ごめんなさい……私の頭脳ではこれ以上の事が思い浮かべられないわ」

 

「なに、国の頭脳と呼ばれる永琳さんがお手上げになるほどおれの良いところは見つからないの!? なら今から良いところをみせましょうか? 今洗濯カゴに入っている洗濯物(下着も含む)の洗濯とか!」

 

「それは本当にやめてちょうだい」

 

 

 いや、そこはしてみなさいよと言ってくださいよ。ほんとにしてたのに……

 

 

「それで、話を戻しますが、今何に頭を抱えてるんですか?」

 

 

 取り敢えず話題を戻す。閑話はここまでだ。あ、でも閑話というならもっと駄弁ってても良いような……

 そういえば閑話休題の意味って前に調べてみたらどうでもいい会話(余談)を戻すという意味だったんだよな。『それはさておき』とか。今度ルビを使って閑話休題と書いて、それはさておき、と読むようにしようかな……てこれは流石にメタいな。以後、本編では使わないようにしよう。でもこれ、番外編だから許してね!

 

 

「はあ、また考えなくてもいいどうでもいいことを考えていたでしょう。しかも今、やってはいけないことをしたような気分だわ」

 

「え?よく分かりましたね(やってはいけないことって十中八九メタ発言のことだよな……ほんと、これからは使わないでおこう)」

 

「貴方の考えていることがまるわかりなのよ。ちゃんとした話をしているときも、あ、他のこと考えているなって分かるし」

 

「まじっすか」

 

 

 そ、それは新事実だ。まさかバレていたとは……あ!そういえば前に上司が話してるときにやたらと睨んできたのはそのせいか! 話を聞いていないのがバレバレだったのかよ……

 

 

「も、もういいじゃないですか、その話は。そろそろ永琳さんの苦難を聞きたいです」

 

「そうね。ちょっと水をさしてしまったわ」

 

 

 そうだそうだ。今のは永琳さんが曲げたんだからな、話題を。

 発端はおれのメタ発言なんだけどな……

 

 

「私が今、頭を抱えているのは大きく分けて2つよ」

 

「2つ、ですか。因みにその中におれは入ってますか?」

 

「生憎ね。道端に転がっている石に悩みを抱える人はそうはいないわ」

 

「ん? 今おれのこと凄い酷い例えしてませんでしたか?」

 

「したわよ」

 

 もう、永琳さんったら。照れ隠しにいちいちおれをディすらないでくださいよ~。

 

 

「永琳さん、照れ隠「……まず一つ目の事なのだけれど」……あ、はい」

 

 

 あ、無理矢理話題の軌道を修正したな。

 まあ、確かにまた話がおかしな方向にいきかけたから仕方ないか。

 たぶん、そのまま話してたら宇宙の神秘について話してたんじゃないか? ……いや、流石にそこまではないか。

 

 

「蓬莱山家の令嬢、姫の教育係になったことね」

 

「え? あの姫さんとこの娘のですか? 凄いじゃないですか、ただでさえ顔を見せないあの蓬莱山家の娘の教育係なんて」

 

 

 蓬莱山家はこの国でも権力を持つ貴族だ。

 顔を見た人は殆どおらず、幹部クラスでやっと面識ができるらしい。

 娘が出来たとは噂で聞いてはいたがまさかその世話係を永琳さんがしていたとは……

 ていうか娘を見たってことは親の顔も見てるってことだよな?

 一体どんな顔なんだろう……隠そうとしているということは相当凄い不細工なんじゃないだろうか。

 

 

「今貴方が考えていることが大体分かったわ。

 安心しなさい。親子ともども大層な美人よ」

 

「ふ、ふぅん、そうなんですか」

 

 

 永琳さん凄い。よくおれが思ってたことを言い当てたな……

 

 

「それと、手をあげて喜ぶようなものじゃないのよ。教育係をするということは」

 

「なんでですか?美幼女のお守りなんてご褒美以外何物でもありませんよ」

 

「それは貴方個人の考えであって、私には苦痛でしかないのよ。薬の研究が出来ないし、他の仕事も減らずにいつも通りだし、設計のこともあるし……」

 

「仕事減ってないんですか」

 

「基本家でもできることが大半だからということでね。でも仕事自体はそんなに問題ではないのよ。私のプライベートがないということが問題なの。これじゃあろくに薬の研究が出来やしない」

 

「プライベートで薬の研究て……他にすることとかないのかって言いたくなりますね」

 

 

 そういえば休みの日に永琳さんがどこかに出掛けるところとか1度も見たこともない。

 もしかして永琳さんは引きこもりの道に1歩足を踏み込んでいるんじゃ!?

 

 

「貴方今、失礼なこと考えたでしょ」

 

「考えましたよ」

 

「……ふーん」

 

 

 いや、ちょっ、その目やめてください。恐いです。

 ……くっ、さっきのお返しをしようとしただけなのに!

 

 

「まあ、その事は追求しないでおくわ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 ふう、永琳さんのおしおきはほんと酷いからな。しかもおれの場合、()()だから加減というものがないし。

 

 

「それじゃあ話を戻すけど……1つの問題としてプライベートがないのだけれど、一番の問題は姫にあるのよ」

 

「娘さんに問題が?」

 

 

 娘といっても生まれたのは5年前と聞いたんだが……そんな小娘になんの問題があるんだろうか。

 

 

「無理難題の、我儘を言われるのよ」

 

「あー、子供の言うことぐらい聞いてあげましょうよ」

 

「じゃあ貴方はこの世に存在しない物を取ってこいと言われて取ってこれる?」

 

「……そのお子さんはどんな無茶ぶりを要求しちゃってんですか」

 

「だから困ってるのよ」

 

「……どんまい!」

 

「なんかイラッと来たわ」

 

 

 いや、だってこれは他人事だし。おれがかけられるのなんて励ましの言葉だけだしなぁ……

 まあ、今のは自分でもうざいなぁとは思ったよ?

 

 

「はい! じゃあ二つ目いってみよう!」

 

「なんか……貴方に話したところでただ苛立ちが増すだけのような気がするわ」

 

「ふふふ、そんなことはありませんよ。現におれは楽しんでます」

 

「人の不幸で楽しむなんて悪趣味ね」

 

 

 いやいや、永琳さんと話すことが楽しいんですよ、おれは。

 

 

「はあ……それじゃあご要望通り二つ目を話すわ」

 

「お、来ました!」

 

 

 永琳さんほどの人物に頭を抱えさせる二つ目の要因。

 一体どんな災害なのだろうか。

 

 

「月移住計画についてよ」

 

 

 …………はい?

 

 

「え? 今、なんていいましたか?」

 

「だから月移住計画よ」

 

「いかん、永琳さんがついにおかしくなった」

 

「頭かち割るわよ、薬で」

 

「薬で頭かち割れるもんなんですか?!」

 

「薬の中に血を吸うと大きくなって成虫になる寄生虫をいれてそれを飲ませればいずれ頭やら身体中の中から出てくるわ」

 

「頭だけの問題じゃなかった?! ていうかかち割ってないじゃないですか!」

 

 

 いや、そんなことにつっこんでる場合じゃない。

 月移住計画? なんだそれ。聞いたことないぞ、おれ。

 いやでも永琳さんが嘘を言うのは考えがたいし……

 

 

「取り敢えず、今は信じることにします。

 ……で、月移住計画でなんで永琳さんが頭を抱える事態に陥ってるんですか?」

 

「月移住計画の要となるワープ型固定装置の設計を任されたからよ」

 

「ワープ?」

 

「簡単に言うと瞬間転移のことよ。それを使ってここから月へ飛んでいこうという考え」

 

「へ、へぇ」

 

 

 そんなSFみたいな事できんのかな……いや、永琳さんなら出来そう。

 でもなんで上の人らは永琳さんに頼んだのだろうか。

 普通薬師に頼まないだろうに……

 

 

「我儘姫の教育係だけでなく国の一大プロジェクトの要の設計も任されるというダブルショッキング。普通の人ならノイローゼになりますね」

 

「私も軽めに鬱気味よ」

 

「んな馬鹿な。さっきから遠回しにおれを弄りまくってるじゃないですか。せめて疲れ気味程度ですよ」

 

「それは貴方が決めることではないと思うのだけれど」

 

 

 いやぁ、見る限りじゃ、ねぇ……

 

 

 それよりも月に移住するのか、この国の人達。移住する中におれも入ってるのかな? 入ってなかったら泣くな、おれ。

 ていうか月って酸素あるのか? いや、この国の事だ。そんな前提のこと処理済みの筈だ。心配する必要は無いだろう。

 

 

「ていうかそんなに忙しいならこんなことしてる暇ないんじゃ……」

 

「そうね、貴方が来るまでずっと転送装置の設計図作ってたんだけど。邪魔をされたのよねぇ、誰かさんに」

 

「まあ、息抜きにでもなるでしょう」

 

「それって自分で言うこと?」

 

「気にしない気にしない」

 

「まあ、息抜きになったのは事実だし……ってもうこんな時間じゃない。お昼ご飯食べていく?」

 

「さすが永琳さん! 丁度お腹が空いてきていた所だったんですよ! さっすがそんなところに『年期』が入ってる~!」

 

「さて、寄生虫入りの薬は何処に仕舞っていたかしら?」

 

「ごめんなさい!」

 

 

 このあと薬入りでない昼飯を食べた。

 うん、とても美味しゅうございました。

 

 それよりもなんで永琳さんは年の話になるとこう、攻撃的になるんだろうか……なんか面白いからそこをイジってしまうではないか。

 まあ、殆どの確率で脅されたりして土下座する羽目になるけど。

 

 


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