東方生還録   作:エゾ末

3 / 110
2話 未来都市かよ!

 

 ……空の奥の方が薄く明かりが出始めた頃、おれは先程会った永琳さんに弓を突きつけられていた。

 てこれってピンチなんじゃないか。

 まさか此処が永琳さんの国の領地の中だったとは……あ、でも領地があるということはこの辺りに町とかがあるということだ。

 ここでなんとか永琳を説得できればサバイバル生活をしなくて済むかもしれない。

 でもいきなり弓を向けてくる相手を説得できるのか?

 おれにそんな話術なんてないぞ……

 それに今、平気そうにしてるけどかなりびびってる。脇汗が滝のように出てるよ……本当に滝のようにはでてないけどな。

 

 

「それじゃあ貴方に質問するけど、いいわね?」

 

 

 質問?……もしかして永琳さん、最初からそのために矢を引いてるのか?

 確かに得たいの知れない余所者を何もなしに問いても答えてもらえないかしらばっくれる可能性がある。

 おれはそんなことはしないんだけど……たぶん、用心深いんだろう、この人は。

 もし敵でも、いつでも対処できるし、脅しの手段としても使える。まあ、妥当な判断であることは確かだよな。やられてる身としてはたまったもんじゃないけど。

 

 

「拒否権はないんでしょ?まあ、拒否するつもりはありませんが。隠すことなんて全くないし」

 

 

 取り敢えず、永琳さんがおれにどんな質問をするのかが気になる。本当はおれがこの世界の事を聞きたいが、今はそんなこと聞ける状況じゃないしな。

 

 

「そう。じゃあ1つ目ね、なぜこんな森にいるの?しかもこんな時間に」

 

「それはおれが聞きたいですよ。いつの間にかここにいたんですから」

 

 

 これは事実。なんでこんなところにいるんだか……自分で初期位置を設定できるのなら絶対にこんな場所にはしない。あ、でも永琳さんに会えたことに関してはこの初期位置としては悪くなかったかも。

 

 

「へぇ……じゃあ2つ目、此処にかなり大きい光が発生したの。なにかしってる?」

 

「あー、わかりません、さっき目覚めましたから」

 

 うん、嘘は言ってない。光がなぜ発生したかは大体予想つくけど、光が出たことは今知ったんだし。それにその光が発生する経緯まで尋ねられて話したら鼻で笑われるか頭いってんじゃないか?みたいな顔されるだけだろうし……

 

 

「こんなところに寝ていたの?よく食べられなかったわね」

 

「えっ?食べられるって?」

 

 

 食べられるって……おれが?

 

 

「あら、妖怪をしらないの?とことん不思議な人ね、あ、でも人間ではない可能性もあるかしら」

 

「妖怪?!って、に、人間ですよ!貴方にはこの姿の何処が妖怪なんですか!?顔か!顔なのか?」

 

 

 ていうか、妖怪て……この世界はそんなお伽噺に出てくるような奴が出てくんのか?

 目玉親父とか実際に存在するのか、少し見てみたい気もするな……いや、実際に出てこられても困るが。

 

 

「ほんとに知らないのね。妖怪にも人型がいるのよ。でも心配は要らないわ、貴方には妖力は感じられないもの。つまり人間ってことね」

 

「よ、よかった……妖力ってのは知らないけど……じゃあなんで弓をまだこっちに向けてるんですか」

 

「だって貴方”普通じゃ無い“もの」

 

「な?!失敬な。健全純粋ピチピチ17歳ですよ!」

 

「神の放つ光が急に発生した場所にいて、住所不明、なぜ此処にいたかすら分からない、サングラスに神力を感じる、そして服のセンスがない」

 

 

 んな! この人、自分の服のセンスを棚に置いといて人の服を馬鹿にするなんて……ていうかグラサンに神力があるのは十中八九あの神せいだろう。

 

 

「確かに考察してみるとおれかなり怪しいですね……

 あ、でも最後に関しては貴方に言われたくないです」

 

「あら、貴方もこの服の魅力がわからないのね。ま、そんなことはどうでも良いのよ。

 取り敢えず貴方を連行するわ。貴方がツクヨミ様に対して不満の持つ神の間者の可能性があるし」

 

「ツクヨミサマって人が誰なのか知りませんけど……まあ、別にやましいことがあるわけでもないしおとなしく連行されときます。」

 

 ツクヨミサマ……どっかで聞いたことあるような名前だな……ま、いっか。

 

「話が早くて助かるわ。じゃあ」

 

 と永琳さんが俺の両手を縄で縛ってきた。

 ……もう、大胆なんだから。

 

 

「縛りプレイですか?」

 

「……」ドガッ

 

 

 無言で殴られた。痛い……冗談に決まってるじゃないですか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~30分後~

 

 

 永琳さんの国に着くまで、ここの世界について色々教えてもらった。

 妖怪のことや妖力、神力のこと、ちなみに人間は霊力を持っているらしい。おれも持っているのかと聞くとどうやら持っているらしい。しかも結構な量あるらしかった。

 でもそのせいで、もし危険因子ではなかった場合訓練施設へ送ると言われた。

 くそう、帰る家がないなんて言わなければよかったな。

 まあ、確かに安心できる場所に住まわしてもらえるのは嬉しい。でも訓練かぁ、訓練やだなぁ……

 

 そんなことを思ってると物凄いでかい壁が見えてきた。……なんか某巨人駆逐マンガみたいな壁が見える。え?ここには巨人もいるの?!つーかデカ!こんなの始めて見た。当たり前っちゃあ当たり前だけど。

 こんなでかい壁、そうそうあるもんじゃない。

 

 

「この壁、でかいですね……」

 

「ふふふ、これぐらいで驚いてちゃあこの先持たないわよ」

 

「え?中にはなにがあるんですか!?」

 

「それは見てからのお楽しみ」

 

 んー、かなり気になる。まあ、とりあえず入ってみるか。

 

 壁の中に入る途中、門番らしき奴に捕まったけど、永琳さんがいたのでなんとか難を逃れた。永琳さん……門番の人が見た瞬間、頭下げまくってたけどいったいどんな大物なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うわー、なんだこの未来都市すげー。

 ビルがすごい並んでる、前世のおれが住んでた所も都会だったけど、こんなの見たら月とスッポン並みにちがうぞ。なんだよあの光る球体、なんだよあの空中に浮いてる映像……未来都市かよ。

 

 

「ふふ、驚いたわね。目がすごい見開いてるわよ」

 

「これは流石、いや、凄すぎますよ。こんなの始めてみました。あの重力ガン無視の車とかどんな原理でできてんですか」

 

「教えてもいいけど、貴方じゃ理解できないわよ」

 

「そんじゃいいです。すごいけど内部構造までは知る気なんてないし」

 

 やべーなこれは、ほんと目の見開きが止まらない。つーか永琳さんってほんと何者なんだ?見る人全員頭下げたりしてる。

 

 

「永琳さんって、一体何者なんですか?」

 

「薬師よ」

 

「薬師ってこんなに偉いんですね……って、絶対他にもあるでしょ!」

 

「秘密よ。まあ、この国に住むことになったらいずれわかると思うわ」

 

 

 この国に住む、つまり訓練施設へ送られるってことか。普通な暮らしが出来たらそれで良いんだけどな。

 

 

「かなり気になりますね、あ、あと聞き忘れてたんですけどおれって何処に連行されてるんです?」

 

「ツクヨミ様のところよ。貴方が危険因子かどうかをあの方に判断してもらうわ」

 

「へえ、ツクヨミサマってそんなに偉いんですか?」

 

「ええ、あの方は神よ」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 

 なんか神って聞いてもあまり良い感じはしないんだよなぁ……

 だって始めてみた神があれだったわけだし……

 でもおれってすごいな。たった1日にして、神の2人も会うなんて。

 

 ……でも真偽を問われるのは別に嘘はないのになんか緊張するな。

 例えるなら別に悪いことしてないのにパトカーが通ると身構えてしまうような感じ。

 

 

 

 まあ、なんとかなるだろう。前世でもそうやって困難を乗り越えてきたんだ。

 




次話からはちょくちょくオリキャラがでてきます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。