東方生還録   作:エゾ末

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第三話 掃除きつい

 

 

 おれは諏訪子という見た目幼女の土着神と色々話した後、兵としてこの国に居ることを許された。

 

 

「いいのか?急に出てきたおれなんかを兵にするなんて」

 

「生斗と話してたら大体の印象がわかったし別に大丈夫だよ」

 

「……因みにどんな印象?」

 

「面倒くさがりで、すぐ調子に乗る黒眼鏡土竜」

 

「最初の2つは認めるが土竜は絶対に違うから! ていうか全然良い印象もたれてない!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、そんなこともあって現在おれは、諏訪子の計らいにより住まわせてもらうこととなった空き家の掃除の真っ只中である。

 

 

「うわっ!天井叩いたら埃の雨が降ってきた!?」

 

「……なんかよく見ると神秘的だね」 

 

「なわけあるかい! って諏訪子いたのかよ。見てないで手伝ってくれよ」

 

「ちゃんと私のこと洩矢様と敬ってくれたら考えてあげる」

 

 

 こ、こいつ! おれが全然敬って無いことを不満に思ってやがるな。おれの信仰対象はツクヨミ様だけだから無理だな……ん、信仰対象に対してかなり無礼なことしてたじゃないかって? おれはいつも敬意をもってツクヨミ様と接していたから大丈夫だろう、うん。

 

 

「いや、最初の印象のせいでなんかなぁ」

 

「へぇ、信仰しなかったら祟られるかも知れないのに?」

 

「ああ、なんか言ってたな。諏訪子が統括しているミシャグジは少しでも気を悪くすると祟る迷惑な神だって」

 

 

 ほんと、ただただ迷惑なやつである。ただでさえ見た目で迷惑かけてんのに……

 なんでもここの民はそれの影響で諏訪子のことを畏敬に思っているらしい。 

 

 

「あれ?それじゃあなんでおれ祟られてないんだ?」

 

 

 一旦空き家(今はおれの家)からでると、ふと疑問が浮かび上がってきた。

 あんな腹にグーパンをかましたのになんで祟られていないのだろうか。もしかしてもう祟られてたりしているのか?

 

 

「あー、たぶん祟る前に気絶したからだと思うよ。私が此処に来る前にミシャグジ起てたけどかなり怒ってたし。『あやつ、神になんたる無礼をしてくれたな!必ず然るべき報いを与えてくれる!!』ってね」

 

「……はあ、それじゃあ出会い頭にまた腹パン食らわせるしかないな」

 

「素直に謝るという選択肢はないの?」

 

「いや、だって最初に急に汚物扱いしてきたあいつが悪いし」

 

「相手は神だよ……」

 

「そういう面では神人平等なんで」

 

 

 もう神もツクヨミ様で慣れてるしな。

 

 

「本当、生斗って肝が座ってるね……」

 

「命知らずっていいたいのか?まあ、確かにそうだろうな」

 

 

 まあ、死んでも生き返るけど。いつの間にかストックも限界値の10貯まってるし。

 

 

「……命は大事にするべきだと思うよ。人の命は短いんだから」

 

「確かにな。人はすぐに老いる。おれが言える立場ではないけど」

 

 

 おれがそう言うと諏訪子の表情が少し暗くなったのを感じた。……神は人とは違い、信仰される限り消滅しない。これはツクヨミ様から聞いたことだ。おそらく諏訪子は尽きることのない寿命のせいでこれまで沢山の人との死に携わって来たんだろうな。暗い顔をしているのは。

 

 

「ま、そんな辛気くさい話も終わり!さっさと掃除済ませよう!」

 

「お、手伝ってくれるのか!」

 

「いや、其処の田んぼで蛙と戯れとく。というより神に掃除なんて頼むもんじゃないよ」

 

「そういう面では神「それはもう聞いた」はい……」

 

 

 仕方ない。さっさと掃除なんて終わらせてのんびり昼寝でもしますか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局三時間近くかかってしまった。掃除器具もあまり揃ってなかったのもあったがただおれん家が他の家よりなんかでかかったのが一番の理由である。まあ、土の中にずっといたせいか体がなまって思うように動かなかったのもあるが。

 

 なんで他よりでかいのか現在縁側でおれより先にくつろいでいる諏訪子に聞いてみると___

 

 

「ここは元々村長が住んでたんだけど死んじゃってねぇ。それで使われなくなったの」

 

 

 と、事故物件だということを知らされた。おい宿主、そういうのはもうちょっと早く報せるべきだぞ。

 

 あと、なんで結構でかいのになぜ他の人とか住まなかったのかというと、実は此処に住んでいた村長は急に現れた妖怪に襲われてこの家でぐちゃぐちゃになって死んでいたらしい。勿論その妖怪は諏訪子の所にいる巫女に退治されたらしいが殺された村長の姿があまりにも気持ち悪すぎて誰も寄り付かなかったと言うことだ。

 ……べ、別にここ、怖くなんかないよ。どうせもういないんだし……

 

 

「まあ、今後の生活に影響するわけでもないしいいか……」

 

「ほうほう、切り替えも早いんだねぇ」

 

「それもおれの長所でもあるしな」

 

 

 それから夕暮れになるまで昼寝することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあそろそろ帰るよ。明日からは農作業を手伝ってね」

 

「え?!おれそんな事やったことないぞ。つーか何処の畑ですればいいんだよ」

 

 

 まずなんで農作業をおれが……

 

 

「大丈夫大丈夫、ここの皆優しいから教えてもらえると思うよ。あと畑の場所は明日うちの早恵が来るからついていってね。ついでにいっとくけど早恵に手を出したら許さないから」

 

「だすか!」

 

 

 はあ、明日から労働しなきゃならないのか。

 あとさっき諏訪子が言ってた『早恵』というのは諏訪子んとこの巫女だ。滅茶苦茶美少女だけどちょっと変わった子だった。でも一応礼儀正しくていい子だったな。

 ……ま、だからって手を出すわけないけどな!

 

 取り敢えず今日の分だけもらっておいた食料をたべてさっさと寝るか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~夜中~

 

 

「……………………寝れない」

 

 

 昼間寝てたの忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 


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