東方生還録   作:エゾ末

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今回は三人称視点と早恵ちゃん視点です。


第七話 新しい発見!

「はあ!」

 

「おりゃあ!」

 

現在、生斗と女妖怪が死闘を繰り広げている。

しかし見れば誰もがわかるほど劣性にたたされているのは言わずもがな生斗の方である。

最初の方は生斗の独特な剣捌きに遅れをとっていた女妖怪だが、それも時間が経つに連れて慣れていき、今では攻める側となっている。

 

「(このままじゃいずれ殺られる…………“あれ”を使うか?

でもあれ多すぎて脳が回らなくなるからあまり使いたくないんだけどなぁ)」

 

「さっきから貴方は何を考えてるの?そんな暇あったら避けるのに専念した方がいいわよ!」

 

「うおっと!?このぉ!仕返しだ!!」

 

「またそれ?」

 

少し距離をとり、生斗が策を練っている最中に女妖怪が妖弾を放ってきた。それを間一髪で避け、お返しにと爆散霊弾を女妖怪に向けて放つ。速度は普通なので難なく避けられてしまったが代わりに着弾した瞬間大爆発を起こし、数十メートル先にまで土煙が上がった。

 

 

「(よし、この間に策を固めて……!!!?)」

 

土煙に紛れて身を隠し、策を固めようとした瞬間、極太のレーザーが生斗の真横を通った。

 

「見ぃーつけた!」

 

「くそ!考えてる暇はないか!!」

 

運良く当たらなかったが代わりに土煙はすべて吹き飛ばされ、生斗の居場所が女妖怪にバレてしまった。

 

「もういい!脳をフル回転させてでもこの状況を打開してやる!」

 

「できるのかし、ら!?」

 

女妖怪が生斗に肉薄した瞬間、急に現れた6つの霊力剣に道を阻まれた。

 

「まさか、手に持っていないのにそれを扱えるなんてね。しかも6つ、普通の人間じゃ一つですら扱えないでしょうに」

 

「ふ、修行の成果さ!あんまりしてないけど」

 

女妖怪が思わず感心したのは無理もない。元々、霊力で剣を生成することは高度な技術を必要とする。それをいっきに6つ、今生斗が右手に持っているのを合わせて7つ生成していることになる。しかしそれだけではこの女妖怪は『へぇ、珍しいわね』程度しか思わない。

ならなぜ感心したのかというと、それは6つの霊力剣が持ち主の手によって操作されているのではなく、空中に浮いており、それを操作していたからである。

実を言うとこれは昔、綿月隊長に傷をつけたときに使った技の強化版である。あのときは一つ操る程度が限界で、しかも操作している間生斗はそれに集中して充分に動けなくなっていた。しかしそれも綿月隊長との戦闘の後、サボりを多少加えながらこの技の特訓をしていた。

そのお陰か今では6つなら同時に違う動作をしたりしても自分自身で充分に動けるまでに成長した。

 

「(左右に3つずつ、右手に一つ。これは少し面倒ね……)」

 

「ふっ、驚いたか。これはおれが編み出した技『アルティメットシックスエクスカリバー』だ!!」

 

「…………」

 

「どうだ!」

 

「……言ってるのはよくわからないけど、それはたぶんダサいと思うわ」

 

「……な!?」

 

因みに右手に一つ持っているのでシックスではなくセブンになるはずである。

 

「まあ、名前は兎も角それが厄介なのは確かね」

 

「まあな」

 

「ま、負ける気はしないけど」

 

「そんなのおれにだってわかる!」

 

 

この会話のあと第2ラウンドが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早恵side

 

 

私は今何を見ているのだろうか。こんなにも激しい戦闘を見たのは始めてだ。

 

取り敢えずさっきまでの私の行動について振り返ってみよう。

 

 

まず、諏訪子様と話したあと神社を飛び出して昨日ボコボコにされたあの日傘をもった妖怪がよく出没する場所に向かった。

その途中、昨日私が負けた一番の敗因となった極太レーザーの音が村の出口付近に聞こえてきて、冷や汗がとまらなくなった。

 

そして森の中を捜索している途中、大爆発が昨日来た場所付近で起こり、急いでそこに向かった。

 

それで茂みの方について見てみると、6本の光る剣と右手に持っている剣を自在に操り、あの妖怪に攻めいっている熊口さんの姿があった。

 

 

これまで熊口さんの実力は見たことがない。1度村の皆の前で力がどれくらいなのかを見せていたことぐらいだ。しかもあの光る剣とか他に色々なものを霊力操作によって生成しているぐらいだった。

 

そのせいもあってか、私は熊口さんの加勢をせず、ただどれくらいの実力か知りたくなった。

普通、大妖怪相手に人間一人で立ち向かうことは無謀だ。しかも今回に限っては私がこれまで戦ってきた妖怪の中でもっとも強かった相手だ。これまで巫女として妖怪を沢山倒してきたが開始五分で膝を地面につけることになったのも勿論始めてだ。

 

それなのに今戦っている熊口さんは一向に倒れない。それにどこか余裕そうな感じすらしている。

それを不満に思っているのか少しあの妖怪も不機嫌になっていたがすぐにそれも消えて満面の笑みを浮かべている。正直怖い。

 

 

 

 

 

そして10分程経過したとき、ついに熊口さんが勝負にでた。

なぜか爆発する霊弾を5つほど妖怪に撃ち、それを避けた瞬間に熊口さんが特攻した。それは無謀ではないのかと思った。

当然妖怪はまっすぐ来る熊口さんに向けて極太レーザーを放つ。なんであんなに早く撃てるのかはわからないが……

そしてそれは熊口さんに向けて一直線に来る。いつ避けるのかと思ったが熊口さんは一向に避けない。

そしてついに熊口さんに極太レーザーが当たった。

一瞬悲鳴をあげそうになったが寸でのところで止めることができた。理由は簡単、極太レーザーが何かに当たったような音がしたあと消えていったからだ。

え?!なんで消えたの?!と思ったがそれはあの妖怪を見てわかった。

 

なんと妖怪の後ろにいつのまにか光る剣があり、妖怪の背中を切っていたからだ。

 

いつの間にそんな事をしていたの?!

 

 

「ふう、賭けはおれの勝ちだな」

 

「く、いつの間に私の後ろに……?」

 

「簡単簡単、おれが特攻しているようにみせて注意をおれの方に向けただけだ。その隙に霊力剣を生成してアンタの後ろに忍び込ませたのさ」

 

「ふん、これぐらいで勝った気にならないことね」

 

「まあ、今のレーザー止めるのに相当な霊力使っちまったしな。」

 

「あら?もう終わりなの?」

 

「おれとしちゃあ、さっさと終わりたいんだけどな……つーかなんで急に襲ってくるんだ?」

 

「そりゃあここら辺は私の縄張りよ。それなのに最近雑魚妖怪がよく入ってくるからイライラしてるのよ」

 

「ん?それってつまりストレス解消に付き合わされてんのか、おれ?」

 

 

 

ん?今の会話に少し疑問がでてきた。

 

 

「ちょっと待ってください!」

 

兎に角その疑問に答えてもらうべく私は茂みから飛び出した。

 

「うわ!?早恵ちゃん?!っておい!早恵ちゃんのせいでおれが……」

 

「ちょっと黙っててください!!」

 

「えぇぇ?!」

 

「誰かと思えば昨日の巫女じゃない。また性懲りもなくやられに来たの?」

 

「違います。そうじゃなくてここらによく出ると言う妖怪の事です!なにか知りませんか?」

 

「ああ、あの雑魚共ね。なんか彼処の村の人間を襲おうってことで集まってたわよ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「まあ、そいつら全員まとめて消し炭にしたけど」

 

「え?!」

 

「別にアンタたちのためじゃないわ。集まってた場所が私の花畑だったからよ」

 

「え、でも……」

 

申し訳なさでいっぱいだ……間違って関係のないこの妖怪に手を出してしまうなんて……

 

「ってことはアンタはおれらの村に手を出さないんだな?」

 

「ええ、興味ないわ……いや、今日興味沸いたわ。貴方にね」

 

そういうとこの妖怪は熊口さんに向けて微笑んだ。そして熊口さんの顔は青くなった。

 

「ってことは私の出番はないと言うことですね!わかりました!!帰ります!」

 

「え?!ちょっとまって早恵ちゃん!!おれも帰る!」

 

「待ちなさい。まだ勝負は終わってないわよ」

 

私と一緒に帰ろうとした熊口さんの頭をがっしりと妖怪が掴んだ。

 

「大丈夫ですよ。偶然とはいえ私達の村を助けてくれた人なんですから!殺されはしませんよ」

 

「……早恵、後で覚えてろよ……」

 

後ろからドスのきいた低い声が聞こえた気がするがたぶん幻聴だろう。

 

 

そして私が村の入り口付近についた時に極太レーザーが空に向けて放たれていてどこか聞いた声のある人の悲鳴が聞こえたけどそれも幻聴だろう。

 

取り敢えず熊口さん頑張って!

 

 

 




今回でた
アルティメットシックスエクスカリバーは
名前がちょっとあれなんで
諏訪子か早恵ちゃんに決めてもらおうと思っています。
なので今後技が出ても
アルティメットシックスエクスカリバーという名前は
でないと思います。

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