東方生還録   作:エゾ末

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3話 ツクヨミ様スゲー

 

 

 未来都市みたいなところに入り、重力ガン無視の車に乗って1時間程経った。外は結構明るくなっており、辺りには人が賑わい始めている。

 うわー……すんごい人いるな。ファンタジー感0だ。

 そして、他の住居の一際デカイ屋敷みたいなところに連れられた。

 

 

「さっきまで車酔いしてたのにこれ見たら酔いが吹っ飛びましたよ」

 

「酔ってたの?道理でずっと遠くを眺めてたのね。てっきりこの国を観察してるのかとおもってたわ」

 

 国って言うよりどっかの都市かなんかだと思うんだけど……

 あ、でもよくよく思えば昔、日本は所々に小国を作って戦争してたって言うし、ここもそんな感じなのかな?昔どころではないけどな。

 

 

「それじゃあ中にはいるわよ」

 

「こんないかにも金持ちが住んでそうな家にはいるのは始めてですね、わくわく」

 

「可愛い女の子とかがそういうこと言うのはまだ分からないでもないけど貴方のような人がわくわくなんて擬音を言うとゾッとするわ」

 

「オラ、ワクワクすっぞ」

 

「なんだかわからないけどそれは言ってはいけない言葉よ」

 

「おれもそう思います」

 

 じゃあなんでいったんだって思っただろ?でもこれは定番かなにかでしなければならない状況だとおれは思ったんだ、後悔はしていない。

 

 そうどうでもいい雑談をしながら、奥へ入っていき、他とは違う、豪華な装飾の施された襖の前まで来た。

 

 

「この先が、ツクヨミ様のいる神の間よ」

 

「ここが……」

 

 

 なんだか、ただちょっと豪華なだけの襖だというのに、かなり威圧感がある。これが本来の神の重圧ってやつか……

 

 そんなことを思っていると、永琳さんが躊躇う事なく、襖を開けて入る。

 それにつられて、おれもツクヨミサマの部屋へと入った。

 

 その部屋は殿様が居そうな所で、当然、襖の前よりも威圧感のある場所だった。

 その威圧感に圧倒され、おれは一度唾を呑み込んだ。

 

 そしてその部屋の奥にいたのは永琳さんがおれに会わせると言ったツクヨ、ミ……サ……

 

 ………………。

 

 

「ひ、非リア男子の敵がいる。」

 

「非リア?よくわからないけど失礼なことを言いますね。」

 

 其処にいたのは文句なしの美青年だった。なんだよあれ、金髪なのにそれが自然に見えるほどの容姿。男女関係なく10人中10人が振り向くぐらいのイケメンだ。なんか無性にあの顔を一発殴ってやりたくなってきた。

 こういう顔に恵まれた奴って、良いよなぁ。なにもしなくても女からキャー素敵ーとチヤホヤされるし、少々の努力だけで食っていける。

 ほんと羨ま……妬ましい。

 

 ……まあ、とりあえず今の失言に対して謝っておこう。この人、神だし。無礼だから殺す!って言われたらたまったもんじゃないしな。

 

 

 

「あ、すいません。心の中で思ってた事がつい漏れました」

 

「そ、そうかい。……ところで永琳、この人があの神光の正体ですか?」

 

「おそらく。

 あの辺りには妖怪の姿はありませんでしたし。いや、あったとしても彼の神光に恐れをなして逃げだした可能性もありますが」

 

 永琳さんがそう言ってからこれまでの経緯を語った。そしてどうやら、偉いらしい永琳さんがあの森にいたのは、あの森特有の薬草を取りに行くついでに、ツクヨミサマに光についての調査を頼まれたかららしい。

 なんでお偉いさんの永琳さんが一人で真夜中の森を歩いてた疑問がちょっと解決した気がした。

 まだ疑問に残るのは、なんで女一人で来たかということだけど。それぐらい腕に自信があるのだろうか?

 

 

「なるほど、確かに変な人ですね。しかし、この人からは妖力も神力も感じられない、少々他の者より霊力が多いぐらいですか。」

 

「変な人ってなんですか……あ、そういえばまだ名前いってませんでしたね、おれは熊口生斗っていいます。以後お見知りおきを、ツクヨミサマ様。」

 

「ツクヨミサマ様?!僕は月読命です!様が1つ多いですよ!」

 

「あ、そうなんですか」

 

 なんか変な名前だと思ったらサマが余計だったのか。なんか腑に落ちたな。

 

 

「まあ、いいでしょう。……さて、大体の事情はわかりました。生斗君、君は神に弄ばれている可能性がありますね。しかもそのサングラスに付属されている神力を見る限りは私の知らない未知の神です。しかし邪神の類いのものではないので安心してください」

 

 

 おお、よくおれがあの神の暇潰しだってわかったな。

 流石は神って所か。

 

 

「サングラスでそんなことまでわかるんですか?すごいですね、ツクヨミ様って」

 

「まあ、神ですからね。まあ、君が僕達に害があるわけでは無いことがわかったことですし、この国にいることを認めましょう。永琳の話を聞く限りでは帰る家なんてないんでしょう?」

 

「え……いいんですか?」

 

「ええ……あ、この国での最低条件に満たしてませんでしたね、ちょっと来てください、生斗君」

 

「あ、はい」

 

 そう言って近づくと額に指を当てられた。うわ、ツクヨミ様の手、かなり冷たい。一瞬身震いしてしまった。

 と、そんなどうでもいい感想を頭の中で述べていると、ツクヨミ様の指が光りだし、10秒ほど経った後、その光は消えた。

ん、これってどういことなのか?なんかの儀式?

 

 

「むっ……!!これは……」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、なんでもないです……」

 

 

 何だろう……一瞬ツクヨミ様の顔が険しくなった気がしたんだけど……

 

 

「……取り敢えず君の穢れを消しました。これで君もこの国で暮らせる資格を獲られましたね」

 

 

 穢れというのが何なのかわからないがこれでようやく此処に住めるってことだな。

 なんかさっきのツクヨミ様の反応が気になるけど。

 

 

「それじゃあ永琳、生斗君の編入手続きをお願いしますね」

 

「はい、ツクヨミ様」

 

「え?なんの編入手続きですか?」

 

「此処に来るときいったでしょ?訓練施設へ行かせるって。だから士官学校への編入手続きをしにいくの。霊力をこんなに持ってる人って珍しいし」

 

 

 そ、そういえば!……完全に忘れていた……

 訓練やだなぁ……

 なんとか訓練施設にはいけないという口実を作ってやり過ごせないだろうか。

 

 

 

「霊力霊力って言ってますけど、おれ霊力なんて使ったことなんてないですよ?」

 

「あら?それを扱えるようにするために士官学校へいけばいいじゃない」

 

「いや、でも全く使ったことがないっていうのも問題ですね。……よし、特別に僕が少し後押ししましょう」

 

「え、なんですか?……て、うわ!?!」

 

 

 ツクヨミ様がいきなりおれに向かってなんか光る玉を放ってきた。え、攻撃か!?やばいやばい、神の攻撃なんて食らったら絶対死ぬ!避けなければ!

 そう判断したおれは避けようとしたが一歩遅く、無惨にも、おれの顔面に命中した。

 

 

   ポフッ

 

 

 …………。

 

 軟らかかったね、うん。焦ってた自分が恥ずかしい。

 光る玉はおれの顔面に当たるとポフっと音をたてると拡散して、消えていった。

 そして、その光る玉がきえると、おれのなにかが外れたような感覚がした。

 

 

「え?なんか急に体中にオーラみたいなのがでてる!?」

 

「それが霊力よ、ツクヨミ様が今貴方の力が”使えない“という固定概念を壊したのよ」

 

「え?神ってそんなこともできるんですか?」

 

 

 すげー!神すげー!流石だ!あの老神とは大違いだ!今なら木をワンパンでへし折れる気がするぞ!

 

 

「いや、これは僕の能力ですね。まあ、これで不安要素は消えました。生斗君、これからは僕の矛となり、そしと民の盾となって頑張ってください!」

 

「どうせおれには拒否権なんてないんでよね、わかります」

 

 

 さて、なかば無理矢理士官学校へおくられることになったけど此処にいられるなら文句は言えないな。それに今、おれのテンションは最高潮だ。

 

 今ならなんでもできる気がする!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ______________________

 

 

 

「あれほどまでの穢れを見たことがなかった……あの生斗という名の人間、あれほどまでに生命が濃い人間を見るのは初めてです。僕の力を持ってしてもあの生命の穢れを消すことができなかった……」

 

 

 生斗本人の穢れを消すことができなかったので彼の周りの穢れだけを消すことで、周りの人間に穢れを撒き散らすということがないようにはしましたが。

 

 こんな現象、初めてです……もしやそれも私がまだ知らぬ神の仕業なのでしょうか……

 

 

「まあ、それもこれから考えるとしましょう。」

 

 

 もしも彼がこの国に害を及ぼす事があるのならば僕が消すのみです。

 そんなこと、なければ良いのですが……

 

 

「それにあのサングラス、穢れを祓うときに取ろうとしたのに、外れなかった」

 

 

僕の神力でも外せなかった未知の神の神力が付属されたサングラス。

つくづく興味が絶えませんね。今度、姉上に聞いてみましょうか。

 

 

 


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