「お願いします!!」
「断る」
急にこんな場面をお見せして申し訳ないと思う。
絶賛せがまれ中なんだ。何を誰にせがまれてるかって?
道義に弟子にして修行を手伝ってくれってせがまれてんだよ!
「あのときの熊口殿の剣捌き、私は感動しました!1本ならまだしも7本もの光る刃を自在に操るあのお姿。いつ思い出しても胸の高鳴りがおさまりません!」
「誉められるのはうれしいんだが…………こんな所で頼まれても困る。」
そう、ここは神奈子さんとこの神社の門の前だ。今日はなんとなく神社に行きたい気分だったので行ってみれば門前で道義が待ち伏せして今の状況が完成したのである。
「これまでの無礼は謝ります!ですからお願いします!私めを弟子にしてください!!!!」
「話を聞け。あと断る。」
「洗濯や食事の用意等の家事もしますから!」
「こ、断る」
ちょっと魅力的だな……
「お金も出しますから!」
「いらん。帰れ」
「ほう。お金に執着しない方でしたか!ますます尊敬します!!」
「そうだろう!」
「なので弟子にして下さい!!」
「だが断る」
「ぐぬぬぅ……」
「大体なんでいちいち辛い修行なんて自分からしようとするんだよ。おれなんて言われなければ絶対にやらないぞ」
ほんとそうだよ。人に言われる以外で修行をするときとか大抵気が向いた時ぐらいだし。
「全ては神奈子様のためでございます。神奈子様は私が生涯忠誠を誓ったお方です。その忠誠を誓った神奈子様を守るためならばこの身を捨てても構わないと思っております。しかし一昨日の熊口殿との戦いで自分がどれだけ無力なのか実感しました……これでは神奈子様をお守りするどころか足手まといになってしまいます。そうならないためにも私は強くならねばならないのです!」
「演説おつかれさまです。あんたが神奈子さんへの忠誠心が凄いのがわかった。でも鼻息荒くして俺に近づいてくるのはやめろ。はっきりいって恐怖でしかない。」
「おや、気づかぬうちに興奮していましたか。失敬失敬」
「まあ、なんと言われようと修行なんて真っ平ごめんだけどな」
「んな殺生な!?」
「修行?いいじゃないか!熊口、手伝ってやんな。」
「え?!神奈子さん?!」
「神奈子様!ありがとうございます!!」
急に後ろから現れた神奈子さんが修行手伝ってやれと促してきた。
「い、いやですよ。いくら神奈子さんのお願いでも……」
「なんで断る必要がある?ここ一週間は暇だろうに」
「めんどうだからです。」
「…………命令だ。道義の修行を手伝え」
「なっ!?神だからっておれは屈しないぞ!!」
「よおし、言うことが聞けないのなら勝負で決めようじゃないか!」
「望むところだ!人間の恐ろしさをその身をもって思い知らせてやる!!」
「あのぉ、神奈子様、熊口殿。私をおいていかないでください……」
このあと神奈子さんとの腕相撲で惜しくも負けてしまい、道義の師匠をやる羽目になってしまった。
「熊口殿、いや、師匠!これからは宜しくお願いします!」
「手抜きは許さないからね」
「はいはい、わかりましたよ。やればいいんでしょ!あと神奈子さん!今回はちょっと調子悪かっただけですから!次は負けませんよ!!」
「敗者の言い訳ほど見苦しいものはないね!」
「ごもっともです!」
二人に笑われた。くそぅ。
「取り敢えず道義。この国50周走ってこい。」
「わかりました!師匠!!」
そういって道義は走り去っていった。……おいおいまじか。
「笑ったことに対してのイタズラとしてちょっとした冗談のつもりでいったんだけど……」
「道義の辞書に冗談という字はないからね。」
「でしょうね」
そのあと道義が走るのをぼぉーと見た。そして途中で倒れた。……少し悪いことしてしまったな
一方その頃
生斗が道義の国50周マラソンを見ているとき、諏訪子のところに一騎討ちの説明の書状が届かれていた。
「え…………生斗が……死んだ?」
「はい、誠に申し上げ難いのですが使者の生斗様は神奈子様の宮司、南方道義様との戦いにより、命を落とされました。」
「道義とか言うやつを呼べ!いますぐに!!」
「現在道義様は重症のため呼ぶことができません」
「別に重症でもいい。祟るだけだから」
「そういうことならば余計連れてくるわけにはいけません!」
「なら、もういい。帰れ」
「はい、わかりました。」
そういって大和の国の使者は帰っていった。
「諏訪子様!あんなに大声をあげてどうしたんですか!?」
大和の国の使者が帰った直後、諏訪子のいる部屋に早恵が入ってきた。
「うぅ……ぃとが……、、んじゃっ……た…」
「え?」
「生斗が!死んじゃっだの!私が行がぜだぜいで!私のぜいなの!」
「え?!熊口さんがし、死んだ?!?」
「う″ぅん……」
「え……えっ?いや、え?だってこの前だってへらへらしながら散歩してたんですよ?それが……なんで……」
「ごめん……私のせいで…………」
「す、諏訪子様のせいじゃ、ありませんよ……悪いのは大和の国です。……そうです、大和の国が悪いんだ!」
今回大和の国の使者が誤った情報を諏訪子に聞かせ、生斗を自分の国に留まらせたのはこれが目的だった。
諏訪子は自分が使者として生斗を行かせたことに対して悔やみ、いずれその悔やみが怒りに変わり、それを大和の国、神奈子に向けさせ本気を出させる。
それが神奈子の目的。国をかけた勝負でも本気を出しきれない者がたまにいる。しかしそんな輩でも自分の親しかったものを奪われると本気をだす。憎しみを抱えながら……
神奈子は憎しみが一番本気を出させられると考えている。
この事から神奈子は実は幽香と負けないくらいの戦闘狂なのかもしれない。
さて、洩矢の国では生斗は死んだと言うことになった。そんな中、生斗とあったときみんなどんな反応をするのだろうか。
もしかしたらその反応をみるのも神奈子の目的だったのかもしれない……
三人称視点難しいです。