東方生還録   作:エゾ末

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十八話 幸せはすぐに過ぎ去るな

洩矢の国に神奈子さんと道義が来てから30年が経った。もう道義も早恵ちゃんももう結構な歳になっている。皺もすごいぜ。ついでに言うと神奈子さんと諏訪子は神なので歳を殆どとっていない。翠は死んでる。

それと道義と早恵ちゃんの間には子供ができて今では早恵ちゃんの代わりに新しい巫女となっている。

 

まあ、30年経ったからっておれの生活スタイルはかわらんが。今も神社の階段に座ってお茶を飲んでるし。

 

「ねぇ、せいとぉ。一つ聞いていい?」

 

「なんだい?枝幸ちゃん。」

 

今おれを呼んだのは今代の巫女、東風谷枝幸・8歳。おれの後ろをいつもついてくる可愛いやつだ。

 

「なんでせいとは歳をとらないの?」

 

「ん?いや、歳はとってるよ。ただおれの能力の関係上若いままだけどね。ちゃんと寿命もあるし」

 

「ふぅーん。ということでだっこして」

 

「それが目的か!」

 

「眠いの」

 

はあ、可愛いやつめ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  道義&早恵の家にて

 

「師匠、すみません。うちの枝幸の我儘を聞いてもらって」

 

「いや、いいさ。別に嫌じゃないしな」

 

「そうですか」

 

「………………」

 

「ん、どうしました?」

 

「道義、老けたなぁ」

 

「人は普通、老いるものです」

 

「む、おれが普通じゃないみたいじゃないか」

 

「ははは」

 

最近は早恵ちゃんや翠に影響されてか道義までおれをからかうようになっている。

ほんと勘弁してほしいよ。ストレスたまっちゃうぜ。

 

「あれ?熊口さん来てたんですか?」

 

「おお、早恵ちゃん。老けたなぁ」

 

「いきなり失礼じゃないですか?!」

 

よし、鬱憤発散完了!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  湖にて

 

枝幸ちゃんを道義&早恵ちゃんの家に送り届けてから暇になったので湖に向かった。

 

その向かう途中、聞きなれた声の主が妙な歌をカエルと歌っているのが聞こえてきた。

 

 

「ケロケロー・カエルは緑がとくちょー」

 

ゲロゲロー

 

「でも実際はいろんな色あるー」

 

ゲロゲロー

 

「ケロケロー・カエルはヌメヌメしてるー」

 

ゲロっゲロ

 

「ケロケロー・口から胃を出して洗うカエルー」

 

ゲーロォロォ

 

 

「いや、グロいわ!!あとカエル達!ほんとに胃を出すんじゃねぇ!」

 

グエっグェ

 

「あ!生斗!折角私とカエル達の大合唱をしていたのに!」

 

「もうちょっとセンスのある歌詞を作ってから歌え!!」

 

「なっ!この歌の良さが分からないなんて言わせないよ!!」

 

このあと歌についての議論を30分間程した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばもう早恵もあんなに歳をとっちゃったねぇ」

 

「ああ、なんか悲しくなるな」

 

「まあ、人の命は短く儚いもの。仕方ないことだね。」

 

「それで?諏訪子はいつになったら大きくなるんだ?」

 

「ふふーん!今に見てな!あと10年もすればボンキュッボンな体になってるから!」

 

「それ10年前にも聞いたわ。」

 

「ぐぬぬぅ。…………というより生斗だって全然変わってないじゃん!」

 

「それは能力の関係上な。それに寿命もある。後29年ぐらいだな」

 

「え!自分の寿命がわかるの?」

 

「ああ、前に言った神から教えてもらったからな」

 

「その神は神失格だね。人の寿命を教えるような真似は神の間では御法度だからね」

 

「まあ、あいつは元々神だと思ってないからな。おれ」

 

「でも、生斗も後少ししたら亡くなるんだね……」

 

「いや、確かに寿命はあるけどまた生き返るよ」

 

「え?!?」

 

ああ、そういえばもうこんなに経つのに能力の事は全然話さなかったな。

 

おれの能力は『生を増やす程度』の能力。今10個あるから一度死んだぐらいじゃいなくならんよ」

 

「はは……それは凄いね。つまりはまだ一緒に遊べるってことだよね!」

 

「まあ、そうだな」

 

「よかったぁ。ずっと神奈子としか長い付き合いができないと思った」

 

「神奈子さんも良いところあるじゃないか。ご飯を炭に替える芸当とか見せてくれるし」

 

「お米が勿体ないよ」

 

「それもそうだ!」

 

「まあ、見てて飽きないところはあるね。神奈子も」

 

 

このあと諏訪子と二時間程度雑談して、そのあと水切りで勝負した。

まあ、始めてやったからおれが勝てるわけないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分家にて

 

 

「いやぁ、今日は色々なところ回って疲れたぁ」

 

「お陰で私は暇でしたけど」

 

「お前もたまには外へ出ろ」

 

「太陽嫌いです。……あ!良いこと思い付いた!!」

 

「ん、なにを?」

 

「熊口さんの後ろにいる守護霊さんと私を代わってもらいましょう!そしたら外にでても忌々しい太陽の影響はなくなります!」

 

「え?!」

 

思わず後ろをみた。しかし誰もいなかった。

 

「無駄です。幽霊である私しか見えませんから!」

 

「ならなんでお前は見えるんだよ……」

 

「そんなの知りません!!」

 

「ああそうかい」

 

つか、ずっと後ろに守護霊いたんかい!

 

「あ、はい、そうですか。有り難うございます!」

 

「ん、どうなったんだ?」

 

「ええ、快く了承してもらいました!なんかあなたの守護霊が『こんな野郎とは一刻も早く別れたかったんだ。サンキュー』なんていってましたよ。」

 

「うおい、どんだけおれ嫌われてたんだよ」

 

「知りませんよ、そんなの。……それよりこれからはよろしくお願いします!熊口さん」

 

「……幽霊ってそんな簡単に変われるものなのか?」

 

「私にもよくわかりませんがなんかできるみたいですね!」

 

「本人すら知らなかった?!」

 

 

取り敢えず翠がおれの守護霊になった。

まあ、別に困ることではないし別にいいか。


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