現在おれは、地図を取りに戻るために洩矢の国へむかっている。それだけなら半日で済む話なので別にいいんだけど、あることのせいで半日では済まない事態に陥りそうになっている。
「ねぇー、戦おうよぉー。もし私に勝ったら″いいこと”してあげるからぁ」
「あああああ! うるさい! やらないっていってるだろ!!」
それは見た目幼女の鬼に戦えとせがまれていることだ。お願いの仕方だけを見ると、まんまただの幼女なのだが頭に生えている2本の角と言っている事が物騒なのでとても幼女だとは思えない。
「むぅ、私の体じゃ不満だってのかい?」
「″いいこと”ってそういうことかよ!…………いやいや、そうだとしても断る!」
『あれ? 変態屑野郎な熊口さんならノリノリで引き受けると思ってたんですが』
取り敢えず翠の事は無視する。
「じゃあ、勇儀は? あいつの体はもうすんごいよ!」
「……………………いや、無理だ。」
『あー! 今の間はなんですかぁ!? やっぱり熊口さんは助平ですね!』
うるせぇ! ナイスバディな女の人にときめかない男はいねーんだよ!
「むぅ、だめかぁ」
「まずお前、今さらっと知り合いを売ったな。」
「いいよ、どうせ私が勝つし。」
「ほう、やけに自信ありげだな」
「だって人間なんかに負ける鬼なんて普通いないよ。」
「今さっきいたんだけど」
「あいつもまあまあ強い方なんだけどねぇ。ま、私には遠く及ばないけど。まあ、それでも普通鬼は人間なんかに負けるはずがない。なのに今さっきあんたのお陰でその固定観念は崩れ去ったのさ。」
「だから?」
「その崩した張本人に興味が湧いてね。だから戦ってみようかと」
「結局それかい!」
「ほらほら! 私があんたと戦おうとしている理由を教えたんだ! あんたも腹括りな!」
「言ってることが無茶苦茶だ! 理由とかお前が勝手に言っただけじゃねーか!」
「はあ、めんどくさい男だねぇ」
「……面倒事が嫌いなだけなただの人間ですよ」
「ははは! 鬼を姑息な手を使わずに倒せる奴が普通の人間なわけないじゃないか!」
「普通の人間だって…………ば?!」
急におれの目の前に幼女鬼が現れた。あれ? さっきまで後ろにいたはずなのに……しかも思いっきり殴るポーズ取ってるし! これはヤバイ!?
「うお?!」
ぎりぎり体を捻らせて回避することに成功した。
「へぇ、反射神経もいいとは」
「急に何すんだ!」
「もう、頼むのもめんどくさくなってねぇ。これなら有無もなく戦うことができるでしょ?」
「おれが逃げることは考えてないのか?」
「鬼の足に人間が勝てると思うかい?」
「それもそうか」
いつかこうなるだろうとおもったがこうも早く来るとは……
取り敢えずここを切り抜けることを考えよう。
見てみればあの鬼幼女から尋常じゃないぐらいの妖力が溢れでているし……
まだ10年分の力はあるしなんとかなるかな?
「ああ! 先手必勝! 爆散霊弾!!」
「うわ!?」
いっきに爆散霊弾を鬼幼女にむけて放った。
これに乗じて逃げよう。
「…………いつみてもすごいな、あれ」
またもや大爆発。もう結構な距離になっていると言うのに砂煙がもうこっちにきてるし……
「いやぁ、危なかったねぇ。流石は鬼を倒しただけはある」
「えっ!?…………んぐうぅぅ!!?」
いつの間にか後ろにいた鬼幼女に思いっきり背中を殴られた。
威力が凄いせいかおれは吹き飛ばされ、木にぶつかったのだがその木は折れて、その先にある岩にぶつかって漸く止まることができた。
「体も丈夫とはね。普通の人間なら原型を留めないよ。私の本気の一発だし」
「なんで…………本気でやる、んだ……よ」
「ん? 試してみたかったからさ」
いかん、意識が朦朧としてきた。殴られた背中は感覚が無くなっている。
いや、たぶんこれ内蔵逝ってるな、これ。
…………やばいな。体のどこも動かない。
「ああ、でももう駄目だね。あと少ししたらあんたは死ぬ。まあ、私の本気の一発を受けきったんだ。誇っていいよ」
『熊口さん!大丈夫ですか?!?』
「……」
ああ、くそ。たぶん死んでもすぐ生き返れるだろう。でももしだ。おれが生き返れると言うことがあいつにバレたらどうなると思う? おれの予想だと命のストックが切れるまで遊ばれ殺されるだろう。
それは嫌だ。
仕方ない。残りの寿命をつかってでも勝って逃げるしかないな。
「一生ぐらい…………くれてやる!!」
「ん、断末魔?」
残りの19年分の寿命を使用。
その瞬間、さっきまでの傷が無かったかのように痛みが無くなった。寿命ブーストの痛みも……ない! 殴られたお陰で痛覚が麻痺しているからか? ……いや今はそんなことどうでもいい。
身体は……動く! よし、一発で決めてやる!
「あれ? な、なんで動けるの」
「さて、何ででしょう?」
「え?…………んぐっ?!?」
自分でも分からない程の速さで鬼幼女の横へ回り込み、横腹に蹴りを放った。
ヒュー。これまたよく飛ぶな。
……ていうか飛びすぎな気が……死んでないよな?
「ふぅ、気絶しているな。……本気で蹴ったのに傷がちょっとしかついてないじゃん。少し自信無くすな……」
飛んでいった先まで見に行ってみると、そこには横たわったまま動かない鬼幼女の姿があった。今おるが言った通り、少し傷ついてるぐらいで目立った怪我はない。ただ気絶しているだけだ。
『熊口さん。どうしたんですか!? さっきまで満身創痍だったのに……』
「ああ、それはな。おれの能力……な…………ん……だ……」ドサッ
『え? 急に倒れてどうしたんですか?!』
あれ、体が言うことをきかない。能力をつかいすぎたか?
……いや、思い出した。
「寿命……尽きた、ん…………だった」
あの神が余計につけてた設定のことをすっかり忘れてた。
あの神め、余計な真似をしおってからに……
すいません。今回はいつも以上の駄文でした。