東方生還録   作:エゾ末

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3話 ああ、あれか。

ああ、心地がいいな……こんなに気持ちよく寝られるのは久しぶりだな。…………あれ?ちょっとまてよ。おれさっきまで鬼幼女と戦ってたような…………

 

 

「うお!」

 

という腑抜けた声を出しながらおれは飛び起きた。

あれ?!なんでおれ布団の上で寝てるんだ?まずここはどこ?私は誰?……いや、おれは熊口生斗くん。永遠の17歳だ!!

 

と、どうでもよくてくそ寒いことを言う前にまず、本当にここ何処だ?どっかの家の中みたいだけど……

 

『熊口さん!起きましたか!!』

 

「あ、翠か。さっきぶり」

 

『全然さっきじゃないですよ!熊口さん、2日間ずっと寝ていたんですから!』

 

「やっぱりか……」

 

『え?』

 

神の言ってた設定通りだな。

 

「それよりここは何処だ?」

 

『あ、そうだった!熊口さん逃げてください!』

 

「ん?何でだ?」

 

『だってここは鬼のい「おお、起きたかい?」えってあああ!』

 

「逃げろって言ってた意味が分かったよ……」

 

翠の話を聞いている途中、障子を開けていつぞやの鬼幼女が入ってきた。

 

「逃げる?別にもう襲ったりはしないよ。」

 

「そうかぁ?」

 

「鬼は嘘なんか言わないよ。…………たまに言うかもだけど」

 

「まあ、そんなのはどうでもいい。それよりなんでおれはこんなところで寝てたんだ?もしかして……いや、もしかしなくてもお前の仕業だよな?」

 

「ご名答。私があんたをここまで運んでやったのさ。感謝しな」

 

「はあ、確かに感謝するけどさ。そんなことおれにする必要あったか?おれが言うのもなんだけど放っとけばよかったのに」

 

「なんだい、つれないこというねぇ。一度拳をぶつけ合った仲じゃないか。仲良くしようじゃないか」

 

「鬼の友達判定基準がおかしいことは分かった」

 

「鬼は強いやつが大好きなのさ。特に鬼を打ち負かすことができるぐらいのやつがさ」

 

「今背筋がゾッとした」

 

「でもどうしようかねぇ。勇儀には申し訳ないことしたねぇ。売っちゃったよ」

 

「ん?もしかしてあの賭け事のこと続いてたのか?」

 

「当たり前じゃないか。」

 

「いや、いいよ。別に賭けのことなんか。別に勇儀って人(鬼)はいらない」

 

「ほう。勇儀が滅茶苦茶良い体してるってわかっててフるのかい?」

 

「いいっていってるだろ!」

 

「………………まさか、枯れてる?!」

 

「枯れてない!」

 

別に女性の体に興味がないわけではない。ただその相手がどうせ『鬼』だから怖いだけだ!

 

「あーあ、勇儀もかわいそうだね。知らないうちにフラれるなんて」

 

「お前がフラせたんだろ」

 

 

「まあ、いいや。それじゃあ早速人間。鬼の里へ行こうか」

 

「さようなら」

 

「まてまて、早々に帰ろうとするんじゃない!傷もまだ癒えてないだろ?」

 

「大丈夫です。もう治ってます」

 

正確に言うなら一回死んでリセットされたんだけどな!

 

「あれ?本当だ。あんた本当に人間!?」

 

「人間です、失礼な。とりあえず帰ります」

 

「ていってももうここ鬼の里の中なんだけどね」

 

「うおいぃぃぃ!!」

 

「まあまあ、私の伊吹瓢をちょっとあげるからさ。機嫌直しな」

 

そういって鬼幼女はどこからか取り出したかわからないがお猪口を出して瓢箪に入っている液体を注いでおれに渡してきた。

 

「いや、なんだよこれ!酒か?子供が酒なんか飲むんじゃありません!」

 

「失礼な!これでも結構生きてるよ!まあ、取り敢えず飲みな!うまいから!」

 

「そうか?」

 

毒は入ってないよな?さっきまで鬼幼女も何度か話ながら飲んでたし…………いや、鬼と人間の体のつくりを一緒にするのは……

 

「ああ、もう!なにためらってるんだい!さっさと飲みな!」

 

「あ、ちょ?!……ぶべっ!?!」

 

 

飲むのを躊躇していたらお猪口を鬼幼女にぶんどられておれの口に無理矢理入れてきた。

そして、その酒を飲んでみたらびっくり。度数が滅茶苦茶高かったのだ。口に含んだ瞬間にわかった。そしてこれを飲むのは危険すぎると判断しておれは酒を吐いた。

 

「あーあ、勿体無い。折角の酒が……」

 

「ごほっげほっ……なんだその酒……おかしすぎるだろ!」

 

「やっぱり、そういうところは人間と一緒なんだね。てっきりこういうのも人間離れしてると思ってたけど」

 

「普段酒なんて呑まないんだから仕方ないだろ……」

 

「まあ、兎に角!詫びはしたんだ。大人しくついてきな!」

 

「全然詫びではなかったけど……まあ、いいか。でも条件がある」

 

「なんだい?」

 

「もう戦わないからな」

 

「え?!」

 

「え?!っじゃない!まさか鬼達のところへ逝かせて戦わせる気だったのか?」

 

「そうだよ」

 

「帰ります」

 

「冗談だってば!ただ皆にこんな人間がいるって見せびらかしに行くだけだよ」

 

「どうせそんなことしたら『どれ、俺が腕前をみてやる』とかいってやる羽目になるんだろ」

 

「あ、あるかも」

 

「大体おれは自衛のために力をつけてきたんだ。別に力を見せつけるために鍛えてきた訳じゃない」

 

「ならさ、私の奴隷として紹介させてよ。ほら丁度ここに鎖あるし」

 

「もっと嫌だ」

 

見た目幼女に鎖で縛られて連れられる見た目青年て……どんなプレイだよ!

 

「んー、どうしようか」

 

「そんな悩むならさっさとおれを開放させてくれよ」

 

「嫌、私に初めて勝った相手だもん。意地でも自慢してやる」

 

「……もういや」

 

 

なんでこうなったんだ。おれはただまったりゆったりと旅をしたいだけなのに。なのになんで旅を始めて早々に一部のトラウマのある鬼と出くわし、捕まっちゃうのだろうか。

 

大人しく洩矢の国にいればよかった……

 

 

 


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