東方生還録   作:エゾ末

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4話 もう戦い疲れたよ……

「はあ、なんでおれはこういうときの運は最悪なんだ」

 

「よし!私が勝ったんだから言うこと聞いてもらうよ」

 

結局じゃんけんで行くかどうか決まることになり、見事パーで負けてしまった。 

 

「それじゃあ、行こうか!人間」

 

「ああ……そういえばまだ名前を言ってなかったな。おれの名前は熊口生斗。チャームポイントはこのグラサンだ。」

 

「ん、生斗っていうのか。私の名前は一度いったよね?」

 

「あれ、なんだっけ?……確か果物だったよな」

 

「伊吹萃香だよ!」

 

「そうだった。おれの好きな果物と同じ名前だったな」

 

「すいかって食べ物なんて聞いたことないよ」

 

ん?まさかこの世界ではスイカはないのか?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、こいつが萃香の言ってた奴かい?」

 

「ああ、そうだよ!私に勝つぐらい強いからね!」

 

 

家を出てしばらく歩いたところに集落みたいな所についた。そこで皆角を生やした奴等がおれを興味深そうに見てきて正直落ち着かなかった。そしてある一軒家のなかに萃香がノックも無しにはいると、そこには頭に一本角を生やしたナイスバディなお姉さんがいた。……たぶんこの人が勇儀という鬼だろう、

 

「やあ、人間。私の名前は星熊勇儀っていうんだ。よろしく」

 

「ああ、おれは熊口生斗だ。グラサンを馬鹿にしたら許さないからな」

 

「へぇ、鬼を前に屈しないとは。さすが萃香が認めただけはあるね。…………よし、表へでな!」

 

「あ、もう帰っていいってこと?ならさようなら~」

 

「なわけないでしょ。戦おうっていってるんだよ」

 

「おい、萃香。おれは戦わんといったはずだ」

 

「まあまあ、別にがちの殴り合いをしようっていってる訳じゃないんだ。ちょっとした余興さね」 

 

「同じことをいって急に殴りかかってきた奴をおれは知っている」

 

「…………そんなことはしないよ」

 

 

でも鬼と余興か……まさか力比べとか?腕相撲は嫌だぞ、おれの腕がへし折れる未来しか見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鬼の集落・広場

 

 

「ルールは簡単、私がいま持っているこの盃を奪うことができればあんたの勝ちだ。」

 

「へ?そんなんでいいのか?」

 

「ああ、簡単だろ?」

 

「まあ、それでいいんならおれは問題ないけど……」

 

「(勇儀のやつ、生斗を試してるんだ。どれぐらいやれるのかを……)」

 

「よし、それじゃあ。萃香、頼むよ」

 

「ん、ああ。よし、それじゃあ行くよ

 

 

 

 

 

 

 

  始め!!」

 

 

そう、萃香がコールはしたが、おれは相手の出方を見るために動かずにいた。が、勇儀も同じようで動かないようだ。

 

 

「どうしたんだい?早く来な」

 

「そっちこそ来いよ」

 

「いや、私はあんたが来るまでここを動かないよ」

 

「ん、そうか。それならありがたい」

 

そういっておれはその場に座り込んだ。

 

「な?!なめてるのかい?」

 

「いや、作戦会議」

 

「そ、そうかい。だいぶ肝が据わってるねぇ……」

 

「そりゃどうも」

 

 

んーと、あれをこうしてああさせて。……それに注意を引き付けてそこを決め手のあれでどかーんしてしゅんといってゲット。 

よし、完璧だ。

 

「よし、それじゃあ行くか」

 

「へ?まだ10秒もたってないよ。いいのかい?」

 

「おお、もう完璧だ。失敗する気がしねぇ」

 

「ほう、たいした自信だ!その自信、軽くへし折ってあげるよ!!」

 

そういいながら勇儀は手を前に出して指をくいくいさせて来いっと挑発してきた。

 

「言われなくても行ってやるよ」

 

「言ってないけどね!」

 

そう言いつつおれは勇儀へ接近した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勇儀視点

 

 

萃香が絶賛及び、勝ったという人間、熊口生斗の実力を見たくなった私は試す意味合いを込めて余興を提案した。その内容に納得してもらえたので内心安堵している。だって萃香が言うにはどんなことにもめんどくさがる面倒な奴と言われてたんだ。断られる覚悟で言ってみたんだけどなんとか上手くいったようだ。

そして現在、熊口のやつが私に向かって肉薄してきた。

 

 

「玲瓏・七霊剣!」

 

「うお!奇怪な技を使うねぇ!なかなか面白いよ」

 

「ええ……まじかよ」

 

急に熊口の後ろに6つの光る剣が発生して私に向かって切りつけてきた。全部の剣が的確に私の死角を作らせるように誘導されており、そこを熊口本人が手に持っている剣で切りつけてきたので多少の傷を省みず熊口の持っている剣をへし折った。お陰で浮いている剣に少々切られたが背中を思いっきり切られるよりかはましだ。

 

「完全に決まったと思ったんだけど……」

 

「いや、浮いてるその剣に肩を切られたよ」

 

「服が少し破れただけじゃないか」

 

「鬼の肌をなめない方がいいよ」

 

「それももう知ってる!」

 

そう言いながら熊口は後ろに浮いている剣を自分へと還元したあと、周りに霊弾を5つほどつくった。

 

「ほう、お次はなんだい?」

 

「ちょっと危ないただの霊弾さ」

 

「つまりなにか細工してるってことか」

 

「ご想像にお任せします!」

 

そういって霊弾を放ってきた。うーん、みたところただの霊弾なんだけどねぇ……

 

そう思いつつ最低限の動作で霊弾を避けようとしたが、それが間違いだったことに次の瞬間気づいた。

 

 ドガアァァァァァンン!!!!!

 

 

「くっ!そういうことかい!!」

 

私の横を通りすぎる瞬間、霊弾が光りだし、そして爆発した。それをギリギリかわすことに成功はしたが、耳が少しやられた。キーンと甲高い音が片耳に鳴り続けている。

危なかった……流石にあれをくらうのは危険すぎる。

 

 

「ありゃ、避けたか。流石は鬼、反射神経が神がかってるな」

 

「なっ?!」

 

と、避けた先に大量の光る剣があった。これはマズい?!

 

「ふん!」

 

 

思いっきり腕を振りかぶり、風圧で剣をすべて弾き飛ばした。

 

「まだまだあるよぉ」

 

「この!」

 

お次は少し大きい霊弾がきた。しかしさっきの剣よりだいぶ遅いので余裕で避けられる。

さっきの爆発のこともあるので大幅に避ける。

 

「ああ、無駄だよそんなに接近したんじゃ避けようがない。」

 

「くっ?なんだこれは?!」

 

さっきと同じように霊弾が光ったと思えば中から大量の霊弾が飛び出してきた。

一発一発はたいした威力ではないが数が多すぎる! 目が開けられない!?

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、やっと収まったか」

 

「はい、おれの勝ちだ」

 

「え?……あ」

 

 

いつの間にか私が持っていた盃が熊口の手に渡っていた。

 

 

「……ふふ」

 

「ん?どうした?」

 

「……ふふ、ふははははっ! いいねぇ! 私の敗けだ! やるねぇ、熊口!」

 

「あ、ああ(そのくせかすり傷以外たいしてダメージを負ってないじゃないか……)」

 

 

熊口、あんたは最高だよ、気に入った!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんでこんなことになってるんだ?」

 

「いっただろ? これは余興だって」

 

 

そう勇儀が答える。

一体どんなことがいま行われているかというと……まあ、宴会だ。

おれと勇儀の勝負をつまみに酔った鬼たちがいつの間にか場を埋め尽くしていて、勝負がついたと同時に宴会になった。

 

「うーん、私とやったときはもっと強かったんだけどなぁ……」

 

いや、萃香よ。それは寿命を使ったからであって、今回の戦いは割りと本気だったんだよ……

 

「なに?まだ本気をだしてなかったのかい?それじゃあ今からがちの殴り合いをしようじゃないか!!」

 

「無理」

 

「熊口ならそう言うと思った」

 

「なら言うな」

 

「まあ!兎に角!折角酒があるんだ、飲まないと損だよ!!」

 

「あ、ちょまっ!?おれ酒弱いって!」

 

 

このあと10秒後ぐらいで酔い潰れたことを記しておく。萃香、鬼の酒をおれに呑ませんな。喉が焼けるから……

 

 

 


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