「良い天気だねー」
「ああ、こういう日は外で日向ぼっこしたい気分だ」
「私は外で一汗書きたい気分だよ」
「どうせ決闘だろ。おれには理解できん」
現在おれは勇儀の家の縁側で萃香と喋りながらくつろいでいた。
ついでに言うともうここ(鬼の里)に来てから1週間になる。本当は二日酔いが治った次の日に旅に出ようと思っていたのだが、鬼達にそれを阻まれてしまった。なんで邪魔するのか聞いてみると
「こんな面白人間、私達が逃がすわけないだろ?」
と、おれの意思をガン無視され、ここに残ることになった。唯一の救いは旅に出る原因となった(旅に出たい欲求)が無くなったことだな。もしそれがいまだにあったらフラストレーション(ほぼ欲求不満と同じ意味)がオーバーヒートしてたな。
例えるならばお腹が減ってるときに自分の大好物が目の前にあるのに椅子に縛られて食べられないというのがずっと続くのと同じような感じだ。
「そういえば翠は?遊ぼうと思ってるんだけど」
「今は寝てる。まずこんな太陽が出てるときに翠はでないけどな」
「う~ん、確かにそうかも。前、翠が生斗から出た状態で寝てたときに外へ連れ出したら『きゃあぁぁ!?助けて!し、死ぬぅ!?!』て言いながら悶絶してたからね」
「だから最近寝るとき必ずおれの中に入るのか」
「まあね、…………いや、生斗は私に感謝した方がいいよ」
「は?」
「だって翠の寝顔を独り占め出来るんだよ!」
「見ても何の得もしない。一度見てみたことはあるけどかなり酷かった。腹を掻きながら鼻提灯をつくってたし、たまに寝言で『変態!あっち行け!このゴキブリみたいにしぶとい奴め!!』とか意味のわからんこと言う」
「……最初の二つはもうおっさんそのものだね。ってやっぱり生斗も見てたじゃないか」
「最初だけです」
「こら、こっちを向いて喋らんか」
そりゃあ、美少女の寝顔を見たいと思うのは男子の全国共通の願望だとおれは思う。見て失望したけど……
「まあ、取り敢えず今日″は“ゆっくりしようかな」
「今日″も“の間違いじゃないのかい」
「間違ってない。はずがない。昨日まで男どもに『兄貴!どうやったら勇儀姐さんに勝てるか教えてくれぇ!』て言いながら追いかけ回されたんだぞ」
「なんだい?私はてっきり鬼ごっこしてるかとおもってたよ」
「ごっこではないからな。モノホンの鬼から追いかけられてんだから」
「スリルがあるでしょ?」
「ああ、正に鬼の形相で追いかけられたんだからな。
……つーかなんで勇儀をそんなに倒したいんだろうな、男衆達は」
「あー、それはね。実はちょっと前に女の鬼を馬鹿にしてた奴らを全員勇儀がぶちのめしたんだよ。それからは女の鬼を罵る奴はいなくなったけど代わりに男衆の目標が勇儀になったんだよ」
「勇儀すげーな……マジ尊敬します……いろんな意味で」
「うんうん、同種が褒められるのも悪くない」
そうか?おれは人間が褒められても別になんともおもわないんだけど……
「なあ、萃香……」
「ん、なに?」
「ずっと思ってたんだけど、その瓢箪ってなんだ?ずっと飲んでるけど……」
確かあの中の酒はかなり度数がきつかったはず…
「ん?これは伊吹瓢っていうんだ。ここから酒が無限に出てくるから重宝してるよ」
「む、無限?!あの度数が凄まじいやつがか?」
「まあ、『酒虫』のエキスを染み込ませて水を酒にかえてるだけなんだけどね」
「酒虫?聞いたことないな……それに水を酒に変えるのなら別に無限って訳じゃ……」
「別になにもないところからいくらでも出るっていった訳じゃないよ。それに私の能力を使えば無限に出てるのとほぼ同じ感じだしね」
「あ、そういえば萃香の能力ってなんなんだ?」
「うん?別に教えてもいいけど。でも私だけが教えるってのもねぇ……」
「あ、そうか。教えてほしいか。ならば教えてやろう!おれの能力は『グラサンをかける程度』の能力だ!!」
「な、なんだってー!!?…………って馬鹿野郎」
いだっ!?萃香から拳骨を食らってしまった。なんと言うことだ……頭がかち割れそう
「グラサンってあんたが今頭につけてる黒眼鏡のことだろ?そんなのじゃ能力とはいわないよ」
「だからって殴ることはないだろ…………うわっこんなに大きいたんこぶ初めて見たぞ」
「それは私も思った。……兎に角生斗の能力を教えな。そしたら私の能力を教えてあげるよ」
「う~ん、別に教えても良いんだけどさ……」
もし言った時恐いんだよな。この前萃香と戦った時寿命を使ったのも能力がバレるのを恐れて使った訳だし。
………………仕方ない。おれの誤魔化しテクを見せてやるか!
「実はな、おれには封印されし「実はね、生斗は普通の人間より、生気が濃いんだよね」魔物が……ってえ?」
「それでさ、私が生斗に負けたあと何故か生斗の生気が少し減ってたんだけどさ」
「へ?」
「それと生斗の能力ってそれに関係してるよね?普通の人間にはありえない現象だし」
「……」
まじか、そこまでわかんのかよ、この鬼幼女は……
こりゃ下手な言い訳したら頭かち割られるな
「…………確かにそれはおれの能力に関係しているな」
「やっぱり。それじゃあ教えてもらおうか」
「まあ、いいけど別に。それにもう殆どバレてるしな。でも条件がある」
「なんだい?」
「能力の事を聞いた後に戦おうとか言うな。わかったな?」
「ん、それは私の楽しみを奪うつもりかい?」
「…………やるつもりだったのか?」
「能力次第ではね」
「教えるのやめよ。萃香の能力がどうしても知りたい!ってわけじゃないし」
「ええ!?お願いだよぉ、教えて」
「上目使いしても無理だ。おれは無意味な戦いはしたくないんだ」
「楽しいじゃないか」
「それは鬼の理論、おれの理論は平和が一番」
「むむぅ……」
これでいい。取り敢えずここを抜け出してそこら辺の木の上で寝るとしよう
「いいの?私に能力を教えないとなにかと都合が悪いんじゃない?」
「ん、なにが?」
「翠にいつも生斗が寝顔を見てるよって教えるよ?」
「なっ!?いつもはみてない!一度だけだ!」
「そんなの翠が信じると思う?」
「……!!」
た、確かにそうだ。翠は小さな事でも脳内で着色して変態とかいうぐらい頭がどうかしてる奴だ。それでもしおれが寝顔を覗いたとバレればもう永遠に虫けら以下の扱いをされるに違いない!
「くっ……!」
「どうだい?あんたは私にこのことを言った時点でこの勝負負けてたのさ」
と、萃香が腰に手をあて、ない胸を見せつけるかのようにのけぞった。……こいつめ!せこい真似しおって!
「言わせない方法があるな」
「なんだい?私に能力を言う気になったのかい?」
「じゃんけんだ。」
「は?またかい」
「もし萃香が勝ったらおれの能力を教えてやる。代わりにおれが勝ったら萃香の能力を教えろ、そして翠の事を他言無用で頼む」
「私は2つかい?」
「勝てば良いだろ?鬼ならそんなみみっちい事を気にするな」
「そうだね!どうせ私が勝つんだから!」
「また、ない根拠をよくいえるな!よし、このじゃんけんの使い魔がお前をぶちのめしてやろう!」
「それじゃあいくよ!」
「「じゃ~んけぇ~ん」」
このあとおれは無惨に敗北しました。くそ!あのとき使い魔じゃなく暗黒黒魔神とかいっていればよかった!……ん?そんなの関係ないって?あるさ、たぶん。
そしておれは萃香に能力の事を教えた。そしたら萃香が
「それじゃあ壊しても治るってことだね!」
と、物騒極まりないことを言い放ったけどおれは気にしない。
思えば今日は萃香とただずっと駄弁ってただけだったな……