東方生還録   作:エゾ末

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にとりが登場するらしいです。
時系列的にどうかと思いましたが後悔はありません。


15話 昼飯ぐらいゆっくり食べさせて

 

 

「それで、なんでお前までおれん家で昼飯食ってんだよ。仕事中だろ、お前」

 

「別にいいじゃないですか。私にだって昼御飯を食べる権利ぐらいあります」

 

「よくない。おれが天魔にいろいろ言われんだぞ」 

 

「そんなことより射命丸さん、醤油取ってください」

 

「あ、はい翠さん」

 

 

 はあ、なんでこうなったんだか。

 

 この前の一件により、射命丸がおれにたいして容赦がなくなった。前からもだけど……

 今日も4馬鹿の稽古を手伝った後、翠が起きてくるとともに食事の準備を済ませ、昼飯を食べようとしたら射命丸が障子を破っておれん家に突っ込んで「お昼御飯食べに来ました!」とか言ってきたからな。あれはさすがに拳骨もんだわ。

 

「なあ、そういえば哨戒任務とか言うけどさ。

 実際のところ妖怪の山に侵入してくるもの好きな輩とかそう来なくないか?」

 

「来ましたよ、ついこの前」

 

「ん、来たのか」

 

「はい、貴方達です」

 

「うおい、おれらがここにきてもう2ヶ月近く経つぞ。全然来てないじゃないか。もう哨戒の意味ないじゃん」

 

「確かに哨戒はあまり役に立ってないかも……って、実際哨戒は白狼天狗の役目で烏天狗である私は報道が主な役割な訳で……妖怪の山以外のことをいろいろ調べたりするのが私の本来の仕事なんですよ。」

 

「そ、そうなのか?」

 

「まあ、熊口さん。天狗の社会にもいろいろあるんですよ。それより熊口さん塩とってください」

 

 そういうもんなのか?

 

「…………あんまりかけすぎんなよ」

 

 と、台の上にある塩を翠に渡す。

 

「……よし、ちゃんとした塩ですね。この前熊口さん、塩と砂糖を間違えるというベタな展開を繰り出しましたからね」

 

「わざとじゃねーよ」

 

「あ、そういえば今日、ちゃんと河童を紹介しようと思って連れてきたんですよ」

 

「え、ほんとですか?」

 

「あれ?さっきお前おれん家に突っ込んだとき一人じゃなかったっけ?」

 

「ずっと玄関にいますよ」

 

「まさか…………放置してたのか?」

 

「はい。いま、思い出しました」

 

「ちょっと上がってもらってきます!」

 

 

 そう翠がいい、席をたって玄関の方へ走っていく。

 まあ、適切な判断だな。

 

 

 そして程なくして聞きなれない声の悲鳴が聞こえてきた。

 あ、これは玄関の落とし穴に引っ掛かったやつだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

「いやぁ、まさか自分で作った罠に引っ掛かるなんてねぇ」

 

「お前か、おれん家改造したのは」ガシッ

 

 

 と、青髪でツインテール以外前あった河童達とそう変わらない格好の少女のこめかみを掴む。

 

 

「い、いや提案は文だよ!?」

 

「あれは私も良いことをしたと実感しています」

 

「射命丸このやろう」ガシッ

 

 治りかけている右手で社命丸の頭を掴む。

 ていうか自分でも思うけど治りが早いな……まだ折られて1週間ほどしか経ってないのにな。

 

 

「ふっ、所詮は人間。地力では私達を傷つけることすらできな……いってイダダダダ!?え、ちょ、離してください!」

 

「あ、頭がつぶれるー!?」

 

 ふん、人間だって霊力を操作すれば鬼ほどではないが妖怪並みに力をだすことだって可能なんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

「あー、死ぬかと思った……初対面で脳天締めされたのはこれが初めてだよ」

 

「お前らがおれを弄るからだ」

 

「確かに痛そうでしたね。まあ私はされ過ぎてもう慣れましたが」

 

「どんだけ煽ってたんですか……翠さん」

 

「もう数えきれないです」

 

「おかげでおれの堪忍袋はボロボロだ」

 

「まあ、それは良いとして「良くない!」自己紹介がまだだったね。私の名前は河城 にとり。発明が大好きな工学者だよ!あんたは熊口っていったよね」

 

「ん、名前をしってんのか。それより工学者か…」

 

 

 まあ、見るからにエンジニアっぽいバッグ持ってたから予想はできていたけどな。 

 発明が好きってことはまさか背負っているバッグには発明品とかがつまっているのだろうか。

 

「ん?この中身が気になるの?」

 

「ああそうだな」

 

 

 いつの間にかバッグに目がいっていたか。

 

 

「この中身はね___んーと、工具や材料、あとは自分でもよくわからない謎の物質かな」

 

「最後の以外はわりと普通だな。最後がもう危ない匂いがぷんぷんだ」

 

「なんですか!謎の物質って!是非見せてください!」

 

「おい、翠。好奇心旺盛なのはいいけど今回は本当に危なそうだから止めとけ。急に猛毒ガスを噴射してくるかもしれないぞ」

 

「……流石にそんなものはいれないと思いますよ、生斗さん」

 

「ま、そんなことよりも今食事中だよね!私も食べていい?ずっとそこにある胡瓜の糠漬けが気になってしょうがないんだ!」

 

 あ、全然河童っぽくないと思ってたけどそこは同じなんだな

 

「ああいいぞ、それ勇儀から貰ったものなんだ。味は保証できると思うぞ」

 

「ほんと!それじゃあ手洗って来る!」

 

 

 なんか騒がしい子だな、おれとは馬が合いそうにない。ん? おれは比較的静かな方の人間ですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 ~昼飯後~

 

 

「それじゃあ私は本来烏天狗はしないはずの哨戒に行ってきます」

 

「ほんと、部下の本領が発揮できないような仕事につかせて部下の力を活かさせないなんて上司として失格ですね!」

 

「はいはい二人ともうるさい」

 

「んじゃ私も帰ろうかな」

 

「ん、帰るのか?」

 

「だってこのあと萃香様が来るんでしょ?恐れ多いよ」

 

「まあ、そうだな」

 

 

 鬼って直接被害のない河童からも恐がられてんのか……

 

 

 そう思っていたら二人は早々に壊された障子の先にある”縁側″をでて帰っていった。

 うん、あとで障子直さなければな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

「そういえば最近、射命丸さん明るくなりましたね」

 

「ん、そうか?」

 

「前はなんか思い詰めてたような感じでした。熊口さんが射命丸さんを見てないときとかどこか暗い顔をしていたんですけど最近はそういう顔を見えなくなったんです。

 熊口さん、なにか知ってませんか?」

 

「そうか」

 

 

 どうやら吹っ切れてくれたみたいだな。これはおれ、上司っぽいことできたんじゃないか?

 

 

「ん、なんでにやけてるんですか?気持ち悪いですよ」

 

「ふっ、さて翠。これから散歩でもいくか!勿論おれの中には入んなよ」

 

「……殺す気ですか?」

 

「いや、まだだな。そういえばこのあと萃香が来てから仲良く三人並んで散歩しよう」

 

「結局入れてくれないんじゃないですか!死にますよ、私!!?」

 

 


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