東方生還録   作:エゾ末

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評価が減ってかなり落ち込んでる作者です。

まあ、そんなことより4章開幕です!


4章 【仙人と太子達との交流】
壱話 久しぶりに普通?の人と会った。


「なあ、翠~」

 

『なんですか………バカドジクソ野郎』

 

「いや、ほんとなにも持たずに手ぶらで妖怪の山にでちゃった事は謝るって……だからいい加減機嫌なおしてくれよ」

 

『もう3日もなにも食べてないんですよ!それもこれも熊口さんのせいなんですからね!』

 

「あー、おれん中で叫ばないでくれよ……頭に響く」

 

 

そう、おれはまたしでかしてしまった。前も旅に出たときに地図を無くしたり食糧が玄米だけだったりと酷い有り様だったが、今回はそれすらない。

あるのは今身に付けている衣服とグラサン、あとにとりからもらったゴムみたいな感触の手袋だけである。

 

最初それに気づいたのは妖怪の山を出てすぐのことだった。

そのときも翠は大激怒したがすぐに村が見つかるだろうという安直な考えで怒りが収まったんだけど

それから今日(3日間)まで食糧が木に生えていた木の実だけの状態で歩いたのだが村どころか川すら見つからない状況に陥っている。

 

でも今は人が補整したであろう歩道を歩いているのでもうそろそろどこかの村につく、はず……

 

 

 

 

 

 

      ぐうぅ~

 

 

「いい加減狩猟とかやろうかな……」

 

ただひたすらゴールの見えない道を歩くより狩りをした方が手っ取り早く飯にありつけるはずだ。

 

 

「……はぁ、お腹が空きすぎて頭の回転が悪いな」

 

『私だってお腹空きましたよ……』

 

「つーか手に力がはいんねぇ……」

 

と、歩道の脇にある木にもたれかかる

 

「ここまでひもじい思いをしたのは初めてかもな……」

 

 

いかん、視界が霞んできた。おれ、餓死すんのかな?

いや、前世の記憶ではなにも食べなくても3日程度じゃ死なないっていってたっけ?

 

 

「でもなんだか眠いな……」

 

『そりゃ3日間寝ずにずっと歩いてたんですからね少しぐらい休んだ方がいいですよ』

 

「あ、そうだったっけ?」

 

ずっと腹減った~て思いながらぼーと歩いてたら不眠不休で歩いてたのか……凄い集中力だな!……そりゃ疲れるわ。

通りで足の節々が痛むと思ったんだ。まず翠もそのこともうちょっと早く教えてくれよ……

 

 

「んじゃ、ちょっと寝るわ。夕方になったら教えてくれ」

 

『分かりましたよ、そのまま永眠とかはやめてくださいよ』

 

「おやすみ、良い人生だったぜ」

 

『はいはい、さっさと永眠してください』

 

さっきといってたこと違うくない!?

 

まあ、取り敢えず寝よう。疲れた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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生斗が一時の仮眠をした10分後、人や妖怪が頻繁に歩くことによって自然にできた歩道を歩く一人の老人がいた。

 

「誰かのう……ここらじゃ見かけない顔じゃ」

 

その老人は道の端で木にもたれかかって寝ている生斗に懐疑な視線を向ける

 

「むむ!こやつ、かなり衰弱しておる。脚も傷だらけじゃないか……」

 

この草木のない歩道に出るまで生斗はずっと道なき道を歩いていた。おそらくそのときにできたであろう傷を老人は見つけ、すぐさま持っていた布を生斗の両足に巻いた。

 

「このままでは傷口から菌が入ってきて危険だ

……まずは村の医師に診てもらわねばな」

 

と、老人は軽々しく生斗を持ち上げ、背中でおぶった。

 

 

「待っていなさい、すぐに助けてあげよう」

 

 

そんな一部始終を見ていた翠は

 

『こ、こんな優しい方がいたんですね……あ、涙が出てきた』 

 

 

感動の涙を流していた。

 

 

 

 

 

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「……ここどこだ?」

 

 

目が覚めると木でできた天井が映った。

 

うーむ、さっきまでこんな人工物のへったくれもない青空の下(厳密には日陰だけど)で寝ていたというのに……

 

「……あれ?足に包帯が巻かれてる」

 

じっとしていても何もならないので取り敢えず体を動かそうと立ち上がろうとした時、漸く足に包帯が巻かれていることに気づいた。

そういえば道なき道を無理矢理歩いたから痛かったんだよなぁ

……今思えばなんで空を飛ばなかったのか疑問に思えてくる。まあ、腹が減って頭が回らなかったんだろうな……

 

 

「家の中といい、包帯のことといい、どうなってるんだ」

 

 

『…………ん、熊口さん起きたんですか?』 

 

 

「あ、翠、お前も寝てたのか?」

 

『はい……あ、でも今熊口さんが疑問に思ってるであろうことなら知ってますよ』

 

「家のことか?」

 

『勿論!熊口さん、貴方は幸運に恵まれていますよ、あんな優しい御老人に助けて頂いたのですから』

 

「御老人?……うん!?この匂いは!」

 

翠が言った御老人とはもしかしておれを助けてくれた人なのか?

 

いや、そんなことより今おれのいる部屋にまで漂ってくるこの匂いは……

焼き魚だ!!

ここ数日木の実以外口にしていないおれにとっては

我慢ならない匂いだ!

 

 ガラッ、ドタドタドタ!!

 

あまりにもお腹が、空いていたおれは今出せる力を振り絞って走り、焼き魚の匂いのする方へむかった。

 

 ガターンッ!

 

そしてついに魚を焼いているであろう部屋の障子を思いっきりあけた

 

 

「いきなりだけど焼魚を俺にくれないか!!」

 

 

本当にいきなり登場しているな、おれ。

 

うむ、おれが入った場所はどうやら居間のようだ。真ん中に囲炉裏があるからたぶん魚を串刺しにして火にかざしてたんだろう。

 

そしてそこにいたのは急に出てきたおれに驚いている女性だった。

 

髪は青でボブカットにされていて頭の上らへんには∞の形に結ってある。天女の絵でよくみる髪型だな……服も青を基調としたデザインでできているところを見ると青がとってもお好きなようだ。

 

あ、この人左腕に包帯してる。怪我してんのかな?

 

 

「貴方……足大丈夫なのかしら?」

 

「え?ああ、別に大きい怪我はしてないからな」グゥ

 

「そう、それと別に魚ならあげてもいいわよ。元々貴方にあげるためのものもあるし」

 

「まじか!ありがとな!」

 

そういっておれは天女みたいな格好の女性の所へかけより串刺しにされていた焼き魚を差し出されたのでそれを受け取り、おもむろにかぶりついた。

 

「おぉ……食べ物のありがたみを感じる……」ムシャムシャ

 

「あの人のいってたよりだいぶ元気ね。これなら別に助けなくても良かったんじゃ……」

 

「んなほとはいほ!(んなことないぞ!)

はほままひゃいふれがひひてたふぉ!(あのままじゃいずれ餓死してたぞ!)」

 

「食べながら喋るものではなくてよ」

 

「わはっへる(わかってる)」

 

「その時点ではまだわかってないわ」

 

 

んまい!ここまで焼き魚が美味しいとは!魚の身は、二、三口噛めばすぐに喉へ通しても問題ないぐらいまでに柔らかい。それに程よくふりかかっている塩加減も絶妙なのも重なって口の中で楽園が広がっているように思えるほどこの焼き魚は美味なるものだった。

 

これじゃあ差し出されていない魚に手を出しても仕方ないよね。この女性も元々おれにあげる用って言ってたし。

 

『熊口さんだけズルいですよ!」ズウゥン、バシッ!

 

「きゃあ!?人から人がでてきた!!?!」

 

「あ、翠!人が食ってたの勝手に奪うな!」

 

「私だってお腹減ってるんです!あなたのせいでね!」カプッ

 

「畜生!」

 

「…………え?え!?なんで貴方も驚いてないの!?何、私がおかしいっていうの?」

 

 

あら、翠の登場で女の人を混乱させてしまったようだ。

 

「ああ、すまん。こいつ一応おれの守護霊なんだわ。」

 

「しゅ、守護霊って……普通人には見えないはずじゃなかったかしら?」

 

「私は特別なんです!」

 

「とのことです。実際には本人もわかってないってことだな」

 

「へ、へぇ……世界は広いのね……私のいた国では霊的なものは見えれどここまではっきりと人間の形をした霊は初めてだわ」

 

私のいた国?ってことは他の国から来たってことか?

確かにそれなら服装が少し中国っぽいのも納得できる。

 

「そうですかそうですか!そんなに珍しいですか。

まあ、それもそうでしょうね。こんな美形な顔なんて100年に1度生まれるか生まれないかの存在なんですから!存分に見るがいいですよ」

 

「まあ、確かに美しい顔をしてるけど……」

 

「翠、物凄い勘違いをしてるぞ。

珍しいのはお前の顔じゃなく存在だ。」

 

 

翠ってよく自画自賛するよな……誰に似たんだか。

 

ん、おれじゃないのかって?な訳ないだろ。

おれは謙虚に生きてるぜ。

 

 

「まあ、取り敢えず腹も膨れたことだし助けてもらったお礼でもしましょうかね」

 

まだ全然食べられるけどな

 

「あら、助けたのはわたしではなくてよ?

貴方を助けたのは今でかけている人よ。

私もあの御老人に一昨日怪我しているところを助けて頂いたばかりですの」

 

「へぇ、それであんたの左腕にも包帯が巻かれているんだな」

 

「そうですわ。だからそのお礼にと焼き魚を貴方の分もついでにと焼いていたのだけれど……」

 

「あ……」

 

「綺麗に全て食べ尽くしましたね……」

 

「釣り、中々大変でしたわよ?」

 

「…………滅茶苦茶美味しかったぜ!」

 

「内蔵除くの、結構大変でしたわよ?」

 

「……ごめんなさい、釣ってきます」

 

「よろしい」

 

「頑張ってくださいねー、熊口さん」

 

「こら、おまえも食っただろうが!」

 

「一本だけですよ、残りは全部熊口さんが食べたじゃないですか」

 

「うぐっ……反論ができない」

 

「貴方、熊口って言うのね……」

 

「あ、そういえばまだ自己紹介がまだだったな。

おれの名前は熊口生斗。グラサンが似合う人間だ」

 

「私は東風谷翠。熊口さんの守護霊を百年程度やってます。」

 

「百年!?まさか貴方も!…………まあ、いいわ。

 

 

    私は霍青娥(かくせいが)。仙人よ。」

 

 

 

この日、この女性、霍青娥との出会いによっておれは歴史上でも有名な人物に会うことになろうとはこのときのおれには想像もつかないことだった。

 

まあ、そんなことよりもまずおれを助けてくれた人にお礼をちゃんと言わないとな。

あと釣り。

 


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