東方生還録   作:エゾ末

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更新遅くなってすいません!


弐話 釣れないと思ったら……

「いやはや、軽傷で良かったよ。お主を見つけたとき痩細って衰弱していたからてっきり悲惨な目にあったのかと……」

 

「いや、ほんと拾ってくれてありがとうございます。お爺さんに助けてもらえなかったらたぶん餓死していましたよ、たぶん。」

 

 

日がくれ始めた頃、おれを助けてくれた老人が帰ってきた。

見た目はそこら辺にいるご老体と何ら変わらないほど痩せているのによくおれを担いで家まで運んでくれたな。めっちゃ良い人だ!今頃寝っころがって暇潰しにおれを見ている元お爺さんの神とは大違いだ。

もうこの人とあの神、交代した方がいいんじゃないかな

 

 

「あ、これお礼です。さっき釣ってきた魚です」

 

「こら、これは貴方が私が釣ってきたのを食べた分のでしょ。それに殆ど私が釣ったやつじゃない」

 

「細かいことは気にするな」

 

 

ついでに日が暮れる前には魚を釣り終えている。

いやーあんなに魚が釣れるとは思わなかったなー(棒)

 

 

「おや?よく川のあるところかわかったな。ちょいとここらから離れていて見つけづらかったろうに」

 

「あ、うん。そこにいる青娥に教えてもらったから大丈夫でした……」

 

「♪」

 

「?なんで疲れきった顔をしているんだね?もう休むか?」

 

「あぁ、はい。そうします……」

 

『疲れましたもんね、今日。私はあんまり疲れてませんけど』

 

 

お、釣りに結局ついてこなかった翠さんもおれが疲れているってことがわかったか。そうだよ、疲れたよ。もう……!

 

 

……そう、今おれが言ったのからわかる通り実はこのお爺さんが帰ってくる前の間に色々な事があった。

 

勿論今、おれの隣で優雅に茶を飲んでいる(自称)仙人こと、霍青娥がおれにいろいろとちょっかいを出したのが原因である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 昼過ぎのこと

 

 

 

「それじゃあ早速釣りへ行ってもらいましょうか」

 

「いや、ちょっと待ってくれよ。釣りっつったっておれ河川やら湖やらがある場所なんて知らないぞ」

 

「問題ないですわ。私が知っているもの」

 

「あ、そうですか」

 

 

ああ、面倒だなぁ。釣りなんて百年近くやってないぞ。

 

最後にやったのは確か……諏訪子の神域の湖でやったな……あのときは諏訪子にキレられて拳骨くらったのを覚えているから間違いない。あれ、よくよく思えば萃香のよりも重かったな。流石神だ。

 

「熊口さん、いってらっしゃい」

 

「おい、翠。まさか本当についてこない気か?」

 

「いやぁ……流石に私も疲れましたし、お風呂にも入りたいですし……」

 

「あ!そういえばおれも風呂に入ってない……」

 

そう思い、腕の匂いを嗅いでみる。

3日以上入ってないから相当臭いだろうと思いつつ嗅いでみたがなぜか全然臭くなかった。

 

「あら、貴方ならあの人に拭いてもらっていたわよ。というか服が変わっている時点でわかるでしょ」

 

「あ、うん。ほんとだ、着心地が似てたから気付かなかったよ」

 

「そう、熊口さんは入る必要はありませんけど私にはあるんです。なにしろずっと熊口さんの中に居たんですから!」

 

「んー、はいはい。わかったよ、置いていけばいいんだろ」

 

 

くそぅ、本当はおれも暖かいお風呂に肩まで浸かってぷは~良い湯だなぁって言いたかったぜ。

でも釣りに行かないで入ろうとすると『自分は仙人だ!』とか言っちゃうお年頃の青娥が怒るから無理だし……

そんなことをおもっていると翠は居間を後にして風呂場を探しにいった。

……あの急ぎようだと本当に風呂に入りたかったんだな

 

 

「んじゃ、釣り初心者の力、見せつけるとしますか」

 

まあ、翠がついてきても日光がでてる今じゃあんまり役に立たないし別にいいか。

 

よし、それじゃあまずは玄関と釣具探しだ!

 

「あ、別に玄関からでなくてもいいわよ。あと釣具もここに揃えてあるわ」

 

「なんで用意周到なんだよ……」

 

おれが魚を食いつくすってこと想定済みだったってか!

 

「……ていうか玄関から出なくていいってどういうことだ?」

 

「(ふふ、この男、さっき私が仙人って言ったとき完全にながしてきたからね……ここは仙人であることを証明するために一つ、術を見せて驚かせてあげましょう)そのままの意味よ。私が『玄関を作ってあげますわ』。」

 

「は?意味がわかん…………はい!?」

 

 

え?おれ目がおかしくなったのかな?

青娥が立ち上がってなにもない所に歩き出してなにをするのかと思ったら壁が急に円形型に壁が無くなってしまった。円形型に開いた壁の先には木々が顔を見せている。

 

お、おいまさか恩人の家の壁を吹き飛ばしたんじゃないだろうな!?

 

 

「心配しなくても大丈夫。少しすれば……ほら」

 

「うわ、元に戻った!?」

 

 

何がどうなっているんだ……急に壁が消えたと思ったら元通りに壁が出現したんだけど

 

 

「ふふふ、驚いているようね。そう、これは仙人が使えることのできる術の一つよ。

因みにこの(のみ)で穴を開けたわ」

 

「は、はぁ。そりゃすごいっすね……」

 

 

まさかこの女、本当に仙人なのか?おれの思ってた仙人のイメージとかけ離れてんだけど……

 

 

「……やっぱりおれがあんたのことが仙人であることに半信半疑だったのを不服におもって技をみせびらかしたのか?」

 

「まあ、そんな感じよ……ていうか貴方、半信半疑どころか、全く信じてなかったでしょう」 

 

「そりゃあ私は仙人だ!って言われても信じられる訳がないだろ。大体仙人とか年老いた人がなるもんだと思ってたし」

 

雲に乗った白髪だらけのお爺ちゃんが念仏唱えている感じだったしな、おれの想像してたイメージ。

 

「今なんかとても心外なこと思われた気がしたんですけど」

 

「気のせい気のせい。よし、じゃあ青娥の力を見せびらかされたことだし、さっさと行こうぜ。日が暮れるぞ」

 

「見せびらかされたって……私はただ仙人であることを証明したかっただけですわ」

 

「本当のところは?」

 

「仙人であることを主張したかった……ってなに言わせるの!」

 

「うわぁ……本当に自分で言っちゃう人いたよ」

 

「の、ノリに付き合ってあげただけですわ!!」

 

「いい加減行こう!」

 

「無視しないで!」

 

 

結局玄関から出ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 道中

 

 

「そういえば貴方、なんで道端で倒れていたの?」

 

「あ?ああ、そうだな。んー、簡単に言うなら逃げ出したってのが正しい言い方なのかな」

 

「もしかして……家出?」

 

「いや、家出では無いな。旅だ。ただなにも持たずに出たから食べるものが無かった」

 

「馬鹿ね」

 

「うっ……そういう青娥はどうなんだよ。左腕怪我しているようだけど」

 

「ああ、これ?実はこの地に道教を広めようとしてちょっと前にここじゃない村に行ったことがあったんだけどね……見事に返り討ちにあいましたわ。『我等は神道に崇拝す者だ』やらなんやら言われて殴られたりして」

 

「ひ、酷い話だな」

 

「あら、てことは貴方、道教を広めてくれるますの?」

 

「いや、なんでそうなるんだよ。道教やら神道とかおれにとっちゃどうでもいいし。」

 

「道教を知らないの?!」

 

「知って当たり前みたいな反応されても困るんだけど」

 

「仕方ないわね。仙人である私が直々に教示してあげますわ。

___________道教とは儒教、仏教に並ぶ中国三大宗教の一つで」

 

「え?」

 

「漢民族の土着的であり伝統的な宗教なの」

 

「おいって」

 

「そして道教の『道教』のところの意味はしんにょうの部分が″終わり″を意味していて『首』の部分は始まりを意味していて____」

 

「ちょちょちょまってくれ!おれの脳みそが全然ついていけてない!お願いだから道教について語らないでくれ」

 

「いやいや、こんなの基礎中の基礎にすらなっていないわ。これからもっと深く道教の素晴らしさを教えてあげようかと……」

 

「いや、ほんと。これ以上聞いても頭を通りすぎるだけになって青娥が説明しても全く伝わらないから」

 

「貴方、ひょっとして馬鹿?」

 

「それは心外、興味がないからわからないだけ」

 

「それでは道教について話しの続きを始めたいと思います」

 

「ごめんなさい。僕が馬鹿なだけです。」

 

「仙人に嘘は通じませんことよ?」

 

「あ、はい……」

 

 

はぁ、勉強なんて士官学校『1章参照』以来全然してこなかったからなぁ……

というより、やっぱ青娥って中国から来たんだな。まぁ、見た目とか名前とかで何となくそんな感じはしていたんだけどな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 川にて

 

 

「うわぁ、水が透き通っていて綺麗だな」

 

「そうでしょう。私もこの川を見つけたとき感嘆しましたわ」

 

「んじゃ、早速釣りを始めるか」

 

 

こんなに水が綺麗だったとはな。前世では環境汚染とかでおれん家周辺の川の殆どが濁っていたからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「釣れないなぁ」

 

「……まだ5分しか経ってませんことよ。」

 

「だって釣れないとさぁ、つまんな…………いや、待てよ。釣れないってことは……」

 

「?」

 

「その間ゆっくり出来るってことじゃないか!!」

 

「そこ!?」

 

3日間何故か歩き続けたりしていたせいでゆっくりする時間なんてなかったからな。

ここはゆっくりまったりと川のせせらぎでも聞きながらのんびりしようじゃないか!

 

 

 

 

 5分後

 

「……」

 

「お、引きが良いですわね。これは当たりかしら?」バシャバシャ

 

 

 

 10分後

 

「…………」

 

「これで5匹目、よく釣れるわね……」

 

 

 

 15分後

 

「………………」ズゥ~ン

 

「ふぅ、もう魚入れの中がいっぱいになったわ。こんなには食べないし生態系にも影響が出るだろうから何匹か逃がしてあげましょうか」

 

 

「ナンデ……」

 

「え?なにかいったかしら?」

 

「なんで青娥ばっかり釣れるんだよぉ!!!!!」

 

「……ま、まぁ、運がなかっただけじゃない?」

 

「何故だ!なぜ隣にあるおれの餌には目もくれず青娥のばっかり食べるんだコンチクショウ!流石に釣れなさすぎるとムカつくわ!」

 

「あ、餌……もしかして貴方の、餌だけ食べられてるんじゃない?」

 

「あ」

 

 

と、竿をあげて針部分を水面から浮かしてみる。

すると案の定、青娥のいった通り餌がきれいさっぱり消え去っていた。

 

 

「とても時間を無駄にした気分だ………」

 

「ま、気を取り直して頑張りましょう」

 

「つってももう夕暮れだぞ。もうそろそろ帰らないと。

おれを助けてくれた人に会わなきゃいけないし」

 

「それもそうね。それじゃあ最後に貴方が釣れたら引き上げるとしましょう」

 

「だな」

 

 

 

そのあとすぐにこぶりだが魚を釣ることがおれは青娥とともに来た道を引き返すことにした。

 

 

 

 

 

 

======================

 

 

 

「お爺さん。本当にありがとうございました。このご恩は明日こそ、改めてかえさせてもらいますよ」

 

「いやいや、別に恩を売るために助けたわけではないよ。ただ私が助けたいから助けただけだ」

 

 

うっ……涙が出そうだ。ここまで優しく接してくれたのは編入試験のとき、昼飯を忘れたおれに依姫がカ○リーメイトみたいのをくれた時以来だ……

 

 

「んじゃ寝ます」

 

「おやすみ。ゆっくり休むんだよ」

 

「それでは、私も寝ます、お爺さん。お休みなさい」

 

 

そんな優しさを身に染み込ませつつおれは起きたときいた部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「熊口生斗……謎の多い人間ね」

 

 

あの類いの人間は初めてね。まず人間の体内から守護霊が出入りするなんてまあまあ生きている私からしても始めてだったわ

 

「ふふ、少し予定変更といこうかしら。都に行って太子との交渉の前にまずあの男に興味が湧いたわ」

 

 

さて、どう試してあげようかしら?

もし期待外れに死んでしまってもキョンシーにしてあげれば万事解決よね

 

「明日が楽しみね……生斗」

 




道教については完全にwikiを見ながら書きました。
道教わからん……

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