東方生還録   作:エゾ末

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肆話 この変態め!

「ここが例の妖怪がよく出没する場所よ」

 

「ふぅん、森の中にこんな広場があったのか」

 

「元々は子供達の秘密基地とやらに使われていたらしいわ。」

 

 

おれと青娥は今、村の子供達の奪還及び元凶の妖怪の退治をしに犯人らしき妖怪の目撃情報が多い森に来ている。そして今の会話からわかる通り元凶の妖怪のテリトリーに足を踏み入れたところだ。

 

 

「ていうかなんで子供しか拐われてないんだ?」

 

「私に聞かれてもお答えしかねる質問だわ」

 

「まあ、そうか」

 

 

うーむ、まあ、確かにそんなのは犯人を追い詰めてから聞き出せばいい話だろうな。

 

 

 

「それでは、ここからは手分けして捜索することにしましょう」

 

「は?何でだよ。相手の戦力がわからない今、無闇に分散するのはまずいだろ」

 

「それはそうかもしれないけど……ほら、時間は限られているじゃない?日が沈めば捜索が出来なくなるし、子供達も(生きていたら)怯えながら私達の助けを待っているのよ。」

 

「そ、そうか」

 

戦力を削ぐのはあまり気は進まないが青娥の意見にも一利ある。

もし子供達が今無事であったとしてもそれが明日まで続くという保証はどこにもない。

 

 

「でもいいのか?おれは兎も角青娥は一人で」

 

「相手の心配より自分のことを心配した方が良いんじゃない?私は仙人であってそこいらの妖怪なんかには負けないわ。それにいざとなれば鑿を使って逃げればいい事だし」

 

「あ、そうか。ならいいか」

 

「今の質問をしてくるってことは私の案を了承してくれるってことかしら?」

 

「まあな。確かに効率を考えると手分けして探した方が良い」

 

「わかったわ。(ふふふ、上手くいったわ)

それでは私はあっちの方を探すから生斗はそっちの方を探してくれない?」

 

と、青娥が西と北の方に指を指す。

青娥が西でおれが北、つまりそのまままっすぐか

 

 

「わかった。みつけ次第派手な霊弾を打ち上げてくれ。

出来るだろ?この前おれの後頭部におもいっきり当ててきたんだから」

 

「あら、バレてたの。ごめんなさいね」

 

「言うのがおせーよ。」

 

 

はあ……んじゃ、探すとするか。できれば妖怪に出会わず子供だけ見つけられればいいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 西side

 

 

よし、今の段階までは予定通りだわ。

あとは後からこっそりと彼を追いかけていればいずれは元凶と出くわすでしょう

 

 

「では、もう少ししてから追いかけるとしましょう……」

 

 

そんなことを思いつつ私は笑いをこらえた。

 

 

「こうも自分の計画通りにことが運ぶと良いものね」

 

 

彼が元凶の妖怪と接触すれば私がずっと気になっている彼の戦闘がみられる。

そしてその戦いが始まればもう私にとっての計画は成功したも同然。

もしその戦いで彼が死んでも私がその死体を拾ってキョンシーにして使ってあげるし、勝ったのなら村の人々に感謝される。

どっちに転んでも私に不利益な事はないわ。

あるとすれば彼が負けた場合、死体を拾ったのち、そのままトンズラする事で村の人達に恩返しが出来ないことぐらいかしら?

 

まあ、そんなことも私ならすぐに忘れるでしょう。

取り敢えず一応私がいるところも妖怪の縄張りの可能性もあるから息を潜めておきましょう。

私が元凶の妖怪に出会ってしまったら計画に支障をきたすからね 

 

 

 

 

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 北side

 

 

 

「おーい、聞いてるー?やっぱり幼女って良いよなぁ心も体も綺麗だし、なにより胸がね!」

 

「……」

 

 

変なやつに絡まれちまったよ、おい。

なんだこのロリコンは……なんか急に茂みから出てきたと思ったら急にロリやショタについて熱く語り始めやがった。

 

なんなんだよコイツ。妖怪か?妖怪なのか?いや、妖怪だろこいつ。

外見はただの優男(勿論弱々しい意味で)だけど耳尖ってるし……

 

 

「おいおい、折角この僕が幼女について熱弁してやってるのに無視かい?」

 

 

いや、どうみてもこいつ犯人だろ。うざいし、妖怪だし、ロリコンだし……

 

「おれ、別に子供とかに興味ないから。それにもっと大人っぽい女性の方が魅力的だろうが」

 

「!!…………そうかい。やっぱり君も僕とはわかりあえないようだ……」

 

「は…………!!?」

 

 

おれの前にいた変態が突如姿を消した。

 

 

『僕の縄張りに入ってきたからてっきり同志かと思っていたけど、どうやらちがったようだ。残念、その怪しげな眼鏡、同種の匂いがプンプンしてたのに……』

 

「?!おい!何処にいる!」

 

 

なぜか森全体に響き渡るように変態の声が聞こえてくる。

そのせいで奴が何処にいるか掴めない。

くそっ、あいつは一体なんなんだよ!

 

 

『もし同志ならこの先にある理想郷(エデン)へ連れていってあげようとしたけど……

まあ、いい。邪魔物をこの先へは行かせるわけにはいかないからね。ここで死んでもらおう!』

 

 

「ちっ!やっぱりお前が犯人か!」

 

 

畜生!子供達だけ見つけられればいいやとかフラグを立てたのがいけなかった!

そんな遅れた後悔をしつつ、霊力剣を生成して臨戦態勢に入る。

 

 

 ボウゥオォォン!!!

 

「ぐっ!?」

 

 

なんだ?滅茶苦茶煩い音とともに誰かに腹を殴られたような衝撃が来たぞ?!

 

 

『くくくっ、どうやら混乱しているようだね』

 

 

「くっ……!」

 

たぶん変態が遠くから撃ってきたものだろう。

 

それならと遠距離戦に持ち込もうとしたおれは霊弾の弾幕を放った

 

『無駄無駄ぁ~。そんな〔小さい音〕じゃ僕に掠り傷1つつけられないよぉ』グオォン

 

「……あがっ!?」

 

次はアッパー、顎をおもいっきり殴られてしまった。

 

い、いかん……一瞬意識が飛びかけたぞ……

 

 

『あらら~、折角だした光る剣もなくなっちゃったねぇ』

 

くそ、集中力が切れてしまったせいで霊力剣を維持できなくなって消滅してしまった。

さっきの攻撃でまだ脳も正常に動いてくれない

 

「く、そ……どうなってんだ?」

 

『くく、教えないよー』ブゥン!

 

「うぉ!」

 

『!?なぜ避けれた?』

 

「はぁ……はぁ…」

 

あぶねぇ……足がおぼつかなくてふらついたら偶然避けられた……

 

 

『まあ、いい。次でトドメだ!』

 

 

よし、漸く脳が正常になってきた。だけどあの変態は次でおれを仕留めるらしい。

つまりいままで遊ばれてたってことか……腹が立つな

 

『サヨウナラ。』ブウゥゥン!!

 

「!!!」サッ

 

『……な!また避けた!?』  

 

 

わかったぞ。てかかなり簡単だったな、こいつの攻撃の攻略方法。

 

 

「お前の攻撃、滅茶苦茶煩い」

 

 

『はぁ!?』

 

 

「だからお前が攻撃するときブオォンやらブウゥンやらいって煩いんだよ。こんなの簡単に避けられる」

 

『な、なにをいってるんだ!?僕の体当たりは”音速”なんだよ!音が煩いからって人間がどうこうできる訳がない!!』

 

「馬鹿いえ、人間を舐めるな。現におれに避けられてるじゃねーか」

 

『し、信じられない……』

 

「ふぅ……んじゃお前の攻撃を攻略したことだし、さっき殴られた分の仕返しと行こうか」

 

『ふん!馬鹿め!今の君に僕を倒すことなんてできやしないよ!

なんたって僕は今、《音》なんだから!』

 

 

「音?」

 

『(あれ?驚かないの?……まあいいさ。)そうさ、だから物理攻撃は僕には全く効かない。それに速さも音速だから君は僕から逃げることなんて絶対にできない!』 

 

「音…………音、ねぇ」

 

それなら攻撃するとき音が煩いのもわかる。そういえばここの周りに耳を澄ましたらスゥーンって音が聞こえてくるし。たぶんその音が奴の本体なんだろう。

 

ん?ちょっと待てよ?そういえばさっきあいつ……

 

 

 『『無駄無駄ぁ~。そんな〔小さい音〕じゃ僕に掠り傷1つつけられないよぉ』』

って言ってたよな?

 

小さい音じゃ……掠り傷1つつけられない……?

 

あ、なんかわかったかも。こいつを倒す方法。

 

『なんだい?急に黙りこんで……諦めて大人しく僕に殺される覚悟ができたの?』

 

「……んなわけねーだろ」

 

 

んじゃ、突破口かもしれないのも見つけたことだし、いっちょ派手なのやりますか!

 

『またさっきの霊弾かい?そんなんじゃ僕に掠り傷1つつけられはしないよ』

 

「果たしてこの霊弾がただの霊弾だと思うか?」

 

 

そう、今、おれは後方に爆散霊弾を20個ほど生成した。

実際おれの寿命ブーストがない状態での爆散霊弾の生成はこれが限界だ。んま、足りるだろう。

 

 

   大爆発を起こすだけなんだから

 

 

 

「それじゃあ」

 

と、おれは手をあげる。それに呼応するかのように爆散霊弾は上空へ飛んでいく。

 

『な、なにをする気だい?』

 

「んー?それは味わってみてからの」

 

 

そしておれは手を下ろし……

 

 

      「お楽しみだ!」

 

 

霊弾を着弾させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ボガアァァァァァァンンン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ……」

 

 

ちょっとやり過ぎた。前に鬼にやったときよりも凄い爆発を起こしてしまったよ……

自分は巻き込まれないように撃ったけど衝撃波やら石やらが飛んできて結局おれ自身もボロボロだ。

んま、グラサンは無傷だけど

 

 

 

「な、なんで……ぼ、くの弱点が……爆音だって、わかっ、た?」

 

「ん、お前生きてたのか?」

 

 

と、おれの前にさっきおれを散々弄んだ変態が出てきた。

自分でいうのもなんだけどあれでよく生きてたな。鬼じゃあるまいし……んまあ、物理攻撃は食らわなかったようだから大丈夫なんだろう。

服もあんまり汚れてないし

 

 

「僕の、し、質問にこた、えろ!」

 

「んあ?弱点のことか?そんなのお前が墓穴を掘っただけだろうが。

小さい音じゃ掠り傷1つつかないって……

なら大きい音ならどうなんだって話だろ?」

 

「くそ……僕の、僕の理想、郷が……!!」ドサッ

 

 

ついに力尽きたのかその場で変態は倒れた。

 

 

「さっきから思ってたけど理想郷ってなんだ?」

 

「り、理想郷とは……」

 

なんだ、まだ生きてたのか

 

「幼児が沢山いる、空き家の、こと、だ……よ」

 

「一旦黙って気絶しとけ」ボガッ

 

「ぐえっ!?」 

 

おっと、思わず殴ってしまった。

 

 

 

 

 

「……ま、取り敢えずおれの仕事完了ってとこかな?」

 

 

そんなことをいいつつその場に座り込む。

 

はあ、服も体もボロボロだ……早く家に帰って風呂に入りたい。

あ、あと顎の治療だな。




因みに今回でた変態は男女両方いけるタイプです。

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