東方生還録   作:エゾ末

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久しぶりですね。
遅れましたが伍話更新です。



伍話 先越された!

「凄い…………なんなの?あの爆発……」

 

茂みに隠れ、生斗の戦いを見ていたときに思わず出た感嘆の呟き。

今はもう戦いは終わり、倒した妖怪の上に彼が座っている状況が続いている。

 

 

「やはり私の目に狂いはなかった。

彼は強い。あんな威力の霊弾、くらったら仙人の私でも軽傷では済まないわ……」

 

 

勝負事態はあまり長引きもせず肉弾戦にもなりはしなかったのだけれど……相手の言動の違和感をいち早く察知できる洞察力、相手の奇怪な術に決して屈しない精神力、相手の能力を見抜き、即座にそれの弱点をつく技をだせる応用力。

その少しの戦いの中でもこれだけの戦闘分析ができた。

 

今の戦いにおいて私は確信した。

 

 

 

 

 

 

 

  彼には仙人になれる素質がある。

 

 

 

きっと素晴らしい仙人になれるわ。

ふふ、道教を広めるため、太子様と接触しにこの地に足を踏み入れたのだけれど……思わぬところで掘り出し物と巡り会えたわね

 

 

 

「おいこら変態。いつまでそこでへばってんだ。さっさと子供たちのいる小屋に連れていけ」

 

 

おっと、私が生斗を仙人にする計画を練ろうとしていたらなにか話しているわね。

まぁ、別に計画に関しては焦ることではないし耳を傾けて見ましょう。

 

 

「う……嫌だ…ま、まだ誰も(性的に)食べていない新品なんだ……それに…ま、だ仲間も集まって、いない!これじゃ、あ僕の野望を達成、できない!だ、だから絶対に、おしえ、るもんか!!」

 

 

な、なにこの変態……

 

 

「……そうか。因みにその野望ってなんだ?」

 

「この世の全ての少年少女を(性的に)食べることだ!」キリッ!

 

「この世の全ての少年少女のためにお前を殺さないとな」ドガッ

 

「いぢゃい!?」

 

 

良い判断よ、生斗。でもこういう輩には鉄拳制裁ぐらいじゃ済まないと思うのよね。まぁ、拳骨食らわせたときにあの妖怪、舌を思いっきり噛んでいたから良しとしましょう。

 

 

「くしょう!しちゃかんじゃっちゃじゃにゃいか!(くそう!舌噛んじゃったじゃないか!)」

 

「いや、聞こえないから。もう少し滑舌よく喋れよ……つーかなんでそんなに涙目なんだ?」

 

「だきゃりゃ!しちゃかんじゃっちゃんじゃって!(だから!舌噛んじゃったって!)」

 

「ああもういい、喋るな。お前は黙って小屋まで案内しろ。まぁ、ここ一本道だから案内いらないかもだけどな。

あとさっきお前が言っていた通りなら共犯者はいないんだろ?」

 

「どうきゃな?(どうかな?)」

 

「あ、今のはなんとなく聞こえた。」

 

 

著しくあの妖怪の滑舌が悪くなっているわね。舌噛んだ拍子にちょん切れたんじゃない?

 

と、そんなことを思っていると生斗は立ち上がり、妖怪の着ている服の奥襟を持って妖怪を引きずりながら前へ進んでいった。

 

 

「はなしぇ!ぼきゅをだりぇだとおもっちぇる!(放せぇ!僕を誰だと思ってる!)」

 

「滑舌が絶望的に悪い変態」

 

「かちゅぜちゅがわりゅくなっちゃのはおまえのしぇいじゃろ!(滑舌が悪くなったのはお前のせいだろ!)」

 

 

いや、ほんと悲しくなるぐらい悪くなったわね、あの妖怪。

舌噛んだぐらいであそこまで悪くなるものかしら?

 

と、そんなどうでもいいことに頭を使っている暇はないわ。

まずは先回りして子供たちのいるであろう小屋を見つけなくちゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっぱ案内要らなかったな」

 

「ふぅ、やっと舌が治ってきた。やはり僕の自然治癒力は最強だね!」

 

「いや、うるせー」

 

 

おれが今話している変態と戦った場所からただひたすら真っ直ぐ行ったところに小屋が見えた。

因みに現在、変態はあらかじめ用意していたロープで縛っている。まあ、縛っていてもまた音になられたらすぐ抜け出されるんだけどな

 

 

 ガヤガヤ

 

 

「あれ?小屋の中が騒がしいな」

 

「ま、まさか僕がこのへんな眼鏡かけた奴に負けたことを察知して皆泣いてくれているのか!?」

 

「なわけねーだろ。つーか長い。……て、ちょっと待てよ。今おれのグラサンのことを何て言った?」

 

 

 ガチャ

 

「あ、ドアが開いた」

 

「おー!やはり皆僕が帰ったのを察知して態々出迎えてくれると言うのかい!?」

 

「誘拐犯を出迎えるやつなんてそうはいないだろ……」

 

 

でもなにかおかしい。誘拐されたとすれば普通なにかで縛られていたりドアを閉められたりして出られないようにしているはずだ。

そして誘拐した張本人が家の目の前にいる。

この小屋ははっきりいってボロ屋だ。外の声も丸聞こえなはず。

もし鍵が閉まってなくて拘束もされていないとしても今でるのは馬鹿としか言いようがない。まぁ、今回はおれがこいつを叩きのめしたから一応大丈夫なんだけどな。

 

と、今ドアを開けた奴に対して心の中で馬鹿にしていると、そこから見覚えのある人物が出てきた。

 

「!?」

 

「こんにちは、お二人さん」

 

「青娥!?」

 

 

え、なんで青娥が小屋から出てきたんだ?

 

 

「ここが子供達が誘拐された場所で間違いないわ。今は皆泣きつかれたようでぐっすりと眠っているようだけど……で?今貴方が紐で拘束しているのが今回の?」

 

「ああ、犯人だ。」

 

「そう、いかにもやらかしそうな顔ね(知ってたけどね)」

 

「くそ!仲間がいたのか!……こうなったら!!」シュウゥン!!

 

「なっ!?」

 

 

くそ、また音になりやがった!

 

 

『ははは!ほら、あの爆発する弾でも撃ってきなよ!』シュゥーーー

 

「ああ、言われなくても撃ってやるよ!」

 

「やめなさい生斗!今あれを撃ったらこの中で寝ている子供達にまで被害が及ぶわ!!」

 

「……あ」

 

ん?てかおれ、青娥に爆散霊弾見せたことあったっけ?

まあいいや、今そんなこと考えている場合じゃない。

 

『そういうことさ!つまり君たちは僕に対しては無力!』

 

「ちっ……」

 

思わず舌打ちしてしまう。くそ、これじゃあ攻撃手段がない……

 

『ふっ、普通なら君たちをいたぶってやろうとしたけど流石に今回は疲れたから見逃してやる。

感謝するんだね!』シュゥゥゥゥン___

 

 

と、捨て台詞を吐いた変態の音が遠ざかっていった。

どうやらまた戦うことはないようだ。

 

「はぁ、今日は疲れたな。服はボロボロだし顎殴られたところいまだにいてーし……」

 

「まぁ、結果的には子供たちも全員無事だったことだし、良かったじゃない。」

 

「まあな」

 

「それじゃあ早速小屋の中にいる子供たちを背負って帰りましょうか。」

 

「そうだな、帰るか」

 

 

そうおれが言うと青娥は小屋の中に入らずそのまま帰路の方を歩いていく

 

「おい、ちょっとまて青娥。まさかお前、この中にいる子供達を運ばない気か?」

 

「重労働は男がするものよ。ほら、つべこべ言わずに運びなさい」

 

「おれ、一応怪我人なんだけど……」

 

「私も探し疲れて足がくたくたなの。子供一人運ぶほどの力は残ってないわ(嘘)」

 

「仙人なのに?」

 

「仙人の前に一人の乙女よ?」

 

「はぁ……そーですか。わかりましたよ、運べばいいんでしょ運べば」

 

はぁ、口論することさえ面倒だ。さっさと皆を連れて帰るか。

 

そしておれは以前鬼達の荷物を運んだときと同じ要領で子供たち一人一人を霊力で囲い、浮かべた。おお、中々いたな。10人はいるんじゃないか?

 

 

「んじゃ、帰るか」

 

「やはり凄いわ……そんな高等技術、私でも一人か二人が限界だわ」

 

「そうか?コツを掴めば結構楽だぞ」

 

 

さて、さっさと帰ってこの子達の親を安心させてやるか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?おもったけど青娥、何にもしてなくね?

 

 

「気のせいよ」

 

「心を読むな」


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