「……」スタスタ
「……」スタスタ
「……」スタスタ
「……」スタスタ
「……」ズサッ
「……」サッ
「……おれの後ろをついてきたって仙人にはならないぞ」
はぁ、これはどうすればいいんだろうか。
昨日青娥からの仙人の勧誘を断って以来、ずっとつけられているような気がする。
「あら?私、別に仙人になってほしいからってついてきているわけではなくてよ」
「ならついてくんな!」
「あ!」
なんだか面倒だったので空を全力で飛んで青娥をまいた。現に今、青娥に構っているほど暇じゃないしな
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はぁ、逃げられたわ。
「まぁ、これも想定の範囲内ね」
ちょっと早いけど次の段階へと進もうかしら。
あ、その前にあの、老人に挨拶しなきゃね。生斗には残念だけどもう二度と彼と会うことはなくなるけど……まあ、別に大丈夫でしょ。
「まずは昨日来た人の家に片っ端からお邪魔するとしましょうかね」
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村の近くの森
『熊口さん、やっぱり気づいてたんですね。』
青娥から逃げられたことを確認し、近場の森の中に着地すると、おれの中から翠が話しかけてきた。
「気づくも何もあからさますぎだっただろ、あれ」
『それにしてもなんで熊口さんなんかを追いかけてるんですかねぇ。』
「そりぁ、仙人の勧誘のためじゃないのか?」
『もしくは胸を揉まれた腹いせか』
「うぐっ、あれはただの事故だ」
それにしてもどうしたもんか。青娥のやつ、おれが仙人にならないといってから行動が変だ。
急にいなくなったかと思えばいつの間にか隣にいたりするし、なんか独り言言うし……
「まぁ、そんなことおれが考えてもなんにもならないか」
取り敢えず青娥のことは後にしよう。
それよりももっと重要な事があるんだ。
たぶん、おれがこの世界に来て初にして最大の悩みだろう。
「はぁ、どうしたもんか……」
実はおれ、この村の女衆に求婚されたんだよな。
なんでおれなんかに求婚の願いが来ているのかというと、それはおれが妖怪を退治できる数少ない人間らしいからだ。
このご時世、少しでも自分の子孫を残そうとより強い者と結婚したいと思うのが普通らしい。
それで、今回あの変態を倒したことがきっかけで親共々、おれと結婚すればより強い子孫が残せるってことで昨日、村中の女の子達が親を連れておじいさんの家に押し掛けてきた。
いや、嬉しいよ。おれなんかと結婚したいと思われてんだから。
……でもなぁ
「うーん……」
『ほんと、昨日はいろいろありましたねー。熊口さんからは追いかけ回されたり、気に吊るされたりと。挙げ句には熊口さんなんかの目当てに女衆が押し寄せてきたり』
「皆もやっとおれの魅力に気づいたんだよ。思いしったか」
『思い知ってません。ただこの村の女の人たちの目が腐ってるだけですよ』
あれ?
「なんだ?なんか不機嫌だな、今日のお前。いつもならおれを罵倒して嘲笑うくせに」
長年一緒にいるからこそ分かる。今日の翠は不機嫌だ。今のがいい例だ。調子良いときはほんとこれでもかというぐらいおれを馬鹿にしてくる癖に機嫌が悪いときは逆におれを罵倒しなくなる。
……今改めてそう思うとずっと不機嫌であってほしいとおもった。
『わかってたんですか?それをわかってて私と話すなんて熊口さん、ドマゾですね』
「どちらかというとSだ!」
と、下らない会話を翠とする。はぁ、翠と話してる時が気楽でいい。
気を使わなくて済むからな。昨日の女の子達と話しているときはなんだか気を使って疲れたし
「お話し中の所失礼するわね」
「げっ、青娥。いつの間に!?」
いつの間におれの後ろに青娥がいた。
うわぁ、恥ずかしい。今の翠との会話、端からみたらただの独り言に見えるからな。
「それじゃあ急にだけど出発しましょう」
「は?」
え、なにが?何処に出発するんだ?
「ふふ、今貴方、何処にいくんだ?って顔してるわね」
「いや、そりゃするだろうよ。急に出発するなんて言われても」
「まぁ、行くところは私がこの国に来て最初から決めていた場所よ。つまり厩戸皇子のいる都よ」
「う、厩戸皇子?!」
厩戸皇子ってまさかあの厩戸皇子か?
前世でも厩戸皇子といえば物凄く有名だった人物だ。
だってあの[聖徳太子]の生前の名前だったんだから。
え?てかこの世界にも聖徳太子なんていたんだ……
「って、待てよ。なんでおれまでその都までいかなくちゃいけないんだよ」
「そんなの決まってますわ。生斗は私の次期、弟子候補なんだから」
「いや、弟子になるって一言もいってないから。勝手に決めんな」
実際は聖徳太子がどんな顔だったのか少し気になる。
でも流石にそれはめんどくさい。
だってあの聖徳太子だぞ?おれの予想では護衛とかがあるから顔を見ることさえできないだろう。
まぁおれや青娥ならそれぐらい少し手間はかかるが突破することは出来るだろう。でもそこまでしてその聖徳太子の顔を見たいとはおもわないんだよなぁ……
「あ、でももうあの村には帰れないわよ」
「え?なんでだ。」
青娥は何をいってるんだ?村に帰れないもなにもこれから求婚についてどうするか考えようとしてたのに。
と、そんなことを思っていると、青娥からとんでもない発言が耳に聞こえてきた。
「だって私が貴方と既成事実をでっちあげて村中の女衆に喧嘩うってきたもの」
「えええぇぇぇぇぇ!?!?!!?」
えええぇぇぇぇぇ!?!?!!?え、え、え?なにしてくれちゃってんのこの人!!?
「なんてことしてくれたんだよ!!」
「あら、一緒に同じ布団で寝たのは事実じゃない」
「いや、確かに同じ布団では寝たよ!?でも青娥が勝手に入ってきただけだろ!おれ全然関係ないじゃん!つーかなんでお前おれを巻き込むようなことしてんの!?」
「……だって」
「ん?」
「確実に貴方を都に連れていくなら手っ取り早いと思って」
「お、おいまじか。青娥お前、そんなことのためにおれと既成事実をでっちあげたのか?」
「そうよ。……あ、それとも本当に既成事実を作ってもいいのよ」
「いらん!!」
なんてこった……青娥、こいつ、とんでもないことをしでかしやがった
『でもよかったじゃないですか。嫁選びする必要もなくて』
翠、こいつ笑うの堪えてるな?声の出し方でわかるぞ
「……翠よ、おれは元から皆断る気だったんだぞ。」
ここは真面目に答えて翠の笑うのを止めてやろう。
『え、なんでですか?求婚してきた女の子の中にも可愛い子もいたのに』
「おれはな、強いから結婚したいとか上っ面だけのは嫌なんだよ。やっぱり結婚とは両方が分かち合い、この人となら一生ついていってもいいと思う人同士がするものだとおれは思うんだよ」
『く、熊口さんにしてはすごくいいこと言いますね……でも熊口さん。年齢=彼女いない歴の貴方がそんなことをいってもなにも心に響くものなんてないですよ。
なにいってんだこの童貞は、ってぐらいにしか思われません』
「う、うるさい翠」
「やっぱり、翠と話していたのね……ま、そんなことより急いだほうが良いわ。じきにここも……「いたぞ!彼処だ!」ちっ、バレたようね」
「ん?なんだ?」
村の方面から男衆が走ってきた。ん?なんだろう。
「なに突っ立ってるの?早く逃げるわよ」
「は?なんで逃げなきゃいけないんだよ!?」
「さっき村の女衆に喧嘩うったっていったでしょ?売ったせいで皆から追いかけられるようになったのよ!捕まればなにされるかわからないわ!」ダッ
「お前、どんな喧嘩の売り方をすれば村の男衆に追いかけられるようなことになるんだよ!」
そう文句を言いつつ走っていった青娥の後を追う。
ああもう最悪だ!青娥とあってからろくなことがない。
こいつのせいで急に村を出なくちゃいけなくなるとは……まだおじいさんに挨拶すら出来てないのに!!
「……青娥、後で覚えていろよ!」
「ふふ、望むところですわ!」
超無理矢理に村を出ることになりましたが取り敢えず次からは都にいきます。
本当はもう少しゆっくりやって成り行きで行く感じにしたかったんですけど流石に遅すぎるかなと進めました。