「何処へ行ってるの?そっちは都から反対方向よ」
「うるさい!青娥の言うことなんか二度と聞くか!」
青娥の策略により、何故か村から逃げたおれは青娥とは別行動をとろうとした。
このままこいつと一緒にいたらなんかヤバそうだからな!これ以上の面倒事は勘弁だ。
「でも貴方、また手ぶらじゃない。食料とかどうするの?」
「はっ!?……で、でも青娥だって手ぶらだった……て」
「手ぶらではなくてよ」
な、なんでだ。さっきまで走って逃げていたときはなにも持っていなかったというのに……
「こんなこともあろうかとあらかじめ村の外れに荷物を纏めてたのよ。妖怪に荒らされてなくて良かったわ」
「……お前」
青娥のやつ、もしや初めからあの騒動を起こすつもりだったのか……
「それにほら、あのとき子供達を助けたときのお礼のお金もあるわよ」
「なっ、なんで青娥が持ってんだよ!」
「貴方、貰うとき寝てたでしょ。だから後で渡すっていって預からしてもらってたわ」
「なら返せよ」
「どうしようかしら?……そうねぇ、私の弟子となって仙人の道に歩めば渡してあげても……」
「絶対に無理」
「そう、それなら一緒に都に行ってくれれば返してあげるわ。」
なんでだよ!っと言いたい気持ちを抑える。ここで言いあいしても青娥にはなんか勝てる気がしない。くそぅ、本当はさっさとおさらばしたいのに……でも二度とあんなひもじい思いはしたくない
「はぁ、……わかったよ」
ここは大人らしく引き下がるほうが良いだろう。どうせこれからの行き先なんて考えてないしな。
『言い合いで負けるからって最初から諦める熊口さん……ぷぷっ、カッコ悪いです』
翠はちょっと黙ってろ。
「それよりも青娥、なんでおれを仙人にならせたいんだよ?」
これは青娥がおれを仙人に誘ってきてからずっと疑問に思ってたことだ。
「そんなの……素質があるからに決まってるでしょう」
「……は?」
た、たったそんだけ?
「だから素質があるからよ。磨けば光る原石をみすみす逃すようなことはしたくないの。」
「そ、それだけのためにおれと既成事実をでっち上げて村からわざと追い出させたのか!?」
「まあ、他にも理由はあるけど……だいたいはあってるわ」
おいおい、まじかよ………そんなことのためにおれは振り回されたってのか。
「で、でもそれでもおれは仙人になんかならないぞ。死神の影に怯えながら生きるのなんて嫌だしな」
「100年に1度だけよ?」
「それでも!」
はあ、しかたないか。青娥と会ったのが運の尽きと捉えるしかな……これまでだってそうやって生きてきたし。(何度かは死んでるけど)
「で?都ってのはどこなんだよ?」
「だからさっきから逆だっていってるでしょ?最初から私の言うことを聞いていれば良かったのに」
「うっ、そんなのお前がおれを村から追い出させたのがいけないんだろ」
『もう、いちいち口答えなんかせず黙ってついていけばいいのに……』
「なんで翠はそんな淡白でいられるんだよ?」
『確かにあのおじいさんは優しかったですけど……ほかの人には驚かれるだろうと思って姿見せていませんでしたし……だから交流なんてほぼ皆無だったんで別に大丈夫ですね』
「くっ……ここにはおれの味方はいないのか!」
「よくわからないけど……労いの言葉をかければいいのかしら」
~山道~
「なあ、もう暗くなってきたんだけど」
「そうねぇ、それじゃあ今日はここで野宿しようかしら」
「あ、私野宿初めてです!」
現在山のなかの道を歩いている。が、もう日が暮れてきたのでここで野宿することに。因みに翠はおれからでて一緒に歩いている。
「火を焚くのは……要らないわね。丁度良い温度だし、光なら生斗がいるし」
「まあな。……でもこんな山の中に光なんか出したら妖怪達が群がってくるんじゃないか?」
「それも……」
「大丈夫ですね!」
「……ん?」
「そういうことか!!」
「ぎゃははは!こんな山のなかで火なんか灯すから悪いんだぜ!」
「食べてやる!」
くそ!大丈夫だと言われて疑問に思ってたらこういうことか!!
てかなんでおれが妖怪の相手しなくちゃいけないの!?
「おらあぁ!!」
「くっ、ほら!」
「ぐえっ!?!」
ハイエナのような姿をした妖怪の一匹が俺に向かって爪で引っ掻きにきたので足払いをし、態勢の崩れたところに顔面に霊弾を放ち、気絶させる。
くそ、あとだいたい5体ぐらいか……
「翠と青娥、後で覚えてろよ!!」
「考える暇があるなら俺らの腹の中に収まれよ!」
「楽になれるぜぇ~?」
「なるわけないだろ!犬っころ共!」
ドガーンッ!!
「なんだかあっちの方が騒がしいですね……あ、この干肉、味が染みてて美味しい」アムッ
「そう?それ一応非常食なんだけどね。あ、あと明日には都に着く予定だから」
「だからご飯を作らないんですね。」
「だって面倒だもの。火をいちいちつけないといけないし」←(霞で充分だからあまり料理をしない)
「それもそうですね。まあ、食べられないよりかはマシです」
アトデオボエテロヨ!! グワァ~…クソックッテヤル!
「あ、今熊口さんの声が」
「だいぶ危なさそうね」
「ま、大丈夫でしょ。熊口さんですし」
「まあ、確かに彼に任せると不思議な安心感があるしね」
「そうでしょう!」
「なんで貴方が胸を張ったのかはわからないけど……そういえば翠って昔から生斗の守護霊だったの?」
「あ、はい。そうですよ。前はハゲ散らかしたおじさんが熊口さんの守護霊だったんですが色々あって私が守護霊をすることになってます。」
「へぇ、守護霊って交代とか出来るのね……」
「いや、普通は出来ないらしいですよ。私は特別らしいので交代出来たらしいんですが」
「やっぱりただ者では無かったわね……」
「でも酷いんですよ、熊口さんって!私が守護霊になってから間もなく、私の故郷から旅立ったんですから!」
「え、そうなの?」
「そうです!それで旅に出たと思ったら鬼にあったりして妖怪の山という所に行ったりして大変………………」
「ん?どうしたの?」
「いや、妖怪の山にいた人達の事思い出してたらなんだか懐かしくなって……まだ出てから1週間も経ってないのに……」
「まあ、思い出とはそういうものよ」
「へへ、そういうもんですかね。そういえば青娥さんは昔どこにいたんですか?」
「私?……そうねぇ、ここから遠い所よ。まずあの村から南に____」
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「キャンキャン」ザザザザ
「クゥ~」ザザザザ
「ハァ、ハァ……やっと追い返せたか……」
ちっ、少し服が切れたな。まあ、放っておいても神が勝手に新調してるから大丈夫だろう
「よし、取り敢えずあいつらを説教しなければ!」
もっと他に方法があったのになんでおれを見張りにさせたんだ。見張りをさせるにも交代とかあるだろうに……
「ごらー!翠、青娥!二人ともよくもおれ……を…」
「……ん~…………」スゥ~……
「…………」スゥ…スゥ…
怒ろうとしたら二人とも寝息をたてながら寝ていた。
……はぁ、これじゃあ怒りづらいだろ……
「……おれも寝るか」パチ
と、呟きながら霊弾(ライト代わり)を消失させ、辺りを暗くする
「今日だけは許してやる」
そういっておれは青娥の持ってきていた荷物から毛布を取り出して二人に被せてあげた。
ん?ちょっとまてよ。今のおれ、優しくないか?
「……優しくなんか……ありませんよぉ……」ムニャムニャ
「おいこら翠、お前起きてんだろ」