東方生還録   作:エゾ末

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8話 女子勢の反応が酷い

 

 

 はあ、遂にこのときが来てしまった……

 ん?何が来たんだって?編入に決まってんだろちくしょー!

 昨日まで永琳さん家でぐだってたのが夢のようだ。

 もう……永琳さん家で暮らすこともできなくなるのか。これからはむさ苦しい男達と共に青春もへったくれもない灰色の人生を送る羽目になるのか……いや、一応依姫もAクラスだ。灰色と断定するにはまだ早い。

 

 

 おれが入ることになった陸軍防衛士官学校は全寮制らしい。良く言えばいちいち学校までいく必要がないと言うこと、悪く言えば心を休ませられる場所がなくなるということだ。

 なぜ、心が休まらないかと言うと、抜き打ちで夜中に叩き起こされたりして荷物検査とかがあるらしい。なんでそんなことすんのかと永琳さんに聞くと、緊急で防衛任務とかに駆り出されるときがあって、そのときに準備していなかったら大変なことになるということだった。た、確かに正論だ。

 だけどおれはそれに関してはかなり不満である。おれがされるとむかくつランキングの堂々第2位に入るのは睡眠妨害だ。1位はなんだって?そんなの自分で考えろ!

 まあ、そんなこと考えている間に士官学校にいく時間になってしまった。

 

 

「永琳さん。今日まで本当にお世話になりました」

 

「ほんと、お世話したわよ。他人の家であそこまで図々しく居座られるなんて思わなかったわ」

 

「うぐっ…………すいません。」

 

「まあ、嫌ではなかったわ。いい気分転換になったし。また休みの日にでも来なさい、歓迎するわ。私がそのとき居るかどうかはわからないけど」

 

「ハハハ! 永琳さんが留守でもくつろぎますよ、おれ」

 

「貴方、ほんといい根性してるわね。まったく冗談に聞こえないのだけど……」

 

「まあ、時間もそろそろだし……行ってきます! 永琳さん。」

 

「はいはい、いってらっしゃい」

 

 

 このとき永琳さんが母親のように見えたのは秘密である、本当に。

 そんなこと口に出したら大変なことになる。

 前にお母さんみたいですねと言った時、毒薬飲まされそうになったからな……

 

 

 

 

 

 

 永琳さんと別れてから士官学校へ向かう途中、依姫と会った。そういえば永琳さん家に迎えにいくって、ツクヨミ様に説教されたあとに約束していたんだった。完全に忘れてた。

 まあ、ツクヨミ様の精神的に辛くなる説教を受けてなかば放心状態だったのだから仕方がない。

 

 

「ついに私達も訓練生ですね! はあ、緊張します!」

 

「依姫はそんなに緊張しなくていいんじゃないか? すぐ適応できるさ」

 

「む、何を根拠に言ってるんですか。フレンドリーさでいえば熊口さんの方がすぐ適応しそうじゃないですか」

 

「お、そうか? いや、そうかなぁ……やっぱりそうかぁ? おれってそんなにフレンドリーかなあ、それって褒め言葉? いやぁ、まいっちゃうなぁ~!」

 

「前言撤回します。フレンドリーではなくウザいです。」

 

 

 はい、すいません自重します。いやぁ、知らない人からスゲーとか褒められるとかなら結構我慢出来るんだけど友達とかに褒められるとつい完全に調子に乗ってしまうんです。しかし、それは止められませんね。性分だから。

 

 

 そんな他愛もない会話をしながら歩いて20分後、ついに士官学校の門前に着いた。

 

 

「ついに、着きましたね……あと一歩で士官学校校内です。ここは一緒に訓練生として初めての一歩を踏もうではありませ…………」

 

「めんどくさい」

 

 

 長々と依姫がなんか言ってるので、おれは足早に門を潜った。

 

 

「ああ!! 折角一緒に初めての校内に入ろうって言ったのに!」

 

「もう何回も入ってるだろ」

 

「訓練生としては初めてですよ!」

 

「そんな細かいことは気にすんな。そんなんじゃ男に嫌われるぞ」

 

「それって男と女逆なんじゃ……」

 

「そんな細かいことは気にすんな。そんなんじゃ男にき…………」

 

「繰り返さなくていいです!」

 

 

 取り敢えず一年校舎のAクラスに向かおう、こんな不毛なことを言い合っても意味はない。殆どおれのせいだけどな。

 いやぁ、依姫を弄るのは楽しいなぁ。

 

 

 

 

 

 まずAクラスについて語らせてもらおう。

 えーと、まずは……うん、男子の数が少なすぎる。クラス30人中5人しか男子がいない、おれを合わせても6人。

 おれの想像していたむさ苦しい男達じゃなかったのはいいが、ここって訓練生の中でも指折りの人達が集まるクラスなんだよな? 男子頑張れよ。

 

 あとおれのときと依姫のときの自己紹介したときの温度差が激しかった。 

 

 

 おれの場合____

 

「おれの名前は熊口生斗。チャームポイントはこのグラサン! 神すらも取ること諦めたこいつは、その名の通り固く結ばれてるんだ! いわば一心同体!! まあ、そういうことだからよろしくな!」

 

 男子勢「おお、あいつおもしれーな」

 

 女子勢「え、何いってんだこいつ。きも」

 

 

 盛大にやらかした。特に女子の目。塵をみるかのような目をされて泣きかけた。

 

 

 一方、依姫の場合は____

 

「私の名前は綿月依姫といいます。新参者ですが気軽に話しかけてくださると私としても嬉しいです」

 

 男子勢「え、あの有名な綿月大和隊長の娘?! 全然似てねー、遺伝子詐偽だ!!」

 

 女子勢「キャー!ステキー!サインしてー!」

 

 

 

 どうだこの温度差。おれとは雲泥の差だ。特に女子。

 あと男子勢、おれもそう思う。

 

 はあ、よく考えればなんだよあの自己紹介……おれ頭おかしいんじゃねーのか?

 なんだよグラサンと一心同体て……確かに事実ではあるけれど。実のところ言うと体に引っ付いている訳ではないんだけどな。

 たぶんあの神の神力でくっついてるだけだ。

 まあ、そんなこといっても信じてくれるわけないか……

 

 

 いきなり調子に乗って出鼻をくじく結果となった自己紹介になったが、これからの行いで挽回するしかないな。

 男子勢の反応は悪いわけではなかったし。

 

 これまでの経験上、なんとかなったことなんてないがなんとかなるだろう、うん。そう考えてないとやってられない。

 

 それに無駄になんとかなりそうな気がするのは、きっとグラサンのお陰だろう。

 

 …………自分でいってて意味がわからん。


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