不思議の国の狩人   作:PA

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私だ。




第一話

夢を、見ていた。

 

『灰狼』と呼ばれた古狩人。『神父』とその『相棒』。狩人狩りの『鴉』。

そして『最初の狩人』。

 

皆が皆、長い「夢」を見ていた―――――――

 

―――――――

――――

――

 

「……」

 

『狩人狩り』。アイリーンは、日の光を感じふと目を覚ました。

そして起きたばかりの上手く働かない頭で、仰向けながら、自分の今の状況を確認する。

 

自分は確かヤーナム大聖堂の入り口、中へと到る階段の前で『奴』と戦った。

その際、致命傷を負った自分に『奴』は追い打ちをかける事無く、一瞥をくれた後、階段を上りその奥へと足を進めて行った。……恐らく、待っていたのだろう。『例の狩人』を。

 

どれ位時間が経ったか、『例の狩人』は自分の前に立っていた。

その狩人は自分の警告を聞き入れず、しかし「慈悲」を受け取り、『奴』の待つ大聖堂へと向かっていった。

 

……結果など、見なくても理解っていた。

 

しばらくし……血に濡れた「慈悲」を持った狩人が戻り、自分はその狩人に、狩人狩りの証たる『鴉の狩人証』を渡した。別に、その業を背負って―――受け継いで生きろと、そう言う訳では無かった。

ただ単に、この狩人になら『証』を渡しても良いか。そう思ったのだ。

 

……その後の事は良く覚えて居ない。眠くなってきたと、隣に座りこむ狩人に向けて話をした事。目を瞑った事までは記憶にあるのだが。

 

「……?」

 

そこでふと、アイリーンは疑問に思った。

 

日の光。

 

そう。今、自分はサンサンと照りつける太陽の光を浴びている。しかも、ペストマスクの視界から確認するに、雲一つない青空の下で。

 

「夜」が終わったのか?いや、あの夜は普通では無い。通常ならば時間が経てば夜は明ける。だが、「獣狩りの夜」は話が別……つまりは、『あの狩人』が終わらせたのか。今回のは特別酷かった辺り、やはりあの者は只者では―――いや、待て。

 

自分は大聖堂の入り口前で倒れたはず。

 

いかに今の自分が仰向けと言えども、その姿が、建物が確認出来ないなどあるのか。

そもそもの話、致命傷のはずの傷が全くもって痛まないのはどういう訳だ。

幾多もの疑問を抱きながら、とにかくこのまま居ても何も始まらない、と上体を起こす『鴉』。

 

かくして、彼女の目に映ったものは

 

「な―――」

 

草原。

 

見渡す限りの草原であった。

日の光を浴びつつ、そよ風に揺れる、草、草、草。所々には色鮮やかな花達が咲き誇っており、蝶や蜂がその蜜を餌に花の周りを元気に飛び回っている。

 

「これは……」

 

そこで気が付いた事は、今まで自分が寝転がっていた場所は丘の―――斜面の上だったと言う事。

眼下には、緑々しい緩やかな下り坂がどこまでも続いており、このまま下へと降りていけば木々の生い茂った森へとたどり着く。その先には湖が。

更に、視界の右奥には古い城跡の様な物や、その反対側には天を貫くかの如き巨大な白い塔。

所々には点々と、小さな集落らしきものまで確認できる。

 

「……一体、どうなってるんだい」

 

あまりにもヤーナムとは違いすぎる環境に混乱するアイリーン。その中でも一際存在感を放ち、彼女の目へ飛び込んできたのは

 

「あれは―――都? なのかねぇ」

 

視界の奥の……奥に小さく見える、城壁のようなもの。それに囲まれているのは一様に赤い色の屋根の建物達。恐らくは煉瓦造りなのか……一つ分かるのは、その城壁の囲んでいる範囲が途轍もなく広いと言う事。

何せこの丘の上からかなりの距離があるにも関わらず、その全容を把握する事が適わないのだ。

 

そんな光景を見てしばらく呆けているアイリーンであったが

 

「……おーい!そこの!何やってんだこんなとこで!」

 

突如、自身の右後方から聞こえてきた声によって我に返った。

 

「!」

 

そのいきなりの出来事につい身構えながら振り向く。

すると、見上げた斜面の上には一人の若年の男性と荷台付きの馬車が停められていた。

……どうやらここから上は普通の道になっているらしい。警戒を解きつつ、その馬車へと近づくべく立ち上がる。

そんなアイリーンの姿をハッキリと確認するやいなや、その男は小さな悲鳴を上げた。

 

「っ!な、なんだよ、あんたのその面は!」

「……ああ、悪いね。驚かせてしまって」

 

成る程、このペストマスクが驚いた原因らしい。

 

「あ、いや、あんた変わった格好をしているな。『冒険者ギルド』の奴か?」

「『冒険者』…?知らないねぇ。あたしは『狩人』。まあ、今は引退を考えているしがないババアさね」

「は……?狩人?ってあの、猪とか兎とかを狩る……」

「少し違うが、まあ、似たようなものだよ」

 

話を聞くにどうやら、『狩人』と言う言葉の意味が此方側のそれとは食い違っている。ここはヤーナムとは違うのか……しかし『冒険者』。自身をそれと間違えたのはこの武器のせいなのか。

アイリーンは右手に持っている「慈悲の刃」にチラリと目を落とした。

 

「ところであんた、何処に向かっているんだい」

「ああ、俺は今商売の帰りでな。ザハロに向かっている最中だ」

「ザハロ……ってのは、向こうに見えるトコかい?」

「へ?そ、そうだが……知らないのか?」

「……色々あってね」

 

ザハロ……聞いた事が無い。やはり自分の今居る場所はヤーナムとは違う土地、と言うかもはや『世界が違う』と見るべきなのか?いや、そんなバカな話がありえる訳が……だが。

 

「あの『白い塔』は?」

「ん?ああ。あれは紀前禄4百年頃位からあるらしい古い塔だよ。誰が何の為に建てたのか何て分からないが……何でも、中には昔のお宝やら何やらがあるってんでよ。冒険者連中が入り浸ってるのさ。でも」

「でも?」

「……得体の知れない『化け物』達が蔓延ってるらしい。しかも上層に行けば行くほど―――ってな」

「ククク……そうかい」

 

あまりの可笑しさについ笑いが込み上げてしまうアイリーン…これは確定か。「紀前禄」など聞いた事の無い元号。加え、あの『塔』。あんな物があれば、幾ら人里離れたヤーナムと言えどもその噂ぐらい入ってくる。つまりは『そう言う事』なのだろう。

 

「ちょっとあんた。失礼を承知で言うが…この馬車にあたしを乗せてってくれやしないか」

「それは別に構わないが…その。先客が居るんだが、大丈夫か?」

「先客?」

「ああ、何というか、凄ぇ近寄りがたい雰囲気のオッサンなんだ。帽子をかぶってて片目を包帯か何かで隠した…話しかけられた時は、あんたを見た時以上に驚いちまった」

 

帽子をかぶり、片目を隠したオッサン……アイリーンは嫌な予感を抱きつつ、男にある質問をぶつけた。

 

「あんた、もしかしてその男が被っていたのはこう……ささくれた羽根の様な形をした帽子じゃ無かっただろうね?」

「おお、そうそう!おまけに灰でもかかったみたいな白い装束を着た―――っておい!だから荷台の方にはその男が」

 

途中までその話を聞いたところで、アイリーンはつかつかと荷台の後ろの方へ歩みを進める。

そしてカーテンの様にかかっている布地を手に掴み、左右に勢いよくバッ!っと開いた。すると

 

「……」

 

中には腕と足を組み、積み込まれた木箱に座り込んでいる男性が一人。並の者が受けてしまっては、委縮するのも仕方がないと思えるほどの鋭い眼光。顔に刻まれた皺は、老いと言うよりかはこの男性の「凄み」を醸し出す材料にすらなっている。

右腕には複雑怪奇な機構で『巨大な杭』を打ち出す、爆発的な威力を秘めた武器『パイルバンカー』を携えた、この男は。

 

「―――デュラ。やっぱりあんただったね」

 

ヤーナム旧市街の守護者。かつて『灰狼』の二つ名で知られた古狩人、デュラだ。

 

「……貴公、アイリーンか」

 

デュラはアイリーンの姿を見ると軽く眉を潜めた。お互い、言わんとしている事は同じなのだろう。しかしだからと言って聞かない訳にもいかない。

 

「「あんた(貴公)、何故ここに居るんだい(のだ)?」」

 

被った。ものの見事に。

 

「……ハァ」

「貴公も、か……」

 

「え、な、何だよ。あんたら知り合い?」

 

アイリーンを静止しようと回り込んできた男からの質問。知り合いと言えば知り合いなのだが……

 

「一応。と言ったところかね」

「そうなのか…じゃ、じゃあ、あんたも『狩人』なのか?」

「うむ…」

「クック……デュラ。あんたどうやら怖がられているらしい。まあ、安心するさね。この男はこう見えても優しい。取って喰われたりはしないさ」

 

そう、この男は優しい。いや、『優しすぎた』と言うべきか。

……この話は置いておこう。今は一つ、とある事をデュラに確認しなければならないのだ。

 

とても重要な事を。

 

「デュラ……あんた、敗けたのかい?」

「……。恐らくは例の狩人に……な。月が赤くなってからの記憶は曖昧だが……」

「まさか、月に『中てられた』のかい……あんたともあろう者が」

「……その前に、あの狩人とは『言葉』を交わしてある。己が敗れた所で、『旧市街』に問題は無い」

 

更にアイリーンは質問を続ける。

 

「『夢』は?」

「昔見た……随分、昔に」

 

『夢』。デュラにはアイリーンの質問の意味は分かっているはずだ。いや、きっとその質問以上の何かを感じ取っているのだろう。デュラはそう言うと、目を細めた。ここでは無い、どこか遠くを見つめるかの如く。

 

……特殊な場合を除き、狩人にとっての敗北とは即ち死。話を聞くに、その『特殊な場合』はもうデュラには適応されている。それはアイリーン自身とて同じことだ。詰まる所

 

「デュラ、恐らく、あたし達は」

「……言わなくても良い」

 

死んでいる。

 

それにまず間違いは無いはずだ。致命を負った箇所に何の違和感も感じないのは、この地に来るにあたりリセットの様な物が施されていると考えた方が良いだろう。

 

「……」

「……」

 

話が途切れ、静かな時間が過ぎゆく。

すると、その何とも言えない空気に耐えられなくなったのか

 

「あ~……あんたら、何か訳ありって感じらしいが、もう馬車を出しても良いか?その、向こうでもまだ仕事が残っててだな」

 

先程まで黙って二人の話を聞いていた男が、それを断ち切るかの如く間に割って入って来た。

 

「!ああ、すまないね」

「構わないさ……そうそう、俺は商人のドルってもんだ。短い付き合いになるだろうがよろしくな」

 

そう言うと商人―――ドルはその右手を差し出す。

 

「……ああ。よろしく頼むよ」

 

その手を握り返し、荷台へと乗り込むアイリーン。

 

かくして、この不可思議な世界での狩人達の物語が始まった。

 

 

 

******************

 

 

「……?」

「む……」

 

馬車に乗り込み、それ程の時間が経ってない頃。突然その揺れが止まった。

荷台の外側からは何やら人の話し声が聞こえる。もしやザハロに到着したのか……いや、何だ?

 

「通行料だと?そんな……」

「おいおい、この森は俺達の縄張りだぜ?知らなかったか?商人さんよ」

「ケヘヘ。『今日から』なんて分かるはず無ェじゃねえかよお前」

 

「お、お前達……山賊行為は捕まれば即投獄だぞ!しかも、森とは言えこんな街道沿いで……この事が冒険者ギルドや騎士団の者達に知らればどうなるか分かって―――」

「だったら!知ってる奴を消しちまえば問題解決だなぁオイ!」

 

あまり穏やかな会話では無い事から察するに、どうやらそうでは無いらしい。

アイリーンはその腰を上げ、荷台から出て行こうとする。すると

 

「ふむ」

 

何と、向かいに座っていたデュラも立ち上がるでは無いか。

 

「クックッ……何だい。あんた、何をするつもりだい?」

「商人が困っているのだろう?」

「ククク……相変わらずのお人よしだね」

 

それだけ言葉を交わすと、二人は荷台の外へと降り立った。

 

「……!何だぁテメェ等……!」

 

降り立った二人を待っていたのは、それぞれが手に武器を持っている男達。逃げ場を作らないように馬車を取り囲んでおり、その数は十人前後と言ったところか。

商人はと言うと、荷台から出てきたアイリーン達に気が付いたのか、目を丸くして二人に駆け寄る。

 

「あ、あんた達何してるんだよ!中に隠れておけば、まだ―――」

「貴公……ドルよ。あの者達を倒してしまっても構わぬのか?」

 

「は、倒……?い、いや、あんたらただの『狩人』なんだろ!?第一倒すったって、二人であの数は無茶な話……」

「ククク……そう、あたし達は『狩人』。それ以上でも、以下でも無い」

「ドル。貴公は中に入って、身を隠しているのが良い……」

 

遠巻きに眺めていた山賊達は、この者達が『狩人』と言う事を聞き、仲間内でゲラゲラと笑い馬鹿にしたような表情を浮かべる。

 

「オイ聞いたかよ!優しい狩人さんが助けに出てきたらしいぜ!」

「はっは!呑気に兎でも狩ってれば良いものを!しかも歳食ってるオッサン一人に……」

「ババアも居るよ」

「そう、妙ちくりんな恰好をしたババアも―――って、え?」

 

 

――――――ザッ

 

 

「なっ……」

 

 

だがつい先程まで笑っていたはずの山賊の内一人の顔は、直ぐに驚愕の色に染まる事となった。

何故ならすぐそこ、まさしく「目の前」にまで『妙ちくりんな恰好のババア』は迫っていたのだ。

アイリーンは鴉羽のマントを靡かせ、右手に握った「慈悲の刃」で武器を持っている方の男の腕を切り上げる。

 

「が……っあァッ!」

 

斬られた腕を抑え、のた打ち回る男。

山賊一味はそのあまりにも一瞬の出来事に、何をするでも無く固まっている。だがアイリーンの次の言葉

 

「クク……次、行くよ」

「て、テメェよくも……!」

 

この発言にようやくスイッチが入ったかの如く、各々が動き出した。

その直後に、後方からも似たような叫び声。デュラの方もどうやら戦闘を開始したらしいが、

さて……

 

「……」

 

周りをぐるりと見渡す。山賊のうち四人が、馬車を取り囲んで居た時よろしくアイリーンの前後左右を包囲している。……成る程、其れなりに連携は取れそうな連中だ。

 

「ババアを相手に男四人がかりとは、何とも情けない限りじゃないかい」

「……黙れ」

「クク……」

「おい、お前達。気を抜くなよ……このアマ普通じゃ―――」

 

首を横に向け、仲間に呼びかける前方の男。だが、その瞬間をアイリーンは見逃さなかった。

すかさず腰にぶら下げていた短銃を引き抜き、自身から意識の逸れた男に向かい、一撃。

相手の右肩に向けてはなったそれは見事に命中し、男は地に蹲った。

 

「くっ、銃だと……!一体どこに……そうか。マントで見えない位置に……」

「正解。まあ、気づくのが少し遅かったね」

 

まず一人。いや、最初のと合わせると二人目か。次の狙いは既に決めてある。

次は自身の右側に位置する男だ。銃を次の獲物へと向けるアイリーン。

 

「っ……」

 

一瞬ビクリと身体をすくませる男。まあ、突然銃を向けられたのだ。当然の反応であろう。

ましてや仲間の一人がその脅威に曝されたのを見た直後では……だが、悲しいかな。この短銃は一発毎に弾を込めなければならない。つまりは現在、ただの鉄の筒に過ぎないと言う訳だ。

 

アイリーンは決定的な隙を見せた男の元に素早く踏み込むと、「慈悲の刃」の峰の方で顔面を殴打した。そのあまりの衝撃に気を失い、男は鼻血を吹き出しつつ倒れる。

 

これで三人、残りは二人……本来ならここらで一息入れたいところだが

 

「「――――――くたばっちまいなァ!!」」

 

しかし息をつく暇など無い。今度は俺達の番だ、と言わんばかりの二人の怒声と激しい足音が背後から迫っている。即座に振り返るアイリーンの目に映ったのは、迫る二人が同時に剣を振り上げている姿。……これは中々に良くない状況だ。避けようにもこの距離ではそれは厳しい。

 

となればどうするか。

 

当然受け止めるのが好ましいのだが、二本の剣を受け止めるには手持ちの一本では難しいだろう。

 

「クク……」

 

なれば

 

 

――――――キィンッ!

 

 

『二本』にすれば良い

 

 

「んなッ……」

「二つに変形しやがっ……」

 

慈悲の刃。

その刃には星に由来する特殊な隕鉄が使用されており、仕掛けにより『二枚に分かれる』。

ヤーナムの狩人達が使用する、いわゆる仕掛け武器の一つだ。だが、この山賊達が驚いたのは何もその仕掛け武器によるものだけでは無い。彼らがそれと同じく驚いたのは

 

「っ……のババア……ッ!」

「どん……な力してやがんだ……ァ!」

 

その力。

 

今の状況。大の男二人が全力で振り下ろした剣を、アイリーンはそれぞれを片手で受け止めているのだ。当然振り下ろした側は両手で剣の柄を掴んでいる……力の入り方が片手のそれとは段違いのはずだ。

 

それなのに押し切る事が出来ないのだから、驚くのも無理は無い。

 

「フーッ。と言ってもさすがに、少しツラいかね……ぇ!」

 

気合いを入れる様に語尾の調子を上げ、それと同時に受け止めた剣を弾き返すアイリーン。

弾き返されよろけた二人に対し、その左右の腕を大きく広げる。一歩踏み込み、自身の目の前で広げた両腕が交差する様に

 

「―――フッ!」

 

切り込んだ。

 

「くッ!」

「チィッ!」

 

腕を斬られた男達だが、切込みが浅かったのか、武器を手放す事は無い。

なれば、もう一度。

アイリーンはそこから更にもう一歩踏み込み、交差された両腕を、今度は身体の内から外へと勢いよく広げるかの如く切り上げた。

 

金属同士のぶつかり合う音。ズバリ今度の狙いは腕では無く武器本体だ。

激しく衝突した「刃」に、男たちの握った剣はなす術も無くその手から弾き飛ばされ――――後方の地面へと突き刺さった。

 

武器の行方を目で追った後、得物を失った男達へ「動くな」との意を込め、それぞれの喉元へ二つの刃を向ける。

 

「ククク……どうやら、あんた達の敗けのようだね」

「……クソッ!」

「ま、まだだ、まだ俺たち以外にも……オイ!」

 

だが本人達に負けたつもりは無いらしく、他の仲間に助けを求めるべく周囲を見渡す仕草をする。しかしどこを見ても仲間が倒れているばかりで、一向に返事は返ってこない……

彼らが増援を諦めかけたその時、そんな呼びかけに応じたのか一人の男が馬車の向こう側から姿を現した。

 

「……貴公の方も、終わった様だな」

 

だが残念ながら、期待した人物では無かったらしい。埃を払う様な仕草をする男が出てきたのを見て、山賊二人は全身の力が抜けたかの如く、へなへなと地面に座り込んでしまった。

 

「お、終わったのか?」

 

戦闘が終わったのを察したのか、デュラの言う通りに隠れていた荷台の中から顔を出すドル。

そしてこの惨状を目の当たりにした彼の反応はと言うと

 

「なっ、ななな、何だよこりゃ!?これ、あんた達が、全部……?」

 

それはまあ、目玉でも飛び出そうな程のリアクションを見せてくれた。

くつくつと笑いを堪えつつ、ドルのその問いかけにコクリと頷く。

 

「あ、あんたら一体、何者なんだよ」

「……言っただろう?あたし達はただの『狩人』さ」

 

そう、彼らは狩人。

 

ただ、付け加えるならば――――――「ヤーナムの」と言ったところか。

 

 

 

 

 

 

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