綾人がIS学園に入学して数日が経ったある日、ある噂が広まっていた。
「織斑くん、湊くん、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」
「転校生? 今の時期に?」
「いえ、初耳です」
(こんな時期に転校生?まるで意味がわからない)
「そう。なんでも、中国の代表候補生なんだってさ」
「ふーん」
(中国の代表候補生か。だったら尚更今になって来るのかがわからなくなって来た)
噂とは中国から転校生が来ることだった。別に綾人達のクラスに入って来るわけではないが、転校生はやはり気になるものなのだろう
「あら、私の存在を今更ながら危ぶんでの転入かしら?」
「このクラスに転入する訳では無いのだろう? 騒ぐほどのことでもあるまい」
「どんな奴なんだろうな~」
(女尊男卑で無ければいいと思うけど。どうせなら普通の奴が良いけどね)
「む……気になるのか?」
「ん? ああ、少しは」
(他のクラスの転校生なんか気にする必要も無いだろうに)
「他のクラスの転校生なのにどうして気になるんですか?」
「あ、いや、何と無くだよ」
「あっ、そうですか」
(そんな理由かよ)
「ふん…今のお前に他人を気にしている余裕が有るのか? 来月にはクラス対抗戦があるというのに」
「そうですわ一夏さん! 対抗戦に向けて実戦に近い訓練をいたしましょう! 相手なら私が……」
(クラス対抗戦か。まあ、俺には関係ないな)
「織斑君、がんばってねー」
「フリーパスのためにもね!」
「今のところ専用機を持ってるクラス代表って一組と四組だけだから、余裕だよ」
(織斑が専用機を持ってるとしても、差はあるだろう)
「――その情報、古いよ」
(ん?なんだ)
教室の入り口から声が聞こえ、クラス全員が入り口のところを見た。そこには腕を組み、片膝を立ててドアにもたれている見知らぬ女子がいた。
(なんだあいつ?いきなり現れて)
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
(二組も専用機持ち?そうか、こいつが例の)
「鈴……? お前、鈴か?」
(まさか、織斑はこの女と知り合いなのか?)
「そうよ。中国代表候補生、凰 鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
(織斑って、意外に顔が広いのか?それより、やはりこいつが中国の代表候補生か)
「何格好付けてるんだ? すげえ似合わないぞ」
「んなっ……!? なんてこと言うのよ、アンタ!」
(……これは知り合いを通り越して、友人……なのか?)
「それはそうと鈴、早く教室に戻ったほういいぞ」
「はぁ?何言ってんのよ?」
「おい」
「なによ?」
バシイィン!!
(うわぁ……どれだけ容赦無いんだよあの人)
「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」
「ち、千冬さん……」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」
「またあとで来るからね! 逃げないでよ、一夏!」
「さっさと戻れ」
「は、はいっ!」
(何ていうか……テンション高いな)
昼休みになり綾人は食堂に向かっていた。一夏達と一緒に。最も、綾人が一人で行こうとした時に一夏達がついてきたのだが。そして食堂に着くと、凰 鈴音が立ち塞がっていた。
「待っていたわよ! 一夏!」
(いや、邪魔なんだけど)
「まあ、とりあえずそこどいてくれ。食券出せないし、普通に通行の邪魔だぞ」
「う、うるさいわね。わかってるわよ」
(だったら最初からそこに立つなよ)
「…なぁ鈴。何でラーメン持ったままなんだ? さっさと食わねぇと伸びるぞ?」
「わ、分かってるわよ! 大体アンタを待っていたんでしょうが! 何で早く来ないのよ!」
「ハ、ハハ……」
綾人は二人のやりとりを見て笑って誤魔化した。
(なんだか、面倒なやつだな)
「それにしても久しぶりだな。あれから丸1年になるのか。元気にしてたか?」
「げ、元気にしてたわよ。アンタこそたまには怪我とか病気しなさいよ」
「どう言う希望だよそりゃ……」
(やっぱり、あいつらはすでに友人関係だな)
「あー、ゴホンゴホン!」
「ンンンッ! 一夏さん、注文の品、出来てましてよ?」
「お、サンキュ」
(ワザとらしいぞお前たちは)
そして綾人達は適当に空いているテーブルに座った。
「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが」
「そうですわ! 一夏さんまさかこちらの方と付き合ってらっしゃるので!?」
「べ、べべ、別に私は付き合ってる訳じゃ……」
「そうだぞ。なんでそんな話になるんだ。ただの幼なじみだよ」
「………………」
「?何睨んでるんだ?」
「なんでもないわよっ!」
(……あぁ、成る程ね……理解したくないけど理解したよ)
「幼なじみ……?」
「あー、えっとだな。箒が引っ越していったのが小四の終わりだっただろ? 鈴が転校してきたのは小五の頭だよ。で、中二の終わりに帰ったから、会うのは一年ちょっとぶりだな」
(ふーん、そういうことか。だからあんなに仲のいい感じに話してたのか)
「ふうん、そうなんだ。初めまして。これからよろしくね」
「ああ。こちらこそ」
(……既に険悪な雰囲気なんだが)
「ん、んんっ。私の存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、凰 鈴音さん?」
(あぁ、すっかり忘れていたよ)
「……誰?」
「な!? 私はイギリス代表候補生セシリア・オルコットでしてよ!? まさかご存知無いないと!?」
「うん、アタシ他の国とか興味無いし」
(あの時からずっと思ってたんだが、代表候補生ってそこまで有名なのか?)
「い、言っておきますけど私あなたの様な方には負けませんわ!」
「そ。でも戦ったらあたしが勝つよ。悪いけど強いもん」
「い、言ってくれますわね……」
「で、そこのあんたは?あんたが二人目の?」
(ん?ああ、俺のことか)
「湊綾人です。よろしくお願いします」
「あんたって強いの?」
「僕は全然弱いですよ。この前織斑君とオルコットさんと試合をしましたけど、僕は手も足も出ませんでしたし」
「そうよね。あんた弱そうだもん」
(うるせーよ)
「一夏、アンタ、クラス代表なんだって?」
「お、おう。成り行きでな」
「あ、あのさぁ。ISの操縦、見てあげてもいいけど?」
(いや、クラス違うだろ。それにクラス対抗戦で戦う可能性があるのにそんな事をする必要がある。……そうか、別の目的があるか)
「一夏に教えるのは私の役目だ。頼まれたのは、私だ」
「あなたは二組でしょう!? 敵の施しは受けませんわ」
(オルコットの言ってる事は正論だが、凰が言ってる事に今はそんな事関係ないだろうな)
「あたしは一夏に言ってんの。関係ない人は引っ込んでてよ」
「か、関係ならあるぞ。私が一夏にどうしてもと頼まれているのだ」
「一組の代表ですから、一組の人間が教えるのは当然ですわ。あなたこそ、後から出てきて何を図々しいことを――」
「後からじゃないけどね。あたしの方が付き合いは長いんだし」
(それこそ今は関係ないだろう。それより、もうこの空間にいることが辛くなった。元はと言えば、あいつらが勝手について来たんだ。ここはもう逃げよう)
「じゃ、じゃあ僕はこれで失礼します」
綾人は逃げるように食堂から出て行った。