インフィニット・ストラトス アグル   作:K.V

32 / 58
第29話

臨海学校が終了し、いつも通りの日常に戻っていたが、綾人にはある変化が起きた。それは、怪獣が暴れまわる夢を頻繁に見るようになったのだ。

 

最初こそはただのリアリティーのある怪獣の夢だと思っていた。だが、学園に戻ってからはほぼ毎日怪獣が夢の中に出てきている。

 

これには綾人も異常だと感じていたが、誰にも相談せずにいた。否、するだけ無駄だと自分でわかっていた。したところで笑われるのと、良くて気にするなと言われるのがオチだからだ。

 

そして、今も見ていた。

 

怪獣が街中で縦横無尽に暴れまわる。その光景を綾人が見つめている。綾人の周りには既に人影などいない。あるのは破壊されているビル群とその瓦礫だけだった。その光景は夢の中の綾人にとって既に見慣れてしまっていた。夢の中綾人は、黙って怪獣を見上げるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!?……くそっ、またか。これで何日連続だよ……?」

 

目を覚ました綾人。その身体は既に汗塗れになっていた。

 

「……シャワー浴びるか……」

 

 

 

 

シャワーを浴びた綾人は制服に着替え、購買で買っておいたパンを食べた。

 

綾人は例の夢を見るようになってからは食堂に行く暇が無くなっている。故に前以て購買でパン等を買うようにしている。

 

パンを食べ終えた綾人はすぐに部屋を出た。自分の部屋と教室はそれなりに距離があるため早足気味で教室に向かう。そして角を曲がろうとしたその時。

 

ドンッ

 

「うっ」

 

曲がり角を曲がろうとした時に向かいから来た誰かとぶつかった。幸いどちらも倒れるなんてことは無かった。

 

「すみません、大丈夫ですか?」

 

今のは素で敬語になった。ぶつかった相手は綾人を見ると何故か笑みを浮かべた。

 

(何だいきなり?それにこいつ、2年か?何で2年がここに?)

 

綾人は目の前にいる相手が2年だとわかった。その生徒はミステリアスな雰囲気を醸し出し、扇子を口元に当てている。

 

「えぇ、大丈夫よ。今度からは気を付けてね、湊綾人君♪」

 

(何ッ!?)

 

綾人は見知らぬ人間に自分の名前を言われた事に驚いてしまった。

 

(いや、俺の顔と名前は既に割られている。2年が俺を知っていてもおかしくない。だが、何だこの感じは?)

 

「早く行かないと遅れちゃうわよ。じゃあ後でまた会いましょうね」

 

そしてそのまま2年の女子生徒はどこかへ歩いて行った。

 

(何なんだあの女は?何が後でまた会いましょうだ、ふざけんな。……何だったんだ、一体?)

 

綾人はむしゃくしゃしながら教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に着いた綾人。だが綾人はその時点で既に疲れ切ったかのようだった。主に精神面が。

 

「綾人、どうした?」

 

そんな綾人を心配してか、一夏が尋ねてきた。

 

「どうしたって、見ての通りですよ」

 

「見ての通りって言われてもな〜」

 

綾人の返答に困る一夏だった。

 

 

 

 

 

 

そのまま時間が進み、放課後になった。

 

「湊さん、少しよろしいですか?」

 

「は、はい。何ですか?」

 

セシリアが綾人に話しかけた。綾人は何故今このタイミングで話しかけられたのかわかっていない。

 

「あの時の約束を果たしてもらいますわ」

 

(約束?何かあったか?)

 

「すみません、どの時の約束ですか?」

 

綾人は完全に忘れているようだった。セシリアは綾人の返答にはあっとため息を吐いた。

 

「まったく、女性との約束を忘れるとは何事ですか。臨海学校の時ですわ」

 

「臨海学校の時……ああ、思い出しました」

 

(そういえばしてたっけな)

 

「今度の休日に買い物に付き合ってもらいますわ。当然、荷物持ちとしてです」

 

(やっぱりそれか)

 

それを聞いた綾人は露骨に嫌そうな顔をする。

 

「そんな顔をしても駄目ですわ。あの時と今の約束を忘れていた事に対する罰なので拒否権はありませんわよ」

 

「はあ、わかりました。次の休みですね」

 

既に諦めを通り越して呆れている綾人だった。

 

 

 

 

 

 

 

寮への帰り道、綾人は帰路についている。いつも通りそのまま自分の部屋まで戻ろうとするが、途中後ろから声をかけられた。

 

「はーい、湊綾人君。今朝ぶりね」

 

自分の名前を呼ばれた綾人が振り返ると、そこにいたのは朝に自分とぶつかった2年の生徒だった。朝と同じように扇子を持っている。

 

(こいつは朝の……後で会うってのはこの事か)

 

「何なんですかいきなり」

 

「早速で悪いんだけど、私に着いてきてもらえるかしら?」

 

そう言われたが、綾人君着いて行こうとはせずに立ち止まったままだった。

 

「あら、どうしたの?ひょっとして、おねーさんに見惚れちゃった?」

 

(……何言ってんだこいつ?)

 

綾人はいきなりの事で頭が着いて行けてなかった。

 

「あいにくですけど、知らない人に着いて行くなと、親と小学校の先生に習ってるので」

 

「あらごめんなさい。私は更識楯無。この学園の生徒会長よ。よろしくね」

 

少女は『更識楯無』と名乗った。楯無が扇子を広げると『よろしく』と書かれてあった。

 

(生徒会長?生徒会長が何だって俺に?)

 

「生徒会長が一体何の用なんですか?」

 

「実はあなたに話があるのよ。ここじゃ話しにくいから生徒会室に来てくれる?」

 

(最初からそう言えよ。それより、俺に話って何なんだ?)

 

綾人は少し考える。生徒会長が直々に自分を呼び出してまで話す事が気になっていた。そして、考えていくうちに答えは決まった。

 

「わかりました。行きましょう」

 

「ありがと。じゃあ着いてきて」

 

綾人と楯無は生徒会室に向かった。

 

 

 

 

 

 

生徒会室

 

綾人が生徒会室に入ると、楯無の他に既に2人の人物がいた。そのうちの一人は綾人もよく知っていた。

 

「あ、あややだ〜」

 

「……布仏さん?」

 

綾人のクラスメイトで元同居人の布仏本音だった。

 

(ここにいるってことは、こいつ生徒会だったのか)

 

若干驚くも綾人はすぐにもう一人を見た。もう一人の人物は3年生とわかる。その女子は綾人と目が合うとお辞儀をした。綾人はお辞儀をされたので自分も返した。

 

「じゃあ改めて、私は生徒会長の更識楯無よ。本音ちゃんは同じクラスだから大丈夫よね。そしてこちらが布仏虚ちゃんよ」

 

「布仏虚です。妹が前までお世話になりました」

 

(姉妹なのか、この2人)

 

「み、湊綾人です。よろしくお願いします」

 

綾人も自己紹介をした。

 

「早速本題なんだけど……綾人君、生徒会に入らない?」

 

楯無が言っていた話とは、生徒会への勧誘だった。綾人はいきなりの勧誘で反応できなかった。

 

(開始早々生徒会の勧誘?どういう事だ?)

 

「……理由を聞いてもいいですか?」

 

「質問を質問で返すようで悪いけど、綾人君、自分がどういう立場にいるかわかる?」

 

(そんな事か。決まっているだろ)

 

「世界で二番目にISを動かした男性操縦者という肩書きの“ただの”一般人……ですけど」

 

綾人は『ただの』を強調して答えた。

 

「そう、あなたはISを動かしたとは言え、ただの一般人にすぎないの。あなたならこれが何を意味するかわかるわよね?」

 

「ええ、いつどこで誰に狙われてもおかしくないと言う事ですよね」

 

「そうよ」

 

「それが何故生徒会に入る事に繋がるんですか?」

 

綾人の疑問はこの事が何故生徒会に入る事に繋がるかだった。

 

「IS学園内でも、女尊男卑思想の生徒や教師は少なくないの。その中には当然あなたの事を快く思わない人もいるわ」

 

「でしょうね」

 

「随分と落ち着いているわね。だからその手の人達からあなたを保護する為にも生徒会に入ってほしいの」

 

「生徒会に入っただけで、そんな事が可能なんですか?」

 

綾人の更なる疑問は、生徒会にそんな力があるのかだ。

 

「可能よ。ここの生徒会はそれほどの力を持っているわ」

 

(どうなってんだよここの生徒会……?)

 

「でもそれって、結局は学園内だけですよね?学園外は学園内以上ですよ」

 

「それについても大丈夫よ。生徒会に入れば私とあなたで繋がりを持つ事ができる。私がバックにいれば、他も迂闊に手は出せなくなるわ」

 

(こいつ一人にそれほどの力があるって事なのか?まあ、そう言う事にしておくか)

 

「まあ、話は大体わかりました。生徒会に入れば、僕の安全はある程度は保証されると言う事ですね?」

 

「そうよ。噂通り、理解力が早くておねーさん助かるわ」

 

(何がおねーさんだ。ふざけてんのかこいつは?)

 

「綾人君の安全の為にも、是非とも生徒会に入ってほしいのよ」

 

「そうですね、この先何が起こるかわかりませんし、僕からもお願いします」

 

「ありがとう綾人君。それが懸命な判断よ。君ならそう言ってくれると信じてたわ。これが入会の書類「とでも言うとおもいましたか?」……えっ?」

 

綾人の思いもしなかった言葉に、楯無だけでなく、本音と虚も驚きを隠せなかった。

 

「あやや入ってくれないの〜?」

 

「はい。僕は生徒会には入りません。では、これで失礼します」

 

「待って!!どうして!?生徒会に入ればあなたの安全は保証されるのよ!!なのにどうして!?」

 

「簡単ですよ。僕はあなたを信じていない」

 

「信じてないですって……?」

 

「はい。生徒会に入るだけで安全が保証される?そんな上手い話信じられると思いますか?」

 

「本当よ!!」

 

「だとしても、あなたが女尊男卑側の人間の可能性が僕の中にはあるんです。その可能性がある以上、僕はあなたを信用できない」

 

「私は女尊男卑じゃないわ!!」

 

「どうだか。兎に角、今後一切僕に関わらないでください。では、失礼します」

 

「待っ……」

 

綾人は最後まで聞く事なく、生徒会室から出た。残された生徒会メンバーには重い空気がのしかかった。

 

「あやや、なんだか怖かったよ〜……」

 

「お嬢様……」

 

「まさか、こんなにも手強かったなんてね……」

 

 

 

 

 

 

 

宇宙

 

広大なる宇宙。宇宙空間では、少しの歪みが発生していた。

 

 

 




今回より楯無が登場しました。楯無と綾人の戦闘をしようとしていたなんて言えない……。


次回遂に奴らが……

ところでヒロインタグは付けた方が良いんでしょうかね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。