綾人は一夏の勝手な推薦によってクラス代表を決めるための試合に出ることになってしまった。綾人のことだから一夏に推薦された時に大体こうなることを予想していただろう。
(しかし、クラス代表決定戦か。随分と面倒なイベントが入ったな)
ちなみに、綾人はクラス代表になる気など一切なかった。故に、綾人はどうやって勝つかではなく、いかにして負けるか、ということを考えていた。
(オルコットは代表候補生。だから専用機を持ってると考えてもいい。それに対して俺はISに関してはド素人。代表候補生とド素人では天と地の差があるのは間違いない。これの勝負は見えた。オルコットとは普通に戦って負けよう。だけど、問題は織斑だな)
綾人が次に考えているのは一夏との試合だった。同じ初心者同士では、まともにISを扱えず大した勝負にならないと思っているのだろう。
(あいつとは途中まで本気で戦って、段々追い詰められて負ける事にしよう)
綾人は一夏との試合の予定を簡単に脳内でまとめた。セシリアとの試合と一夏との試合、いずれも負ける事が前提の考えだった。それに、わざと負ける方が、綾人にとって色々と都合が良いからだ。
「なあ綾人。来週の試合どうする?」
「どうするじゃありませんよ織斑君。織斑君が勝手に僕を巻き込んだんじゃないですか」
「わ、悪かったよ」
綾人と一夏は来週の試合について話すが、綾人はもうどうするかを決めていたため一夏の話を聞く気が無かった。聞く気がないというよりは、もう自分には関係ないと思っているかもしれない。
「ああ、織斑君、湊君。まだ教室にいたんですね。よかったです」
「はい?」
「?何ですか?」
そこに山田麻耶が来て綾人達に話しかけた。
(俺たちに用があるのか?でも、今更何の用が?)
「えっとですね、寮の部屋が決まりました」
(寮?そう言えばここは全寮制だったな。でも、確か俺たちは……)
「えっ!??でも一週間は自宅から通学してもらうんじゃ?」
(織斑の言うとおり、一週間は自宅通学のはずだが……。最も俺は、自宅通学は不可能だけど)
「そうだったんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいんです」
(無理矢理か。結構政府も必死なんだな。掌返しもいいところだ)
「山田先生、でも俺たち荷物の用意してないですよ」
(確かに、荷物を用意してないのにいきなり寮に入れってのは無理な話だけども、その事を考えたのか?)
「あ、いえ、荷物なら」
「私が手配をしておいてやった。ありがたく思え」
(ほう、用意周到だな。じゃあ俺の荷物は母さんが準備してくれたのか?)
「ど、どうもありがとうございます」
「まあ、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」
(確かにそれだけあれば充分なんだろうが……まあ、なんだ。ドンマイとしか言いようがないな。一応俺も聞いておくか)
「あ、あの、織斑先生。僕の荷物は……?」
「お前の荷物は、親御さんが用意してくれたそうだ」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
(母さんが用意してくれたのか。ありがとう、母さん)
「これが寮の鍵です」
麻耶は綾人と一夏に寮の部屋の鍵を渡した。だが鍵に書かれていた部屋の番号は二人とも別の番号だった。
(違う番号?ということは一人部屋なのか?流石に女子と一緒になるのは考えにくいが……。まあ、それについて何の説明がないから一人部屋なんだろう)
綾人は既に自分達は一人部屋だと思い込んでいるが、実際はどうなることだろう。
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、その、二人は今のところ使えません」
「え、なんでですか?」
(おいおい、これは流石に冗談だろ)
一夏の爆弾発言に流石の綾人も呆れてしまった。
「アホかお前は。まさか同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」
「あー……」
「織斑君、ここが本来女子校だって事、忘れていません?」
「えっ!??織斑君女の子とお風呂入りたいんですか!??だっ、駄目ですよ!!?」
「いやいや、女子とは一緒に入りたくないです!!?」
「ええっ!??女の子に興味がないんですか!??そ、それはそれで問題のような……」
(山田先生も山田先生で何でそういう考えになるんですか?)
その後どうにか事が済み、一夏も麻耶も落ち着いた。
「えっと、それじゃあ私たちは会議があるので、これで。3人とも、ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ」
「綾人、行こうぜ」
「あっ、はい」
こうして、綾人と一夏の入寮が決定し、二人は寮に向かった。
そして二人は寮についた。
「じゃあ、俺はここだからまたな」
「はい。僕は向こうですので」
綾人は一夏と別れ自分の部屋に向かった。
「ええっと、俺の部屋はっと……あった。ここか」
綾人はドアノブに手をかけたが急に手を離し何かを考え始めた。
(待てよ。ここは普通に女子寮だ。そこに俺たちを無理矢理押し込んだ。まさか本当に女子と同室になる可能性が……。いや、流石にそれはないだろう。いくらなんでも男女を一緒にするなんて馬鹿げた事はしないはずだが……そもそも2人しかいない男に一人部屋を与えるか?一人部屋だと思ったが、普通は俺たちが一緒になるはずだ……それを無理矢理で、さらに部屋が別々……まさか……だよな?いや、ここは念には念を入れて……)
綾人は何か意を決したのかドアをノックした。反応がない事を願いながら。
「は〜い」
「……ゑ?」
案の定部屋の中から女子の声が聞こえてしまった。綾人は嫌な予感が的中したのか若干放心状態になった。
(まさか本当に女子と同室になるなんて……)
そんな綾人の気も知らずにドアが開いた。
「あっ、あややだ?」
(こいつは確か……)
「え、えっと、君は同じクラスの……」
「布仏本音だよ〜。よろしくね〜」
布仏本音。彼女が綾人のルームメイトだった。
(……なんだこいつは?妙に調子が狂うな)
「あっ、僕は一応この部屋に決まった湊綾人です。よろしくお願いします……」
「知ってるよ〜。入って入って〜」
「あっ、失礼します」
本音に連れられて綾人は部屋に入った。
「あやや〜、そんなに堅苦しくしなくてもいいのに〜」
「すいません。こっちの方が慣れてるので……それより、さっきから気になってたんですけど、あややというのは?」
「あややは私の呼び名だよ〜」
「あっ、そうですか……」
(あややなんて、小学でも中学でも呼ばれた事無いって)
と、内心毒づきながら思った。
「そうだ。あややに荷物があるよ〜」
「僕にですか?」
(まあ、母さんからの荷物だろうな)
綾人は荷物を見つけた。それは母からの荷物で、中を開けると手紙が入っていた。
(手紙?なんだろう)
綾人は手紙を読み始めた。その手紙にはこう書かれていた。
『綾人へ。この手紙を読んでいるなら、無事に荷物が届いて良かったです。綾人、IS学園はどう?綾人がISが嫌いなのは、私も良く知っています。でも、憎んでばかりではダメ。綾人にとっては辛い現実だけど、それでも頑張って生きて欲しい。綾人は、死んだ姉さん達の希望だから。
PS 綾人のために海の本も一緒に送りました。姉さん達のためにも、絶対夢を叶えてね。 義母より』
「……母さん、ありがとう」
そして綾人は手紙をしまい、荷物を出し始めた。その時、本音が海の本があるのを見つけた。
「海の本がいっぱいだね〜」
「僕、海が好きなんです。だから将来は、海洋学者になるのが夢なんです」
「へ〜、凄いね〜」
「……なんだか反応が薄い気がするんですけど……?」
「そんなことないよ〜」
(ふっ、まあいいか。海か。あの時、海の中でアグルと出会ったのも、運命かもしれないな)
こうして、IS学園の初日が終わった。
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