遅れました。ごめんなさい。
ホントに焦りながら書いたので文書読みづらいと思います。
『旧密林に走る稲妻』
ポッケ村から旧密林のベースキャンプ地点まで、馬車で丸一日を費やした。
僅かな支給品を運んでくれた馬車隊が、逃げるように去っていくのを見送ると、シルヴァは旧密林の湿った空気を大きく吸い込み、深呼吸をして体調の確認をした。
さっきまで馬車で足場の悪い道を揺られながら進んできたので、平衡感覚が安定しない。
軽く体を動かして調子を取り戻さなければ、平衡感覚の狂いで命を落としかねない。今回はフェリクスの支援とはいえ、弓を使わないことはないはずだ。矢や弾の軌道が少しズレただけで、モンスターから反撃を受けて命を落とす…なんてのはガンナーにとってはよくある話だ。
「シルヴァ」
「ん?」
支給品の入った木箱を模索していたフェリクスが、シルヴァに向かって1つ、袋に入った手頃なパンを投げ渡した。『携帯食料』だった。
フェリクスは携帯食料を口に咥えながら、ナルガXグリーヴの靴紐を結び直している。
シルヴァは何も言わずに携帯食料の袋を開け、お世辞でもおいしいとは言えないそれにかぶりつき、一瞬で平らげた。シルヴァは、背中に背負ったプロミネンスボウⅢを下ろし、胴を引き伸ばした。赤く輝くリオレウスの鱗と甲殻が、鮮やかに光に反射した。弦の緩みや、不調な部位の調整を行ったあと、シルヴァは武器を背中に背負い直す。それから回復薬と回復薬G、ホットドリンクと秘薬を腰の袋に詰め込み、ペイントボールのホルダーをそのまま腰に括った。
フェリクスは武器の調整も終わったのか、テントのベットに腰掛け、地図を睨むように凝視していた。シルヴァはフェリクスの隣に座ると、地図を近目で見た。
膝の上に地図を広げ直すと、フェリクスは
「…この辺だろうな」
と言うと、地図のエリア『4』を指さした。
エリア4は狭く薄暗い洞窟で、中は沼地の洞窟のように寒い。そのため、ホットドリンクが必要だ。フルフルは比較的寒くて暗い場所を好む事はわかっていたため、ホットドリンクを念のため持ってきたのは正解だった、とシルヴァは少し安心した。
「…奴はエリア4から8、9、10といった感じに洞窟から洞窟へと移動する…対策は大丈夫か?」
フェリクスは振り返ってシルヴァの方を見た。
「万全だよ。」
寒冷対策も、ホットドリンクは持てるだけ持ったし、奴の弱点でもある火属性の武器を担いできたのだ。対策は十分だ。
それに、旧密林の最大の特徴でもある樹木が群生しているエリアで戦うことが無いとなれば、かなり戦いやすい。視界を遮るほどに群がる樹木が少なければ、矢を放つ支障は少ない。
今から向かう寒くて薄暗い洞窟の方が、よっぽど立ち回りやすい。
しかし、今回は狩りにはあまり参加せず、後方支援がメインということをどうしても忘れてしまう。
ここまで狩りを行う前提で対策をしてきた自分が、馬鹿みたいに感じた。
その度に、シルヴァは気を落とした。
「…不安か?」
立ち上がりながらフェリクスは少し心配そうに言った。
「え…あぁ…うーん…」
だが、シルヴァの心情はかなり複雑だった。
熟練ハンターを何人も倒してきた討伐対象のフルフルもそうだが、正直不安というより心配の方が大きかった。1人で脅威に立ち向かうフェリクス。そして何より大きいのが受付嬢のイリアのことだった。いつも笑顔を振り撒いていた彼女があそこまで曇った表情を浮かべるのは、見たことがない。おそらく、このフルフルに挑んで行ったハンター達を心配しているのだろう。ギルド受付嬢は沢山のハンター達と仕事以外でも交流する機会がある。受付嬢にとって自分の村のハンターたちは皆、友のような存在。それを失ったかもしれないという彼女の心配が、シルヴァにも伝わっていったのだ。
「…俺のことは心配するなよ。狩りに支障が出る。」
「わかった…」
といってもやはり無理だった。
自分にとって未知の敵とフェリクス1人でやりあわせるのは、どうしても拭いきれないものがあった。
シルヴァもベットから立ち上がり、軽くその場でジャンプしてから、テントを出るフェリクスの後をついていった。
「…行くぞシルヴァ。脅すつもりはないが、正直嫌な予感しかしない。」
「え…?」
フェリクスは振り向かなかった。
太陽が逆光で非常に眩しい。
フェリクスとシルヴァはその太陽に向かうように、樹木の空間へと入って行った。
小高く成長した草木が目の前の視界を奪い、しつこく顔に張り付くのは決して気持ちのいいものではなく、時々寄って集る小さな虫には不快さと苛立ちを覚える。
ベースキャンプを抜けて、『ランポス』などの小型なモンスターが沢山の樹木を掻き分け進むエリア1の先に、目的のエリア4の洞窟の入口がある。
(…今回はランポスが少ないな)
いつもなら5、6頭のランポスがこの辺をひしめき合ってるのに、今回はたった2頭ほどしかいなかった。いつもならランポスに気付かれると面倒だったが、2頭だったら気付かれてもあまり問題はなさそうだ、と思ったが、これもフルフルの仕業か?と考えることもできた。
少し血の気が引いたが、そういった緊張を持つことが、狩りの醍醐味でもあり、シルヴァにとっては悪く感じるものでもなかった。
フェリクスを先頭に、軽く屈みながら洞窟の入口のすぐそこまで着いた。
入口からは冷気が溢れ、先は暗く、目が慣れるまで時間のかかりそうな場所だ。
「…行けるか?」
「あぁ、問題ない。」
フェリクスとシルヴァはそう言い合うと、腰に括った革袋の中から瓶に入った赤みがかった液体を取り出し、一気に飲み干した。
『ホットドリンク』と呼ばれるそれは、トウガラシを使って作っているだけあって辛いが、体温の低下を防ぎ、熱を逃がさないようになって、そういう風に感じるようになる。
「よし、行くぞ!」
シルヴァは喝をいれるように声を上げ、洞窟の中へと入って行った。
フェリクスはそれを見て、呆れたようなため息をついた。
(後方支援…とはいえ気を引き締めないと。)
そう心の中で言い聞かせると、シルヴァは洞窟の奥へと向かって行った。後からフェリクスが早歩きで追いつく。
しばらく歩くと、独特な羽音が洞窟の狭い通路に響いた。ランゴスタだ。いることは大体予想できたが、生憎ランゴスタはそこまで好きになれない。体長が1mほどもある巨大な空を飛ぶこの虫は、獲物に集団で襲いかかり、その針に刺されれば神経性の毒を注入される。そうすれば体はたちまち麻痺して動けなくなる。最悪、こいつらの麻痺で動けなくなり、大型モンスターの一撃で命を落とすこともある、厄介な相手だ。それに、シルヴァはあまり虫が得意ではなかった。家にゴキブリが現れた時には何か訳のわからぬ悲鳴をあげて何故かフェリクスのベットに逃げ隠れたこともある。そんなことを思い出すと今でも恥ずかしいが、今はそんな場合ではない。
だんだんと目が慣れてきた。
さらに歩くと、今度は何やら得体の知れない匂いが漂ってきた。
(なんだよこの匂い…まるで何かが腐ったような…)
フルフルは元々不気味な奴だが、その匂いのせいでさらに不気味な気分になった。
「フェリクス…?なんだよこの匂い…」
「…予想はできるが…教えない。」
「なんでだよ…!」
鼻が曲がりそうな匂いの正体は、シルヴァには予想がつかなかった。こんな経験は初めてだった。おそらくフェリクスは、こういった経験をしているから予想がつくのだろうとシルヴァは思った。教えない理由はつくづくわからないが、フェリクスはそんな茶目っ気のある人ではないし、フルフルZヘルムのマスクごしにでも、その深刻そうな表情は見て取れる。
おそらく別の理由があるのだろう。
「…下を見てみろ」
「し、下?」
フェリクスが指をさした方向を躊躇いもせず見つめた。
そして、シルヴァは言葉を失った。
「っ…!?」
フェリクスが指をさした先には、何やらハンターの腕の防具が捨てるように置いてある。
防具だけではない。
その防具は、腕にちゃんと装備されている。
片腕だけだった。
無惨に食いちぎられたように肘のあたりから赤黒い血が流れている。
「嘘だろっ…」
恐れていたことだった。
これは間違いなくこのフルフルに挑んで行ったハンターの物だ。それに、この防具には見覚えもある。ずっと前からイリアとカウンターで話していた、若い男の着けていた防具と酷似している。シルヴァは目を疑った。
「…これ以上は何も言わないぞ」
フェリクスは、憐れむような目でシルヴァに言った。シルヴァがショックを受けることを恐れたのだろうが、フェリクスはこういった経験を積むことも大事だと踏んだのだろう。
ランゴスタの羽音のみがしばらく響いた。
そして、
ズゥン-
という重い音が反響した。
「…来たか」
「えっ…!?」
洞窟内部の高い位置にある洞穴奥から、鈍い足音と、荒々しい鼻音が聞こえる。
フェリクスは双剣、ブレイズレインに手をかけた。シルヴァは自分の両頬を叩いて、大丈夫だ。と言い聞かせた。
狩りには慣れたはずのシルヴァだったが、今回は異様に緊張した。
目の前の現実を受け入れただけで、こうも気の持ちようが変わるとは思わなかったのだ。
そして、洞穴内部の黒い空間が、青白い閃光を放った。
「…!シルヴァ!よけろ!」
「えっ、ぐあっ…!?」
空間の中から突如飛び出してきた稀白の飛竜。青白い電気を帯びながら、シルヴァ目掛けて飛び掛って来た。
間一髪、直撃は免れたが、衝撃で吹き飛ばされた。それと、電気のせいで体が痺れ、思うように動かなかった。
「ぐっ…くそ…」
痛みと痺れで力が入らず、起き上がることが全然できない。
重い音がどんどん近づいてくるのと同時に、心臓の鼓動が無意識に早くなるのを感じた。
「ったく…よ…そら!」
-ギャウッ ドンッ
フェリクスは軽くため息をつくと、シルヴァに近づくフルフルの右脚を、刹那の内に切り裂いた。フルフルはバランスを崩し、大きく転倒した。
「ほら、立て。」
「うっ…ごめん…」
フルフルが倒れている隙に、フェリクスはシルヴァの腕を引っ張って、強引に立たせた。
シルヴァの体からは完璧に痺れがとれてはいないものの、動ける程には回復していた。
多少フラつくが問題は無い。
たちまちフルフルも立ち上がった。
そして、咆哮した。
ーーーギャアアアアオオオオオ!!
「ぐぅっ!」
耳を劈くようなけたましい奇妙で不気味な咆哮。さっきまでの体の痺れが蘇ってくるようだ。
シルヴァは堪らず耳を抑えた。
だが、
フェリクスに咆哮は効いていなかった。
「はぁぁっ!」
吠えるフルフルの頭の無い長い首を、フェリクスが切り刻む。
ーーーゴアアッ
フルフルは首を左右に揺らしながら後退した。
「凄い…」
シルヴァは思わず口に出して行った。
双剣使いの強さは、いかに素早く連続攻撃を当てるかによる。フェリクスの速さは、まるで居合の達人かと思うくらい一瞬で、ブレがない。
それに、防具のスキルで『高級耳栓』がついているため、モンスターの咆哮が効かず、連続攻撃を絶やさずに行うことができる。
また、攻撃が来たとしても、『回避性能』のスキルと『回避距離up』のスキルも持ち合わせているため、双剣使いにはかなり心強い装備を持ち合わせている。フェリクスの装備は頭と腕装備以外ナルガXシリーズで、装飾品を上手く使ってスキルを発動させている。それらもひっくるめて、フェリクスの強さに改めて気付かされた。
「…シルヴァ、お前は俺が合図したら矢を放て。それだけでいい。」
「あぁ、わかった。」
さっきまであまり乗り気ではなかった後方支援だが、そこまで悪い気もしなくなってきた。
フェリクスの狩りを見れることが、楽しみになってきて、興奮してきた。
よし、とフェリクスが頷くと、真っ直ぐフルフルに突っ込んで行った。
ーーーゴワァァァァ!
フルフルが再び咆哮を上げる。
空気がビリビリと震え、洞窟内部が振動するが、フェリクスは全く怯まない。
「…効かねぇよ」
そう微かに呟くと、左手で持った剣がフルフルの口を焼いた。
水分が一気に蒸発する音が聞こえると同時に、今度は右手に持った剣の追撃が入った。
粘着質なフルフルの表皮を蒸発させた後、次に高水圧の水撃がフルフルの口を穿った。
ーーーゴワァァァァ!!!
悲鳴を上げながら仰け反るフルフル。
だがフェリクスは攻撃をやめない。
口の次に首、首から胴体にかけてをほんの数秒で切り刻んでいった。
フルフルの粘液が完全に蒸発し、稀白の表皮は焦げつき、首から胴体までは無惨にも複雑な深い傷がいくつもつけられている。
「はぁっ!」
最後に両脚を切り裂こうとフェリクスはまず右脚に向かった。
その時、一瞬の隙をはかってフルフルの体が青白く光り始めた。
「フェリクスッ!」
「…うるせぇ」
シルヴァの叫びすらも同じように切り捨て、フルフルから離れるように回転回避した。
その時、フルフルが低い姿勢で全身に雷を帯電した。幸い、フルフルの尻尾から脚付近は範囲が狭く、回避しやすい。
フルフルがフェリクスの方を振り向く。
そして、フルフルは首を持ち上げて、口に雷を溜め始めた。
(…あれは…ブレス…!)
シルヴァは身震いをした。
あれを食らってしまえば、体を内部から焼かれて即死する。絶対に避けなければ、助からないことは、フルフルをあまり狩らないシルヴァでもわかった。
「…遅い」
フルフルが首を叩きつけ、3つの光球を吐く瞬間だった。
ーーーギャァァァ!?
光はフルフルの口元ではじけた。
青白い光が洞窟を一瞬照らした。
眩しさでシルヴァは目を瞑ったせいで、何が起きたかわからなかった。
目を開いたら、フルフルは倒れ、フェリクスはフルフルの首に左手に持っていた剣を突き刺していた。フルフルはビクビクと体を震わせ、小さく唸っていた。まるで助けを求めているかのように。
「…ラスト」
そう、フルフルのひしゃげた顔の前で呟いた。首に突き刺さった剣を引き抜き、そして、じゃりん、と二つの刃が擦り合わせると、フェリクスの両腕を赤い闘気が纏った。
「シルヴァ、準備しておけよ。」
「え!?あ、わかった!」
後ろで見ていたシルヴァが慌てて弓を展開した。
「行くぞ」
次の瞬間、フェリクスは乱れ舞った。
炎の剣と水の剣がまるで嵐のようにフルフルの体を切り裂いていく。
残り少ない粘液が飛び散り、鮮血がしぶき、洞窟内の水たまりを赤く染め上げて行った。
フルフルの断末魔は、火で血が蒸発する音と水音が全て遮った。
凄まじい剣技だ。
だが、フルフルはまだ死んでいない。
フルフルはでたらめに両翼と尻尾を振り回した。その一撃をフェリクスはまともに受けてしまい、後ろに飛び退いたが、受身をとってなんの問題もなさそうだ。
「射て!」
フェリクスがシルヴァに向かって叫んだ。
シルヴァは弓の弦を引き絞り、狙いを頭に定める。それと同時にフルフルの体に電気を帯びた。そのままシルヴァに向かって体当たりをしてくるつもりだ。
「くそっ!くらえ!」
シルヴァが放った矢はフルフルの口から胴体まで貫通した。
ーーーゴォォォォ… バシャァン
「うわっ!?」
フルフルは絶命した。
体当たりをする直前、力を溜めていたせいか勢いがあまり、体を前に突き出す形で倒れた。
フルフルが体当たりをかましてくることがわかっていたシルヴァは、ギリギリでそれを阻止したものの、興奮で手が震えていた。
「倒した…?」
「…やったな」
岩の壁に寄りかかるシルヴァの肩を、フェリクスはぽん、と叩いた。
フェリクスの言葉に、シルヴァは震える体をひねって振り向いた。
フェリクスの顔と右腕からは、少なからず血が出ている。顔には擦ったような傷と、右腕には打撲のような痕が残り、それを見たシルヴァは
謎の罪悪感を感じた。
「フェリクス…ごめん…」
「なんで謝る…これは俺の失態だ」
フェリクスはフルフルZヘルムのマスクを脱ぎ脱ぎ、左手で顔の血をぬぐった。
「双剣の達人なら…敵から反撃を貰うどころか、自分の体に敵の返り血すら浴びないと言われている…俺もまだまだだな…」
フェリクスは独り言のように呟き、舌打ちすると、無惨に倒れたフルフルの方を見た。それにつられるようにシルヴァもフルフルの方を見る。
稀白の体は無数の深い傷に覆われ、血が滴り、周りの水溜まりにはフルフルの血で赤く染まっている。横倒しになった顔…とは言い難い口は大きく開いていて、そこからも大量の血を吐いている。ずらりと並んだ歯が、血色に色づいていた。
「いつまで怖気づいている…さっさと剥ぎとれ。今までコイツに何人ものハンターが喰われている…無駄なく使え。それとも、ずっとそこで見ているか?」
「なっ…バカにするな…!」
シルヴァは足と腹に力をいれて、岩の壁から飛び出すように離れた。膝がまだ笑っているが、それぐらいもう慣れた。
フェリクスはそれを見ると、鼻で息をつきながら微笑んだ。
いつもはマスクごしにしか顔を見れないので、たまに見れるフェリクスの素顔での笑みは、驚くほど綺麗で、一瞬呼吸を忘れ、顔が赤くなるのを感じた。血は繋がっていないとはいえ、小さい頃から一緒にいる兄に対してこういう感情を抱くのは、なんともいえない複雑な気分だった。
「てか…いいのか?このフルフルはフェリクスが狩ったものだし…何もしていない私が素材だけ取るのは…」
「…構わない。フルフルの素材は正直使わない。それに、これはお前の防具を作るためにやったんだ…遠慮するな。」
地面に座って傷の手当をするフェリクスは、右腕に包帯を巻きながらそう答えた。
普通ならいらない素材でも剥ぎ取って売れば金になるため、ハンターは必ず剥ぎ取りを行う。
シルヴァにはフェリクスの言動がよくわからなかった。
シルヴァは傷の手当をするフェリクスを見つめ、戸惑った。
「G級の素材を確かめるのも、1つの勉強だ。剥ぎ取らないんなら、防具作るのが遅れて他のG級クエストに挑むのが先延ばしになるだけだが?」
「はぁ…」
やっぱり勉強はキライだ…とシルヴァは心底思った。どうしても横取りしたような気分がしてならない。
しかし、剥ぎ取りを行わずにこのまま他のG級クエストに行くのが先延ばしになるのはゴメンだった。それに、早く剥ぎ取りを行わなければ近くにいるランゴスタ達が集ってくる。
考える余地はなかった。
シルヴァはそんな感情を振り払うように、腰に挿した剥ぎ取り用のナイフを、フルフルの体を捌くように走らせた。
フェリクスはそれをただ、じっと見つめた。
無意識に手元が早まるが、手際はいい方だった。ブヨブヨとした『真珠色の艶皮』と、内臓器官である『雷電袋』を剥ぎ取ると、それを毒竜『ゲリョス』の皮で作られた絶縁性の袋にいれて、フェリクスの方を振り返った。
「終わったぞ。」
「いいのか?まだ剥ぎ取れるが?」
「これで十分だ。…やっぱり横取りは性に合わない。」
シルヴァはナイフに付着した血を拭き取り、腰に戻し、足早に洞窟の出口へ向かった。
フェリクスも立ち上がり、ランゴスタが集るフルフルの死体を一瞬見てから、シルヴァの後を追いかけた。
シルヴァはいつになく落ち着いていた。
それはやはり狩りにあまり参加出来なかったことへの苛立ちか。
ベースキャンプに戻ってから、フェリクスとシルヴァは特に喋ることもなく、その場を後にした。
戦闘シーン、少なくなってしまいました。
ホントはもっと書きたかったんですけど私の浅知恵じゃあ限界です。最後はもう変なふうにまとめちゃいましたが気にしないでください。