もうすぐ1000UAです。
かなり多くの人に見てもらえて嬉しいです。
今回ほぼ1万字書いたので長ったらしいですがよろしければどうぞ。
「…パーティーを組んだらどうだ?」
シルヴァが大怪我を負ってから約1週間がたったある日の正午。まだ太陽は村の天辺にあるのにも関わらず、酒の臭いと騒々しい大声が飛び交うポッケ村集会所酒場には割に合わないフェリクスの静かな声が、シルヴァの耳にしっかりと届いた。
「パーティー…かぁ…」
酒場の中央にある長いテーブルに、向かい合って座るシルヴァとフェリクス。フェリクスの隣にはザザミX装備を着用したナギサが、カップに並々とつがれたコーヒーを、まるで貴族のように飲みながら、当然のように座っている。
今更ナギサがフェリクスの隣にいようと、それがもう慣れた光景であったため特に気にすることはなくなった。少し前までは追い払っていたが、そうもできなくなっていた。
シルヴァはため息混じりの曖昧な言葉を吐きつつ、自分の目の前に置かれた『プリンセスポークステーキ』にナイフを入れ、口に運んだ。
「うまっ」
そう一言言うと、ステーキの左に置かれたコップ1杯の水を半分飲むと、はあぁ…と再びため息をつき、ナイフとフォークを置いてから口に付いた脂を手の甲で拭った。
それを見ていたナギサは口につけていたコーヒーカップをテーブルに置くと、ふぅ…と息をついてから口を開いた。
「ほんとっ…シルヴァちゃん、いい食べっぷりね。ちょっと前までは体中包帯だらけでベッド生活だったのに、こんなに早く回復するなんて。」
「そ、そうかな?」
確かに少し前まではほぼ全身に包帯を巻いて傷が塞がるのをベッドで待っていたが、そんな生活も意識が戻ってから1日でおわった。元々何日間か意識をなくしていたが、それでも治りが早すぎたのは自覚していた。今では何不自由なくいつも通り生活できる。シルヴァ自身にとっても不思議な事だが、悪い事でもなさそうだ。シルヴァは照れ笑いをした。
「ね、そう思わない?」
「…そうだな」
ナギサがフェリクスの方を少し嬉しそうに向いたが、フェリクスは至っていつもと同じ、眠そうでダルそうな表情だった。
「で、話を戻すけど…」
笑顔で話していたナギサの表情が、真剣な表情へと変わり、シルヴァの目をじっと見つめて言った。
「フェリクスの言う通りよ?いい機会だし、シルヴァちゃんもパーティー組んでみたら?楽しいわよ?」
「でもなぁ…」
テーブルに左肘をつきながら手に顎を乗せ、人差し指で自分の頬をとんとんと叩きながら、シルヴァは若干上の空になった。少しの間、ガヤガヤと騒ぐ他のハンター達の声よりも、自分の目の前に置かれたステーキがじゅうじゅうと黒い皿に焼かれる音が、食べ盛りな18歳の少女にはよく聞こえた。
「やっぱり1人がいいなぁ…」
ぼけーっと天井を眺めるシルヴァは、若干適当な言い方になったが、決して嘘ではない本心をぽろりと漏らした。
「…こんな事になってもか?」
「う…」
シルヴァの右目にかかった黒い眼帯を指さすフェリクスに、シルヴァは言葉が詰まった。その瞬間、空をふわついていた意識が急速に戻され、少し後ずさりしてからテーブルについてきた肘を放し、両手を太ももの上に置いて脱力したように背中を丸くしたが、フェリクスは話を続けた。
「…わかっただろ?G級は下位や上位なんかとは違う。1人でここまで登りつめたことは褒めてやるが、この先お前1人ではまず無理だ。特にガンナーはな。」
「うぅ…」
フェリクスの厳しい言葉のナイフが心に刺さる。
「確かにここまで1人ではやってきたのは正直尊敬するわ。シルヴァちゃんは結構実力派だもんね。」
「でしょ!?」
その直後のナギサの言葉が、心のナイフを抜いてくれた気がしたが、
「でも、G級からはガンナーにとって1人じゃやりにくいところは剣士と比べて沢山ある。数多の戦場を勝ち残ってきた、屈強なモンスター達が相手ともなると、いくら熟練のハンターといえども歯がたたないこともあるし。それに、ガンナーだと仮に装備を揃えたところで、剣士と違って動きやすいけど脆いから、大型モンスターの一撃だけで致命傷にもなりえるんだから。」
「…それらをカバーできるのがパーティーだ。連携をとれれば狩りをスムーズに進めることができるのは、どのクエストでも同じだ。」
「がくっ…」
倍になって返された。再びシルヴァは俯いて肩を落とし、さらに背中を丸くした。
だが確かに、パーティーでの狩りでは、仲間との連携や助け合いなどが非常に重要になってくる。
ガンナーは、特に仲間との連携をキメやすく、戦略的にモンスターを狩ることが1人で狩る時よりも容易くなる。また、回復だけでなく、ガンナー特有の『鬼人弾』などの支援も、剣士と比べて断然やりやすい。パーティーに1人ガンナーがいるだけで、立ち回りがぐっとしやすくなる。
だが、そんなこととっくの昔に知っていた。
パーティーでの狩りはした事がないが、それぐらい知っていて当然だ。
シルヴァには別の理由があって、今までパーティーでの狩りをしてこなかった。
フェリクスと肩を並べるハンターになることを目標に、個人の力をつけるために今まで1人で狩りを行っていたのと、フェリクス以外の人と狩りを行うのに、食わず嫌いに似た嫌悪感を覚えていたのが理由だ。それと、ここまで来たからにはG級も1人で制覇してやるという、謎の使命感までも勝手に背負っていた。
だがもし制覇できれば、フェリクスに認められて共に古龍『クシャルダオラ』や『テオ・テスカトル』を撃退して英雄を語れることも夢ではない。そういった妄想や考えで、シルヴァは今まで1人で動いていた。他にも単純にチヤホヤされたいだとか、功績が認められてミナガルデの街に派遣されたり、フェリクスと一緒にいれる時間が長くなるから、というしょうもない理由もあった。
(今思うと恥ずかしいな…)
自分の目標、考え、使命感や妄想なんかを思い出したら、突然体が熱くなってきた。シルヴァは顔を上げてコップに入った残りの水を飲み干してから、恥ずかしい気分を紛らわすようにステーキをナイフででたらめに刻んでからパクパクと食べた。フェリクスはその様子を見てあくびをした。
「…とにかく、フルフル装備を妥協してランポスの装備にしたはいいが…それでもやっていけねぇ。人なら紹介してやるから、パーティーを組め。ちょうどガンナー欲しがってる知り合いのハンターがいるからな。」
「…えぇ…?うそでしょ…?」
肉を口に入れる寸前で手を止めてそう言った。フェリクスの手助けは嬉しいが、内心余計なお世話のような気もした。それに、まだ決心はついておらず、どうしても長年追い続けてきた目標を簡単に手放すことができずにいた。
「ねぇ、誰を紹介するつもりなのー?」
ナギサが眠そうにあくびをしながら頭を掻くフェリクスに迫り、至近距離でフェリクスの顔を見つめながら言うと、当の本人は若干ナギサから避けるように離れた。
「…『黒馬』のパーティーかな」
さっき話してたよりさらに小さい声で呟いた。
それからフェリクスは自分のコップに水を注いだ。
「『黒馬』って…マジで言ってる?」
「??」
フェリクスとナギサがこそこそと話しているく『黒馬』という単語は、パーティーには疎いシルヴァにとっては何もわからず、ただ呆然と聞いているしかない。
おそらく、そういうパーティーがあるのだろうということは予想できたが、大層な名前なパーティーだなぁ、と少し感嘆した。
シルヴァは構わず肉を頬張ったが、フェリクスとナギサは相変わらず至近距離でこそこそと話している。
(…本気で言ってるの…?シルヴァちゃんには刺激が強すぎるんじゃ…)
(…ちょうどガンナーを欲しがってる連中はそいつらぐらいだ。それに、あの2人組の面倒を見ているクロムの負担を少しでも軽くしなきゃな…)
(…確かに…それもそうよね…クロムさん昔…)
(…それ以上言うなよ)
(…うん)
「というわけでシルヴァちゃん!頑張ってっ!」
「ふぇ!?はぁ…ふぁい…」
「それじゃ!私、アルとクエスト行く約束してるから!フェリクス、あとよろしく。」
突然勢いよく立ち上がったナギサは、口に物が入った状態のシルヴァの肩を軽く叩いたあと、背中に背負った『ガンチャリオット』を背負いなおしてから元気よくこちらに手を振って集会所を出て行った。
はぁ…と深いため息をついたフェリクスはシルヴァの方を向いて、
「…食い終わったら奴らを紹介する。」
そう言ったあと、コップに注いだ水を一気に飲み干した。
「…おっけ」
頬張った肉を飲み込むと、残りの肉を付け合せのじゃがいもやにんじんなどと一緒に食べて平らげた。
もう、パーティーを組むことが決定したように話を進めるフェリクスに、シルヴァはなにも反抗しなかった。目標に関してはおしい気もしたが、パーティーを組まなきゃG級にはとても太刀打ちできないことは、身を持って知った。
フェリクスでさえも自分でパーティーを結成してG級のモンスターと戦っている。そうでもしなければ、到底古龍なんて倒せないだろう。
(フェリクスだったら…G級でも1人でやっていけそうだけどなぁ…)
G級のフルフルを一瞬で討伐したフェリクスなら、どんなモンスターでも対等に分かち合える気がしたが、今更そんなこといっても仕方がない。
シルヴァはゆっくりと立ち上がって、椅子をテーブルに直した。それからフェリクスも立ち上がり、無言で顎でクエストボードを指した。
それから、シルヴァとフェリクスは集会所のクエスト掲示板の前に立つハンターたちの元を訪れた。
「…よぉ、『黒馬』さん。」
「…アンタのその言い方、気に入らない。」
フェリクスはクエストボードのちょうど左側の壁に寄りかかっていた女性に声をかけた。
女性は閉じていた両目をわずかに開くと、そう言い放ってから再び目を閉じた。
「…他の2人はどうした?一緒じゃないのか?」
「リーダーはいいとして、あのバカといつまでも一緒にいれるほど私の心は広くないよ。」
と、女性はため息混じりに言った。
シルヴァは少し後ろから会話の様子を聞いていた。見たところ、装備は『ゲリョスX』一式で、背中に背負った武器は希少鉱石の『メランジェ鉱石』と、強靭な鳥竜種から剥ぎ取った骨が使われている『極鎚ジャガーノート』だ。黒さが際立つゲリョスXと極鎚ジャガーノートを両方装備しているだけあって、全身真っ黒だが、わずかに覗く肌はまるで雪のように白く、唇は濃いピンク色。肌の白さを見た時、具合でも悪いのかとも思ったがそうではないらしい。だが、肝心な顔から上半分が、ゲリョスXヘルムの額をおおう部分でよく見えないが、さっきフェリクスが声をかけたときに目を開くのを確認した。一瞬だったが、恐らく相当な美人だったということがわかる。
「…んで?何しに来たの?アンタのことだし、気まぐれで話しかけた訳ではなさそうだけど。」
女性は相変わらず壁に寄りかかったまま言った。
「…パーティーの件でな。」
「あぁ、後ろの子?」
「…!」
察しのいい人だ。女性はフェリクスの影から軽くシルヴァを覗き、すぐに元の体勢に戻った。
「…『ランポスX』ってことは…G級に入ったばっか?私達にこの子の教育を任せるつもり?」
「…そんなとこだ。主にパーティーでの、な。」
「ふぅん…」
女性は体勢をまったく変えず、俯き気味で何を考えているかわからない。
フェリクスと似たような口調のこの女性は、話し方からして断る口実を探しているのかと、シルヴァは勝手に感じた。
「アナタ、名前は?」
顔をあげてこちらを再び覗くように見るその女性の言葉に、無意識に体がビクン、と跳ねるのを感じたのと同時に少し汗が出てきた。
「…シルヴァ・アイルーン」
「あぁ…妹さん?」
「そ、そう…」
「レイラ・エルドリック…よろしく」
流すように自己紹介をしたレイラという女性は、寄っかかっていた壁から離れて、シルヴァの方へと歩み寄ってきて、シルヴァの目の前に立って顔を近づけた。
「目はどうしたの?誰かにやられた?」
「フルフルに…」
「へぇ…フルフルの電撃食らったんだ…その程度で済んでよかったね。」
レイラは、シルヴァの左目を万華鏡を覗くようにじっと見つめた。
その瞬間、シルヴァの体はまるで石になったように硬直した。なんだか飲み込まれてしまいそうな感覚で、体がぴくりとも動かない。わずかに見える綺麗な目は血のように赤く、何匹もの飛竜を狩って染み付いたもののようにも感じた。暗闇に出たら『迅竜ナルガクルガ』のように目の発光で空間に赤い尾を描きそうだ。冷や汗が頬を伝っていく感覚が、これほどわかりやすく感じたことはない。
「まっ、これは私が決めることじゃないし。リーダーが戻ったら、とりあえず話しておくよ。」
「…頼んだ」
視線がフェリクスの方へと移った瞬間、緊張と意識が戻ってきた。そして、なぜかはぁはぁと息が上がっていた。
レイラは振り向かずに手を軽く振りながらこの場所を後にした。
(なんだったんだ…今の…)
緊張のせいかもしれないが、人に見つめられただけであそこまで硬直してしまうのは、レイラが初めてだった。自分はそこまで人見知りではないし、むしろ得意な方ではあると思うのだが何故だろう。とシルヴァは頭の中で深く考えていた。
「…大丈夫か?」
「…!あ、あぁ。」
フェリクスに肩を叩かれ、再び体が跳ねる。
本当にわからない。彼女は何者なんだろうか。
只者ではないことは確かだ。
「なぁフェリクス…」
「…なに?」
「こんなこと言うのはおかしいと思うけど…レイラって…何者?」
シルヴァはフェリクスに恐る恐る聞いた。
相変わらずフェリクスは眠そうにしていたが、彼女とよく面を向かって話せていたものだ。
「…さぁな。だが噂では一種のモンスターなんじゃないのかって言われてるけどな。」
「…はぁ!?」
「…お前も感じただろ?まるで体が石になったように動かなくなる感覚を」
驚愕した。まさか自分だけじゃなく、フェリクスも感じたことがあったのか。
なんとなくレイラが去って行った方向へ顔を向けて彼女を探したが、案の定見当たらない。
「どっ、どういうことだよ…!」
「…安心しろ。アイツはある意味では確かにモンスターだが、なかなか頼れる奴だ。アイツがいるおかげで黒馬っていうパーティーが成り立っているといってもいいぐらいだ。」
「全然安心できないんだけど…」
むしろおっかないイメージしかつかなかった。
「…とにかく、返事を待つぞ。見ての通りアイツは面倒くさがりだからな…すぐには言わないと――」
「…連れてきたよ」
フェリクスの言葉を遮るように、先程聞いた声が背中からした。後ろを振り向くと、噂をすればレイラがいた。
「私、そんなに面倒くさがりに見える?」
どうやら会話の一部を聞かれてたらしい。
そのせいか、少し口調に苛立ちが含まれている。
「…悪かったよ。」
フェリクスはバツが悪そうに頭を掻きながら謝ったが、モンスターといわれているレイラの機嫌は直っているようには見えない。今にも背中のハンマーが飛んできそうな殺気のようなものも感じる。シルヴァは少し身を引いた。
「まぁいいよ。」
「え…!?」
意外にもあっさりと許してくれたレイラは、右手を腰に当てて溜息をついた。
「私の日頃の行いが悪いだけだし。それよりシルヴァだっけ?この人、ウチのリーダーだから、話すならさっさと話した方がいいよ。それと、フェリクス。ちょっと話あるから、来て。」
「えぇ…!?ちょ、待っ…!」
レイラは、隣にいた比較的細身の男性を親指で指さすと、
それじゃあ。といってフェリクスの手を掴んでぐいぐいとどこかへと行ってしまった。あまりに突然のことすぎて、シルヴァはかなり動揺してしまっている。
「ふふ、大丈夫かい?」
先程レイラが連れてきたリーダーと思わしき男性が紳士的な笑みを浮かべた。
シルヴァはただつられて愛想笑いをするしかなかった。
「いや、悪いね。レイラは、かなりマイペースだからさ。僕でも手に負えないくらいね。」
「はは…ん?!」
呆れたように両手を広げて肩をすくめる、シルヴァより頭が1つ高い男性。帽子のような兜から出る長く黒いまっすぐな髪、もみあげ、えりあしともに長く、顔はハンターとは思えない、貴族のよう。幼さの中に確かな美しさと凛々しさがあり、女顔だ。見た目、年上ではあることは確かな美少年であるが、それよりもシルヴァは彼の装備に目が離れなかった。
「『エンプレス』…!?」
「ん?そうだよ。『エンプレスX』。初めて見るのかな?」
「『エンプレスX』!?」
シルヴァの左目がキラキラと輝いた。
エンプレスシリーズは古龍『ナナ・テスカトリ』から作られる防具で、古龍の素材を使っているだけあってかなり貴重である。まして、災厄とも呼べる古龍を狩れるハンターは数少なく、それがG級個体となればもはや皆無に等しい。その古龍のG級装備を身に付けた人が目の前にいることは、夢のようだった。
「すっご…」
あまりの出来事にそれしか言葉がでないのは、かなり物足りなかったが、それ以上言葉が出ない。
「いや、そんなことないよ。これが装備できるのも、他の2人のおかげだしね。」
至って冷静に、自慢することなく謙遜する彼の心にも驚きだ。これほどの装備をしてるんなら、村中に自慢して回っても誰にも憎まれないだろうに。
「申し遅れた。僕が古龍討伐隊『黒馬』のリーダー、クロム・カルラだ。よろしくね。」
上品に会釈をするクロム。それだけで気品が集会所を満たしそうだ。
「シルヴァ・アイルーン…って古龍討伐隊!?」
「そ、古龍討伐隊。お兄さんから聞いてない?」
まったく聞いていない。フェリクスからは、パーティーでの狩りを学ぶためにとしか。
「聞いてない…か。ま、きっと大丈夫さ。」
笑顔でシルヴァの肩を叩くクロム。
一体何が大丈夫だというのか、古龍討伐隊に入ったら古龍との戦いが死んでも避けられなくなる。古龍との戦いでは街1つが動く規模でハンターたちが動き、戦いに参加するのだが、古龍討伐隊は何よりも先に戦場に赴き、戦いの最前線に立つことになる。古龍は災厄と呼ばれている通り、『リオレウス』や『フルフル』などといった飛竜とは訳が違う。単純に強すぎるのだ。やっていける気がしない。
「安心してよ。古龍の討伐なんて、1年に1度、あるかないかだから。それまでは僕達も普通にクエスト受けて、普通にハンター生活してるだけだから、何も問題はないだろう?」
「それに、仮に古龍が攻めてきても、君を前線に押し出すようなことはしない。ギルドでパーティー登録をして、その登録したメンバーで行くことになるからね。今回はあくまでパーティー登録をせず、クエストに行く時だけ僕達のパーティーに参加させるだけだからね。」
「そ、そうなのか…?ていうか、入っていいのか?」
「もちろんだよ。レイラはあまり乗り気じゃなかったみたいだけど。」
クロムが再び微笑んだ。
その笑みにはまるで淀みがなく、なんだが安心感の溢れる笑みだ。シルヴァは安堵した。
「じゃっ、シルヴァさん。よろしくね。」
「よ、よろしくおねがいします!」
あまり得意ではない敬語で、シルヴァは深々と頭を下げた。気配でクロムも頭を下げていることがわかった。顔をあげると、やはりクロムは微笑んでいる。先ほどのレイラと違ってかなり
感情豊かで話しやすい。シルヴァは強面を想像していただけあって、胸をなでおろした。
すると、
「リィィィダァァァァ!!!」
と、大きな男性の声が集会所に響いた。周りの目が一斉にそちらを向いたが、すぐにまたいつもの騒ぎに戻った。
そして、その声の主はシルヴァとクロムの元へと滑るように入ってきた。
「何ィ、新人!?聞いてないっスよリーダー!君、ガンナーさぁん?」
少しハスキーで低いがとても聞き取りやすい声と茶目っ気のある口調でシルヴァは圧倒された。
「そ…そうだけど…」
声が詰まっていた。男性はシルヴァの背中にある武器を体を大きく傾けながらまじまじと見た
「へぇ〜、弓使いかぁー。僕、ドレイっていうんだ〜。君は?」
体を傾けながら横目でシルヴァの顔をチラ見する男性は、ドレイというらしい。彼もクロムのことをリーダーと呼んでいたから、彼もこのパーティーの一員なのだろう。
「シルヴァ…」
「シルヴァって…あぁ!フェリの妹さんかぁ〜!リーダーも随分イイコに目をつけましたねぇ!」
「フェリクスさんからのお願いで彼女を一時的に入れることになったんだ。仲良くね。」
「わーってますよ〜!よし、シルヴァちゃ〜ん。とりあえず入隊祝いで一杯やろうよって…まずっ…」
シルヴァにどさっと肩をくんできたドレイは、危険を感じ取るようにシルヴァから離れて口笛を吹き始めた。
シルヴァにはなにが起きたかわからなかったが、フェリクスとレイラが戻ってきたのが見えた。彼らがこちらに合流すると、なぜかドレイの頬に汗が伝うのがみえた。シルヴァはなんとなくフェリクスの隣についた。
「…決まったか?」
フェリクスがシルヴァに言った。
シルヴァはあぁ。と首を縦に振った。
レイラはドレイの右隣に立って、口を開いた。
「…なにしてたの」
ドレイは口笛を吹きながらふざけたように、
「なんもしてませぇ〜ん。ちょっと新人さんに紳士的な挨拶をしてただけですぅ〜。」
と言った。明らかにからかっているようにしか聞こえない。レイラはドレイを睨みつけてから、ため息をついてから正面を向いた。
「シルヴァさんは、僕たちがしっかり面倒を見ます。フェリクスさん、貴方は…しばらくこの村を出るそうですね。」
「はっ…!?」
シルヴァはフェリクスの方を瞬時に向いた。
フェリクスはそうだ。と言った。
聞いてない。そんな事。シルヴァの頭は混乱した。
「聞いてないの?シルヴァ。」
レイラが腕を組みながら言った。
「聞いてない…」
シルヴァは呆然とした。
「あれ、あれでしょ?ミナガルデに行って、飛竜掃討戦に参加するんでしょ?さっすがフェリィ〜。エリートは違うねぇ〜。」
「飛竜掃討戦…?!」
ドレイが口にした飛竜掃討戦。
ミナガルデの街で行われる大規模な飛竜の狩猟である。1年に1度、繁殖期にあたった飛竜達が、餌を求めてミナガルデの街を攻めてくる。
そのミナガルデの街の防衛を、飛竜掃討戦という。繁殖期の気が荒い凶暴な飛竜の群れを相手するだけあって、かなり危険で犠牲者の多い戦いだ。各地の村や街から選りすぐりのエリートがミナガルデに集まるのだが、ポッケ村からはフェリクスが選ばれていた。
「な…なんで言ってくれなかったんだよっ!」
シルヴァはフェリクスの肩を掴んで叫んだ。
しかしフェリクスはため息をついてこういった。
「…言ったら絶対止めるだろお前…そういうの面倒くせぇから。」
「なっ…」
シルヴァはずるりとフェリクスの肩から手をおろした。ショックだった。言われ用のない虚しさがこみ上げてくる。
「…とにかく俺は、明日にはこの村を出る。クエストに関しては任せた…クロム。」
「わかりました。」
「…それと、あまり暴れるなよ?」
「…はい。」
フェリクスはクロムの肩を軽く叩くと、ギルド受付へと1人で歩いて行った。
シルヴァは俯きながら呆然と立ち尽くしていた。
「シルヴァさん、大丈夫?」
クロムが顔を覗きこみ、心配そうにシルヴァを見た。
「…大丈夫」
俯いたまま、死にそうな声でシルヴァは言った。もちろん、そうではない。シルヴァの心はおおいに傷ついていた。まるでモンスターに鉤爪で引き裂かれたように。
「大丈夫だよ〜!フェリ、ツンデレだから。ホントはあんなこと思ってないって!だから元気だしなよ!ね?」
ドレイが背中を叩いてくる。少し、マシになった気がしたが気のせいかと思うくらい一瞬だ。
シルヴァはその後、家に帰らず、ナギサの家で一晩を過ごした。
同じような表現が続くと、書いてて違和感を感じますね。とりあえず、シルヴァとフェリクスが離ればなれになるので2人別々のお話を書きたいですね。