超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth   作:ミオン

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Game9:黒の大地の現状

舞達がラステイションに足を踏み入れたのと同時刻。このゲイムギョウ界のどこかにある場所。強靭な鎖に巻かれた一冊の本の前に一人の女性がいた。

 

「久しいな、イストワールよ」

 

「マジェコンヌ…。何度来ても無駄ですよ。わたしは今の貴女に協力するつもりはありません」

 

「それはわかっているさ。今日は貴様に聞きたいことがあってな。それでここに来たのだ」

 

「聞きたいことですか…?」

 

「鍵の欠片を隠していた洞窟でネプテューヌに会ったのだよ。奴の力を奪おうとしたら、銀色の女神の瞳を持った小娘とネプテューヌの影から現れた悪魔の角と翼を持った小娘に邪魔をされてな。まさかとは思うが」

 

「残念ながら心当たりがないですね。それにわたしは貴女に封じられている身。貴女がネプテューヌさんとお会いしたというのも初めて知った話です。貴女の邪魔をしたという少女達はわたしが差し向けたと言いたいのですか?」

 

「私が知る限り、奴の手助けができるのは貴様だけだ。封印されている自分の代わりにネプテューヌの手助けをする奴を手引きしている可能性は十分にあり得る話だからな」

 

「なるほど…。それで貴女はわたしを疑っているというわけですか…」

 

「それで、実際はどうなのだ?」

 

「先に言った通りですよ。心当たりが無い。この一言に尽きます。数百年に及ぶ守護女神(ハード)戦争が行われている中、新たな女神が生まれたと言う話は聞いたことがありません。ネプテューヌさんの影から現れたという少女についても同じです。女神を守護するような存在はこれまで存在していませんでした。これらの事実は貴女も理解していることではないのですか?」

 

「ぬ。それならば奴らはどこから来たのだ…? 奴らはネプテューヌのことを知っていた。記憶を失う前の奴の知り合いなのか…?」

 

「それはわかりませんが、貴女のお話を聞いた限りでは相当な力を持っていると見受けます。自分の力を上回る強者が現れたとしても貴女は引かないのですか?」

 

「当然だ。奴らがどれだけ足掻いたとしても私の定めた守護女神と世界の運命は変わらない。それにネプテューヌの奴は記憶喪失。次に会った時にはあの二人諸共始末してやるさ。さあ、女神共よ。再び戦い合うのだ! ハーハッハッハッハッハ!」

 

マジェコンヌはどこかに向かって行った。空間内にはイストワールだけが残される。

 

「マジェコンヌが去ったことですし、舞さん達の様子を見てみましょうか」

 

舞が魔窟で発見した鍵の欠片に自分のシェアエナジーを供給する回路を作ったことで、イストワールも影ながらではあるが、舞達を見守ることができるようになった。封印されているので身動きは取れないが、鍵の欠片を通して力を貸し与えたりと舞達を支えることは十分にできる状態だ。物語の舞台は重厚なる黒の大地ラステイションに移る。

 

「うわぁ! なんか鋼鉄島って感じ!? あいちゃん、ここがラステイションなの?」

 

「そうよ。守護女神ブラックハート様が守護する重厚なる黒の大地。特徴としては重工業が盛んで工場が多いのよ。ちなみにネプ子が守護しているプラネテューヌの特徴は四つの大陸の中では最も高い技術水準を誇っていて、常に時代の最先端を突き詰めている。革新する紫の大地と呼ばれるだけはあるわね」

 

「おお! さすがはわたしの守護する大陸! 時代の最先端を突き詰めているという言い方がいいよね! ここはプラネテューヌとはまた違った雰囲気だけど、こういう街並みとか雰囲気とかは女神の趣味なのかな?」

 

「それは違うと思うわ。確かに守護女神は大陸を守護しているけど、文明を築くのは人間だから。街とかを作るにあたっては女神様が人間に助言したりだとかで関わってはいるとは思うけど」

 

「工場とか煙突が目立って産業革命って感じがするです。ちょっと空気が淀んでいる気がしますね。まだ昼間なのに空も何だか薄暗いです」

 

「良い点があれば、悪い点があるのが世の常よ。重工業の発展を良い点とするならば、悪い点は環境問題。工場から出る排気ガスが主な原因だと思うわ。それで、これからどうするのかしら?」

 

「確か、舞とネプギアの友達がラステイションにいるのよね?」

 

「はい。ラステイションのことはわたし達よりも詳しいですよ。着いた時に連絡を入れているので、ここで合流することになっています」

 

「噂をしていれば来たみたいだね」

 

舞の言葉の後に二人の少女がこちらに近づいて来た。ツーサイドアップの黒髪と赤の瞳。ゴスロリ風の黒の衣装が特徴的な少女。お団子状に結った黒髪と黒地に金の三日月の模様の入った着物。黒の瞳に金の三日月の髪飾りが特徴的な少女。

 

「ユニちゃん、大丈夫だった?」

 

「問題ないわ。アンタ達の方は大丈夫なの? 聞けば戦いに巻き込まれたみたいじゃない」

 

「まさかマジェコンヌと再び戦うことになるとは思わなかったけどね。セレナ、ラステイションの状況はどんな感じ?」

 

「深刻…と言ったところかな。女神不在の影響はかなり大きいみたいだよ。詳しい話をしたいから私達についてきてもらえる? この街で私達が拠点にさせてもらっている場所があるの」

 

セレナの案内で向かったのはラステイションの下町と呼ばれるエリア。大きな工場が多い街の中心部と違い、下町は小さな工場が多い。特に最近は市場を独占しているとある大企業の影響で経営難に陥っている工場が多いと言う。セレナの案内で着いたのは小さな工場。

 

「ただいま。友達を連れてきたよ」

 

「この短時間で随分と大所帯になって帰ってきたな」

 

現れたのは青色の髪を持ち赤色の作業着を羽織った女性。

 

「紹介するね。この人はシアン。この町工場パッセの社長だよ」

 

「お前らがセレナとユニの友達か。立ち話も何だから中に入れよ」

 

シアンは工場の隣にある実家に舞達を案内する。実家は食堂を営んでいるようだ。

 

「好きなところに座ってくれ。何か食いたい物があるなら言ってくれよな」

 

「わたしカウンター席取ったー! それにしても実家が食堂っていいなぁー! パフェとかプリンとか頼み放題だよね!」   

 

「自分の家で頼み放題してどうするんだよ…。工場の稼ぎだけじゃ生活が苦しいから母さんがここを片手間でやってくれてるんだ。ただで贅沢はできない。最近はユニとセレナが私を含めた下町の奴らの依頼を積極的に受けてくれるからかなり助かってるけどな。モンスター退治とか資材の調達とかさ」

 

「目の前に困っている人達がいるのに見過ごすことはできないからね。さて、ここでこのラステイションの現況を簡単ではあるけど説明させてもらうよ。一番の問題はある大企業による市場の独占と国政の実質的な支配」

 

問題の大企業の名はアヴニール。家電から始まり武器や兵器など何でも作っているようで、製品ラインナップの多さと低価格を売りに出して市場を独占しているとのこと。本来、市場というのは自由競争がされなければならないこともあって力のある大企業による市場の独占は禁止されているのだが、女神の不在をいいことに好き放題にやっているのだと言う。

 

「奴らが市場を独占するおかげでこっちの商品は種類も価格も全部負けっ放しで売れない上に下請けをさせてもらえるわけでもない。今月に入ってから知り合いの工場も何件潰れたことか。町工場の連中で女神に直談判しに行こうって意見も出たけど、今の教会には何を言っても無駄さ」

 

「女神不在の期間が長過ぎたみたいで教会がアヴニールに乗っ取られているのよ。今の教会の職員はアヴニールが差し向けた奴ら。表向きは女神を信仰しているように見せかけてはいるけど、誰が何の用事で来たとしても女神に会わせないようにしているみたいね」

 

ユニの話によると教会の職員は女神のことを呼び捨てにしていたと言う。教会の職員が自国の女神のことを呼び捨てにするなどあり得ないこと。その場にいなかったとしても敬意を持って称されるのが普通なのだ。

 

「この情勢を感じ取ったのかブラックハートは天界から戻ってきているみたい。行方は掴めてないけどね。何とか協力を取り付ければこの現状を変えることができる可能性はある。この情勢を見る限りだとシェアの力も相当落ちていると思うからかなり厳しいことには変わりないけどね」

 

ユニとセレナは下町の住民の依頼を積極的に受けてはいるが、状況は日々悪化している。アヴニールによる市場と国政の支配に加えて、モンスターによる被害も多数報告されているようだ。特に問題なのが町工場が遠方の得意先と交易するために利用している街道に居座るモンスターの存在。実際にモンスターに資材を破壊されたりといった被害が後を絶たないと言う。

 

「実は舞達から連絡をもらう前にシアンから依頼されているクエストがある。交易路として利用される街道に大型モンスターの目撃情報が出ているから、それの討伐に向かう。来たばかりで悪いけど協力してほしい」

 

「勿論協力させてもらうよ。他に下町から依頼されているクエストはある?」

 

「急を要しているのはこれだけよ。後は採取系と雑魚モンスターの討伐が何件かあるわ。余裕があるならこっちも併せて進めていかない?」

 

「私達は率先してクエストをこなさないといけないからね。その提案はありがたいよ。プラネテューヌで聞いた噂だと女神はモンスター退治をしているらしいからモンスター退治をしていれば会えるかもしれない。ブラックハートに会えたら話を聞いてもらおうか。…と勝手に話を進めてしまったけど、他のみんなはそれでいいかな?」

 

「異議無しよ。ネプ子の記憶と鍵の欠片の手掛かりを知るには女神様に会うのが一番だと思うわ」

 

「みんなを困らせる悪い人達は許せないです!」

 

「わたしも異議無しかな。他の女神様に会えば自分のことが何か思い出せるかもしれないし」

 

「情勢はかなり厳しいみたいですけど、みんなで力を合わせれば変えることができると思います」

 

「主様の指示に従うわ。邪魔をする奴らは排除するだけよ」

 

全員が賛同の意志を示したことで次の目的が決まった。準備が整ったら問題の交易路に向けて出発する。ラステイションの暗雲を打ち払うのは一筋縄ではいかない。これらの問題の解決には黒の女神(ブラックハート)の協力が必要不可欠なのだが、彼女の行方はわからない状況。彼女と巡り合えることを願い、舞達は街を出た。

 

「これでトドメよ!」

 

時は舞達が街を出た時から少し遡る。ラステイションの首都に近い森の中。振るわれた大剣の一撃がモンスターの体を斬り裂き消滅させる。長いストレートの白髪と身に纏った黒の鎧。青緑色の瞳には守護女神の特徴的な印が浮かぶ。彼女の名はブラックハート。この重厚なる黒の大地ラステイションを守護する女神だ。

 

「所詮は雑魚。女神の私に楯突こうなんて百年早い…。と自信を持って言いたいところなんだけど、力が落ちている今の状態ではただの見栄よね…」

 

ブラックハートの体が光の柱に包まれる。光が晴れると一人の少女が現れる。黒髪のツインテールと赤い瞳にゴスロリ風のドレスが特徴的だ。これがブラックハートの変身前の姿。守護女神は下界にて行動するための人間としての姿と名を持っている。彼女の人間としての名はノワール。ゲイムギョウ界とは異なる世界の言葉だと黒を意味する。

 

「この辺りのモンスターは一掃したから、教会に帰る…というのは無しね。まだ時間はある。他の場所のモンスター退治を進めないと。最近聞いた話だと交易路として使われている街道に居座るモンスターの被害が大きいみたいね…。少し遠出にはなるけど、見に行ってみようかしら」

 

アヴニールに支配された教会内の自分の立場はお飾りの人形。事実上の軟禁状態。本来ならば自分の元に来る情報は教会内に入り込んだアヴニールの手先によって殆どが規制されている。隙を見つけては教会から抜け出してモンスター退治に努めているが、モンスターによる被害の報告は留まることを知らない。自分だけの力ではどうにもならない状況なのかもしれないが、黒の女神の心には何もしないで諦めるという選択肢は存在しないのだ。

 

「はぁ…。誰かが隣にいてくれたらいいのに…。っといけない! 弱音を吐いている暇はないわ!」

 

ため息と共に本音が漏れてしまったが、気を取り直したところで再び女神化を行使する。背の翼に力を込めて、自分が守護する黒の大地の空に飛翔する。偶然にも彼女が向かった先は舞達がモンスター退治に向かった場所と同じ。銀の女神と黒の女神が再び巡り合う時が近づいていた。

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