超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth 作:ミオン
ブラックハートとの戦いと機械姫ヒナとの出会いのあった日の翌日の朝。まだ早い時間に一人の少女が目を覚ました。隣には自分と同じ黒髪の少女が寝ている。あの戦いの後に自分と友達になると言ってくれた少女だった。
「ここは…。私はあれからどうなったの…?」
彼女が言った自分と友達になると言う言葉を聞いて安堵した瞬間に視界が暗闇に染まったことまでは記憶している。体内に感じる自分のシェアの力が非常に小さい物になっていたが、それを補う形で自分が感じ取ったことのないシェアの力が体を満たしていた。そのおかげで体に不調は無い。
「おはよう。目が覚めたみたいだね? よかったら外でお話しない?」
隣で寝ていた舞もノワールが目を覚ましたことに気付いたようで目を覚ました。舞の問いにノワールは無言で頷く。舞は彼女の手を取り外に出る。まだ夜が明けたばかりなので少し肌寒いが、ラステイションはこのゲイムギョウ界を構成する四国の中では比較的温暖な気候だ。
「さて、改めて自己紹介させてもらおうかな。私の名前は
「私はノワール。守護女神としての名は
「いや。私はこことは違うゲイムギョウ界から来た守護女神だよ。その辺の事情はまた追々説明させてもらうからね。今は各国に散った仲間達と合流するのとネプテューヌの記憶を取り戻すために旅をしているの」
「ネプテューヌの記憶…? まさか…あの時のネプテューヌの反応は…」
「普段通りのボケなのかと思ったかな? 今のネプテューヌは記憶喪失になっているの。原因は
「あの時に頭の中に声が聞こえてきたのよ…。決着が着かないのなら一人減らせばいい。一人減らせば戦局に変化が生じるだろうって…。同じ声がブランとベール。
「なるほどね。私達が見た通りと言うことか。ラステイションに戻って来たのは自分に供給されるシェアの力が弱まったのを感じ取ったからかな?」
「ええ。ネプテューヌが脱落した後、私達は三人で争い続けていたけど、その最中に私にこれまで供給されてきたシェアの力が徐々に弱まっていたことに気付いた。それで下界に戻って来たらこの有様よ」
長期間の不在と下界に溢れ返ったモンスター達の影響で女神に対する信仰心は殆ど失われていた。ラステイションはアヴニールの支配下に置かれ、ノワールが教会に戻った時には女神派の人間は追い出され、アヴニールから送り込まれてきた反女神派の人間しか残っていなかったのだ。彼らの策略によりノワールは事実上の軟禁状態に陥っていたと言う。
「幸いにも女神化は行使できたから、隙を見て教会を抜け出しては魔物退治をしてラステイションの治安維持に努めていた。それで偶然向かったあの場所でネプテューヌと一緒にいるあなた達を見かけて後を付けたの。考えてみれば私って最低よね…。記憶喪失のネプテューヌに本気の戦いを仕掛けようとしたんだから…」
「そう思うのなら、ネプテューヌが起きてきた時に謝ってあげて。起きたらまた襲って来ないのかって警戒してたから。仲直りしたらネプテューヌの記憶を取り戻すために私達に協力してほしい。その見返りとしてラステイションの現状を何とかするために私達も協力させてもらう。これなら異論は無いでしょ?」
「わかったわ。まさか、あの子に自分から謝る日が来るなんてね。今回ばかりは完全に私に非があるのが事実だけど。舞達はこれからどうするつもりなの?」
「一応昨日の話し合いである程度は詰めたけど、ノワールはあの時に気を失ってたからね。みんなが起きてきたら改めて話をしようか」
舞とノワールは拠点に戻る。戻った頃にはネプテューヌ以外の全員が起きていた。いつも通りにネプテューヌをプリンで釣って起こした後に朝食を済ませたらこれからのことについて話し合いを行うことに。最初にノワールがネプテューヌに今回のことを謝罪。特に喧嘩になることもなく無事に仲直りすることができた。後で高級プリンを奢るという条件は出されたが、それで仲直りができるのなら安い物である。
「次は昨日の話し合いで出た案件だね。アヴニールの依頼を受けると言うことだけど…」
「アヴニールって悪い会社なんでしょ? 何でわたし達の方から仕事を受けるの?」
「敵を知るというのは重要なことよ。相手はこのラステイションを支配する大企業。正面から行けば潰されるのは目に見えている。何度かアヴニールの仕事を受けて攻略の糸口を見つける必要があるわね。肝心のクエストは出ているのかしら?」
「あるよ。内容はモンスター退治。ターゲットのモンスターが何なのかはわからないけど、ここ最近は失敗者が続出しているみたい。普段以上に警戒が必要なクエストになると思うけど、ノワールとヒナが入った今のパーティなら不測の事態が起きても対処は十分可能だと思う」
ターゲットは危険種以上かそれに類する特異なモンスターの可能性が高い。危険種の汚染化・超越化も確認されている以上は油断はできない。
「ふと思ったんだけど、モンスター退治の依頼を出しているってことはアヴニールもモンスター達の影響で部品や原材料の流通に困っているということよね? 国一つを支配する企業でもモンスターには手を焼かされてるってことなのかしら? 対モンスター用のロボットとか開発してそうな気もするけど」
「ありそうですよね。もしあるのなら実物を見てみたいです…! 対モンスター用のロボットとなると一見の価値はありますよ。複雑な内部機構は勿論のこと、モンスターのあらゆる攻撃を遮断する装甲とか…。前から開発を進めているロボットの参考になる物があるかもしれないです…!」
「あれ…? ネプギアのテンションが何故か上がって来てるよ? こんなキャラだったっけ?」
「ロボットと言う単語に反応したみたい…。人は好きな物のことになると印象が変わる…。私も何か面白い機械があるのならお持ち帰りしたい…。ネプギアとはいい話ができる…」
「好きな物が一緒だとすぐに仲良くなれるですね? 昨日もかなり楽しそうに話してたです」
ネプギアとヒナは機械が好きという趣味が共通していることもあっては既に意気投合している。元の世界に戻ったら巨大ロボットを共同開発すると言う話まで出ているらしい。完成形としては舞が単独で乗る機体と自分と舞の二人で乗ることで真価を発揮する機体なのだと言う。ネプギアのテンションが最大になって話が脱線する前に舞が止めて話を元に戻す。
「昨日の話し合いの時にも出てたけど、今回のクエスト中は女神化禁止なのよね?」
「アヴニールに私達が守護女神だと知られるのは困るからね。その制限に加えて舞とノワールにはあることをしてもらう必要がある。まずは舞、これを受け取ってほしい。ささやかな物ではあるけど、私からのプレゼントだよ」
セレナが舞に差し出したのは黒い小箱。中に入っていたのはコンタクトレンズだった。
「これをつけるの? 視力はいい方なんだけどね?」
「それは知ってる。騙されたと思って一度つけてみて。面白いことになるから」
セレナの言葉に従い、舞は洗面所に向かうとコンタクトレンズをつける。それから鏡を見てみると、鏡に映る自分に大きな変化が表れていたことに気が付いた。
「これは…!」
女神の印が常に浮かんでいた銀色の瞳が本来の色である黒色に戻っていた。それに加えて女神の印まで消えている。これが神奈 舞という少女の本来の瞳。セレナが舞に渡したコンタクトレンズには特殊な魔法の術式が組み込まれていて、これをつけている間のみ瞳を元の状態に戻すという効果がある。舞のためにセレナが開発した特注品だ。
「ありがとう。何だか昔の自分に戻った気分だよ」
「いつかは必要になる物だからね。気に入ってもらえてよかったよ。次はノワールだけど、このカードに描かれた衣装に着替えてほしい。女神化後の姿は勿論のこと、女神化前の姿も相手に把握されているだろうからね。このカードに描かれた衣装は私が作った物だけど、気に入らなければ別の衣装を用意する。どうかな?」
「それでいいわ。別に恥ずかしい衣装でも無いし。カードには描かれているのはわかるけど、実物はどこにあるのよ?」
「衣装はこのカードの中にあるよ。これを使うと描かれた衣装に即座に着替えることができる。試してみて」
ノワールはセレナから受け取ったコスチュームカードを掲げる。光がノワールの体を包みこみ、光が晴れるとノワールの衣装が変わっていた。
「似合ってるね。どこかの大学にいる助手さんみたい」
「ううっ…。何故かしら。助手と言われると身震いしちゃうのよね…。誉めてくれるのは嬉しいけど、助手と言う単語だけは言わないでほしいわ…」
ノワールの衣装は煌めく金の大地にあった魔法学校の制服を改造した衣装の上に白衣を纏った物。さらに髪はツインテールではなく、舞と同じストレートになっていて、赤い縁の眼鏡までかけている。一見すると別人にしか見えない。
「そう言えば、元の世界のお姉ちゃんも助手って単語に反応してたけど、何でなのかしら?」
「言葉では言い表せない何かがあるんだろうね。私もよくわからないけど…。時間も惜しいから依頼を受けに行こうか」
二人の変装が完了したところでギルドに向かう。掲示板を確認してアヴニールからのクエストを受注。詳しい説明は現地でするとのことなので、早速向かうことに。指定場所はザラット神殿と呼ばれる場所だった。
「さて、大変不本意ではありますが、現在私達はラステイションを支配する大企業、アヴニールの依頼を受けてここザラット神殿に来ておりまーす…」
「あんたは一体誰に向かって言ってるのよ…。それとさりげなく不満を挟まない。相手側に聞かれでもしたらどうするのよ」
「ねぷねぷは本当に正直者ですからね…。いいことではあるんですけど…」
「口が滑る前に終わらせたほうがいい…。口は災いの元。あまり煩いなら物理的に塞ぐと言う手もあるけど…」
「怖っ! 真顔でそういうこと言わないでよ!?」
入口から少し先に進むと眼鏡をかけてスーツを着た男性がいた。幹部クラスの社員だろうか。
「あなた方が弊社の依頼を引き受けてくださったチームですね? 初めまして。お待ちしておりました」
「依頼人のガナッシュ…かな? 初めまして。私は神奈 舞だよ」
「はい。この度依頼を出させていただきましたアヴニール社のガナッシュと申します。そしてこちらは弊社代表のサンジュ。以後、お見知りおきを」
「…」
「代表さんも一緒なんだね? 今回の依頼の説明をお願いしてもいいかな? 一応依頼文には目を通しては来たけど、具体的にはどういうモンスターなの?」
「そうですね。ギルドの方にも情報が無いモンスターと言ったところでしょうか。恐らくあなた方も風の噂で聞いているとは思いますが、これまでこの依頼を受けた冒険者達は全て失敗という結果に終わっています。話を聞いたところではあらゆる攻撃が通用しないようです。我が社も対モンスター用の兵器を試しにぶつけましたがまるで効果が見られませんでしたね。見事に破壊されて我が社も損害を受けている状況ではあります」
「対モンスター用の兵器もやっぱり開発してるのね? 予想はしていたけど」
「ええ。近年はモンスターの被害も拡大してきていますからね。この辺りは近々我が社の新プラントの設立予定地にはなっていますが、工事着工前にその問題のモンスターが住み着いてしまいましてね。我が社も非常に困っているのですよ。願わくば我が社の期待を裏切らないでいただきたい」
「ふむ…。あらゆる攻撃が通用しない…か。何とか攻略手段を探してみるよ。どんな相手にも必ず弱点はあるはずだからね。受けた以上は成功と言う形で示してみせるよ」
「大きく出ましたね。ならばその言葉が偽りで無いことを今回の依頼で証明していただきましょうか。この後、私と社長はこの辺りの視察があるので、それが終わるまでに問題のモンスターを討伐していただきたい」
「討伐ができるのであれば手段は問わない。結果が全てだ。失敗などと言う無様な結果だけは示してくれるなよ? ガナッシュ、雑談はその辺で切り上げろ。時間が勿体ない」
「はい。それではお願いします。社長の方からもお言葉がありましたが、失敗して問題のモンスターを取り逃がすことのないように気を付けてください」
「わかった。早速取り掛かる。みんな、行くよ」
あらゆる攻撃が通用しないと言う点から推測するに西風の吹く渓谷で出会ったフレースヴェルグと同じで超越化モンスターの可能性が高い。警戒を強めながら舞達はザラット神殿の最奥部を目指して進むのだった。