超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth   作:ミオン

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Game15:守護女神と夜景とプリンと

ザラット神殿の最奥部に到達した舞達の前に現れたのは超越化の状態で長時間が経過したことにより生物として持っている情報が変質してしまったモンスターだった。通常の超越化の場合ならば大火力を叩き込む連携技(フォーメーションスキル)必殺技(エグゼドライブ)が対抗策にはなるが、残念ながらこの状態では通用しない。

 

舞は後衛でこのモンスターを攻略する方法の構築を進めていた。舞は自分が実際にプレイしたことのあるゲームに登場する技であればそれを己が体で再現して使うことができるのだが、舞がこれまで実際にプレイしたゲームの中には登場しない技。所謂他人がプレイしていたゲームの中で見ただけの技については、戦術に組み込むために構築の時間が必要となる。

 

「…」

 

技の構築には相当な集中力が要求されるため、戦闘との両立は難しい。ネプギア達がモンスターの足止めに徹してはいるが、時間は無限にあるわけではない。集中力を維持した状態で構築を進めると舞の右腕に巨大な銀色の腕輪が現れた。これが構築が終了した合図。

 

「待たせた分は挽回させてもらうよ」

 

舞はアルマッスを左手に持つと足にシェアの力を纏わせて駆け出した。モンスターの側面に回り込み斬撃を叩き込むが、赤い光が飛び散るばかりで手応えが感じられない。ゲイムギョウ界のモンスターに有効なダメージを与えることができている場合は青い光が飛び散るのだが、現状では攻撃を加えた際に飛び散るのは全て赤い光。それに加えて怯む気配もまるで見られない。ある程度攻撃すると後退して敵との距離を取る。

 

このモンスターを攻略するための手段は準備できているのだが、発動させるためには相手にある程度攻撃を加えなければならない。前足の鋭い爪と口から吐き出される氷のブレスに最大限の注意を払いながら全員で手数重視(ラッシュ)系統の技を中心に攻め立てる。攻撃を続けるとモンスターが怯むと同時にガラスが割れるような音が響き渡った。

 

「来たか…! 本当の姿を見せてもらうよ!」

 

舞は銀色の腕輪が顕現した右腕をモンスターに向けて狙いを定めるとシェアを収束させて力を解き放つ。

 

「データドレイン!」

 

銀色の腕輪から放たれた光がモンスターに直撃するとその体を包み込む。光が晴れるとモンスターの体色が禍々しい漆黒色から本来の体色に戻っていた。逆立った蒼い体毛に鋭い爪を持った狼型のモンスターの姿は見覚えのある物。

 

「うあっ…!」

 

モンスターを元の姿に戻すことは成功したが、舞は苦しい表情をしている。これがこの技の代償。舞は超越化の状態で長時間経過したことで変質してしまったモンスターの情報、所謂バグった情報を体内に取り込むことで変質する前の正常な状態に戻したのだが、バグった情報はウイルスのような物。何度も繰り返せば舞の体が逆に汚染される危険があるため乱用はできない。

 

「舞さん! 大丈夫ですか!?」

 

「平気…。これで攻撃は通るはずだよ。セレナ、解析魔法を使ってみて」

 

舞の指示を受けたセレナは解析魔法を使う。

 

「凄い…。バグった情報が元の状態になってる。これなら攻撃は通るよ!」

 

最初に舞が使った時に流れて来たモンスターの名前はス*#ッ%&ド?グと変な名前だったが、再びセレナが解析魔法を使った結果スラッシュドッグと本来の名前に戻っていることが確認できた。後は討伐するだけだが、時間をかけると再び汚染化・超越化する可能性がある。

 

「動きを止めるわ!」

 

「わたしもお手伝いするです!」

 

ユニは銀の銃に麻痺弾を装填。コンパは黄色の液体が入った小型の注射器を数本取り出した。

 

「パラライズショット!」

 

「注射器投げ・麻痺毒付き! です!」

 

ユニが放った麻痺弾とコンパが投げた小型注射器がスラッシュドッグに直撃。体を痙攣させて麻痺状態に陥った。敵に毒や麻痺などの状態異常を付加する際には可能な限り時間を空けずに攻撃を叩き込むことがコツだと言われている。麻痺によって生じた隙を見逃してはならない。アイエフが続いて攻撃を加える。

 

「滅気連舞!」

 

スラッシュドッグの側面に素早く回り込み連撃を叩き込む。アイエフの武器であるカタールの刃には水色の粘りの液体が付着していた。この水色の液体には相手の気力を奪い疲労させる効果がある。疲労させることによって相手の動きを一時的に鈍らせることができるのだ。これ以外にも毒や麻痺などの様々な効果を持つ薬品を刃に塗り込むことによって戦術の幅を広げることができる。

 

スラッシュドッグの動きが鈍った隙を見逃さない。続けてネプギアが跳躍からの強烈な一撃を叩き込み怯ませると、スラッシュドッグの背に飛び乗った。スラッシュドッグはネプギアを振り落とそうと暴れ回るが、ネプギアも振り落とされまいとしっかりと掴まる。動きが落ち着いたら反撃。背中に連続して攻撃を叩き込むとスラッシュドッグは転倒した。

 

「お姉ちゃん! ノワールさん! 今です!」

 

「待ってましたー! ブレイズブレイク!」

 

「私も負けてられないわ。トリコロールオーダーッ!」

 

ネプテューヌが火属性の魔力とリリムの能力による黒色の粒子を纏わせた二つの剣で胴体に攻撃。続いてノワールが両手に装着された機械の手甲から伸びる魔力刃と自分の得物である片手剣で連続攻撃を叩き込む。スラッシュドッグもこのままではやられないとばかりに暴れ回る。二人は攻撃を防ぎ切ると後退。舞とセレナに繋ぐ。

 

「カートリッジロード!」

 

アルマッスの刃に付いた弾倉が回転し、刃の内部で装填された弾丸が炸裂。空薬莢が排出されると刃が銀色の炎に包まれる。舞の体に負荷がかかるが、これは許容範囲内である。

 

「重厚なる黒の大地に秘められし炎の力をここに。クリムゾンブラスト!」

 

詠唱が完了したセレナの魔法が発動。スラッシュドッグの足元から炎の竜巻が発生。その体を飲み込み焼き焦がす。セレナが放った魔法は大地に秘められた属性エネルギーを利用して放つ魔法。ラステイションの大地に秘められた属性エネルギーは火属性なので、火属性の魔法となる。これをプラネテューヌで使った場合は属性エネルギーが雷属性になるため、属性もそれに応じて変化する。

 

「これで終わりだよ。バーニングストライク!」

 

止めに舞が銀色の炎を纏わせたアルマッスで十六連撃の剣舞を叩き込む。スラッシュドッグは銀色の炎に包まれながら光となって消滅した。

 

「終わったね。付け焼き刃の技で何とかなってよかったよ」

 

「わたし達のパーティって何だか強過ぎてどんな相手にも楽勝って感じだよねー。ノワちゃんもそう思うよね?」

 

「ノワちゃん言うな! 今回は舞達がいてくれたから何とかなったけど、他の地域にも現れていないか一度調査する必要があるわね。舞、さっきの技って私にも使えたりしないのかしら?」

 

「まだ無理かな。今は自分の力を取り戻すことに集中してほしい」

 

「まだってことはいつかは使えるようになる可能性があると言うことね? わかったわ」

 

この世界のノワールとハード・リンクが発現すればそれを通して譲渡することも可能ではあるが、元の世界のノワールとも発現していない状況では残念ながら現時点の物にすることはできない。

 

「目的のモンスターは無事に倒せたわけだし、一旦街に戻る?」

 

「そうだね。シアンにもアルマッスのモニタリングの報告をしたいし」

 

目的を無事に達成した舞達はその場を後にする。建設予定地の視察を終えたガナッシュとサンジュに報告を行い、クエストの報酬を受け取ると下町のシアンの工場に帰還。

 

「たっだいまー!」

 

「おっ。無事に帰ってきたか。どうだった? 何かわかったか?」

 

「アヴニールがまた新しい工場を建てようとしていることがわかったわ」

 

「あいつら! また工場を作るのかよ!」

 

「またってことはこれまでにも?」

 

「ああ。あいつらが次々と工場を作るせいで自然破壊がここ数年で加速的に進んでるんだ。お前達が今日行ってきた場所も森とか自然が豊かな場所じゃなかったか?」

 

「はい。モンスターさんはいましたけど、空気も澄んで綺麗な場所だったです」

 

「阻止したいけど、今の私が言っても止めることはできないでしょうね…。本当に悔しいわ…」

 

「もう一度仕事を受けてみる? 次は有益な情報が得られるかもしれない」

 

「でもって隙あらば社内に潜入して秘密工作とか!」

 

「お前らの実力は認めるけど、あまり過激なのはよしてくれよ?」

 

再びアヴニールの依頼を受けることが決定したが、同時刻に外で舞達の話を盗み聞きしている者がいた。

 

「ほう。社長に言われて偵察に来てみれば随分と面白い話が聞けましたね。あのモンスターを見事に倒した実力は認めますが、この辺りで我が社に逆らうとどうなるのかをその身を持って味わってもらうとしましょうか」

 

『…』

 

それを聞いていた存在には気付かずにアヴニールの社長補佐のガナッシュはその場を後にする。

 

その一方で話し合いが終わって夕食とお風呂を済ませた頃、舞はネプギアとユニとセレナを自分の心の世界に招いていた。

 

「いきなり呼び付けてごめんね? 実は明日のことで二人にお願いしたいことがあって」

 

「気にしないでください。それで、お願いしたいことってなんですか?」

 

「ネプギアちゃんとユニちゃんにはリリムとヒナと一緒にこの下町の防衛に付いてほしいんだ」

 

「どういうこと? まさか、さっきのアタシ達の話が外に漏れてたとか…?」

 

「そのまさかだ。黒の女神候補生よ。アリアと共に一部始終を見聞きしたが、彼奴め、随分と物騒なことを言っておったわ。明日の依頼の中で何か仕掛けて来る可能性は非常に高いな」

 

「向こうが攻めて来るとしたら私達が今いるこの下町。そこで明日はパーティを分けて対応した方がいいと思ってね。それを舞にさっき伝えて二人をここに呼び出してもらったの。ここなら盗み聞きされる心配はないからね」

 

「そうだったんですか…。わかりました! 何が来ようとも守り抜いてみせます!」

 

「その任務、引き受けたわ。と言うことは明日の依頼はアタシ達を除いたメンバーで向かうの?」

 

「そうなるね。向こうが何か仕掛けてきたらハード・リンクを通じて舞か私に知らせて」

 

「わかりました!」

 

「わかったわ」

 

話し合いが終わったところで心の世界から現実世界に戻ると舞達はネプテューヌの元に向かう。ネプテューヌが説得に成功したようでノワールが一緒にいた。アイエフとコンパも誘いに行ったようだが、二人は眠りに就いていたらしい。リリムとヒナはまたの機会にすると言われて今回は見送る形となった。

 

ネプテューヌの提案でこれから外にプリンを食べに行こうということに。ネプテューヌが言うにはプリンは外で食べるともっと美味しくなるらしい。ネプテューヌの案内で着いたのはラステイションの街並みが見渡せる小高い丘の上だった。

 

「綺麗な夜空だね…。それに街の光も合わさって心が自然と落ち着くよ」

 

「でしょ? この間どこかみんなでプリンを食べれる場所は無いかなーって探してたら偶然見つけたんだー」

 

もう夜遅い時間なので少し肌寒いが、満月と星達が輝いている雲一つない夜空とラステイションの街並みの光が幻想的な雰囲気を作り出している。

 

「ねえ、みんなに聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」

 

「お? なになに? 預金残高以外だったらなんでも答えてあげるよ?」

 

「今のあなた達の目から見て、ラステイションはどう映ってるの?」

 

「まさかの真面目な質問にネプ子さん困惑…」

 

「あなたは記憶喪失だし、仮に記憶が戻っていたとしてもボケをかまされるだけだと思うから期待はしていないわよ。舞達は違う世界から来たんでしょ? どうなのかなと思って」

 

「そうですね…。何というか本当の姿じゃないって感じがします。別の世界のラステイションを知っているからかもしれないですけど」

 

「予想だけど、アタシ達が生まれる前のラステイションがこんな感じだったんじゃないかしら? 元の世界のお姉ちゃんも取り返しのつかない失敗をしたことがあるって言ってた。アタシ達が知っているラステイションになるまでの間には今みたいな状況になってたこともあったと思うわ」

 

ネプギア達女神候補生が誕生する前からネプテューヌ達は国を守護して民を導いて来た。今に至るまでには様々な問題もあったと言われている。

 

「元の世界のノワールから聞いたけど、アヴニールみたいな力のある大企業による市場と国政の支配は過去にあったみたいだよ。元の世界のラステイションは職人のみんながお互いに新しい物を作ろうと毎日工場で腕を競ってるけど、ここでは力のある大企業がそれを抑え付けてしまっている。だから、本当の姿じゃないって感じがするんだと思う」

 

「毎日職人達が競い合ってどの国にも負けないような新しい物を作るために頑張っている光景。それがラステイションの本当の姿なのかもしれないね。今は力を取り戻して自分にできることを積み上げて行けばいいと思う。一人だと無理なことでもみんなで力を合わせればきっと道は開けるだろうし。そうだよね? ネプテューヌ?」

 

「ねぷっ!? ここでわたしに振る!? うーん。そうだなぁ。わたしが目が覚めた時に同じことを舞に言われたんだけどさ。物凄い説得力があるなって思ったから。本当に何とかなりそうな感じがしたんだよね。だからわたしも記憶を取り戻すために頑張らないとなーって思ったよ」

 

「生きてさえいれば過去の失敗を取り返す機会はあると私は思う。だからその時が来るまで一緒に頑張ろうよ」

 

「そうね…。はあ…何だか悩んでいた私が馬鹿みたいじゃない。あなた達と出会えて本当によかったわ。ごめんなさい。暗い気分になるような話をして」

 

「気にしないで。悩みは抱え込むよりかは打ち明けた方がいいと思うし。さあ、みんなでこの夜景を見ながらプリンを食べて明日に備えようか?」

 

舞達は夜景を見ながらプリンを食べ始める。ネプテューヌの言っていたようにみんなで食べるプリンは一段と美味しいと感じた。外の夜景もそれに拍車をかけている。プリンを食べ終えて拠点に帰還した舞達は明日に備えて眠りに就くのであった。

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